採掘場の地下に広がる偽装基地。
内部での事情を一切知らないパイソン達は沈黙したコクーン周辺に集まり、部隊と武器を再編成して突入準備に移っていた。
すでにコクーンから離れたAIポッドより多くの記憶盤を回収し、負傷者と共に輸送用のヘリに移動させ、あとは号令をかけるだけだ。
「こちらパイソン。これより敵基地へ突入する」
連絡を入れていたパイソンの言葉にエルザやジョナサンを含めた部隊が、突入する心構えを整えて程よい緊張感と共に武器を構える。
通信より了承の返事を待っていただけに、発せられた言葉にパイソンは戸惑った。
『総員その場を退避しろ!!』
スネークの焦りを含んだ叫びに一瞬思考が停止するも、僅かな揺れから察して大声で周囲に伝達する。
「総員退避ぃいいいいい!!」
揺れは次第に大きくなり、地下へと続くハッチが解放される。
叫びと揺れに呼応して兵士達はその場より全速力で離れていく。
その後ろで沈黙したコクーンがハッチで空いた空間に崩れ落ちるように傾き始め、大きな衝撃と共に地上へと横転させられた。
何事かと振り返ると開かれたハッチより姿を現したピースウォーカーが、邪魔だと言わんばかりにバランスを崩していたコクーンを突き飛ばしたのだ。
巨大な四足の脚が大地を踏み締め、頭部らしい球体に光が灯る。
背には二つの箱状の装置がくっ付いており、その片方が非常に長い事と発射口が一つであった事、なによりその見た目から核弾頭の発射装置だと皆が気付いた。
開閉ハッチより離れた者からピースウォーカーへの攻撃が開始された。
が、対巨大兵器用に持って来た兵装はコクーンに使い切ってしまい、現在持っているのは対人用の兵装。
ピースウォーカーの装甲にダメージを与えるには弱過ぎたのだ。
まったく効いていない事を証明するかのようにピースウォーカーは無視して、何処かへと歩みを始める。
『儂らを無視するとは生意気な!!』
唯一有効な攻撃手段を持っていたスコウロンスキー大佐が操縦するAH56A-R(C)の30mm機関砲が火を噴いた。
さすがにダメージを受けたピースウォーカーは歩みを止め、迎撃態勢に入った。
核ミサイルとは反対側にある箱型の武装が口を開く。
『自己防衛システム作動。ロケットランチャー、発射』
放たれたロケットランチャーの一発がAH56A-R(C)後部に直撃。
黒煙を上げながらくるくると回りながら落ち始め、エルザは浮遊して予想される墜落地点へと向かう。
「私が行く!」
「頼む!…とは言っても俺達では足止めも満足には…」
「パイソンさん!!」
AH56A-R(C)を排除した事で歩みを再開したピースウォーカーに豆鉄砲を放ち、見送るしか出来ないパイソンの下へバットの声が届き、振り向けばスネークとバットが駆け寄ってきていた。
「無事だったか!」
「
「いや、部隊を運んできたMi-24Aが四機ほど施設の方で待機している。そいつを使え」
「お前はどうするんだ?」
「弾薬が尽きた。部隊の指揮もせにゃならん。迎えが来るのを待って合流するさ」
「了解です。ではまた後で」
二人は遠退いていくピースウォーカーを視界に納めながら、採掘場を駆け上がっていく。
到着したときにはMi-24Aに
急ぎ乗り込んで離陸する最中、バットの無線に通信が入り、周波数がストレンジラブのものだった事からスネークの無線機にもつなげて応答する。
『蝙蝠、聞こえるか?』
「聞こえますよ博士」
『お前のおかげで彼女はママルポッドとして蘇った。礼を言おう。ありがとう』
皮肉とも素で礼を口にしているようにも取れる言葉に、スネークはギリリと歯を食いしばるもバットは顔色を変える事は無かった。そんな状況を察する気もなくストレンジラブは続ける
『ピースウォーカーはニカラグアにある米軍ミサイル基地より核弾頭を発射する』
「核を撃つ!?正気か!!それにピースウォーカーは核抑止を決定付ける兵器の筈だろ!!」
『…スネークか…まぁ、いい。
「何処に向けて撃つ気なんですか?」
『目標は確かカリブ海の洋上…領海域外だと聞かされたが』
スネークは短い時間であったが接触したコールドマンの印象から無駄に撃つ事は無いと推測する。そしてカリブ海洋上にて奴らCIAが…否、コールドマンが撃つ目標があるとすれば間違いなく邪魔だてして目の上のタンコブであろう俺達の拠点―――“マザーベース”。
「カズ!通信は聞こえたな」
『ああ、すぐにアマンダ達を避難させ、こちらの戦力をそちらに送る!』
「お前も脱出しろ!」
『何言っている。俺は副指令だ。早々基地を捨てられるか。それに俺は…俺達は信じているんだぞ。伝説の英雄が何とかしてくれるってな』
普段は調子に乗り易く、良くも悪くもムードメイカーなカズヒラだが、今は非常に頼もしく感じる。
スネークとカズのやり取りを効いて小さく微笑、バットはストレンジラブとの通信を続けた。
「何故そこまで教えてくれるのですか?」
『借りを返しただけだ。それに私の目的はママルポッドの完成が目的で、コールドマンの核抑止や核の発射にある訳ではない』
「博士って…
『…突然何を言って…
「いえ、ヒューイ博士から貴方がどれほど優秀で素敵な方なのか聞いていたので」
『わぁああああ!?そ、それは言ったら駄目だよ!!』
大慌てで回線に割り込んで来た様子に笑ってしまう。
切羽詰まった状態だというのに…。
かといってガチガチに緊張していても良いというものでもないが。
『それともう一つ。パスと言う少女がこちらに居る』
「―――ッ!?パスちゃんは無事なんですか?」
『今は大丈夫だ。監視はついているが私の目の届く範囲で自由にさせている』
続けられた一言でパスの居場所が分かったものの、状況は最悪と言って良いだろう。
後の事を考えてピースウォーカーは破壊もしくは鹵獲しなければならないし、核は撃たせないように止めないといけない。そんな状況下で人質を取られたのは本当に痛い。
唯一の救いは会話にてバットが“良い人”認定したストレンジラブ博士が護っているらしいことだろう。
…別の意味の危険はあるとも露とも知らずに…。
ストレンジラブ博士による情報提供を持って目的地を米軍ミサイル基地へと変更したスネーク達は、コスタリカ・ニカラグア国境サン・ファン河を越えた辺りで対空兵器による迎撃を恐れて地上に降り立つ。
Mi-24A三機は着陸させると警備を置かずにパイロットも武器を手に基地へと向かう。
航空支援は期待できず、援軍の到着まで待つ余裕はない。
武器も手持ちの物ばかりで、正攻法での基地を制圧など夢のまた夢…。
「スネークさん。僕達が囮になりますのでパスちゃんの救出お願いします」
短期間で任務をこなしながらパスを助けるのならどちらかが注意を惹き、潜入能力に優れた者が司令部を押さえた方が良い。
二人で司令部に向かった方が成功率は上がるが、数でも装備でも劣っている現状を考えるとどちらかが囮に居た方が惹き付ける時間も延びるし、仲間の生存率も上がる。
納得して了承するだけなのだが、その前に聞いておかなければならない事がある
「分かった―――が、その前に一つ。お前、ママルポッドを完成させるように動いたろ?」
腑に落ちなかった。
バットは俺を助けるためにザ・ボスの情報をストレンジラブに漏らした。
その結果、俺は助かる代わりにママルポッドが完成してしまったと言うなら話は分かる。
しかし実際は真実を喋ったところで奴らは俺を殺そうとしており、助かったのはバットのSAAによる早撃ちによるものだ。
つまりバットはピースウォーカーが完成する為に必要なママルポッドに抜けていた肝心の情報を語っていた時には、俺を助けられるようにすぐそばに居た事になる。
俺を救出する際に使われたのがスナイパーライフル、もしくはアサルトライフルによる長距離から中距離射撃だったらそうは思わなかったが、バットはコールドマンの言葉を聞いて無線を通さずに言葉を返し、拳銃であるSAAの射程に敵兵を収めていた
それほど近くに居たのなら情報を教えずに、その場で撃てば俺を助ける事は可能だった筈だ。
スネークの問いかけにバットは苦笑いを浮かべる。
「スネークさんは向き合わないといけないと思ったんです」
「それがどんな危機的状況になると解っていてもか!」
「はい」
バットは真っ直ぐスネークの瞳を見て答えた。
嘘偽りなくバットは世界の危機より俺を選んだのか。
なんとも言えない感情がせめぎ合う中、バットはまた笑う。
「といっても危機的状況に陥ってもその前に阻止するつもりですけどね」
「当たり前だ」
二人して笑い合い、軽く拳をこつんと当てる。
スッキリとした表情の二人は振り返り、バットと共に突入する仲間へと振り返る。
「では作戦を開始します。第一班はここより
「おう!」と声を揃えて返事をし、第一班は二人一組に立って
それは大国の科学技術にも匹敵する優秀過ぎるマザーベースの研究開発班が開発した新兵器にしてスネーク曰く最高傑作。
人が進める陸路ならどこだろうと走破し、非常に軽いながら数発ならば銃弾にも耐えうる装甲。
持ち運びが凄く楽な上に組み立ては素人でも短時間で出来、操縦士と砲撃手だけという少ない人数で操れ、排気ガスを出さないクリーンな兵器。
その名も“ダンボール戦車”。
五台のダンボール戦車が並び、バット達とスネークは別方向へと移動する。
そして間もなくしてダンボール戦車の一斉砲撃が開始され、急な敵襲に混乱する基地へと
戦闘が激しくなる様子を確認し、スネークは基地内部へと侵入する。
警戒態勢とは言ってもバットが惹き付けているおかげで入り込めた訳なのだが、どういう訳か内部の兵士はCIAではなくKGBの兵士が占めていた。
訳は解からないが今はそれで足を止めている暇はない。
次々と敵兵の目を掻い潜って先へ先へと進み、スネークは管制塔最上階指令室へと繋がるエレベーターに乗り込んだ。
通路を進んだ突き当りに指令室はあり、人気の無さを焦る気持ちの中で感じて中へと跳び込む。
室内は円形状になっており、周囲の壁にはモニターが幾つも取り付けてあってピースウォーカーをメインに映し出されていた。
人影は少なく、正面奥にパスを連れたコールドマンが居るだけ…。
「スネーク!」
気付いたパスが声をあげる。
俺の存在に気付いたコールドマンが振り返るより先に銃口を向けるも、振り返ったコールドマンは不敵な笑みを向け返して来た。それに合わせて周囲を囲んであった仕切り板に隠れていた兵士がずらりと現れ、銃口をこちらへと向けて来た。
この一室は二階もあって、上からも銃口を向けられている状態では身動きすら取れない。
「来たなBIGBOSS。存外に早かったが手遅れだったな」
「なに!?」
「偽造データの準備は整った。あとは目障りなお前の基地を吹き飛ばし、この私が完全なる核抑止を実現するのだ」
コールドマンの視線がちらりとあるモニターに向けられる。
そのモニターには作業に没頭しているストレンジラブの姿が映し出されていた。
「後はコードを入力するだけ」
「やめろ!!」
「止まれBIGBOSS」
スーツケース型の端末にカードを通そうとしたコールドマン。
焦ってトリガーに指をかけるも“教授”の声に指が止まる。
聞き間違いが過ったが振り返れば間違いなくガルベス教授がそこに居た。
CIAのコールドマンが指揮する米軍基地にKGBのガルベスが何気ない様子で居る。
これは非常に可笑しな事態だ。
「遅かったな」
困惑する俺とパスを他所にコールドマンは親し気な様子で声をかけた。
…が、ガルベスの返しはそれとは異なるものだった。
「予定より手間取った―――“基地の制圧”にな」
「う、裏切ったのかザドルノフ!!」
「可笑しな事を言う。そもそも我々は敵同士ではないか」
コールドマンの部下であったはずの兵士達は銃口をコールドマンにまで向け、ザドルノフはクツクツと嗤い近づいていく。
状況から察したコールドマンは忌々しそうに睨みつける。
「貴様…よくも私の計画を…」
「安心しろ。お前たちが土地と資金を提供し、我々が与えた技術によって完遂間近なこの計画は最後まで遂行させる。ただし核を撃ちこむのはカリブ海洋上などではない――――キューバに核を撃つ」
「そんな馬鹿な!お前たちに何の得が有ると言うのだ!?」
「解らないのか。だからこうも出し抜かれるのだ。良いか?ここは親米政権がお前たちに与えた米軍基地。世論は米軍基地よりアメリカ製の核弾頭がキューバを撃ったとして見るだろう。
ともなれば反米感情に一気に火が付き、中南米は共産化が進んでアメリカは大事な裏庭を失う」
「それがお前たちの計画か…くそっ!」
悔しがるコールドマンを他所にガルベスはパスを引き寄せ、懐より取り出した拳銃“
「先生…」
「私の名前はウラジーミル・ザドルノフ。ウラジーミルの意味は“平和を支配”だ。沿岸での凌辱を思い出せパス。奴のした事は死に値する」
戸惑っていたパスだが、ガルベスの言葉に拳銃を握る指に力が籠る。
命大事に冷や汗を垂らしながら許しを請うコールドマン。
この状況を楽しんでいるかのようなガルベス。
そんな二人に挟まれたパスはゆっくりと銃口を降ろした…。
「できない…」
「さすがは
降ろされた銃口がガルベスによって無理やりコールドマンへと向け直され、銃声が指令室内に響き渡る。
倒れるコールドマン。
しかし至近距離で撃たれたにも関わらず、呻き声を上げている事から生存している事が確かなようだ。
「ぐぅ…貴様、わざと外して…」
「お前にはコード入力と言う大事な仕事が残っているんだからな。さてと博士、目的地をキューバに変更しろ。もしも断ったり妙な動きを見せればママルポッドを目の前で潰してやる」
さすがに戸惑いを隠せないストレンジラブだったが、ママルポッドを出されては従うしかなく偽装データの変更作業を開始した。
何も出来ない状況に歯噛みしながら見つめていると、後ろの方から扉が開く音がする。
「―――待たせたな」
耳に届いた一言に期待と興奮を抱いて振り返るスネークは、一瞬で絶望へと叩き落された。
現れたのは敵兵に銃口を突き付けられたバット。
呆れを通り越して頭痛がしてきた…。
「君達には感謝しているよ。あの幼いゲリラたちをよく立派な革命軍に育ててくれた」
「ゲリラ…アマンダ達のことか」
この言葉にスネークは目を伏せる。
確かにアマンダ達サンディニスタは以前に比べて逞しくなった。
一人一人の技術力は向上し、うちと取引するようになって武装も大幅に向上。
見違えるような勢力になっていたが、正直悪い影響を与え過ぎた気がしてならない。
なにせ散歩するかのような軽い感じで敵の兵器を鹵獲しに向かうのだ。
ガルベスは“真の諜報とは自ら介入せず現地の組織を操り間接的に革命を成功させること”と酔ったように語っていたが、その事を想うと話が耳に入ってこない。
「君ら二人がCIAによって殺されることで彼らも決起するだろう―――最期に言い残したい事があるなら聞こう」
周りを取り囲まれ、銃口を突き付けられている状態でバットはニヤついて顔をあげる。
「いやぁ、意外に手間取りましたよ―――“兵士達の説得”に」
その一言に顔を隠すように俯き、バットを取り囲んでいた兵士達が面を上げる。
勿論知らない兵も居たが、中にはパイソンやエルザなどMSF所属の兵士も紛れていた。
にっこりとした笑顔を浮かべたバットは後ろに回していた手首には手錠がされておらず、前に回されたその手にはSAAが握られていた。
素早く左手が撃鉄に触れたと思ったら、次の瞬間には早撃ちでスネークに銃口を向けていた兵士を撃ち、倒れ込む中で兵士が身に着けていた拳銃を奪い、躊躇う事無く周囲の敵兵を撃ち抜く。
「
銃声を合図に扉の外よりカズとアマンダを先頭に
中にはチコの姿も有り、叫びながらアサルトライフルを撃ちまくる。
奇襲が相次いで敵兵は抵抗らしい抵抗も出来ないまま次々と倒れて行く。
「凍れ!」
パイソンによって投げられた手榴弾より冷気が噴出し、周辺に居た敵兵は凍えるどころか一部一部が凍り付いていた。
動けるものは反撃に出るも弾丸は貫く前に凍り付いて、ぱらぱらと防弾チョッキに当たって転がり落ちて行く。
室内―――それも狭い一室であるならばパイソンの力は最大限発揮される。
撃っても効かず、近づけば凍えて動きが鈍り、触られれば凍り付く。
「あの子ね。どきなさい!!」
悠々と入って来たエルザはパスを見つけると周囲の敵兵をサイコキネシスで壁に叩きつけると、そのままパスを自身の元まで浮かして移動させる。
パスが救出され、敵対していた兵士は沈黙した。
残るは虫の息で横たわるコールドマンと撃たれまいと蹲ったザドルノフのみ。
「同志に銃口を向けるな!!」
「私達はKGBの駒にはならない!!」
そのザドルノフはアマンダによって拘束され、動ける敵対者は一掃された。
室内には緊張と安堵から妙な空気が流れ、皆が戸惑いを隠せずにいる。
膠着する室内にて一人のサンディニスタ兵士が嬉しそうに口を開く。
「アマンダ!俺達は
故郷の地を踏んでいる実感とようやく皆が司令官と認めてくれたことに顔が自然と緩み、アマンダは照れ隠しに煙草に火をつける。
バットはパスへと駆け寄って無事なのを安堵し、皆はそれぞれ喜びを近くの者と共有し、思い思いに声を挙げた。
煙草に火をつけたアマンダはスネークの姿を見つけ、駆け寄って声をかける。
「
アマンダが安堵しながらスネークに向けて呟いた言葉が、周囲の兵士達に広がって行き、全員が勝利を実感してVIC BOSS(勝利のボス)と高らかに口にするのだった。
●ちょっとした一コマ:ストレンジラブの葛藤
私は酷く思い悩んでいる。
コールドマンが核を撃とうとしている事に対しては想うところがあるも、彼女を再現できたママルポッドを破壊すると脅されれば何も出来ない自信があるだけに、抵抗は無駄だろうと解かり切っている。
では何に思い悩んでいるかというと現在の状況だ。
ストレンジラブは完成したピースウォーカーが向かっている米軍基地にヘリで輸送されている。
その同乗者の中には場違いな若い少女が居る。
ブロンドのふわふわとした髪。
健康的でシミの無い綺麗な肌。
澄んだ青い瞳。
ぷるっと柔らかそうな唇。
視線を気にしないのであれば何時までも眺めておく自信があるが、警備している兵士に少女本人の目がある為に不用意な行動は出来ない。
パスと言う彼女はスネークとバットの雇い主と言う事でコールドマンが部下を使って攫って来たのだ。
不安そうに表情を歪めている様子に心打たれ、何とか逃がしてやれないかと模索しながらも、人に言い辛い欲望を具現化した悪魔が耳元で囁き、意識がそちらに動きそうになる。
状況と彼女の立場が違う為にセシールのように扱うことは出来ない。
何より相手に不快に思われるのは本意ではない。
けどそれ以上に美しさを
自分の手元に置きたいという欲望を隠しながら、コールドマンには彼女の不安を落ち着かせる為にも同性の自分が近く居たほうが良いと進言し、奴と離す事には成功したがこれでは生殺しである。
「そう不安そうな顔をしなくていい。私が近くにいる間は手出しはさせないから」
不安を少しでも緩和できないかと声をかける。
人間弱っている時こそ正常な判断は出来ないものだ。
敵側である私の言葉に彼女は僅かながら心を寄せた様に視線を向けて来た。
収めようとしている気持ちが燻ぶられる。
大丈夫だよと囁きながら抱き締めても良いだろうか?
いやいや、早まるな。
失敗したら不信感を抱かれる可能性が高い。
なら震えている手をそっと握ってやるのはどうだろうか?
さっきよりはまともそうに見えるがこれも早い。もう少し信用を勝ち取ってからの方が良いだろう。
そうと決まれば気を紛らわすという目的で自身の想いを隠して話を始める。
といってもお互い共通の話題を知っている訳ではないので最初は一方的に語るだけだ。
さすがにAIなどの専門知識を語るのではなく、自分の成り行きやそういった共感しやすいものに限定する。
この際に聞き手を無視して話す事に夢中になったり、自分語りに酔いしれる事は絶対にしてはならない。
相手の表情や返事、雰囲気に気を配って不快に思われないように気を配る。
時には感情を込め、それとなく仕草も加え、相手が同意や共感しやすいように言葉を選ぶ。
こちらを少しは理解し、心に僅かな隙間が出来るのをじっくりと待つ。
敵兵の中で同性であり、唯一気をかけてくれている人と言う事もあって彼女も多少は気を許して語り出してくれた。
ゆっくりと聞き、頷き、途中途中言葉を挟む。
おかげで最初のように警戒は薄れたように感じる。
「私が言うのもなんだが、彼らは非常に強い。必ず助け出しに来てくれるさ」
「ありがとう。少し気持ちが楽になりました」
今だと言わんばかりに話が終わると優しく声をかける。すると輝かんばかりの笑みが返される。
…このまま押し倒しては駄目なのだろうか?
ストレンジラブの葛藤は到着するまで続くのだった…。
●現在のバットのステータス
ライフ:7000
気力 :6000
スタッフ能力:実戦A
研究-
糧食A
医療S(オート機能)
諜報B
戦闘能力:射撃性能A
リロード能力S
投擲能力B
設置能力B
歩き速度A
走り速度A
格闘能力SS
防御能力A
スキル:野戦料理人(作る料理に能力向上のバフが掛かる)※
説得者(語り掛けると言葉がスッと入って来る)※
外科医EX(負傷であれば秒で治療できる)※
CQC補助機能(動作がしやすいように時間がゆっくりとなり、行うべき動作が影として浮かぶ)※
レスキュー
クイック・ドロー
CQCハイエンサー
※はオリジナルスキルorスキルの強化