前回「来週に二話投稿したい」と書いたのですが余計に状況が悪化し、週に二種類も投稿出来るほどの余裕が完全に無くなり、活動報告で報告しようかとも思ったのですが、中々それを書く余裕もなく今日まで遅れてしまい申し訳ありません。
今週より投稿を復活させます。
一か月以上お待たせして本当にすみません。
前回の話の最期にちょっとした一コマを追加致しました。
カズヒラ・ミラーが“カリブの大虐殺”で生き残った
十年もの昏睡状態から復帰したスネークを迎え入れ、同時にバットも来てからは状態維持と微々たる発展が精々だった運営状況が一変。
危険度の高い高難易度を単独で成功させる為に、今までそちらに回していた小隊規模で組ませていたD・D精鋭部隊を他に任務に当てられ、より多くの任務を熟せるようになった。
任務を熟せば熟すだけ収入は増え、充実した戦果により依頼主はさらに依頼を寄越す。
情報収集に暗殺、破壊工作から警護、軍事教練などなど仕事は多岐に渡る。
中には戦闘区域になってしまった地域より動物保護を頼まれたりもして大忙しだ。
まさに猫の手も借りたいほどに。
その点もあってバットには多大な感謝をしている。
バットはスネークに並ぶ潜入・戦闘スキルを持つ者で、特筆すべきは一瞬で怪我を完治させれる治療技術と相手の心まで届かせる話術だろう。
いや、話術と言うよりその言葉に宿る力とでもいうべきか。
任務に赴けば兵士達をフルトン回収し、時間に余裕が有ればその場で説得して自軍に加える。
本当に恐ろしい男だ。
オセロットも言っていたが敵に回すと厄介な相手である。
現在スネークは任務に出ていない。
理由は筋肉が衰え切らないようにしていたとは言え十年間の昏睡状態から起きて早々の奇襲。義手に慣らしながらの長距離移動から単独での救出作戦。
休む間もなくこれだけのことをやったのだ。
精神的にも肉体的にも疲労は堪るだろうし、医療班からしたらちゃんとした検査をしたい所である。
スネークだけであったら経営状況的に軽い任務に行ってもらいながらだったかも知れないが、バットが任務を受けてくれるので多少余裕が生まれて検査兼休暇が与えられたのも良かった。
他にもバットには感謝すべき事が多い。
現在D・Dには“鉄仮面”と呼ばれる研究者が開発班に所属している。
真っ新な研究着にズボン、手には手袋を嵌めて肌の露出を無くし、顔はフルフェイスの面で隠している。
公には以前実験にて前身大火傷を負ってしまい、それを隠すためにそのような格好という発表をしたが事実は違う。
“鉄仮面”の正体はストレンジ・ラブ博士。
“ピースウォーカー計画”に参加し、その後はMSFで開発班に所属した仲間…。
しかしながらMSFを辞めた後は俺達を襲ったであろう連中に協力していた事から素性を隠す必要が出てきた為、不格好な鉄仮面で顔を隠す事になったのである。
声は鉄仮面に取り付けた変声機で変えているので性別すら不明という怪しい存在にはなっているが、それもバットのおかげで気になる程度で済まされている。
なにせバットこそ俺達を襲った武装集団に協力した者であるとまことしやかに噂されているのだから…。
共に闘った戦友でスネークの相棒。
彼を知る人物からすれば裏切りなどあり得ないと断言できるし、襲われる前よりバットは消息不明となっていたのだから協力らしい協力は出来なかった。
しかしながら“カリブの大虐殺”を体験したMSF隊員の怨嗟は深く、証拠の無い噂ではなく疑いのある噂であれば疑心が生まれるのも無理はない。
バットはメタルギアZEKEを有人機に改造して当時のMSFを脅迫したパスと共に海に落ちて行方不明になった後、彼女と同棲して過ごしていたという。
それもこの十年間の付き合いで結婚し、子供まで設けたと言うではないか。
自分達は地獄を味わっていたというのに敵と一緒に暮らして幸せを謳歌していたとなればあらぬ疑いも生まれる。
無論奴が“カリブの大虐殺”に手を貸していたというのはまことしやかに囁かれただけの嘘である。
なにせそれを流したのはバットに許可を取ったオセロットなのだから。
万が一にでも疑いが怪しい“鉄仮面”―――ストレンジラブ博士に掛かった場合、身を護る術の無い博士は最悪リンチに合う可能性がある。
それだけ受けた怨嗟の念は深いのだ。
目を他に向けさせる必要があり、オセロットは自分の身を護れて、疑う材料のあるバットにそれを頼んだ。
俺やエルザ達はこぞって反対したさ。
けどバット自身が「良いですよ」と気楽に二つ返事して、自らもパスとの生活を語ったりして広めるものだから俺達から言う事は無くなってしまった。
何にせよバットのおかげでD・Dは大きく進展する事が出来た。
経営状態の向上に人員確保での組織拡大。
ストレンジラブ博士の加入で開発班のレベルが上がるばかりか、本当に俺達を敵に売ったであろう容疑者の特定。
感謝すべき事は多くあるが、それはそれ、これはこれ言わんばかりに恨みもしている…。
「副指令。居住区の空きが―――」
「狼達が吠えて五月蠅いと苦情が―――」
「教官役が足りないと報告が―――」
「えぇええい!一遍に言うな!一人ずつ報告書を持ってこい!!」
執務室にてカズヒラ・ミラーは大声を上げる。
そうバットのおかげで急速な成長をしたD・Dは、その成長に伴った問題が山積みにされたのだ。
人員が増えると言う事はそれらが住まう居住区、食わすだけの糧食の確保、訓練する施設の配給する武器・弾薬の補充が急務となっているのだ。
さらにバットの奴は何故か“危険区域からの動物の保護”という任務を自ら受ける傾向にあり、保護した動物を置いて置く施設がすでに満杯となっている。
大きく黒字に転じた経営状態であるから新たな洋上プラントの建設に施設の拡充を行うだけの予算はある。しかし金を払えば次の瞬間に出来る訳もなく時間が必要。
だというのにバットは次々と動物を送って来るのだ。
報告書に目を通して狼二十頭とかどうすれば良いのだと頭を悩ませる。
バットの言葉には力がある為か、オセロットが調教しなくとも動物たちはバットの言う事だけは非常に素直に聞く。
が、いう事を聞くだけで居なかったら誰も止める事が出来ないと言う事。
遠吠えなどの騒音に動物同士の喧嘩による負傷、さらに彼らを食わせるだけの餌の確保などなど。
どうして傭兵組織で動物園が抱えるような悩みを抱かねばならぬのだ!?
誰かに面倒を見させようとしてもパイソンもチコもジョナサンも未熟な兵士達を鍛える教官として忙しく働いており、エルザは医療班を任せているだけに患者を診るだけでなく書類仕事もあり、オセロットはすでに調教で手一杯。
人や動物や物が増えてもそれを使えるようにする者が足りずに、人手不足という状況に陥ってしまった訳で、それらをすべて管理しているカズの仕事も自然と増える。
キリキリする胃をエルザより渡された胃薬で無理やり落ち着かせ、ガンガンと響く頭痛を無視して、山積みになった書類に目を通しては承認のハンコを押したり、理由を書いて却下したりと仕事に打ち込む。
そんな最中に無線機より声が聞こえた。
戦場に出ているバットからの支援要請が来た場合、すぐさま応答すべく執務室の無線機は何時でも付けているのだ。
救援物資かそれとも情報提供かと耳を傾ける。
『ワンちゃん拾いましたよミラーさん!』
「喧しいわこの馬鹿が!!」
その日、執務室にて何かを叩きつける音と共に無線機が一台駄目になるのであった…。
『むぅ、なんで怒るのかな?』
「―――胸に手を当てて考えてみるんだな」
スネークは無線より届いた何処か抜けた声にため息交じりに答えた。
検査期間兼休暇を終えたスネークは早速と言わんばかりに任務に出ていた。
カズの単独潜入での救出作戦以来の出撃だが、任務は立て込んでいて朝から現地であるカプール地方北方に入っていて、午前中に任務を一つ片づけたところだ。
任務内容はソ連正規軍の指揮官―――スペツナズ支隊長の暗殺。
調べたところによるとCIAが支援しているゲリラの殲滅を行っている人物で、即刻射殺を命じるほど疎ましい存在―――もとい有能な敵だと言う事。
殺すには勿体ないと判断した俺とバットは暗殺ではなく、味方に引き入れる事にしたのだ。無論依頼主には暗殺したという話で報告するつもりである。
その分、カズには負担を強いる事になるが…。
『ヴェノムさんは冷たいなぁ』
「…任務中だ」
『畏まりましたよ』
まったく40手前のおっさんが何をはしゃいでいるのやら…。
そう思いながら岩場に横たわって“パニッシュド=ヴェノム=スネーク”はスコープを覗き続ける。
伝説の英雄“BIG BOSS”は公式では死んだことになっている。
生きていたと知れ渡るより都合が良い為に、ネイキッド・スネークは死んだままにして俺は新たなコードネーム“パニッシュド=ヴェノム=スネーク”と“エイハブ”という偽名を与えられた。
しかしながら慣れからカズなどはスネークと呼ぶためにあまり意味がない気もするが、バットは律儀にも新たなコードネームから“ヴェノム”と呼んでくれるようだ。
そんなヴェノムとバットは本日二つ目の任務である同カプール地方北方にある東部通信所にて通信施設の破壊を行っている最中である。
この東部通信所というのは中々に地形を利用しており、二人をもってしても多少手を焼かされた。
先の任務でスペツナズ支隊長が居たカブール北方
対して今回の東部通信所は左右を高い岩壁に囲まれており、向かうには通信所に続く道路を進むしかなく防衛のために兵士と検問所が設けられ、周囲の高所には狙撃手が配備されたりと防衛能力は高い。
さらに通信所内は入り組んでいて隠れ場所は充分ながらも、敵の発見も難しいという点もあって正面突破は難しいと言うのは普通だ。
『にしても以前はスナイパーはいなかったんですけどね』
「どっかの誰かさんが暴れまくるから警戒強化されたんだろう」
本来であれば狙撃手どころか検問所も無かったはずなのだが、すべてはバットの頑張り過ぎのせいである。
カズより頼まれた任務をどんどんと熟し、カブール北方で猛威を振るったバットは“吸血鬼”という二つ名で恐れられているほどに集中的に作戦を行って来た。
二つ名を聞いて確かにと納得する所もある。
夜な夜な敵地へ黒いロングコートをマントのように靡かせ、血を吸って同族を増やすように言葉巧みに敵兵を引き込んでいく。
まるで有名な映画や物語に出て来る吸血鬼のようではないか。
その“吸血鬼”のおかげでカブール北方は警戒態勢が敷かれ、各拠点に戦力が増強されつつある。
東部通信所だって数日前に狙撃手こみで一個小隊が増員されたと聞く。
敵に回したら確かに厄介だが、味方にしたら厄介事をよく起こすんだからなこの蝙蝠は…。
何度目かのため息を漏らしているとここまでの道中で拾った子犬が転がっているスネークの背で丸まり始めた。
眠たいのか知らないが、戦場で重しに成る行為は止して欲しい。
…まぁ、すでに無力化しているから問題ないって言えばないが…。
確かに手は焼いたが所詮彼らの敵ではなかった。
銃を一発も使う事無く敵の背後や死角より襲い掛かっては意識を刈り取っていく作業。
人数と地形から時間は掛かったがアラートすら鳴らされず事を終えた。
今はもう任務である通信施設の破壊をバットが担当し、スネークは周辺の警戒に当たっている。
「それにしてもまだ掛かるのか?」
『あともう一か所ですかね。すぐ済みますよ』
「…その前にお客が来たようだな」
スコープに踏み鳴らされた道を進むジープが映り込む。
警戒強化していた為かジープを先頭にトラックが二台ほど追従している。
満載しているのであれば兵員もかなりのものだろう。
近づいている事もあってジープの運転者と片輪を撃ち抜いて横転させ、トラックと巻き込み事故をさせる事は可能だろう。
が、それでは全滅または全員の無力化は出来ず増援を呼ばれてしまう。
覗き込みながら指はトリガーではなく、近くに置いていたボタンを手に取る。
増援や巡回を気にして道には罠を仕掛けてある。
まずはセンサーによって起動するクレイモア地雷。
ゆっくりと進んでいるジープがセンサーに引っ掛かり、左右の道脇より数百もの小さな鉄球が爆発によって放たれ、ジープを傷つけ搭乗者を絶命させる。
突然先頭車がやられたことで急停止したトラックは、それように設置しておいたC4爆弾と遠隔操作に改造されたクレイモアを手元のボタンで起動させて吹き飛ばす。
無論跡形もないほど吹き飛ばす程の量は仕掛けていないし、そんな量は持ち歩いていない。
生き残った少ない敵兵にはサプレッサーを取り付けたソ連系7.62mm狙撃銃バンベトフにて狙撃していく。
「わふ!」
くぐもった発砲音に反応したのか背に乗っていた子犬が吠えた。
別段気にせずに敵兵を排除すると背後より複数の爆発音が響く。
「終わりましたよ」
「こっちもだ」
振り返れば通信施設の悉くより煙と火花が上がっていた。
作戦は終了した。
敵勢力は完全に排除したのですぐに敵が来る事は無い。
といっても時間が経てば怪しまれて送られるだろうが…。
葉巻を取り出して咥えながら火を付け、寝転がって凝り固まっていた身体を解しながら一服する。
「腕は落ちてないな」
「ヴェノムさんだって狙撃見事でしたよ」
「確か…お前さんは苦手…だったな」
薄っすらとした記憶から情報を引き出す。
十年間昏睡状態だった後遺症らしいがどうも記憶にも影響が出ているらしい。
日常生活に支障をきたす事は無いが、何処となく自身の記憶が他人事のように感じたり、一瞬靄に包まれたような感覚に陥るのだ。今だってカズと狙撃対決したのを薄っすらと思い出すのに手間取ってしまった。
「じゃあ、ボク帰るよ」
「あぁ、また頼む」
こめかみを指で抑えているとバットはそう言って去って行く。
一応マザーベースにバット用に一室設けているも、憎しみの対象を演じている為に襲われる不安が有り、バットは外に拠点を構えているらしい。
らしいと言うのもそこにチコもストレンジラブも行った事がなく、こちらにも場所を秘密にしているのだ。
だからと言って無理に調べようと言う事はせず、協力者としての今の関係を維持している。
“また”という言葉に反応して大きく頷きながら手を振り、バットは闇夜に溶け込むように消え去っていった…。
零と一のデジタルな世界を潜ってバット―――宮代 健斗は自宅へと帰還した。
先ほどまで握り締めていた銃の感覚を払うように手を振り、頬を叩いて気分を
頭に付けていた機器を外し、ベッドから立ち上がると隣室へと向かう。
以前は一人暮らし用の一室であったが、
稼ぎ的にも余裕もあったし、何よりこういった大きな家というのには憧れというものも抱いていた。
「ただいま帰ったよ」
「お帰りなさい」
扉を開けた先では赤ちゃん用のベッドに寄りかかっていたパスが居て、振り返ってニコリと笑みを浮かべる。
近づいて後ろから抱き締めながら二人してベッドへと視線を向ける。
小さい…本当に小さい赤子がきゃっきゃと笑い、とても儚く温かな手を必死に伸ばす。
その様子にふにゃりと頬を緩めて眺める。
「かぁいいねぇ」
「そればっか」
「妬いてるの?」
「まさか」
「ボクは妬いちゃうけどな。居ない間はパスちゃんを独り占めだもん」
「欲張りね。本当に」
「知らなかったの?」
「知ってるわ。とっくの昔から」
互いに互いを感じつつ、手を伸ばす赤子に指を近づける。
ぎゅっと弱々しくもしっかりと握られ、我が子の生を感じ取る。
幸せだなと再認識しつつ、国境なき軍隊の戦友たちを思うと胸が苦しくなる。
「向こうはどうだったの?」
「相も変わらずだよ。戦場でもマザーベースでもわちゃわちゃしてる」
「という事は迷惑かけているのね」
「さぁ、どうでしょうね」
全部お見通しと言わんばかりの言葉に苦笑が漏れる。
パスは下唇辺りを人差し指で押しながら微笑む。
「その仕草懐かしいね」
国境なき軍隊にて十代の女学生を演じていた頃は、煙草を堂々と吸えずに歯茎から吸収する嗅ぎ煙草を使用しており、慣れない為によく人差し指で位置を直していた。
それを目撃した兵士達はパスの可愛い仕草として認識していたが、まさか煙草の位置調整だとは夢にも思わなかっただろう。
今となっては隠す必要性が無いので普通に煙草を吸っていただけに本当に懐かしい。
「この子に煙草の煙は駄目でしょ」
「ごもっとも。これを機に禁煙にする?」
「冗談。だったら嗅ぎ煙草を使ったりしないわ」
「ボクはその仕草が見れるから大歓迎だから良いけどね」
「もう、お風呂入ってきたら」
「あー…そうしよっか」
結構長い時間
臭いと言われるのは堪えるし、何よりさっぱりしたいと風呂場に向かおうとパスから離れて歩き出す。
「そう言えば
真剣身を帯びた問いに健斗は少し悩み、小さく息を吐き出した。
乾いた笑みに悲壮感を漂わせて振り返る。
「言わない。誰も嫌われたくないでしょ?」
健斗の答えに「…そうね」とだけパスは呟く。
きっとあの事を口にする事は無い。
それだけボクは臆病になってしまっている。
もしも彼らに伝える時は別れの時ぐらいだろう…。
●ちょっとした一コマ:蝙蝠と山猫
この二人が出会ったのは戦場であった…。
肩を並べる友軍―――ではなく銃口を向けて殺し合う敵同士として。
一度目は唐突な出会い頭にSAAを抜く前に投げ飛ばされ、気絶している間に命を奪われずに銃だけ盗られた。
二度目はスネークとの決闘で出鼻を挫かれたり、口出しをしたり、手出ししようとした私の部下を抑えたり、周りでちょこちょこと動き回っていた。
三度目はザ・ボスやコブラ部隊に
四度目はグラーニンを救出しようとしたバットを追撃し、追い詰めた所でスネークより先に決着をつけようとしたが、バットの言葉に唆されて敵になった元友軍によって邪魔をされて撤退するしかなかった。
五度目はスネークとヴォルギンの一対一の戦いを互いに見守り、六度目はようやくバットとの決着をつける事が出来た。
そして月日は流れ、因縁のある二人は同じ組織に関わり、当然ながら顔を合わせる事になる。
狭い通路で二人は対峙し、まずバットが口火を切った…。
「えっと、どなたでしょう?」
冗談などではなくキョトンとしている表情から本気で言っている事が様子から察せられる。
まさかの発言に驚きと衝撃を隠しきれないオセロットはフラッとよろめく。
そこでふと気付いてしまった。
出会ってから二十年。
バットでさえ身長が伸び、幼さが強く残っていた印象も大分変わってしまっている。
なら自分はどうだ?
当時を振り返れば山猫部隊を率いていたとは言えまだ色々と戦士としては幼い部分が多かった。
幾つもの修羅場を乗り越えた今では雰囲気も変わり、髪型も短かったのが長髪だ。
さらに言えば声変わりもしている事も考えれば気付かなくても当然か…。
感情の揺らぎが収まり、余裕を持った笑みを浮かべる。
「まだ解らないか?」
奴ならば解るだろうとホルスターよりリボルバーを抜いて、大仰なリロードの動作を見せると間をおいて目を見開いて驚きを露わにした。
「まさかオセロット!?老けましたね」
「お互い様だろうそれは―――というかスネーク達を出迎えた際に会っているんだが」
「いやぁ、てっきり二人の知り合いだとばかり」
「ま、解らなくもないがな」
撃ち合った仲であったにも関わらず二人の間にあるのは敵対心でなく、旧友に出会ったかのような懐かしさだけであった。
クスリと笑いあった後、バットはポンっと手を叩いた。
「ここに居るって事は仲間になるんですか?」
「勿論だ。俺はスネーク
「あぁ…
何かを察したのかバットは一人納得した。
その反応からこちらも察して理解するもそれを口に出す事は無い。
基地内とは言え誰が聞いているか分からない。
例え仲間とてこの会話の意図を聞かれるのは非常に不味い。
「昨日の敵は今日の友。二十年前の敵は今や仲間という訳ですね」
「厄介な奴だっただけに活躍には期待している」
「こっちも心強いですよ本当に」
「そうか――――おっと、それ以上近づくな」
敵だった故にバットの能力の脅威を知っている。
だからこそその能力は非常に頼もしい。
これからを考えて握手の一つでも交わすべきかも知れないが、オセロットはバットの接近を拒む。
急に雰囲気が変わった事にバットは眉を潜める。
「俺の至近距離に来るな。下腹部が
あの痛みは気を失う程に強烈で、鮮烈な痛みの記憶は二十年経っても鮮明に蘇る。
左手を恥骨辺りに這わせて、いつでもガードできる体制を無意識に取ってしまう程に…。
事情を知っている者からすれば笑い処とも捕らえられるところだが、逆にバットはむっと頬を膨らませる。
「こっちだってあの時撃ち抜かれた傷口が疼くんですけど」
「嘘をつくな、嘘を。傷跡も残らず直せる化け物が」
「名医と言ってください」
不服そうに言うが決着をつけた際に撃ち抜いた個所ではなく、思いっきり反対を抑えている事からただ言い返したかっただけなのだろう。
肩を竦ませて鼻で嗤う。
それと少し遊び心が生まれてしまった。
「なら少し遊ぶとするか?」
ホルスターに手を伸ばしながら挑発する。
するとバットはロングコートよりホルスターに収めた銃を覗かせる。
今では型遅れとなってしまったSAA…。
俺から奪った銃を今も大事に持っていたのかと思うとなんとも言えない感情に襲われる。
「前みたいにはいきませんよ。リベンジさせてもらいます」
「それはどうかな。勝ち越し確定かな」
「言いましたね!?二連勝して敗北の味を噛み締めさせてやりますよ!!」
「面白い」
久々に血が滾る想いを抱きながらオセロットはバットと共に射撃訓練場に向かう。
その後、訓練場を借り切って何十、何百と撃ち合いをして至る所に弾痕を残した二人はスネーク、カズ、パイソンの三人にこってりと叱られるのであった…。