日曜日には投稿したかったぁ…。
今週中にもう一話いけるかなぁ…。
ダイヤモンド・ドックズ
任務自体は東側から科学者を亡命させること。
これだけだと別段他の任務と変わらぬように思えるが、その科学者というのが
国境なき軍隊の拠点であるマザーベースが武装勢力に襲われ、多くの同胞・戦友が抵抗らしい抵抗も出来ずに死んでいった“カリブの大虐殺”…。
あの一団がマザーベースに入る際に語ったのは国連からの核査察団。
世界に認められるためと核査察を受けようと言い出し、強引に話を進めて行ったのは他でもないヒューイだ。
当日印象を良くしようと警備の武装解除させたのも同じく…。
さらには襲撃の際には武装勢力と共にマザーベースを無傷で脱出していたなどの状況証拠に、鉄仮面と正体を偽っているストレンジラブ博士の証言からも奴は敵と繋がっていたと思われる。
もはや黒と疑わない訳がない。
あれだけの惨事を引き起こした、引き起こした者の片棒を担いだ裏切者を許せるわけがない。
しかもこともあろうに今もまだ奴は武装勢力―――サイファーに加担しているらしい。
今まで受けて来た任務の中に“ハニービー”という兵器を回収する任務があった。
回収して撤退する前に起こったスネークにとっては二度目となる“
バットも参戦して撃退・撤退することに成功したが、スカルズが現れる直前にスネークはおかしな体験をした。
濃い霧によって視界が利かない状態でスネークはガスマスクをした赤毛の少年に出会う。
戦場に子供と言うと少年兵を想像するだろうがそうではない。
少年は武装を持たずに空中を浮遊していたのだ。
エルザと同じ超能力者かと警戒するも、スネークは行動を移す前に巨大な手に捕まれてしまった。
手はとても大きく、掴むだけでスネークの身体を覆ってしまったほど。
そしてその直後に現れた男が一人…。
チェスターコートにスーツ、テンガロンハットに手袋にブーツと身につけている物すべてが黒尽くしで、顔は白く焼け爛れた異形な存在…。
「貴様も酷い姿だな。“鬼”になったのはそんな兵器の為か?」
余裕シャクシャクと濃霧の中より現れたそいつ―――“スカルフェイス”。
不気味な雰囲気を纏いしそいつはスネークに告げた。
「まぁ、良い。いずれ貴様らも真相に辿り着くだろう―――生きて帰れたらな」
その後はスカルフェイスは巨大な手に乗って濃霧の中に消えて行き、現れたスカルズに襲われながら濃霧で見失ってしまったバットと合流して闘った。
スネークははっきりとシルエットを目撃した。
巨大な手の持ち主である巨大な人影を…。
巨大ロボット兵器などSFの話だと普通なら片付けるところであるが、メタルギアを知っているためにそうだとは言い切れない。寧ろメタルギアを開発した技術者があのスカルフェイスに付いているのではと思うだろう。
となれば真っ先に疑うのはヒューイの存在であろう。
という訳でスネークはヒューイの亡命を引き受ける形でマザーベースに回収してくれとカズより頼まれ、バットと共に情報に合った地点に向かっている。
依頼者も情報提供者もヒューイとの事なので、向こうが嫌になったのか、それとも罠なのかは解らない。
気を引き締めてかからねば。
「けど引き締めすぎでしたね」
「…五月蠅い」
「雪山でも登るんですか?それとも配達業でも始めました?」
「…黙ってろ」
肩を震わしながら笑いを堪えながら煽って来るバットにスネークはムッとしながら答える。
正体は不明だがメタルギアと思われる巨大兵器の姿がちらつき、それとヒューイが居るとなればそれなりの重要性からスカルズもいるかも知れない。
どちらも小火器程度では心もとないので、ガチガチに武装を固めて訪れたのだ。
ミサイル兵器にグレネードランチャー、軽機関銃などなど。
高火力の武装を揃え、弾薬も所持するとなると重さもあるが量が凄い事になる。
対メタルギア・対スカルズ戦闘を視野に入れたスネークは強度を高めたリュックサックに詰めるだけ詰めて進軍を開始。
逆にバットはいつも通りの軽装で先行して敵の排除に努める。
そもそもそれだけの武装を持ち運んでいるので速力は低下し、移動も戦闘も不向きとなってしまっている。
ヘリより降りてからの移動も徒歩は難しく、D・ホースに乗るにしても重すぎの為、仕方なくバットが相棒のビィを貸してくれてここまで来た。
場所はアフガニスタンのカプール北方にあるセラク発電所。
説明は受けていたが結構立派な発電施設で、必要な施設が立ち並んでいる為に遮蔽物も十分。
発電施設とその奥にあると情報を貰った施設を護るべく、警備の数もかなりのものだ。
悪いと思ったがそれらをバットに任せ、俺は後にあるであろうメタルギア戦・スカルズ戦ではその分活躍しようと思っていたのに…。
セラク発電所をバットが制圧し、北側にあるゲートを通り岩場に偽装された基地に足を踏み入れると、だだっ広い内部には機器が並んで、最奥にはメタルギアが鎮座していた。
警備の数も尋常ではないので二人して潜んでいると口論する声が響いて来た。
内容は聞き辛いが作業経過が思いのほか上手く行っていなかった報告から、どうもこちらに情報を流した事がバレたようだ。
声からしてヒューイとスカルフェイスらしい。
最終的にヒューイは階段から突き落とされ、見た事の無い兵器に回収されていった。
見た感じ武装は無く、胴体後方に人が立ち乗りする形で搭乗する人の身長ほどの二足歩行兵器。
武装はないが右腕が取り付けられており、ヒューイをひょいと摘まんで持ち上げるとそのまま連れ去ってしまった。
スカルフェイスもこちらに気付く事無く、護衛の部隊を連れて去って行き、メタルギアはさらに奥へと収納されていった…。
つまりメタルギア戦もスカルズ戦も発生せず、ここまでスネークはまったく活躍の無いお荷物と成り果ててしまった訳だ。
バットに文句を言われるのも致し方ないと思いながらも、はっきり言われると少しばかり気に障る。
「まぁまぁ、そう言う時もありますよ」
「任務中だ。さっさとベースキャンプに向かうぞ」
基地内の奥側はスカルフェイスが立ち去ると同時に閉鎖。
残った区画の兵士を無力化し、端末や資料を漁ってヒューイが連れ去られたベースキャンプの位置を得た二人は来た道も戻ってヘリを呼ぶ。
ついでに不貞腐れ気味に別途装備をマザーベースに注文し、ヘリの中で武装をアサルトライフルなどに変更する。
「宅配便みたく送れれば良いんですけどね」
バットがぽつりと漏らした言葉に首を傾げた。
すでに武装一式を戦地に運ぶように出来るシステムはあり、それをクワイエット戦で使ったバットが知らない筈がない。
きょとんとする俺はそのまま問いかけると笑いながら答えてくれた。
「違いますよ。武器ではなくて僕達を…です。輸送物資に紛れれば簡単に潜入できるじゃないですか」
「確かにそうだろうけど…」
「あとでカズさんに言ってみようかな?」
「…言うだけなら良いだろう」
そんな会話をしていると資料にあったベースキャンプ近辺の着陸地点に到達し、ヘリより降りた二人は再び潜入しようと動き出す。
さすがベースキャンプというだけあって施設は広く警備は厳重であった。
自然の岩場を利用して進入路は一本道となっていて、そこを抜けると見張りが詰める小屋に周囲を警戒する兵士達が巡回をしている。
巨体のビィは待機させて、DDの嗅覚を頼りに敵の位置を知り、乱立する施設に置かれたコンテナや兵器群を遮蔽物に兵士に気取られぬように奥へ奥へと突き進む……筈だった。
「いやぁっほう!」
盛大な叫び声に頭痛を覚えながらスネークはアサルトライフルのトリガーを引く。
入り口の検問を迂回してやり過ごそうと考えていたのだけど、バットは興奮隠せぬ状態で火蓋を堂々と切ってしまったのだ。
小屋に身を隠しながら援護射撃に徹し、敵襲の警報を聞きつけた敵兵士を的確に撃ち抜いていく。
「お前は少し落ち着きを覚えろ!」
「だって格好いいでしょうコレ!!」
「格好だけで戦争をするな。良い大人だろうが」
「アドバンテージは無かろうと大事な事ですよ」
「にしても無茶苦茶だろう」
「派手に暴れられたおかげでさっきまで不貞腐れていたのは晴れたでしょ?」
「ストレス解消で先陣を切ったのか!?」
「いえ、これが欲しくてつい」
バットが戦端を切った理由は巡回していた兵士が搭乗していた兵器を見たからだ。
先ほどはヒューイを巻き込む可能性があった為に我慢したらしいが、もはや我慢の限界だったのだとか。
メタルギアを模して作ったのであろう小型の二足歩行兵器。
名前をなんていうのかは知らないが、ロボット好きのバットには堪らなく、目撃した瞬間には「行きます!」と叫んで吶喊していた。まさか正面切って突っ込んで来る阿呆が居るとも思っていなかった敵は驚いた事だろう。
しかもSAAの早撃ちにて搭乗者一人と小屋に居た見張りが即座に撃たれ、二足歩行兵器は二機で行動していた為に、ガトリングガンを装備していたもう一機が射撃するも、弾丸の軌道を見切ったバットは当たることなく駆け抜け、あっという間にもう一人を投げ飛ばして兵器を奪取してしまう。
思わない戦端が開かれた事に慌てはするも、こういう状況にもはや慣れ始めていた俺としては問題なかった。
無論愚痴の一つや二つは言わせてもらうがな。
こうしてスネークはバットに注意を向ける敵兵を撃ち、バットは満足げに二足歩行兵器を操ってはガトリングガンをぶっ放す。
が、機動力はそこまで高くないので被弾はしてしまっていて、蓄積したダメージは兵器に深刻な損傷を負わせていく。
「バット!火が出てるぞ!!援護している内に」
「了解。ビィ!!」
呼ばれたビィは元々通る筈だった迂回ルートで敵側面に現れ、バットそして次点俺に注意していた敵兵は側面から伏兵――否、大きなヒグマが現れるとは想像も出来なかっただろう。
突然の出来事に呆然する敵兵はビィのひと撫でで地面に横たわった。
それを目の前で目撃して呆然より覚めた敵兵は銃口を向けるよりも恐怖と驚愕から慌てふためく。
中には銃口を向けようとする者もいたが、そちらにはDDが喉元に喰らい付いては倒していき、足の速さから惑わしてはビィが巨腕を振るう。
正直DDとビィの攻勢は奇襲によるものが大きく、落ち着いて対応されれば戦闘継続は不可能である。
なのでそのまま戦わせることはさせず、もう一機の二足歩行兵器に乗り込んだバットは、敵集団に対して四連装対戦車ミサイルを放って下がらせる援護を行う。
爆発音に銃声、獣たちの咆哮が五月蠅いほど響いていた入り口周辺は、徐々に静けさを取り戻して静けさと二人と一頭と一匹だけとなる。
「終わりましたね」
「色んな意味でな」
弾切れになったがまだ動く二足歩行兵器にフルトン回収システムを取り付けながら、満足そうに笑みを浮かべたバットにスネークは呆れ顔を向けた。
なにせここまでド派手に動いたのなら当然応援は呼ばれているだろう。
いくら強いと言っても人海戦術を取られれば弾切れも起こし、体力切れにも陥って敗北するのは確実。
だから急ぎヒューイを捜索しつつ、フルトンもしくはヘリで回収し、ここから離脱しなければならない。
早速動こうとバットはDDと、俺はビィと行動を共にする。
何故この組み合わせなのかというとどちらにも索敵能力持ちを入れ、二手に分かれて広範囲を捜索する為である。
言わずもがなだがDDはその高い嗅覚。
俺には義手に
二手に分かれて捜索していると一棟の巨大施設に行きつき、入り口付近にてお互いに合流を果たすと警戒しつつ、内部へと足を踏み入れる。
中は機器が雑に並べられており、電灯が付いている割には薄暗い。
拳銃を構えながら警戒しつつ進むと、聞き覚えのある声が出迎えた…。
「―――誰?」
二人共聞き覚えのある声に目を見開き振り返ると見覚えのある筒状の機器が置いてあり、それが声の発生源だと理解する。
“ピースウォーカー計画”にてストレンジラブ博士がザ・ボスを再現すべく開発したAIポット…。けれど作り上げたポッドは戦闘により破損した上に
「スネーク?……
「それはただの
ザ・ボスを模したAIポッドの音声に続き、目的のエメリッヒ博士の声に反応して振り返る。
そこでは並ぶパソコンの前で空気椅子しているヒューイが居た。
いや、違う…。
そもそも足が不自由で自作の車椅子で移動していたヒューイが、立っている時点で可笑しいのだ。
よく観察するとヒューイの脚に動きを補助する機器を装備しており、それによって座っている状態で身体を維持しているらしい。相変わらず技術力は素晴らしく高い。
が、それ以上に心にあるのは“カリブの大虐殺”から培われた恨み辛みばかりだ。
「久しぶりだねバット。それに…スネーク…かい?」
顔を見ながら戸惑うヒューイ。
本人であると判断して閉まった銃の代わりにナイフを手にして、立たせている機械のコードを切る。
突然の事に慌てる間も与えずに、真っ黒のビニール袋で顔を覆って担ぐ。
「どうしてだスネーク!?僕の
「ちょっと荒っぽすぎますよ」
『よくやったスネーク…。ヘリを向かわせたから回収地点に向かってくれ』
「了解した。回収地点に向かう…行くぞバット」
「ちょっと待ってくれ!ここには僕が作った特別な
『いらん。奴の作った兵器など…』
「え!?すでに送っちゃったんですけど」
『ミラー。一台送られたなら二台あっても変わりない。それに道のりも長いだろう』
『エメリッヒは信用出来ん。ヘボ科学者のポンコツが何の役に立つ?それよりビィに乗せればいいだろう』
「さすがに大人三人は乗り切れませんよ」
『決まりだな。そのウォーカーギアとやらで脱出してくれ』
オセロットにそう言われて先ほどバットが搭乗していた二足歩行兵器とは色と装備が違う“ウォーカーギア”へと向かい、ヒューイを担いでいないバットが操作するも起動してあったものを動かしただけであって、起動の仕方を知らない為にヒューイにやらせることに。
ウォーカーギアの前に立たせて袋を外すと、息苦しかったのもあって深呼吸して空気を取り込んでから手際よく起動させた。
そうすればもう仕事は済ませたと言わんばかりに袋を被せて荒く退かせる。
搭乗すると武装の代わりに取り付けられていたアームでヒューイを抱え、外に出たバットはビィに跨って回収地点へと向かう。
敵兵は片付け、援軍もまだ到着していなかった為、ヘリへ向かう道中に妨害者の存在は無く、着陸地点に到着した二人はヘリが降りる前にビィとDDをフルトンにて一足先に帰投させる。
後はゆっくりと降りて来るヘリを待つばかり。
そうすれば誰もが知りたがっている“カリブの大虐殺”の真相をエメリッヒに吐かせるだけ。
カズも首を長くして待っている事だろうしな。
そう思いながらヘリを見上げているとナニカが突如として降って来た。
衝撃で大きく土煙が立ち、風圧で降りようとしていたヘリはふら付き上昇する。
二人して目を細めて警戒していると、煙の中から二足歩行で大地に立ち、巨大な人型の兵器がそこに居た。
そしてやたらと袖の長いコートにガスマスクをつけた赤毛の子供が宙を舞い、巨大な人型兵器の掌にはスカルフェイスが立って見下ろしている。
「サヘラントロプス!?なんで…どうして!?動くはずがない!!」
驚きを隠せないヒューイの言葉で、その巨人がソ連製メタルギアである事を理解するも、対策として持ち込んだ武装はヘリに預けたまま。
後悔が過るもそれよりこの状況をどう切り抜けるかの方が大事だ。
「博士。やはり貴様は役立たずだ。見ろ、サヘラントロプスはこの通り動いている!」
「そいつらをおびき寄せる餌の役目も終えたお前に用はない!お前はそこの男、そして
大仰に手振り身振りしながらサヘラントロプスを見上げながら語ったスカルフェイス。
言葉の強弱や動きからして興奮している様が見て取れる。
しかしながらそんな悠長なやり取りをバットが黙って見ている訳もなく、高らかに言い放ったスカルフェイスが振り返って見下ろすとすでにそこにスネークにバット、ヒューイの姿はなくてきょろきょろと見渡す。
そんなスカルフェイスを他所にスネーク達はすぐ側のトラックに背を預けて隠れていた。
「どうするんだよ!?
「武装は小火器で相手は鉄の塊。加えて言うと
「逃げますか?」
「だな。ヘリの着陸場所を変えて撤収しよう」
「では僕が囮役をしますんで博士を連れて一足先に行ってください」
「大丈夫か?」
「問題ないですよ。一人なら切り抜けられますから」
ちらりと覗き込むとスカルフェイスが掌より奴の迎えのヘリに移るところだった。
今だと言わんばかりにバットは駆け出してベースキャンプの方へと駆け出して行き、気付いたガスマスクの子供が腕を向けると、スカルフェイスをヘリに移したサヘラントロプスが動き出す。
バランスを崩すことなく巨体が重くも確実に歩行して後を追い、頭部に取り付けられた機銃を乱射する。
当たらないように駆け抜け、サヘラントロプスを引き付けるバットを見送り、スネークは着陸場所を変更してヒューイを抱えて移動を開始する。
「ちょっとスネーク!バットを見捨てるのか!?」
「アイツなら大丈夫だ」
一応岩や段差を利用して身を隠しながら進み、距離を離れた位置に着地したヘリに乗り込む。
その際にヒューイを投げ飛ばすように乗り込ませ、本人は痛みと雑な扱い方に文句を言おうとするも、外れていた袋を被せて黙らして席に座らせる。
パイロットがバットの事を気にかけるが、ヘリが降りた事に気付いたサヘラントロプスが歩み寄ってきたので、急いで離陸させながら自身は機銃のトリガーを握って狙いを付けた。
離陸して上昇する最中にフルトン回収システムにて空へと舞い上がるのが見え、サヘラントロプスを見下ろす程に高度を取れたことで安堵するのも束の間、巨体に似合わぬまさかの跳躍を披露してきたのだ。
驚くべき性能だが構っていられるほど余裕はない。
跳躍しながら手を伸ばしてくるサヘラントロプスにガトリングガンの銃弾をケチることなく浴びせる。
頭部に集中して撃ち続けられる弾丸のダメージにより頭部にて表面的に爆発が起き、衝撃と反動で体勢を崩したまま地面へと落ちていく。
あれで壊れたとは思えないがひとまず安心だろう。
大きく息をつきながらスネークは、トリガーより手を放して座席にドカリと腰を下ろす。
精神的な疲労もあって全体重を預けてホッとしていると、先の奴の言葉を思い返して脳裏に引っ掛かった。
お前はそこの男、そして
スカルフェイスはバットを見下ろし、バット本人だと断言した。
つまりバットはスカルフェイスと面識がある…?
そんなまさかなと浮かんだ疑問を疲れから発生した溜め息に混ぜて吐き出すのだった…。
●ちょっとした一コマ;裁判
「これより簡易裁判を開始する!」
カズヒラ・ミラーの宣言にその場に集まった者らは気を引き締める。
ダイヤモンド・ドッグスも人が増え、色々と接したり過ごしていると色々と問題が発生するものである。
それらの中には個々人で解決するには難しい事案も存在するだろう。
なので本日はある人物の問題解決を図るべく、簡易裁判という形で第三者が介入して解決する場を設けたのだ。
集まったのはスネークにカズ、オセロットにパイソン、チコにエルザ、事情を知っている面子で密室という事で鉄仮面を外したストレンジラブ博士。そして今回の裁判の被告人たる人物…。
「では被告人、言い残す事はあるか?」
「まだ罪状も言われてないのに有罪確定ですか!?」
長くなるかなという事で杖ではなく車椅子に座り、裁判長を務めるカズの一言に中央にてぐるぐる巻きに縛られている被告人バットが突っ込みを入れる。
戦闘能力、潜入技術、敵兵の取り込みなど多彩な能力に秀でて、ダイヤモンド・ドッグスを支える大きな支柱であるも、性格は子供っぽくて何かしらやらかすので、頼りになるも不安が残る人物である。
ゆえにバットは色々問題を発生させる。
「それに僕なにも悪い事してないですよ」
「狼二十頭の調教を頼んできた件に非は無いと?」
「なにそれ…群れのリーダーにでもなるの」
「山猫が狼のボスって…」
早速とばかりにオセロットが放った言葉に、チコとカズが顔を顰める。
受けた依頼には戦闘区域より動物保護というものもあり、バットは依頼と個人的に保護に努めて来た。
おかげで動物を保護するプラントは手狭になって拡張。
数も種類も増えて来たので餌代も馬鹿にはならない。
その中でも狼の数は非常に多い。
バット曰く格好良くて可愛いからだとか…。
たまに狼の群れにダイブして戯れている姿が目撃されるほど好きらしい。
そんなバットはオセロットに訓練されたDDの活躍を見て思ったらしい。
数が増えれば索敵も敵の注意を引くのにも、攻撃としても良いのではと…
「で、オセロットに群れの調教を頼んだのか」
「頼むにしてもいきなり群れと共に突っ込んで来たんだ。悪気が無かろうと勘弁してほしい」
「災難だったな」
「災難というなら私にもあるのだけど」
オセロットに同情が向く中、エルザまでも口を開いた。
彼女が不平不満に思っているのはバットが語る惚気話であった。
子供が可愛いだとか、パスが愛らしいとかの自慢話。
一度や二度なら良いのだが、中には些細な付けたしがされただけの同じ話を繰り返され、正直飽き飽きしている。
被害者も徐々に増えつつあり、ここらで歯止めを掛けねばならない。
「だって二人共可愛くって可愛くってぇ!?」
「幸せなのは解かったから―――ね?」
「は、はい…」
ニヘラと崩れた笑みをするバットをエルザは逆さまに浮かし、表情は笑っているが冷たい瞳で見つめる。
対して抗議する事もなく、耐え切れずに目を逸らしながら了承の返事をするのであった。
オセロットが先陣を切り、エルザが追撃した事で言い易い環境が出来上がる。
集まりには一応参加したが黙っておこうかと思っていたパイソンまで口を開いた。
「俺の液体窒素でアイスクリーム作るの止めてくれ」
「本当に何してるんだ」
「だって液体窒素で作ると時短になるし、口当たりも凄く良いんだよ!!」
「熱弁すな。というか最近消費量が増えたのってそれが原因か!!」
「確かに美味かったな」
「お前も食べたのか…」
「私も食べたわ」
「俺も…」
「お前らなぁ。パイソン用に仕入れたもんなんだぞ…ストレンジラブ博士は何かないのか?」
「無茶ぶりが過ぎる事だな。熊用の武装にレールガンとか頼まれた」
「本当に何してんだお前は」
問題が色々と出て来てカズは頭痛を覚えて頭を軽く押さえる。
当の本人は悪びれた様子も無いので質が悪い。
さてどうしたものかと発言してなかったスネークへと視線を向ける。
葉巻を吹かしながら少し悩んでから言葉を発した。
「飯を全部バットのに―――」
「それは要望だろう」
「なら別にないな」
「戦場を共に行くのならいっぱいあるだろう」
「上げればきりがない上にもう慣れた」
「そっか…ならチコは何かないのか?」
「ないですよね!ね?」
助けを求めるようにうるうると瞳を潤ませながら振り向くと、チコは少し悩んで小さく声を漏らした。
「射撃訓練したいのは解かるけど、勝手にクワイエット連れ出すの止めようよ。監視の兵士が困っていたよ」
「「「有罪」」」
「早っ!?弁明の機会を!」
「いらないだろう」
「いらないな」
「いらないでしょう」
「即答!?」
一応カズ以外の全員が一つずつ挙げたところで有罪が確定したので、罰を執行しようとカズが車椅子の裏に隠していたアイテムへと手を伸ばす。
「テレレレッテレ~、
濁声でカズが二本の棒を取り出す。
発生した電解が、全身の上行性神経路を直接刺激して擽る、というストレンジラブ博士制作の尋問武器らしい。
説明を聞きながらそっちもなに作ってんだと思ったバットは間違ってないだろう。
その二本の電磁くすぐり棒をすり合わせながら、悪そうな笑みを浮かべて寄って来る。
「さぁ、刑を執行しようか」
「ちょっとなんで楽しそうなんですか!?」
クツクツと笑いながら寄って来るカズに狂気染みたものを感じたバットはじたばたと暴れるも、エルザの能力によって浮かされているのでただただ暴れるだけで意味は無かった。
ゆっくりと車椅子で接近するカズはニタリと嗤う。
「国境なき軍隊の頃から多くの女性陣にちやほやされやがって―――――ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」
「妬みじゃないですか!ってか僕は玩具にされてただけで非は無いでしょうが!!」
「妬みですが何か!?」
理不尽極まる言葉に一人を除く全員が絶句する。
けどカズの妬みはさておき、罪は罪なので誰も庇う事もせずに見守ろうとする。
その状況にただやられるのは嫌だったバットは刑から逃れるべく一つだけ言い返す。
「前に頼まれたハンバーガー作りませんよ!」
「ちょっ!?おまっ…」
「ハンバーガー作りって何の事だ?」
バットの発言に焦るカズに何かあると思ったオセロットはジト目を向ける。
冷や汗をダラダラ流しながらバットの口を抑えようとするカズを、バットを自由にしたエルザが浮かして拘束した。
そのままバットにより語られたのはカズが個人でハンバーガー屋を経営し始めたので、その商品開発を手伝ってほしいというもの。
言葉の意図としては非がないのに裁くのなら手伝わないと素直に告げただけだが、これは一瞬で起死回生を成す結果となった。
「そう言えば予算計画に不明な点があったなぁ…ミラー?」
「いや、それについてはまた後程弁明をだな」
「その必要はないだろう。先に済ませようか。ボスはどう思う?」
「組織運営にも関わる問題だな。優先度は高い」
「だ、そうだ」
全員の視線を浴びて滝のように冷や汗を流すカズヒラ・ミラー。
くすぐり棒の行先がバットからカズに変わるのに時間は掛からなかったのである…。