アウターヘブンのビル1は物資搬入を行う出入口である事から、人やトラックの出入りが頻繁な為に
無論だが中の警備は熟練の兵士に集まった傭兵が行っている為にレベルが高い。
扉は専用の電子ロックが用いられているので、例え内部に入ったとしても並みの工作員では進むことは難しいだろう。
さらに奥に進むにつれて警備の質もレベルも上がり、ビル2へ行くためには難問を突破せねばならない。
大多数の歩兵が持つ重火器を物ともしない装甲。
一撃で人は当然のように装甲車すらも撃破し切る攻撃力。
悪路であろうと走破する強靭なキャタピラ。
それ相応の装備と環境と重火器でも無ければ歩兵で勝つのは非常に難しい陸上兵器―――“戦車”。
潜入・工作を任務とするスネークも狙撃兵であるバットも装甲を貫ける装備は携帯していない。
武装的に劣っているというのに状況まで向こうに味方している。
ビル1は密林に囲まれているがビル2は堅固で巨大な壁に囲まれ、一か所だけ空いている出入り口はその戦車が塞いでいる。
避けたい相手であるが戦い突破しなければならない。
隠れてちまちまと攻撃したくとも周囲は荒野で隠れるところなど壁で生まれた死角ぐらいだ。
付け加えると戦車は絶対に入り口から離れる事は無い。
「足止めは任せますよ」
「そっちこそしくじるな」
「
失意に陥っていた状態から復帰したのは良い事だと思うが、逆に怖いぐらいの集中し切っているのは少し不安にも思う。
だけど現状を打破出来る可能性があるのならやるべきだろう。
互いに得物を手にして戦車の死角となっている左右の壁に潜む。
戦いの火蓋はバットのグロッグの銃声から始まった。
壁より飛び出して放たれた弾丸は装甲に易々と弾かれる。
機銃が攻撃してきたバットに狙いを定めて激しい銃撃が行われ、咄嗟に死角に入って身を護るも銃撃が止むと再び
完全に戦車の
無論自爆覚悟ではない。
機銃の銃口が蝙蝠から蛇に移る前に戦車の足元に地雷を設置。
滑らせるように三つ設置すると即座に踵を返して壁の裏へと飛び込む。
戦車は車体の形状による死角で足元が見えず、スネークに機銃と砲身を向けながら
キャタピラが地雷を踏み鳴らして、もろに爆発を受けて爆発を見舞われた。
戦車は
しかし銃撃や砲撃を受けない下方の装甲を厚くする事はまず無い。
それゆえに地に埋めて下より強力な爆発でダメージを負わす地雷は戦車に有効である。
さすがに大破させる事は叶わなかったが、確実に履帯にはダメージを負わせただろう。
だが動けなくなったとしても出入り口を塞ぐのが戦車から砲台に変わっただけ…。
自走砲でもあれば楽に撃破できるようになったが、都合よく自走砲を敵地で調達出来るなんて美味い話は無い。
爆発による煙が晴れ、戦車に乗り込んでいた搭乗員は驚いただろう。
最初にグロッグで攻撃していたバットが離れていたとは言え戦車の正面に立ち、モシン・ナガンを構えていたのだ。
驚いたといっても
半分馬鹿にしながら砲身と機銃が向き―――――戦車は一発の銃声が響き渡ると同時に火炎を拭いて内部より爆発を起こした。
「まさかやって見せるとはな…」
「言ったでしょ。一発あれば十分だって」
バットは見事
狙撃手としては然程の距離ではなかったとは言え、砲身に弾丸を通して装填してあった砲弾に直撃させたのだ。
小柄な体格にモシン・ナガン、さらに戦車を狙撃で倒すなどまさに…。
「“白い死神”だな」
思っていた事がつい口から洩れ、クスリと笑みを浮かべていると無線が届く。
『この先で検問をしている。入るには奴らに紛れる必要がある』
「了解」
無線を受けて制服を取り出す。
拾っておいて良かった。
敵兵の制服に着替えると、バットにダンボールを渡す。
「これをどうしろと?」
「どうしろって被る以外何がある?」
制服は大人用。
他の兵士から奪ったとしても少年向けのサイズは無い。
バットがビル2に潜入するには制服以外の手段で入るしかないのだ。
仕方なさそうに被るバット…。
ダンボール初心者であろうバットに動き方を簡単にレクチャーし、見た目的にはダンボールより足が生えた生物が出来上がった。
ビル2入り口では兵士が三人周囲を警戒しており、会話から侵入者の事は伝わっているらしい。
制服姿のスネークが近づくと視線を自ずと集まる。
その隙にダンボールを被ったバットが回り込むようにビル2の壁沿いに近づく。
身分証明をされる訳でなく、制服で味方と判断されたのかすぐに「良し、通れ」と言われ、閉まっていた扉を遠隔で開かれる。
開いてもスネークに視線を向けているので、バットが音を立てないように入って行くのを確認して、スネーク自身も堂々とビル2に入って行く。
入ると扉が閉まり、先に入っていたバットがダンボールを畳みながら神妙な顔をして待っていた。
「凄いなダンボール…」
「言ったろ?潜入の必需品だと」
フンっと誇らしげに鼻を鳴らし、丁寧に畳んだダンボールを受け取って、着替え直した制服と一緒に仕舞う。
ビル2はビル1と違って戦車などの兵器置き場にはなっていないが水路が通っていた。
周囲を兵士が警備しているがさすがに水路には誰も居ない。
二人して水路を進んで見つからないように先の電子ロックされた扉を開けて中に入る。
狭く長い道の先には一台の重機がエンジンを吹かしながら待ち構えていた。
「ブルドーザー!?」
「これ解ってて通されたんじゃないか…」
先ほど使ったばかりの地雷を滑らすように設置し、手にしていた銃を撃つも頑丈なバケットによりどちらも防ぎつつ突っ込んで来る。
正面からは有効なダメージは負わせない。
回り込もうとも通路の幅は重機が一台通れるだけしかなく、避ける事すら出来はしない。
前も横も駄目なのなら上しかないだろう。
グレネードランチャーを取り出してバケットに当たらないように放物線を描かせてグレネードを降り注ぐ
元々兵器ではなく、一応追加装甲しているだろうけど簡易的なものだったらしい。
耐え切れずにダメージを負ってキャタピラが止まって爆発して動かなくなった。
「ちょっとさすがにいきなりこれは…あれ?」
「繋がらない?妨害電波か…」
無線を繋ごうとしたが誰にも繋がらず、ブルドーザーの仕掛けや情報が洩れている事からそういう対策をしていてもおかしくは無い。
罠を考慮しつつも撤退は出来ず、考えたうえでどうにかこうにか成さねばならぬ。
「何処だと思います?」
「上か…下か…」
「手あたり次第探すしかなさそうですね」
「そうだな」
面倒臭い言いたげな表情を浮かべるバットに同意はするが、妨害電波を止めるか妨害電波を回避する機器を探すしかない。
警戒しながら一階を探索しているとどうも様子がおかしい。
ビル内の話ではなくてバットがだ。
何というか気が逸れている…いや、言いたげな感じか。
警戒を怠っていないのは良いのだが、そちらの方が面倒だ。
ため息を零して視線を向ける。
「なんだ?さっきから気が散っているようだが…」
「あー…いえ、なんでもないです」
「何でもない事ないだろ?正直に言うがこれはお前の為に聞いているんじゃない。お前の集中力が散漫になってミスをされると俺が死ぬ。解るか?」
「…はい」
「だったら言ってみろ」
「さっきの白い死神って何ですか?」
何を気にしているのかと思ったらその事か。
と、いうか聞こえていたんだな。
“白い死神”というのはフィンランドとソ連の間で起きた“冬戦争”で活躍した有名スナイパーで、身長160センチの彼が愛用したのは120センチのモシン・ナガン。
彼は32名の仲間と共に真冬のコッラー川を挟んで4000ものソ連兵と対峙し、500以上という戦果を挙げて猛攻を防いで見事防衛を果たした。
軽く説明してやると驚いたように目を見開いて、興味津々と言った様子で聴き入る。
「狙撃手としては気になるか?」
「そりゃあそうですね。けどクワイエットさんも同じ事を言われて気になっていたので、長年の疑問が解消されて良かったです」
「クワイエット“さん”か…」
詳しい関係性は分からないが、親しい間柄なのは明らか…。
そんな情を抱いて勝てるのだろうか?
答えは“No”だ。
バットの腕前はだいたい把握したが、クワイエットという狙撃者に比べるとかなり劣る。
ただでさえ格上の相手だというのに、情によって腕が鈍った状態では勝てる見込みは無い。
「今は敵だ。また奴と戦う事になるだろう」
「…何が言いたいんですか?」
「狙撃は得意ではないが、俺が相手を
「結構です」
バットの状態を考えて判断したのだが、即座に却下されてしまった。
ちらりと伺うとその瞳には強い想いを感じ取った。
一度戦って立ち直った時以上に覚悟を纏った様子に任せるかと軽く頬を上げる。
「
「そうか。ならもう言わん」
そのまま二人は一階を探索すると“アンテナ”を発見して、妨害電波による通信阻害から脱して何とか連絡をつける事が出来た。繋がった矢先に各無線先から周波数を変更すると言われ、それぞれ変えた周波数を記録する。
その後もビル2の一階を探索するもカードのレベルが足りずに電子ロックを解除できない扉が多い為、一階の探索を一旦断念して上層の探索を先に行う。
赤外線を回避しつつ上層にしか
あれだけのスナイパーがまだ同じ場所に居るとは思えないが、少しでも期待しているのだろう。
屋上へと上がった二人を待ち受けていたのは熱烈な敵兵よりの銃撃であった…。
「いきなり!?」
「やはり動きがバレているっと思った方が良さそうだな!」
バットはベレッタで、スネークはデザートイーグルで応戦する。
急な攻撃に焦りはしたものの射撃の腕では確実に勝っており、時間の経過と共に敵兵が減っていく。
ただし、ここは敵地で警戒レベルが上がった為に、近くの敵兵が殺到してくる。
中にはバットは初見の空飛ぶ敵兵も居て、多勢に無勢という事もあって非常に厄介。
その場その場を切り抜けながら途中捕虜を助けて、博士は地下牢に居るという情報やカード5を得ながら突破していく。
弾薬を減らしつつも何とか下層へ向かうエレベーターに辿り着き、二人は一息つく。
「ちょっと一服良いか?」
「構いませんよ」
煙草を咥えて火を付けて、ふぅ…と煙を吐き出す。
吸うか?冗談半分に差し出すもバットは吸わないらしく断られた。
エレベーターが地下に到着して外に出ると、そこには二頭のドーベルマンが待機していた。
対処しようとする前にバットはドーベルマンに近づき、あっという間に手懐けてしまう。
愛おしそうに撫でるバットと嬉しそうな軍用犬を眺めながら一服済ます。
先の部屋に進むと敵兵も軍用犬もカメラすらない。
「ここまでくるとあからさまだな」
「でしょうね………って被ってからで良いでしょうに」
「アイテムは一つずつは
何も配置していないという事は、しなくとも良いかする意味がないのかの二択だ。
ビル1で経験したゆえに毒ガスだろうと予想した二人であったが、ガスマスクを装備したのはバットのみ。
スネークと言えばカードで扉を
案の定、扉を潜った先には毒ガスが充満しており、敵の姿は一切なくすんなりと進める。
道中簡易な壁を吹っ飛ばして道を開き、捕虜を救出したりと進んでいると外見的にも広い小部屋を発見。
屋上で博士は地下に居ると聞いただけに期待を込めて、
外から広く見えたのは二つの小部屋が繋がっていたらしく、電子ロックどころか扉すらない隣への入り口が見え、入った小部屋には複数のコンテナが並び、中央には研究員であると見てわかる白衣姿のお爺さんが縛られていた。
あれがメタルギアを開発したという博士だろう。
「博士か?すぐに縄を―――」
「あ、ちょっと待って」
解放すべく近づこうとしたスネークにバットは待ったをかけた。
何故と問いかけようとするも、目を細めて床を眺めている様子に口を紡ぐ。
床と縛られた博士を交互に観察し、小さく声を漏らして博士に近寄ろうともせずに、隣の部屋へ向かおうとする。
「博士を放っておくのか?」
「あー…罠ですよソレ」
「罠?」
「目の前の餌に跳びついたら最後…
バットに続いて隣の部屋に向かいながら振り返れば、縛られていた博士は非常に悔しそうな表情をしていた。
どうやら本当に罠だったようだ。
それにしても高い観察眼…というよりも死んだ魚のような瞳になっている事から、警戒するほどの経験を積んでいたのだろうな。
「親父さんの賜物か?」
「あの
乾いた笑みまで浮かべるバットに掛ける言葉は無かった。
無言のまま隣の部屋でカード6を拾い、出口にカードをかざすと再びガスマスクを被る。
ガス地帯に出た二人だけどすぐそこに扉があり、スネークはまたも息を止めてガスマスクを外してカード6でロックを解除して中へと入る。
入った一室には遮蔽物が一つも無く、エレベーター前に白い防護服に火炎放射器を手にした兵士が立っていた。
「俺はファイヤー・トルーパー!!丸焼きに………」
名乗りを上げた彼もアウター・ヘブンでは強者の一人なのだろう。
口上を耳にしながら警戒するスネークを他所に、バットは何のためらいも無くベレッタで発砲。
背負っているタンクから火炎放射器に繋がるホースを打ち抜き、穴から燃料が噴出してファイヤー・トルーパーはシャワーを浴びた様に燃料塗れに…。
突然の事に沈黙が漂い、最初こそ出が良かった燃料も段々と弱くなり、水滴が落ちる程度になった頃には戦うどころか火花でも起こった瞬間大炎上しそうなファイヤー・トルーパーは、無言で項垂れながら戦意無く両手を上げた。
「おい、せめて最後まで言わせてやれよ」
「親父ならそうするでしょうけど、スキップした方が楽ですし早いですよ?」
「そりゃあまぁ…そうなんだがな。遣る瀬無いというか」
「では、止めを―――」
「お前、血も涙もないな…」
さすがに可哀そうすぎるので防護服を脱がして、縛って部屋の端に転がしておいた。
エレベーターの扉が閉まるその時まで、しくしくと悲しそうな泣き声が聞こえてくるのだった…。
●ちょっとした一コマ:カズヒラ・ミラーの教育
カズヒラ・ミラー、またマクドネル・ベネディクト・ミラー。
米軍将校の父と日本人の母の間に産まれたハーフ。
幼少期は娼婦を辞めて煙草店を経営する母の代わりに店番をし、母親が寝たきりになって入院すると父親がいるアメリカへと渡る。
父親はアメリカで妻子がいたものの、子供は戦死してしまい妻とは離婚した後。
失ったモノの穴埋めと理解しつつ一緒に暮らし、大学を卒業すると日本に帰国。
寝たきりの母を養いながら自衛隊に入隊。
その後、除隊すると中南米に渡って実戦経験もないまま反政府勢力に取り入って教官として働き、教え子達を部下に部隊指揮を任される。
作戦行動中に当時政府側に付いていたスネークと交戦し、部隊は壊滅して自身は捕虜となる。
勧誘という脅しをスネークより受け、勝負をした後にはスネークと共に“国境なき軍隊”設立。
副指令として働き、国境なき軍隊が襲撃を受けると新たに“ダイヤモンド・ドッグズ”を設立し、国境なき軍隊を襲撃した者への報復を誓う。
報復を終えてダイヤモンド・ドッグズを抜けると様々な国の特殊部隊や新兵訓練などの教官を務め、“FOXHOUND”のサバイバル教官となり、教え子たちから“マスター・ミラー”の愛称で呼ばれる鬼教官。
そんな経歴を持つミラーは再びダイヤモンド・ドッグズの本拠地たる洋上プラント“マザーベース”に訪れていた。
ビッグボスと彼の協力者であるオセロットとはいずれ敵対すると宣言して出て行った身。
だけど互いに今敵対している訳ではなく、どちらもダイヤモンド・ドックスを抜けているので訪れる事を断られる事は無い。
今回訪問した理由はあのバットの息子が滞在していると聞き、誘いを受けた事にある。
バットの子供である事から戦闘能力に期待を抱き、先を見据えてこちらに勧誘出来るよう下準備をしに来たのもある。
ただ良くも悪くも誤算はあった。
アイツのような非常識な戦闘能力を有していないのは痛くもあるが、幼さもあってか素直で色々な事を吸収するのが早い。
今もまた俺より教わった事を実践している。
出会った頃より技術も観察眼も格段に上がった。
否、そこら辺の才能は
ほくそ笑みながらミラーは手にしていたトランプカードを周囲の兵士に見せつける。
「ロイヤルストレートフラッシュだ」
「またカズさんの勝ちかよ!」
「イカサマだろ!?」
「おいおい、連勝したぐらいでイカサマ扱いは無いんじゃないか?」
はっはっはっと笑いながら手を差し出して催促する。
悔しそうにしている兵士達から賭けていたお金が俺の下に集まる。
俺は懐が潤い、シオンには良い訓練となる。
一石二鳥とはまさにこの事だろう。
しめしめとほくそ笑み、配られたカードを受け取っているとその手を背後より掴まれた。
振り返ればそこにはオセロットが立っていた。
オセロットもまた同じような用件で訪れ、シオンに銃の扱いを教えたらしい。
と言ってもずっと教えれるほど暇ではないので、近いうちに
お互いに接触を避けていたというのに、シオンが居るとどうしても顔を合わせる事が多くなった。
「なんだ山猫。賭けポーカーは禁止とか硬い事言わないだろ?」
「言わないさ。未成年を騙すならまだしも、大人同士の遊びを邪魔する気はない」
「だったらこの手はなんだ?」
「…シオンを使ってのイカサマとなれば話は別だ」
「「「イカサマ?」」」
オセロットの言葉に肩がピクリと震える。
兵士達は首を傾げながらシオンを見るも本人は
シオンがしっかりとしたのだ。
教官として俺も見せなければならないだろう。
「ウォッホン…何のことかな?俺はイカサマなんて…」
「ならこれはなんだ?」
引っ手繰られたカードはダイヤの一から三とスペードの五と七が並んでいた。
スリーカード。
役は出来ているがこれぐらい多少運が良ければ初手から来ることもある。
内心勝ち誇った笑みを浮かべる。
「これぐらい普通だろ」
「だがこうするとどうなるかな?」
シオンが配っていたカードの束から二枚引くと、ダイヤの四と五が現れた。
五と七と交換するとポーカーで二番目に強いストレートフラッシュ。
タラリと冷や汗が流れる。
「い、いやぁ、今日は勝利の女神に好かれていてな…あっはっはっはっ」
「ははは、袖からカードが見えているが?」
「嘘だろ!?―――――――あ…」
万が一の時に仕込んではいたカードが知らず知らずに覗いて居たか………と思って袖を覗き込んで罠に気付いた。
してやられたと思うが自然を装うも疑いは既に確証に変わってしまっている。
「上手いもんだ。自身が疑われやすいと踏んで仕掛けはシオンにさせる。誰も想像しなかっただろうな。それに中々腕も良かった。俺もしっかりと着目しなければ分からない程に。さすが教官として色んな所からお呼びがかかっているだけはあるな―――マスター・ミラー?」
言い訳は浮かばず、滝のような汗ばかり流れる。
さらに追い打ちをかけるようにヴェノム・スネークに男性女性問わず兵士達が集まってきた。
「ど、どうした皆?そんな怖い顔をして…」
「イカサマの件は他にもあってな。皆がシオンに甘い事を知って、観戦したいと言わせて背後から手札を覗かせ、ちょっとした仕草で役を教えるようにしていたな?」
「ななな、何のことだか分からないなぁ…」
「苦情も受けたんだが?シオンをだしに女性兵士をデートに誘ったり、シオンの女装写真を売りつけて小遣い稼ぎしていると聞いたが?」
もう汗が止まらないんだが…。
じりじりと鬼の形相で迫って来る皆に怯えつつ、シオンを盾にしつつ身を護ろうとする。
「お、落ち着け!これも…その…そう!シオンに色んな技術を教える為なんだ!!
「なら利益を得ていたのは授業料とか?」
「その通ぉ……り………すいませんでした」
盾にしていたシオンは女性兵士に抱き締められて奪われ、視線と怒気の集中砲火を受ける。
片棒を担がされていたシオンは怒られるどころか技術の向上を褒められ、自業自得なミラーは羨ましそうに見つめては大勢からの説教と受けるのであった…。