ザンジバーランド沿岸部に聳え立つ軍事基地。
そこより囚われている博士を救出するのが任務。
基地ゆえに警備は厳しいけれども“蛇”が入り込めぬほどではない。
比較的発見が困難で警備が薄い海より近づく者が居た。
アウターヘブンにて
見つかり辛くするために沿岸より泳ぎ、聳え立つ崖を登り切ったスネークは息も切らさず先を睨む。
フェンスに囲まれた先に聳える建造物。
今からあそこに情報収集及び救出の為に潜入するのだ。
なんにしても潜入ポイントに到着した事を大佐に伝えるべく無線を繋ぐ。
「こちらスネーク。潜入ポイントに到着」
『さすが時間通りだな。では“
「了解。“動体反応センサー”を起動させる」
動体反応センサーというのは新たに開発されたサポートアイテムで、周辺での動くモノを感知してレーダーに表示する。
白い光点が敵を現し、俺やバット、それに奥歯に埋め込まれた発信機で表示されるマルコフ博士の三名を赤い光点で示す事になっているらしい。
早速レーダーを見てみると映る光点は自分を示す赤一つ。
違和感を覚えて周囲を見渡すもレーダーの表示通り人影は見受けられない。
それどころか人の気配すらない…。
『どうしたスネーク?』
「少し待っていてくれ大佐」
潜入している時点で警戒はしていたが、今はそれ以上に周囲の物音一つも逃さぬように気は張って探る。
ここは比較的警備が薄い場所である。
人が少ないのは予定通りなのだが
罠の可能性が過るも兎に角現状を確認せねば解らない。
「大佐…何処かの国がザンジバーランドに攻め込んだという情報は無いよな…」
『ない。少なくともこちらではそのような情報は入っていない。どうしたというんだ?』
「緊急事態だ大佐。どっかの誰かがここでパーティを催したらしい」
フェンスの切れ目を見つけて入り込み、隠れる事なく不用心に堂々と姿を晒すスネーク。
しかし彼を怪しむ者も警戒する者もここには居はしなかった…。
壁にめり込んだ弾痕。
飛び散り固まった血痕。
血の海に沈んだままピクリとも動かない兵士達。
こんな外野で流血など潜入や工作員のする事ではない。
だが戦闘狂という印象は感じ取れない。
敵兵の武器の状態に被弾個所を見るにほとんど反撃できずにやられている。
ただの兵士ではなく
「どんな奴なんだ…」
疑問を抱いて現場を眺めていたスネークは複数の足音を耳にして慌てて身を隠す。
こっそりと覗き込むと赤いベレー帽に迷彩柄の制服に身を包んだ団体が訪れていた。
部隊の全滅、または調査の為に部隊が送られてきたのだろう。
長居し過ぎたと後悔するも遅すぎた…。
武器は現地調達が基本だったので、今ある武器は自身の肉体のみ。
息を殺して潜み、ひたすらに気付かれず通り過ぎるのを待つ。
しかし意図せず兵士の一人と目が合う。
「誰だ貴様!!」
CQCを仕掛けようかと思うも数が多く、相手が距離を取って銃口を向けているので動けない。
何かしら怒鳴りながら問いかけて来るがなにか無いかと期を計りながら、視線を動かして人数と周囲を把握していく。
だがアクションを起こすにはタイミングが…。
『何してんだか…』
聞き覚えのある声が無線から聞こえると銃声が響き渡る。
視界に映っていた最後尾の兵士が頭より血を流し倒れ込んだ。
突然の銃声と味方が崩れ落ちた事で視線は自然と背後に向き、そうでない者は安全を確保しようと身を隠そうとする。
僅かな好機に跳びつく。
目の前の敵兵に襲い掛かり身動きの取れないように関節と首を絞める。
同時に敵兵が持っていた銃のトリガーを押し込みながら周囲にばら撒くように撃つ。
致命傷でないとしても撃たれた痛みから倒れ込んでいき、乱射から逃れた兵士には何処からかの精確無慈悲な狙撃で命を絶たれていく。
視認とレーダーで敵の有無を確認して、排除完了した事を確認し終えるとさっさとその場を離れ、安全を優先して即座に身を隠して周辺の警戒に入る。
するとレーダーに赤い光点が映り、それはこちらに近づいて来た。
「正面突破とか無茶し過ぎでしょ?無双系のキャラにジョブチェンジでもしました?」
「なら良かったんだがな。残念ながらアレは不慮の事故だ。兎も角助かった」
モシン・ナガンを背負いながら姿を現したバットに笑みを向ける。
以前に比べて背が伸びて青年に足を踏み込んでいたが、幼さが強く残っている為に年齢以上に若く見える。
そんな事を想われているとも知らないバットはスネークにさっきトラックで拾ったというレーションを投げ渡し、スネークは咄嗟と言えど難なく受け取る。
「荷台にレーション一つなんてここは変わらないな」
「そういうお前は随分変わったな」
「四年も経てば成長もしますよ」
「口の利き方は変わらずなようで安心したよ………ところで口ぶりからしてアレをやったのはお前じゃないんだな?」
「潜入するのに正面切ってドンパチするとでも?そもそも身を隠す場所は少なく、高所を取られる上に敵地のど真ん中で弾薬も心持たないってのに…」
確認の為に口にしてみたがやはり否定されて肩を竦める。
あの惨状がバットがやった事であるならば色々と簡単だったがそうではなくなりやや面倒になった。
「となると別口か」
「勝手に馬鹿騒ぎすんのは良いけど、散々散らかして行くってのはマナー違反だろ」
「逆に言えばそれが罷り通るほどの猛者であるのだろうが」
「問題は敵か味方かって事かぁ。またはどちらでもない第三勢力。こりゃあまた面白くなりそうだな」
「楽しんでいる余裕があれば良いがな」
「裸装備のスネークは難しいか」
「俺にはCQCがある」
「ならこれはいらないか?」
そう言って腰に提げていた拳銃を見せ付ける。
手渡された拳銃を眺めてほうと息をつく。
「ブローニン……それもマークⅢか!?」
FNブローニング・ハイパワー。
それもロングタイプのハンマーにホワイトラインがはいったフロントサイト、弾薬は九ミリパラベラムではなく.40S&W弾である事から五年ほど前に出たMk-Ⅲ。
バット曰く、前回の件(デザートイーグル)があるからと
動作確認や感触を確かめて仕舞う。
「助かるよ」
「銃の事ですか?それとも俺の事ですか?」
「銃だ………冗談だ。お前が来てくれて本当に助かるよ」
ちょっとした冗談のつもりだったが腰のベレッタに手を伸ばそうとしていたので速攻で冗談だと明かす。
ついでに両手を上げて降参を示すとジト目であるが銃を仕舞ってくれた。
「仲間割れしても仕方なし。さっさと行きますか」
「ザンジバーランドに潜入し、拉致されているチェコの生物学者キオ・マルフを奪取する。それにお前が居てくれるなら百人力だ」
「協力はするけど
さぁ、進もうと踏み出した矢先、バットの訂正によって足を止める事になる。
振り返ればやはり先ほどの何処か機嫌が悪そうで、申し訳なさそうにこちらにその視線を向けている。
そんな視線を向けられる心当たりがなく、眉を潜めると小さくため息を漏らして表情を繕う。
「多分関与していないと思うから言うつもりはないし、事態によっては不味い事になりそうなんで、俺から教えるつもりもないよ。悪いけど…さ」
疑問は残るがバットの雰囲気から本当に言う気はないらしい。
とりあえず頭の片隅に置いておいて、今は博士の救出を優先せねばなるまい。
「そうそう、正面ゲートの突破は難しいらしい。ゲート周辺に通気口があるのでそちらからの侵入なら行けるだろうって」
「内部情報何処から得ているんだ?」
「貴方には貴方の。俺には俺の協力者がいると言う事ですよ」
そう言うとバットは先へと進みだす。
こちらと違う情報元というのも気になるな。
兎にも角にもその情報通りに正面ゲートではなく周辺にあるという通気口を探す。
その道中でトラックを一台発見し、中を検めてみるとベレッタが一丁転がっていた。
大きなトラックの割に拳銃一丁とは如何にと
「どうする?
「いえ、すでに結構装備しているんでそのまま持っていて貰った方が良いかな」
「分かった。ならこのまま貰っておく」
「通気口は…あれか」
正面ゲート右側に確かに通気口があるが、やはり警備は厳重である。
視界を遮りつつも見つかりそうになった敵兵に
通気口は狭いようで案外広い。
匍匐前進でなくとも中では中腰で動ける程の高さがあり、警備の兵もいなければ監視カメラもないので、侵入経路としては進み易くて有難い。
途中何故か通気口内に置かれていた弾薬を拾つつ施設内部へと侵入する。
やはり施設内には多くの兵士が巡回しており、そこらへんに戦車が停まっている事から一階は格納庫にもなっているらしい。
しかし嫌に数が少なく感じる。
周辺国家に戦争を吹っ掛けているからこそ兵器も人員もそちらに回しているだろうから当然と言えば当然なのだが、アウターヘブンでもっと多くの戦車が並んでいたのを見たのもそう感じる要因なのだろう。
警戒しながら通気口から出て周囲を見渡し探索するように進もうと無線機が反応を示す。
周波数を見ると大佐は勿論今作戦で教えられたものではない。
バットにその周波数を見せるも首を横に振って否定。
疑問を抱いてその正体を探る為にも出てみた。
「…誰だ?」
『私、ホーリー。ホーリー・ホワイト。ジャーナリストよ』
「ジャーナリスト?取材の依頼は受けていないが?」
『それはその内依頼するかも知れないけど今は別よ。私は取材でザンジバーランドに一か月前から潜入しているの』
「一か月も前から潜入とは…」
『だからだいたいのことなら解るから。お役に立てると思うわ』
「ほう、それは助かる。ちなみに」
『そうね…ここのエレベーターは二つあるのだけど、右側は地下以外には行けて左側は二階と地下の一階と二階に止まれるの。
「エレベーターを使う際には気を付けるとしよう」
『じゃあ、何かあったら連絡してね』
無線を切ったスネークはバットと目を合わせた。
同じ心境だったのだろう。
眉を潜めながら何かしら考え込んでいるようだった。
「怪しいな」
「うん、怪しいというよりはヤバイ気もしますが…」
「奴は言ったな。
アウターヘブンは俺達がメタルギアを破壊した後、基地ごと自爆したので後は残っていない。
それなのに知っているというのはあの時のアウターヘブン関係者か
どちらにしても怪し過ぎる。
もしも同業者としても協力するなら大佐から伝えられていただろう。
「警戒すべきだろうな彼女は」
「いや、そうじゃなくて問題なのはガバガバなスネークの周波数。どう考えても駄目でしょうに」
「………後で大佐に言っておく…」
確かにそれもそうなのだが…と正論なだけに返さずにそのまま受け入れる。
話もそこそこにしてレーダーで敵の位置を確認しながら進もうとするも、各扉は電子ロックが掛かっていて通行する為に必要なカードを持っていない為に通れず、向かえた先にはホーリーが言っていたエレベーターの前しかなかった。
「先に四階に向かっても?」
「構わないが…何かあるのか?」
「ちょっとね」
なにやら思わせぶりな態度に首を傾げながらエレベーターに乗り込むと、バットは無線を繋いで短くなにかを伝えた。
それを問うよりも先にエレベーターは四階に到着して、外に兵が居ないか確認して降りる。
すぐ側には扉があったが電子ロック式で解除するカードを持ってない以上開けることは出来ない。
さすがに爆弾で吹っ飛ばす訳にもいかないだろうからな。
説明もないまま扉からは死角になる角で待機させられていると、電子ロックが開いて白衣を着た女性が現れた。
医者か研究員かと少しだけ顔を覗かせていたスネークは銃に手を伸ばそうとするも、先にバットがゆるりと姿を晒して声を掛けた。
「持ってきてくれました?」
「えぇ、簡易医療セットでしょ。それにレーションもついでにね」
「助かるよ。出来ればカードキーも…というのは欲張り過ぎか」
「本当に欲張りね。私が持っているカードは渡せないけど、予備が二階で保管されているらしいから自分で探しなさい。それと博士は研究開発を行っている三階に居るってさ」
「情報ありがと。例の件は任せてって伝えといて」
「そっちは頼んだわよ」
女性は様子を眺めていたスネークに軽く頭を下げて、再び電子ロックを解除して戻っていった。
疑問を抱くスネークは医療キットの中身を確認するバットに問いかけた。
「今のがお前が言った情報元か?」
「そうですね。ジェニファーって覚えてる?」
「ジェニファー…………あぁ!?」
思い出して驚きを隠せなかった。
ジェニファーというのはアウターヘブンで協力してくれたレジスタンスの一人。
捕虜になっていた訳ではなく、扉のロックや武器の在処を教えてくれたりしてくれた人物だ。
アウターヘブンでは捕虜となっていた兄を助けるべく、メディカルスタッフとして潜入していて、今回もメディカルスタッフとしてザンジバーランドに入り込んでいるとの事。
「レジスタンスが動いているのか?しかし何故…」
「疑問は沸くだろうけど後にしよう。なんにしてもカードを手に入れないと」
カードがあると言われた二階は元々の遮蔽物は少ないが、積み置かれた段ボールなどで潜む事は出来そうだ。
しかし足元がエキスパンドメタルの為に歩けば音が鳴って気付かれる可能性が高い。
ゆっくりと慎重に進みつつも最小限に済ませなければ。
二手に別れてカードを探索して戻って来た二人は互いの戦利品を確認する。
バットは拾った弾薬にレーションと左の小部屋は開かない(カード2)という情報。
スネークは目的のカード1に双眼鏡、それと中身を出した積み置かれていたダンボール…。
二つ持っているダンボールの一つを渡されて、なんとも言えない表情で突っ込むことなくバットは受け取る。
三階は研究開発を行う部署でテーブルとパソコンが並んでいて、しゃがんでも下に潜っても敵の死角には入り易い。
二階よりエレベーターを使って上がり、三階へと入った二人は早速入手したばかりのカード1を使って扉を開ける。
室内には研究員の姿はなく警備の兵士のみ。
人数はたったの一人…。
小声で情報を聞き出す為にスネークが捕縛すると言い、バットは万が一に備えて銃を構えて待機。
…がそれは杞憂で終わる。
速攻で敵兵を組み伏せて隣の部屋を通れば博士が居るとの情報を吐かせる。
思ったより順調に進めそうと思った矢先、その通路は毒ガスが満たしているとも…。
「道理で素直に喋る筈だ。何処かにガスマスク転がってないかな」
「そんな都合の良い………ことあったな。アウターヘブンでは…」
確かにあったなぁなんて思い返してもガスマスクが手に入る訳ではない。
様子見を兼ねてバットが息を止めて先行すると言い出し、とりあえず情報を聞き出した敵兵を縛って連絡を待つと、バットより博士発見の報と息を止めても問題なく行ける距離だと無線で伝えられた。
息を止めて先の通路を進めば確かに我慢できる間に先の部屋に到着し、部屋の真ん中に博士らしい白衣の人物が立っている。
「アレがマルコフ博士か。ところで何をしているバット?」
「いや、既視感があったから一応調べてるんだけど…問題なさそうだな」
床を念入りに調べているバットの言葉に、確かにアウターヘブンでもあったなと思い出す。
博士かと思って近づいたら大きな落とし穴の罠が待ち構えていたんだった。
今日はバットも居るからかよくアウターヘブンを思い出すな。
「マルコフ博士だな。俺達は救出に…なんだ?」
罠も無い事も判明した事で安心して近づき声を掛けると、博士はくつくつと笑い始めた。
違和感を感じて距離を取りつつ銃を構える。
振り返った博士はこちらを嘲笑っていた。
「愚かな奴らだ。ここにマルコフ博士はいない!」
マルコフ博士と思われた者は白衣と博士を模したマスクを脱ぎ捨てる。
そこに居たのは全身をフレックス・アーマーで包み込んだ異様な者であった。
「俺はブラック・
銃を手にしたブラック・カラーに対してスネークは即座に銃口を向けトリガーを引いた。
ブラック・カラーの周囲には取り囲むようにコンテナが置かれて逃げ場はない。
放たれた弾丸は避ける素振りも見せないブラック・カラーに向かって、
二人は驚愕した。
ブラック・カラーは予備動作も無しに驚異的な身体能力でコンテナを飛び越え、スネークの銃弾を回避したのだ。
さらに言えば通過したように見えたのはブラック・カラーの動きが早すぎて、目が追い付かず残像を見ていた為…。
「ハイテク部隊と名高いFOXHOUND部隊とやらの実力―――見せて貰おうか!!」
恐るべき身体能力を披露したブラック・カラー。
スネークとバットは思わぬ強敵との遭遇に焦りつつ、何としても突破しようと銃を手にする。