メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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過去からの来訪者

 ブラック・カラーの身体能力は並外れていた。

 残像を残して移動するなど人間業の範疇を超えている。

 スネークとバットも誰かから聞いても信じる事無く冗談の類で一蹴していただろう。

 しかしながら現在そんな敵と相対している事実を受け入れるしかない。

 

 「受け入れるっても速すぎだろう。全然当たらないんだけど…」

 「ぼやいている暇があったら手を動かせ!」

 

 何とか交戦しているのだが、状況は不利の一途を辿っている。

 相手が早すぎて弾が当たらず、撃てば撃つだけ弾の無駄。

 かといって接近戦に持ち込もうとも向こうにその気がないので即座に距離を取られてしまう。

 それよりなにより時間が経てば経つほど敵増援が駆け付ける可能性が高まって包囲殲滅されかねない。

 けれど状況打破すべく撃っても避けられては意味がない。

 

 「今更ですけど早撃ちが得意だったりは…」

 「ないな。あったらすでに披露しているさ。逆に聞き返すがお前さんは?」

 「…狙い撃ち(狙撃)は得意ですよ」

 

 打つ手なし。

 早撃ちと言えばと父親が脳裏に過ってバットはイラつくも、冷静に状況と相手の様子を窺っていた。

 

 一つ不思議に感じている事がある。

 あのブラック・カラーの驚異的身体能力は移動………それも回避やコンテナを跳び越えるにしか使われていない。

 距離を離すのではなく距離を詰めようと思えば反応出来ない速度で懐まで入り込まれるだろう。

 さらに付け加えればあれだけの移動が可能な脚で蹴られればひとたまりもない。

 なのに奴は接近戦を嫌っているように逃げ、攻撃はもっぱら銃によるものばかり。

 

 「もしかして…スネーク!」

 「なんだ!?」

 「近接戦に持ち込んで下さい!」

 「逃げられるぞ」

 「構いません!」

 

 バットの指示に従って突っ込むスネーク。

 無論それらがブラック・カラーの耳にも入っており、近づいた矢先に脚力を駆使して跳んで距離を取る。

 目が追い付けずに残った残像に拳を振るうスネークに銃口を向けるが、トリガーを引くより先に鈍痛が響く。

 痛みから視線をそちらに向けると頑丈なスーツ越しに銃弾を直撃しており、その先には銃口を向けたバットの姿が。

 

 「解るのか(・・・・)!?」

 「解ります(・・・・)!」

 「なら攻撃任せる!」

 

 ブラック・カラーの妙な行動から一つの仮説が生まれた。

 奴は驚異的な身体能力で圧倒している様で、それは諸刃の剣―――つまり奴自身扱いきれてないのではないかというもの。

 距離を詰めないのは勢いのままぶつかる可能性があるから。

 格闘戦で身体能力を活かさないのは下手に扱えないから。

 躱すべく距離をおく時に広い場所、または決まった位置へ跳ぶのは慣れていないのと狭い場所では壁に激突してしまうからではないかなどなど…。

 浮かび上がった仮説は広い空間に銃口を向けて待ち構えていたバットの銃弾が直撃した事で立証された。

 

 理屈は知らないが有効な手段があるのならと、スネークはバットに攻撃を任せて自身はブラック・カラーに襲い掛かる。

 解っていても動き辛いブラック・カラーは次々と被弾してしまう。

 ただの制服ではない為それなりに防御力はあるものの、さすがに何発も直撃を受けてしまえばダメージも蓄積していく。

 

 「クッ、分が悪いか―――ガッ!?」

 「動きが鈍くなった?」

 「畳み掛けるぞ!!」

 「おうさ!」

 

 蓄積したダメージもあってブラック・カラーの動きに陰りが伺え、バットとスネークはここぞとばかりに攻め始める。

 距離をとってもバットの予測を受け、下手に反撃を行うと数の利とスネークのCQCによって返り討ちに合い、戦況は一気に逆転された。

 さすがにここまでバレて、攻められては巻き返しは難しい。

 間もなくしてブラック・カラーは地面に伏す事になった。

 倒れ込んだブラック・カラーは苦しそうにしながらもスネークとバットへ顔を向ける。

 

 「さすがだなスネーク…バット…」

 「何故俺達の名を?」

 「…俺だ。シュナイダー…カイル・シュナイダー…」

 

 覆っていた仮面を脱ぎ捨てて素顔を露わにしたのは、アウターヘブンにて協力してくれたレジスタンスのリーダーであったカイル・シュナイダー本人であった。

 ただスネークは疑問を抱く。

 カイル・シュナイダーはアウターヘブンで別れた後に、アウターヘブンの連中によって殺されたと聞いている。

 

 「お前は確か奴らに殺された筈じゃあ…」

 「違うな。俺は……俺達は!お前達、いや、お前達の国に殺されたんだ!!」

 「どういう事だ?」

 「アウターヘブンには世界各国の戦争孤児や難民が集められていたんだ。その一人一人に当事国にとって公に出来ない事情というものが存在し、世間に触れられたくない各国は存在そのものを抹消したんだ」

 「そんな馬鹿な!?」

 「本当に馬鹿な話さ。お前たちがメタルギアを破壊した後にNATO軍は隠滅すべく空爆を行い、女子供関係なくレジスタンスだった俺達を見捨てやがった。多くの者が猛火によって焼かれ、野垂れ死んでいった…」

 

 あんまりな事実に驚愕を隠せない。

 否、驚くばかりが自分になにか出来たのではないかと責めるほどの後悔する。

 悔やむスネークに対しカイルは微笑ながら続ける。

 

 「あの方だけだった。逃げ惑う俺達を救うばかりか新しい土地や家族を与えて下さった人は…だから俺は…」

 「少し黙ってろ」

 

 話の途中―――それも“あの方”という気になる単語が出たのにも関わらず、バットはポーチよりナイフ取り出してカイルに近づいた。

 まさか息の根を止めるつもりかと慌てて止めようとするもバットにそんな気はさらさらなく、スーツを脱がすと腰辺りに走っていたコードを切断した。

 横から見守るだけとなったスネークは腰辺りに付けていた爆弾を外し、手当てをするバットをただただ見つめた。

 

 「恩義があるのは解るけどよ。それで仲間を蔑ろにするのは駄目だろ」

 「何を…言っている?」

 「俺は別口の依頼を受けてんの。助けてやって欲しいってよ」

 「バット。お前が言っていた目的ってのは…」

 「彼の救出ですよ。代わりに内部情報やるからって」

 「……そうか…あいつら…」

 「だから俺は聞いていた。どんな目に合ったのかを」

 

 バットが言っていた事はこの事だったのかと納得し、カイルは何処か悲しそうながらも嬉しそうに涙を流す。

 その間にも手当は行われていき、カイルは万全の状態とまではいかなくとも多少動ける程度にはなった。

 治療に関して良い腕をしていると思いながら見ていたスネークは、「キュアーの弱ってのはこんな感じなのか…」とぽつりと漏らした呟きに首を傾げる。

 

 「裏切れとか協力しろ!って言う気はないけど大事に思ってる仲間が居んだからせめて敵対せずジッとしといて貰えるか?さもないと動けぬように手足だけ折らなきゃいけなくなるし」

 「お前…案外容赦ないな」

 「大丈夫。優秀なメディカルスタッフ(ジェニファー)居ただろ」

 「それはそれで後からナニカされると思うが?」

 「……それは困る…」

 

 本気なのだろうけど冗談交じりの会話にカイルは吹き出し、三人ともくすくすと笑ってしまう。

 空気感自体が緩くなり、もはや戦う様な雰囲気は無くなっている。

 

 「俺はあの人を裏切れない。だが俺はお前達に借りはあっても憎いわけではない。博士の場所を教えてやろう」

 「博士の居場所を教えてくれるのは有難いが……良いのか?」

 「とは言っても何処にいるかは知らない。知っている者を教えるだけだ。良いか?一階にいる兵士の一人が知っている筈だ。特徴としては緑色の帽子(グリーンベレー)を被っている。グリーンベレーの兵士を尾行しろ」

 「恩に着る」

 「どのみち俺にはもう戦うだけの力もないからな…」

 「なら最期に役に立って貰おうか」

 

 不意に割り込んで来た声に三人とも顔を上げて周囲へ視線を向ける。

 すると閉じてあった扉が開いて兵士達が突入してきた。

 この一室には扉が二つあるも、そのどちらからも敵兵が侵入してきて逃げ場がない。

 しかも突入してきた兵士の中には見覚えのある者も居て、表情からして決して逃がしてくれるような感じはしない。

 

 「久しぶりだな。会いたかったぞ侵入者共」

 「俺は別に会いたくなかったがな」

 「右に同じく」

 「五月蠅い!お前らはそうでもこちらは会いたくて会いたくて仕方がなかったんだ!」

 

 そう叫ぶはアウターヘブンにてジェニファーの兄を人質にしていたカワード・ダック。

 隣にはマシンガン・キッドが居り、もう一方の扉の前にはショット・ガンナーにファイヤー・トルーパーが得物を手にまだかまだかと構えていた。

 アウターヘブンで一度倒した相手と言えども、狭い一室で数を揃えられたら非常に不味い。

 さらに付け加えると動いた場合、身動きの取れないカイルは蜂の巣にされるのは目に見えている。

 寧ろ外で待機していて会話の内容から動けないであろうとカワード・ダック辺りは踏んでいるだろう。

 

 「相変わらず下品な奴…」

 「どうとでも言うが良い。アウターヘブンでお前たちに負けて俺達は想い描いた未来に夢、それまで築いてきた信頼と実績に傷を付けられて全てを奪われたんだ!」

 

 怒りを言葉に乗せながら状況から成る優越感からカワードは嬉しそうに笑う。

 隙を見せるも他は警戒を一切解いていないので動くに動けない。

 何とか起死回生の手段がないかと二人共思考を巡らす。

 けれど恨み辛みを抱いている四人はそんな状況を与えはしない。

 

 「あぁ…この機会をどれだけ待った事か。すぐには殺さん。じっくりゆっくりと拷問に拷問を重ねてから――――あ?」

 

 悦を感じながら語るカワードであったが、突如背後の扉が開いたことで口を閉ざし振り返る。

 扉は開くもそこには誰も居ない。

 開けて隠れた様子は無く、勝手に開いた…または見えない誰か(・・・・・・)が開けたような…。

 

 「早く閉めろ」

 「ハッ!――――カハッ!?」

 

 指示された兵士が扉を閉めようとするとゆっくりと浮いた(・・・)

 首辺りに手を当てて藻掻き、苦しそうで表情が歪む。

 目の前で何が起きているのか解らず、他の兵士が近づこうとするもそちらも同様に浮いて苦しそうにする。

 あまりに非常識な事態に困惑しながらカワードを始めとした敵兵が注視する最中、誰も居ない空間にポツリと点(・)が現れる。

 その一点を中心に血管や血肉を周囲に浮かび上がらせ、最終的には肌で覆われ一人の女性を幻出し、誰もがその光景と人物に対して息を呑んだ。

 

 静かな狙撃手―――クワイエット…。

 

 彼女の出現に驚くスネークとバット。

 それ以上にカワードは驚きを隠せない。

 

 「きさッ…貴様が何故!?―――ッ!!」

 

 問いかけの答えは蹴りだった。

 腹を思いっきり蹴られて吹っ飛ばされたカワード・ダックは、一撃で意識が飛んだ状態でカイルの上に転がった。

 身動きの取れなかったカイルに覆いかぶさった盾(カワード・ダック)が出来、突然の出来事で大きな隙に付け入ろうとバットとスネークは動き出す。

 バットはファイヤー・トルーパーへ銃口を向け、アウターヘブン同様に火炎放射に燃料を送るホースを撃ち抜く。

 プシューと噴き出した燃料は周囲の兵士とショット・ガンナーを濡らし、彼らの銃の使用は自身を燃やす事から武器が一瞬で使えなくなった。

 そこへスネークが駆け出してCQCにて次々と投げ飛ばし、殴っては意識を刈り取って行く。

 もう一方は首を掴んで持ち上げていた兵士二人を投げ飛ばしたクワイエットが、恐るべき身体能力を披露して無双する。

 咄嗟に離れる事が出来たマシンガン・キッドは銃口を向けるもファイヤー・トルーパーから狙いを移したバットに足を撃たれて転倒。

 そこにクワイエットによる蹴りで壁まで飛ばされて気を失い、突入してきた敵兵は全員が戦闘不能に陥った。

 

 危機は脱した。

 だが目の前には囲っていた者以上に厄介な相手がいる。

 両手話で喜べる状況ではない。

 警戒しつつもどちらも仕掛ける様子がなく、沈黙だけがその場を支配する。

 

 「――――敵ではない」

 「――ッ!?……喋れたのか」

 「驚くとこそこですか!?」

 

 ようやく喋ったクワイエットの一言に驚くスネークに突っ込みを入れるバット。

 そこからクワイエットがぽつりぽつりと語り出した。

 

 彼女はここには報復に来たという。

 以前命を狙って襲い、逆に全身及び内部器官にまで重度の火傷を負わされた…。

 それにより意図せぬ施術(・・)を施される羽目となり、当時に比べて時が過ぎて薄れ始めていたが、今回の件を聞いて動いたというのだ。

 

 「命を狙っておいて返り討ちにされたから復讐とはな…」

 「道理関係なくやったらやり返すのは基本では?」

 「お前ン家の常識は非常識だろうからすべてに当てはめようとするな」

 「酷くない?…まぁ、なんにしても良いじゃないですか。クワイエットさんは頼りになりますよ」

 「いきなり信頼出来るか?………あぁ、お前は信頼出来るわな」

 「どういう意味です?」

 「初恋相手だったな確か」

 「ブッ!?なななななな、何言ってんですか!?」

 「……ここ敵地」

 

 あまりに騒ぐことからクワイエットより注意を受けてしまう。

 なんにせよバットの要望もあってクワイエットも共に行くことに。

 少し気掛かりなスネークは指示を乞うべく無線機を繋ぐ。

 

 「――大佐」

 『話は聞いた。確かに味方なら頼もしい限りだが、彼女が語った事が本当なのかどうかも解らん。決して気を抜くな』

 「了解した。だが、バットがクワイエットよりだからな。何かあった場合の対処は難しいかも知れない」

 『それは確かに。こちらでも彼女の素性を洗っては見るが…』

 『キャンベル。それにスネーク。聞こえるか?』

 「マスター!」

 

 突然割り込んで来たのはマスター・ミラーだった。

 事前にマスターからの協力を大佐より聞いていたとは言え、実際に彼の声を聞いて心強く感じる。

 マスターに鍛えられた日々を薄っすらと思い出す。

 

 『こちらも聞かせて貰ったが、彼女の事は信用して貰って大丈夫だ。私が保証しよう』

 「もしかしてマスターの知り合いか?」

 『知り合い…一応戦友という事になるのか?―――フッ、俺がアイツ(クワイエット)を擁護する事になるとはな…』

 

 多少疑問形な回答や感慨深そうに呟いた独り言にもスネークとキャンベルは眉を潜める。

 

 『詳細は伏せるが彼女の言っている事は事実だ。それと同時に俺達の敵の正体がハッキリした』

 『それはどういう事なんだ?』

 『クワイエットが殺し損ね且つ報復対象である人物は一人しかいない―――だが、その人物は四年前に君らが殺した筈だ』

 「俺達が殺した?それも四年前―――ッ!?まさか!!クワイエット!その報復対象というのは!!」

 

 四年前。

 それもバットと共になるとアウターヘブンであるのは明白。

 同時にクワイエットほどの強者を返り討ちに出来るような兵士と言えば一人しか思いつかない。

 けれどそれはあり得ない。

 彼は俺達の手で倒したのだから…。

 信じきれなかったスネークはクワイエットへと振り向き口を問う。

 

 「……ネイキッド・スネーク(・・・・・・・・・・)…世で言うビッグボス(・・・・・)

 

 静かに告げられた名にスネークは驚愕するも、ザンジバーランドの実状を鑑みると納得してしまう。

 確認にカイルへと視線を向けると彼はゆっくりと頷いて肯定した。

 予想だにしてなかった人物に対してスネークは驚きつつ、気絶したカワード達を縛って部屋の隅で放置し、カイルをジェニファーに預けようと向かいながら彼とまた(・・)戦う覚悟をするのであった…。




 クワイエット、参戦!
 アウターヘブンの敵キャラ参戦(退場)…。
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