メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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鉄の歯車の影に色々と突っ走る男…

 “対地球外環境特殊部隊”…。

 大国同士で激化すると予測される制宙権の争奪戦を前提に作られた特殊部隊。

 出来て浅い部隊ゆえに正式なものではなく試験的な意味合いが強い。

 活動内容は強化型の宇宙服や宇宙での戦闘を想定した兵器などの研究開発を行っていた。

 その中には薬物に寄る人体強化実験も存在し、想定以上を結果を叩き出してしまったがゆえに解散に追い込まれることになる。

 強化された者達を部隊内では“ブラック・ニンジャ(カラー)”と呼称…。

 つまりカイル・シュナイダーの驚異的な身体能力は薬物に寄る人体強化の産物…。

 

 「そりゃあ身体には良くないわな」

 「他人事ね。貴方の隣にいる人も同種(・・)かと思ったけど?」

 「―――私は別口…」

 「だとさ。どれだけ人間離れさせる研究をしているのやら」

 

 特殊なスーツ(フレックスアーマー)を脱がせ、捕縛した兵士から拝借した制服を着させたカイル・シュナイダーをジェニファーに引き渡した一行は、そのまま診断して得た情報に目を通しため息をつく。

 身体機能を無理やりに上昇…それも異常な程となると身体に掛かる負荷、または薬物の副作用は相当なものだ。

 詳しい検査はまだだが簡単なものでもかなりのダメージを負っているのは確かなのだとか。

 同じく捕虜から制服を失敬したスネークとバット、それに診察したジェニファーの視線は自ずとクワイエットに向けられるが、クワイエット自身は一言だけ答えるとまったく気にしている様子は無く、医務室に堂々と入る為に変装(敵兵より制服を拝借)したので寧ろいつもの露出の多い服装でない事が窮屈で仕方がないらしく、そちらばかりに気がいってしまっている。

 

 「こちらで多少は治療はしてみるけど駄目ね。機材も薬品も揃っているけど大々的に私達がカイルに治療するのは危険過ぎる」

 「一般兵ではなく普通に負傷した事にして…」

 「怪我の治療をする訳じゃないのよ。寧ろ戦闘能力で言うと弱体化させるのだから、ザンジバーランドの指揮官が良しとするかしら?それに時間も無いのよ私達」

 「時間がない?何か動きがあったのか?」

 「あら?貴方達が来たじゃない。期待し過ぎかも知れないけど私達はそう長く持たないと踏んでいるわ」

 「期待が重圧のように感じるんだけど…」

 「だったら気張りなさい。兎に角こっちは私達で何とかする。丁度良い囮も居る訳だし」

 「俺達の事かそれ?」

 

 クスリと微笑むジェニファーにスネークは苦笑いを返す。

 なんにせよシュナイダーを任せれたのなら任務に戻らねばなるまい。

 バットもジェニファーを始めとしたレジスタンスより頼まれただけで、主任務は博士の救出なので変わらず協力するとの事。

 不安なのはクワイエットの存在だがバットにマスターが保証するというのなら信じるほかあるまい。

 去り際に疲弊しているシュナイダーから「使う事は無いだろうから」と所持していたカード2を受け取る。

 

 カードキーで扉を開けて貰ってエレベーター前に戻った三名は、博士の独房の監視を務めているというグリーンベレーの兵士を探すべく一階へ向かう。

 敵基地内部で捜索活動の為、服装はそのままの方が都合が良いと脱がなかったのだが、やはりクワイエットはその場で脱ぎ捨てて、いつもの格好へと戻る。

 一階格納庫では多くの兵士があちこち動き回っている。

 侵入者が居る事で強化された警備・巡回する兵士達に、格納されている兵器群のメンテナンスを行う整備兵などなど、人の動きが多いのでこちらとしては動き易くて助かる。

 透明化したクワイエットは別としてだが…。

 

 戦場に置いて驚異的な能力だなと改めて実感しつつ、クワイエットの事を考える度にビッグボスの事が頭に過る。

 生きている筈がない。

 あの出血量に大怪我しておいてあの爆発で助かる筈がないのだ。

 爆発から逃れたとしても周囲をジャングルに囲まれた地で、あの状態に必要な手当てが出来たとは思えない。

 共に戦ったバットも同様の意見だった。 

 

 ゆえに俺はアウターヘブンで彼は(・・)死んだと判断している。

 だがビッグボスは生きている(・・・・・・・・・・・)

 そう言う事なのだろう…。

 

 この考えに至ったのはクワイエットとマスター・ミラーの発言が大きい。

 クワイエットはビッグボスに報復する理由があると告げた。

 だったら何故アウターヘブンで報復しなかったのか?

 簡単だ。

 アウターヘブンに居たビッグボスが偽物…または影武者だったからだろう。

 キャンベル大佐は随分昔にビッグボスと共に戦った経験があり、彼のコードネームは“ネイキッド”・スネークで、バットが呼ぶ“ヴェノム”・スネークではない。

 コードネームを変えた可能性もあるけど、マスターがクワイエットの事情と照らし合わせて敵を示した事から、二人がアウターヘブンのビッグボスとザンジバーランドのビッグボスが別の人物と知っているようだったし…。

 

 考えながら一階にて何食わぬ顔で捜索を続け、カード2を使って奥も調べていく。

 多くの兵士行きかう中での捜索は難しくも思えたが、レッドベレー(赤帽子)の中にグリーンベレー(緑帽子)とは異様に目立ち、予想以上に早く見つける事が出来た。

 しかも都合よくグリーンベレーの兵士は丁度外へと出るところだった。

 このまま博士の場所まで案内して貰えれば幸いというものだ。

 

 断崖絶壁だった侵入経路とは異なり、出た先は木々が生い茂る密林地帯。

 道もあるにはあるが狭く細い。

 人一人が通れるほどの道幅しかなく、見つからないようにかなり距離を開けて尾行を開始する。

 

 ザンジバーランドの兵士…。

 それも最重要である博士の警備を担当するだけあってかなり屈強そうな戦士。

 目付きは鋭く、肉体は制服越しでも鍛え抜かれている事が容易に伺える。

 

 …それが曲がり角に到達する度にクルリと振り返る。

 侵入者が居る中で博士の居場所を知られる訳にはいかず、警戒心を高めている事は当然の事。

 だけど容姿と行動が相まって可笑しくも見えてしまう。

 

 「変な事言っても良いか?」

 「…一応聞いてやる。なんだ?」

 「なんていうかあのグリーンベレー………可笑しくもあるんだけどなんか可愛く見えてきた」

 

 言っている意味は理解したが同意はしたくない。

 結果、透明化を解除したクワイエットが額に手を当てて熱でもあるのかと心配そうに見つめた…。

 そんな出来事もありながら尾行を続け、目的地であろう古びた倉庫のような建物に到着した。

 警備に付こうとしたグリーンベレーを背後より気絶させ、一同は警戒しつつ倉庫内へ。

 古びた建物の割には厳重そうな扉は近づくだけで自動的に開き、人どころか荷物の一つも置かれていないがらんとした内部に首を傾げる。

 

 「罠?」

 「いや、それにしては妙過ぎる。敵が出て来る様子もない。そっちがどうだ?」

 

 内部に入るも扉も無い。

 一人中に入らずに外で狙撃銃を構えて警戒を務めたクワイエットに問うも首を振って否定。

 ならこれはどういうことなのかと疑問を抱いていると、タンタンと何処からか音が耳に届いて来た。

 

 「なんの音だ?モールス?」

 「違うな。大佐!」

 『音は拾っている。それはタップ・コードだ。北ベトナムの収容所でよく使われていた通信法だ』

 『元々は朝鮮戦争中に使われていた奴だな。ちょっと待ってろ―――――これは数字…いや、無線の周波数か!今から教える』

 

 大佐に続いてマスターも無線で応え、暫し音を聞いたマスターが解読して伝えられた周波数に合わせると繋がり、考えられる可能性からマルフ博士かと断定して声を掛けた。

 

 「マルフ博士か?」

 『久しぶりだなソリッド・スネーク!』

 「まさか…マッドナー博士!?どうしてここに?」

 

 博士は博士だがまさかのマッドナー博士に驚きを隠せない。

 それはバットもクワイエットも同様であった。

 同時に二人(狙撃組)は嫌な予感から眉を潜める。

 

 『マルフの奴とは言葉こそ通じなかったが学者仲間でな、儂も一緒にアメリカ訪問していたのじゃ』

 「そんな情報聞いて無いぞ。スネークは?」

 「俺の方もマルフ博士しか……マルフ博士の居場所を知らないか?」

 『彼なら数日前にタワービルに移されたよ。ここからじゃと北に数キロと言ったところ高いビルじゃ』

 「遅かったか。それでアンタは今どこに?」

 『壁を隔てた先に居るがこの壁はチョパムプレート。爆破は不可能じゃ。儂は良いからマルフを助けてやってくれ。彼は意思は強いが心臓が弱いんじゃ!』

 「解った。必ず迎えに来る」

 『それと察しておると思うが儂は捕まってからメタルギアの研究をさせられた―――儂はここで改良型、さらには量産化の手伝いをさせられたのじゃ!」

 

 メタルギア。

 核搭載二足歩行戦車。

 アウターヘブンで開発された新兵器で、開発者はマッドナー博士本人。

 それでザンジバーランドが核廃棄所を襲った件は、大量に生産したメタルギアに装備させる為。

 移動する核発射可能な兵器など戦場ではなく国家の脅威だ。

先制して潰す事も出来ないし、簡単に移動できることからステルス性も高い。

 これは非常に厄介だ。

 しかも兵器としても優秀過ぎる為に一機なら兎も角、数で攻められたら現在の戦線すら崩壊しかねない。

 

 「まぁ、博士の名が出た事から予想できたけど量産型か」

 「そっちも何とかしよう」

 『それとこれは別件なのじゃが……娘のエレンが君のファンになってな。中々結婚せんで困っとる。そちらも何とかして貰えると嬉しいのじゃが…』

 「………それは何とも言えないな。兎も角娘の結婚式には間に合うように迎えに来る。それまで暫く待っていてくれ」

 『すまんなスネーク』

 

 そう言って無線を終え、マルフ博士が移されたというタワービルへと急ぐ。

 来た道を途中まで戻って北へと向かう道をひたすらに進む。

 先と違って尾行していた訳でもないのでそう時間も掛からず開けた場所に出る。

 すると突如無線が音を発する。

 大佐かマスターかと無戦に出る。

 

 『その先は地雷原だ。気を付けろスネーク』

 「アンタは誰だ?」

 『ファンの一人さ………上手くやれよ』

 

 誰なのかもわからず無線は切られ、バットが言った周波数帯がガバガバなのではと本格的に心配も過る。

 …そんな考えも大佐より『地雷なら匍匐前進すれば回収出来る』との発言でどうでもよくなってしまうが…。

 普通に考えれば意味不明な発言にバットは即座に順応して拾い集めるし、半分ほど無心で同じように回収しているとクワイエットが突如踵を返し始める。

 

 「クワイエットさん?」

 「おい、どうした?」

 「―――――誰か…」

 

 首を傾げながら戻る様子に疑問を抱きながら後を追う。

 密林に再び入っていったクワイエットに続くとその先には沼地が広がっていた。

 そして何故か沼の前に立つ子供が一人…。

 

 「何をしているんだ?」

 「ここは底なし沼だから近づくと危ないって言われたんだけど僕見たんだ。大きなトラックが沼を走って行ったのを」

 「にわかには信じられないな」

 「そうでもなさそうですよ」

 

 どうも現地の子供らしく、目撃した底なし沼をトラックが通り過ぎたという事を再び目撃しようと訪れているのだろう。

 だが浅くも見えない沼を大型トラックが通っていったなど信じられる筈も無い。

 そう思っていると屈んだバットが否定し、トラックが通っていった痕跡を見つけたようだ。

 躊躇せずに沼に足を踏み出したバットは沈むことなく沼の上に立っていた。

 見辛いが通れる道があるらしい。

 その光景に子供は夢じゃなかったと喜び、これは何かあるとスネークに今度はクワイエットが後を追う。

 バットを信じて進んだ先には同じような古びた建物が見え、レッドベレーの兵士が警備しているようだった。

 

 「確かめますか?」

 「勿論だ」

 

 何の建物か解らないが調べない訳にはいかない。

 三人揃って警備を倒して建物に近づき、扉を開けて中を確認すると通路の先に扉が見えた。

 カメラや仕掛けが無いかと警戒しながら次の扉を開ける。

 外見に見合わず広い内装になっていたようで、右側と正面に続く長い通路に驚いていると、奥より一人の兵士が走って来た。

 銃を構えるも相手は戦う素振りさえ見せずに口を開く。

 

 「久しぶりの客人か?なんにせよ良い所に来たぜ!これからひとっ走りしようと思っていたところだ!俺はランニング・マン!世界一俊足な傭兵だ!俺の脚に付いて来れるかな?」

 

 突然現れたと思えばこちらなど気にせず喋り、ランニング・マンなる者は右の通路へと入って行って曲がり角へと消えて行った。

 あまりに意味が解らず三名は呆然としていると、一周してきたのかランニング・マンは正面より現れた。

 走って疲れたのか肩を大きく揺らしながら…。

 

 「はぁ…はぁ…はぁ…どうだ。早いだろ?そろそろ本番と行こう!この音聴こえるか?この音は神経ガスを流している音だ。ガスに身体を侵される前に俺を倒せばお前は助かる―――さぁ、勝負だ!」

 

 またもや喋るだけ喋って走っていったランニング・マンを見送った。

 実際足は速くてスネークでは追い付けない。

 それはバットも同じ。

 そこでこの中で最も身体能力の高いクワイエットに視線を向ける。

 

 「お前ならやれるか?」

 「スネーク!?神経ガスの中でクワイエットさんに追えって言うんですか!!」

 「しかしこいつでないと追えやしな―――どうした?」

 

 スネークの案に反感を示したバットと言い争いに発展するかと思いきや、入って来た扉を示したクワイエット。

 疑問符を浮かべるもすぐに意図を察して三人揃って外へと出る。

 奴はガスマスクをしていなかった。

 その中で全力疾走する…。

 

 「馬鹿だな」

 「馬鹿ですね…というかクワイエットさんはよく気付きましたね」

 「―――――私の恩人(・・・・)こういう手(捻くれた)を使っていたから」

 「むぅ…」

 

 私の恩人という単語に不満を見せるバット。

 自分に対するのとは違って、子供らしい様子にクスリを笑う。

 そうしていると扉が開いて肩で息を切らしたランニング・マンが現れ、疲弊しきったのかそのまま倒れ込んだ。

 

 「チーターが蛇に負けた…何故だ?」

 「死に急いだからだろ」

 「というか勝負に持ち込むなら扉閉めないと」

 

 倒れ込んだランニング・マンを縛り上げると同時に、シュナイダーも装備していた自爆用の爆弾を解除し、身体を検めてカード3を入手するのであった…。

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