メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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灰色狐を追って

 眼前で爆発が起こる。

 爆風が襲い掛かり、発生した熱気が身体を撫でた。

 クレバスを繋いでいた橋は完全に破壊されて渡れなくなったがそれどころではない。

 ほぼ直撃を受けたグスタヴァが衝撃で吹っ飛んでくるのだから。

 慌てて駆けだした二人は落下地点へと辿り着き、地面に落下し切る前に何とか受け止める事に成功。

 …が、見るからに酷い状態だ。

 

 「これは…バット!医療の心得はあるか?」

 「心得って言うよりスキルだけどな。火傷に裂傷、骨折に破片が入り込んでいる。内臓にまでダメージが…」

 「助かるのか!?」

 「普通は無理だろ。だけど何とかしてみる」

 

 急ぎ処置に取り書かるバットにグスタヴァを任せ、スネークは向かいに現れた二足歩行兵器―――メタルギアに銃口を向ける。 橋にミサイルを撃ち込む事が出来たのならこちらにも攻撃は出来た筈。

 なのに一向に動きを見せない様子には不気味ささえ感じる。

 その間にメタルギアの近くには一緒に出てきた敵兵が博士を囲む。

 何も出来ない状況が続く中、メタルギアより音声が発せられる。

 

 『スネーク!俺だ。グレイ・フォックスだ!!』

 「グレイ…フォックス…」

 

 名乗られた名前を口に出しながら転がす。

 久々の再会や敵に居る事からやはりザンジバーランドのボスは奴かという疑いなどが過るが、それ以上に脳内を占めるのはフォックスがグスタヴァを撃ったという事実。

 ばさりと肩より飛び立った鳩の羽音が耳につき、白い羽が舞う中で感情で定まり切らない思考が乱れ狂う。

 

 『この橋を渡らせる訳にはいかない。昔のよしみだ。見逃してやるからさっさと国へ帰れ』

 「お前は…お前は誰を撃ったか解っているのか!!」

 

 彼女から話を聞いていただけに信じられない。

 怒り交じりの叫びと自身の葛藤からグレイ・フォックスは操縦席より出て姿を現す。

 悲し気な瞳でグスタヴァを見下ろしながら呟く。

 

 「―――俺はあの人への恩義を通す。例え何を失おうとも…」

 「フォックス!!」

 「彼女もお前達と関わらなければこんな結末にはならなかっただろうに…」

 

 ギリっと噛み締め、銃口を向けたまま睨みつける。

 決して引き返す様子の無いスネークに対してグレイ・フォックスは肩を竦めた。

 

 「残念だ」

 

 そう呟いて操縦席に戻り、稼働したメタルギアはミサイルを一基放つ。

 飛翔したミサイルはスネークを吹き飛ばそうと向かうも、一発の銃声と共に空中で爆発を起こす。

 

 『また貴様か!』

 

 グレイ・フォックスの叫びを向けられた先には、ホーリーを背負ったクワイエットが狙撃銃を構えて立っていた。

 最小限の動作で次弾を放つと博士を捉えていた兵士が次々と倒れ始め、これ以上は不味いと判断したグレイ・フォックスはメタルギアを前に出して盾になる。

 

 『博士を連れていけ!』

 

 指示されるまま残存している兵士達は博士を連行して行き、見送ったグレイ・フォックスもこの場は撤退するらしい。

 危険な状況は脱したがグスタヴァの容態は予断を許さないだろうし、そもそもクレバスを超える手段がないので追えない。

 どうする事も出来ないスネークにバットは声を荒げる。

 

 「追ってスネーク!こっちは何とかするから!!」

 「追えって言ってもどうやって…」

 「クワイエットさん!」

 

 呼ばれたクワイエットは意図を理解して荷物の一部をその場に残して駆け出す。

 横を通り過ぎようとする中、彼女は軽々とスネークを抱えてクレバスへ。

 

 「ちょ!?何考えてんの!!」

 「お前っ!?」

 

 まさかと顔を青褪める二人を他所にクワイエットは抱えたままクレバスを跳び越えた。

 ホーリーの悲鳴を耳にしながらいとも容易く跳び越えた事に感心する。

 そして着地すると同時に離れて、バットへと叫ぶ。

 

 「そっちは任せるぞ!バット!!」

 

 眼を向ける余裕もないのか頷いて返事を返す。

 追うにしても相手は高位のカードキーを持っていた為にすんなり進んだが、こちらはそう簡単には進む事が出来ない。

 カードキーを入手する為にも手あたり次第部屋を捜索しなければならない。

 

 「ホーリー。この先は所有しているカードキーで何とかなるか?」

 「駄目ね。最低でもカード8は欲しいわね」

 

 となれば探すしかないかと近場の扉を開ける。

 扉を開けた先に広がる光景に戸惑いを隠せない。

 なにせ仕切られたエリア内を腰ほどまでの高さがある植物が埋め尽くしているのだ。

 アンブッシュには適した場所であるのは明白。

 案の定草むらの中から一人の兵士が姿を現した。

 

 「待っていたぞスネーク!」

 「待ち合わせの約束はしていない筈だが?」

 「軽口とは余裕だな。だが、ここは俺――ジャングル・イーブルのフィールド。ジャングルでのアンブッシュで俺の右に出る者は居ない!貴様が本物の蛇か試させて貰うぞ!!」

 

 そう言うとイーブルは草むらの中に溶け込んだ。

 何処だと視線を走らすもあちこちでがさがさと草むらが揺れ、位置が特定し辛い。

 あれだけ見栄を切るだけの実力はあると言う事か。

 出来れば無視して他の部屋に行きたいところだが…。

 

 「確か彼はカード8と9を管理している筈だわ」

 「先に進む為には倒すしかない訳か…行くぞ」

 

 警戒しながら中へと入ると扉が閉まり、逃げ場のない状態で奴と戦わないといけないようだ。

 周囲に気を配るも突如後方に現れたイーブルへの対応が遅れる。

 

 「死ね!スネーク!!―――ッ、うおっ!?」

 「敵は一人じゃないわ!」

 

 トリガーを引こうとしたイーブルにホーリーが発砲。

 当たりはしなかったが奴のタイミングをずらす事には成功した。

 忌々しそうに再び潜るも、今ので対抗策が生まれた。

 

 「俺の背中は任せる。だからお前らの背中は任せろ!」

 「任せたわ!!」

 

 スネークとホーリー、クワイエットの三人が背中合わせとなって周囲を警戒する。

 死角が無くなった事でイーブルも攻撃がし辛い。

 それでも意地がある。

 何度も何度も現れては仕掛け、そして返り討ちにあっては引っ込む。

 気力で喰いついて来るも蓄積しているダメージはそれを超えて行く。

 徐々に動きを鈍らせたイーブルは倒れ込む。

 

 「クソッ…俺がここで後れを取るとは…」

 

 一人では危なかっただろう。

 そう思いながら倒れたイーブルよりカード8を入手する。

 しかしカード9は持っていないようだ

 

 「カード9はどうした?」

 「さぁな…お前達に渡すと思うか?」

 

 くつくつと嘲笑うイーブルは続けて「どうしてもと言うなら探すが良い…」とだけ口にして気を失った。

 探すってどこを…などと現実逃避したいところだが、この草むらをだよなと三人揃って肩を竦ませる。

 それでも一人ではなく三人という人数が居るだけマシというものだろう。

 三人で草を掻き分けて探して周り、見つけたのは戦闘を行っていた出入り口付近ではなく、かなり離れた奥の方だった。

 ここまでくると嫌がらせだと判断して、無意味ながら気絶しているイーブルを睨みつける。 

 

 ため息交じりに拾ったカードを手に先へと進む。

 進んだ先には建物があり、中に入るも放棄でもされたのか監視カメラの電源が落ちている。

 内部を探るも研究所みたいな感じもするがどうも違う…。

 奥へ入って行くと卵が一個転がっていた。

 

 「卵…という事は養鶏場…なんて事は無いわな」

 「なんの卵かしら?」

 「鶏じゃあないのか?」

 

 とりあえずポケットに仕舞う。

 するとそれがきっかけだったのか解らないが、施設の電源が復旧して監視カメラが作動する。

 とは言っても潜入の必需品であるダンボールを使えば何も問題はない

 

 施設を出て道沿いに進むと武器弾薬を大量に積んだトラックがあり、警備の兵士の目を盗んで補給を済ます。

 道中高いセキュリティで保護された扉もカード8とカード9で解除出来た。

 ただ問題はその先にこそあった。

 

 塀で囲まれた先には複数の施設が並び、警備の兵士が巡回をしていた。

 それだけなら問題ではない。

 一番の問題は出入り口である門に線が張られていた事。

 確実にセンサーである事は明白。

 普通に通れば警報が鳴って敵兵が殺到してくる。

 グレイ・フォックスとの一件で敵兵もこの周辺に集まっているだろうから、クワイエットが共にいるとは言え戦闘は避けたいものだ。

 

 「さて、どうしたものか…」

 

 中に入ろうにもしゃがんで入り込めるような隙間もなく、どうしても正面を突破するしかない。

 ただ突破するにも手段や作戦は必要だ。

 どうするどうすると思案し、悩み過ぎたせいか腰の辺りがむずむずする。

 気のせいだと思っていたむず痒さははっきりしたものと成り、押されたような衝撃を受ける。

 なんだと振り返るとクワイエットとホーリーが神妙な顔でこちらを見つめていた。

 

 「さっき押したか?」

 「い、いや、押してはいないんだけど…」

 

 妙な反応に首を傾げていると肩が重さを感じ、二人の視線がそちらに向いた。

 スネークもゆっくりと振り向くとそこには小さなフクロウがちょこんと乗っていた。

 

 「いつの間に?ていうか何処から?」

 「貴方のポケットからよ」

 

 そう言われてポケットに視線を落とすと卵の殻が散っていた。

 まさか先の卵が孵ったのがこいつかと目を見開く。

 視線を集めたフクロウは何気ない様子で「ホォ…ホォ…」と鳴き始めた。

 周囲の雑音が少なかった事もあって非常に響いた。

 不味いと慌てると近くに居た兵士が反応を示す。

 気付かれたかと銃に手を掛ける…。

 

 「もうそんな時間か…」

 

 兵士は欠伸一つ零して側のボタンを押す。

 すると入り口の線が消えて兵士は去って行く。

 三者三様にこの事実に驚きつつ、スネークはフクロウの頭を軽く撫でる。

 

 「お前、良い子だな」

 「蛇に集う鳥ってどうなのよ」

 「本当にな…」

 

 鳩が居なくなったと思ったら今度はフクロウか。

 小さく鼻で笑って通れるようになった門を通るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体が重い…。

 ここは何処?

 ゆったりと意識が覚醒して行き、身体中に痛みが走って強制的に叩き起こされる。

 

 「―――イッ…ここは?」

 

 眼を覚ましたグスタヴァは目を擦りながら周囲を一瞥してそう呟いた。

 自身は清潔感のあるベッドに寝かされており、周りには同様のベッドが並び、鼻孔を薬剤の香りが擽る事から医務室という事は理解出来た。

 しかしなぜ自分が医務室に居るのかが理解出来ていなかった。

 いや、記憶と意識が追い付いていなかった。

 順序だてて出来事を思い返していると自分が橋を渡っている最中にメタルギアの攻撃を受けた事を思い出す。

 私はやられたのかと解り、身体中の痛みと巻かれている包帯を見てよく死ななかったものだと感心する。

 そうしていると向こうから女性が気付いて近づいて来た。

 ザンジバーランドには女性兵士は居ない筈と疑問符を浮かべながら彼女に警戒を向ける。

 

 「起きたようね。バット!彼女起きたわよ」

 

 バットを呼んだことで幾らか警戒が和らぐ。

 味方かどうかは解らないが、敵ではなさそうではある。

 彼女―――ジェニファーに呼ばれたバットは安堵した様子であった。

 

 「良かった。怪我も酷かったし、俺自身スキルの把握しきっていた訳ではないんで心配だったんだ」

 「…それよりあの後どうなったの?スネークは?」

 「博士が連れていかれた。スネークは貴方を撃ったメタルギアを追って行ったよ。グレイ・フォックスが乗るメタルギアを…」

 「そう……そうなのね…」

 

 グレイ・フォックス…。

 フランク・ハンターの話をしていた際に出た彼のコードネーム。

 私は彼に撃たれたんだと言う事実が心を搔き乱すも、彼を知っているだけに納得している落ち着いている自分が居る。

 …ただ身体の怪我以上に心が痛い…。

 傷心しているグスタヴァにバットに選択を迫る。

 

 「現状スネークとクワイエットさん、ホーリーが追跡中。俺も後を追わなきゃいけないけどその前に貴女に聞くべき事がある」

 「私に聞くべき事?情報なら…」

 「一つ、負傷した事から実戦は難しいと判断して彼女達と共にここから脱出するという選択」

 

 彼女達と脱出と聞いてジェニファーに視線を向けると小さく微笑を返された。

 

 「私達は彼らの協力者。だけど最後まで付き合う気はないの。すでに目的は達せられたし、彼らには充分な協力はしたと考えているの」

 「しかし、ここから脱出と言っても容易ではないでしょう」

 「そこは大丈夫。スネークとバットが暴れてくれたおかげで注意はそっちに向いているし、こちらには新しい協力者(・・・・・・)も得たから脱出手段も確保出来た。少なくとも貴方一人増えたところで問題ないわ」

 

 グスタヴァは悩む。

 ジェニファーの言う通りなら自身の状態を鑑みても彼女らと離れるのが正しいだろう。

 けれど任務を放置し、人任せにして良いのか?

 それ以上に…と頭を過った辺りでバットがもう一つの選択肢を提示する。

 

 「もう一つは俺と一緒にフランクをぶっ飛ばすという選択」

 「フランクを…」

 「眠り姫を王子様が起こすなら兎も角、眠りにつかせようとするなんて話に合わねぇだろ」

 「けど、私のこの状態では足手まといになるでしょう…」

 「なら俺も行こう」

 

 そう言って話に参加したのはカイル・シュナイダーであった。

 ブラック・カラーは知っていても中身のシュナイダーを知らなかったグスタヴァは「誰?」と首を傾げ、彼の状態を知っているジェニファーは首を横に振った。

 

 「駄目よ。貴方の身体は…」

 「まだ俺は動ける。それに俺達だけでなくここに居るレジスタンスの同志と子供達を脱出させるには陽動は必要だ。スネーク達に合わせて俺達も行けば警戒はクレバスの方に向くだろう。そうなれば脱出はより容易くなる」

 「それはそうだけど…」

 「なにも死に行く訳ではない。蛇と蝙蝠に借りを返すだけだ。時間が経てば利息が付きそうだしな」

 「けど良いのか?それはビッグボスとの戦いに…」

 「俺は痴話喧嘩の仲裁込みで怪我人の護衛だ。ボスと戦う気はない」

 

 ジェニファーは納得できていないようだが、陽動は欲しかったために理解は出来てしまったために、それ以上口を挟む事は無かった。

 二人の話が済んだことでバットはほくそ笑みながら問いかける。

 

 「で、どうします?再会を記念して強めのビンタ喰らわしてやらね?」

 「ふふ、良いわね」

 

 冗談交じりに返すグスタヴァはクスリと微笑む。

 ここに陽動やスネークとの合流、フランクを引っ叩く為に急造チームが誕生し、グレイ・フォックスは悪寒を感じるのであった…。

 

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