スネークと別行動中のバットは急ぎ合流しようと先を急ぐ。
正直任務達成を考えるだけならスネークにクワイエットさんが居る向こうが負けるとは万が一にも思ってはいないのだが、クライマックスを見逃すのは癪だし、一緒に居るグスタヴァさんが到着する前にグレイ・フォックスを倒されては困るのだ。
だから急ぐも警備を強化している敵が邪魔で仕方がない。
向こうから言えば計画の邪魔をしているのはこちらなのだが…。
渡るには難しかったクレバスはクワイエットが置いて行った荷物の中に合ったハンググライダーでバットは飛び越え、グスタヴァは身体強化されているシュナイダーと何とか跳び越えた。
だが、問題はその先にこそあった。
正確な地図を知っている訳ではない為に、手当たり次第に探すしかない一行は腰の辺りまで草が生えた一室に入り込む。
そこはスネーク達がジャングル・イーブルと戦った場所である。
「どうしたバット?」
「……何かいる―――ッ、ここは狩場か!!」
覚えのあるひり付く雰囲気にバットは叫ぶ。
同時に響く銃声にシュナイダーが反応してグスタヴァを伏せさせて身を隠す。
バットもバットで伏せて身を隠しながら周囲を探る。
敵側だったシュナイダーは幾らか事情に詳しい。
姿がなかったことから熟練の兵である事は確か。
ザンジバーランドに名を連ねた兵士の中でこういう場所での戦闘が得意なものと言えば思い当たるのは一人だった。
「気を付けろバット。ここに居るのは
「誰ですかそれ…」
「密林地帯でのアンブッシュが得意な兵士だ」
「そいつは複数人ですか?」
「いや、一人だが…」
「だったら
シュナイダーは気付けなかったが耳を鍛えたバットは二人分の移動音を捉えていた。
そしてそのどちらも姿が見えない。
一人はシュナイダーが言っていた通りだとしてももう一人は…。
「姿が見えないもう一人―――ッ、まさかナイト・
「だから誰ですか?」
「伝説のゲリラ部隊“ウェイパーズ”の生き残りだ。俺も話でしか聞いた事ないが最新の
「ウェイ・ション…なに!?」
「つまりは消音拳銃だ!」
「ならばやり様はある。二人は壁際に!」
動けるとは言え怪我人を抱えての戦いは非常に不味い。
ここはシュナイダーに護りに入って貰うとして、攻め手は自分が対応しなければとバットは舌打ちを零す。
姿を隠すのが上手い敵とは戦った経験はあれど、姿を消す相手に勝った試しはない。
ただクワイエットのように姿を消したまま長距離狙撃で一方的に撃ってくる訳ではなく、拳銃でこの狭い室内だけならまだやり様はある。
ガザガザと草むらを掻き分けて室内の真ん中で立ち上がり、わざと姿を晒して目をそっと閉じる。
あのクソ親父なら難なく突破するだろう。
最悪草むらに火を放って外で待っているかも知れない。
だけど俺はそんな手を使いたくないし、正直苛立つほどに腹が立っている。
自身の中で否定しているがクワイエットさんと同じく姿を消せる敵…。
…半分勝手な八つ当たり。
向けられる方は溜まったものではない。
がさがさと草が揺れる音がする。
姿を隠しているにしても消しているにせよ、どちらも存在している以上は音が発生する。
鳴らないようにしていてもこれだけ人気が無く音の発生が少ない場所では嫌でも目立つ。
耳から入る情報で敵の位置がだいたい把握できる。
しかしそれはだいたいであり正確な位置でなければ小さな銃弾は当たらない。
散弾銃かグレネードランチャーでも持っていれば話は別だったろうが…。
小さい音が僅かに上がる。
同時にシュナイダーとグスタヴァの声も…。
そちらに振り返りながらベレッタM92を向けるとそこには銃口を向けるガスマスクをした男が居た。
姿が見えた事からプレデターだと判断し、横っ飛びに銃口から逃れつつ左手で手榴弾を放る。
当然プレデターは射撃するも手榴弾を見て中断。
即座に隠れようとするもバットが正確な射撃で手榴弾を撃ち抜き、プレデター近くで爆発四散させた。
直撃ではないにせよ爆発によって破片が爆風によって散り、プレデターは背中に背負っていたタンクが被弾する。
それだけではなく銃にも深刻なダメージが入り、戦闘能力が一気に激減した。
戸惑いを見せるプレデターにバットは右肩を撃ち抜く。
痛みで倒れ込んだプレデターから意識を外し、もう一方に向けようとするも音がしない。
今は相手も動いていない。
先の手榴弾の爆発を受けて行動不能に陥った―――っと思いたいが、そう都合の良い話も早々ないだろうな。
―――バシュ…。
抜けたような音がする。
僅かに身体を動かす。
左腕に焼けるような痛みが走る。
おかげで痛みと
撃たれた衝撃からかステルス迷彩は解除され、ナイト・サイトはその姿を現した。
音の発生源を狙ったが為にナイトは右腕と右肩辺りを撃ち抜かれていた。
傷口を抑えながらバットを睨みつける。
「……何故だ…どうして俺の居場所を…」
「音だよ」
「音?」
「消音拳銃つっても音が完全に消える訳じゃあない。発砲すれば幾らか小さくなる程度で音は出るんだよ」
「最新技術と銃を過信し過ぎた結果か…俺も落ちたものだな…」
乾いた笑みを浮かべながらナイトはがっくりと肩を落としてその場にて膝をついた。
ナイトとプレデターをシュナイダーが縛り上げている最中、バットはグスタヴァに撃たれた左腕の応急手当をして貰いながら、ナイトが落としたウェイ・ション・ショウ・シャン―――サイレンサー一体型拳銃“64式微声拳銃”をジロジロと眺める。
リボルバーを愛用しているけどこういった拳銃もあのクソ親父は好きそうだなと苦笑いを浮かべ、包帯をきつく巻かれる痛みで顔が歪む。
その頃、スネーク達は困惑した様子で床を眺めていた。
先へ進んでエレベーターにて地下へと降りた一行は、とある通路で足止めを喰らっていた。
敵兵が居たとかブービートラップが仕掛けられていたとか言う話ではない。
通路に濃硫酸が撒かれていたのである。
一応跳び越えられないほどではないにしても、ミスれば掠り傷では済まないだろう。
そこで濃硫酸を除去する為の方法を模索するも、化学の専門家が居る訳ではないので自然と無線で問いかける事に。
『濃硫酸?だったらチョコレートで何とかなる!良いか、チョコレートで濃硫酸は対処できる!!』
俺達はそのマスターの一言に耳とマスターの頭を疑った。
しかし実際にB1レーションに入っていたチョコレートを撒いたら濃硫酸を無害化する事に成功。
三人は疑ってしまった事を心の中だけで謝った。
なんにせよ先に進めるようになったので、途中途中撒かれた濃硫酸を同様に無効化して進み、最奥の扉を開けるとそこには白衣を着た研究者が二人…。
「「――ッ、助けてくれ!?」」
「…ナニコレ?」
入った矢先に視界に入ったのは鳩に襲われているドラゴ・ペトロヴィッチ・マッドナー博士と、マッドナー博士から距離を取っているキオ・マルフ博士。
両者とも入るや否や助けを求めて来て、求められたスネークは現状が理解出来ず首を傾げる。
「居なくなったと思ったら…まぁ、良い。キオ・マルフ博士ですね?」
「あぁ…ああ!そうだとも。助かった!私を助けて欲しい!!」
「勿論だ。俺達はアンタを救出しに――」
「
「…マッドナー博士、どういうことか説明を」
クレバスで別れた鳩はマッドナー博士に付いてここまで来ていたのだろう。
スネークがマッドナーとマルフの間に入ると鳩はスネークの肩に止まる。
右肩にフクロウ、左肩に鳩が止まっている状態にも関わらず、スネークは一切気にせずマッドナー博士を睨みつける。
すると後から入って来たホーリーが睨むどころか銃口をマッドナーに向けた。
「おい、ホーリー…」
「気になって本局にペトロヴィッチ博士の事を調べて貰ったのよ。彼は敵側の人間よ」
「…なに?」
銃口を向けたままホーリーは語る。
調べではアウターヘブン後の博士はあまり良い扱いをされていなかったらしい。
メタルギアを始めとした過激な極論を西側は受け入れられず、学界から疎外されて腫れもののように触れないようにされて存在すら忘れられていった…。
そんな学会に対して良い思いを抱くはずもない。
調べ上げた情報にはマッドナー博士が西側の最新科学を流した形跡が見られた。
それもザンジバーランドに…。
ホーリーによって語られた話は事実であったようで、マッドナー博士は諦めた様子でその場に腰を降ろした。
「その通りじゃ…あの事件以降儂は非難され続けた。過激だと言って聞く事もなくメタルギアは切り捨てられた…。儂は悔しかった。世界を守るために君らに協力したというのに儂は世界に裏切られた!いや、裏切るどころかメタルギアごと切り捨てられたのだ!!儂は悔しい!憎い!だからザンジバーランドに協力したのじゃ!彼らは儂を必要としてくれた!メタルギアの重要性を認めてくれた!十分すぎるほどの援助も!」
「まさかマルフ博士に近づいたのも…」
「…思っている通りじゃ。OILIXを手に入れる為にマルフに近づいた…すまんかったなマルフ博士…本当に申し訳なかった…」
がっくりと項垂れたまま謝罪したマッドナーにマルフは少し考え込んだ様子だった。
多分だが殺されそうと助けを求めたのは、OILIXの情報を聞き出そうと迫ったのだろう。
危うい場面だっただろう。
そんな目に合わされただろうに科学者ゆえかマッドナーの気持ちを理解したマルフ博士は同情したような視線を向ける。
だがそんな博士の気持ちは関係なく、スネークとしてはどうすべきか悩むところであった。
なにせ彼は裏切り者だ。
救出後にトイレと言って離れたのはこちらの情報を伝えていたと考えるべきで、そうなるとグスタヴァが大怪我を負う事になったメタルギアでの待ち伏せはその情報を元にした可能性が高い。
これ以上同行しても危険が増すばかり。
情報を流されずとも万が一に背後から銃口でも向けられたら目も当てられない。
かといって縛って放置という訳にも行かない。
娘のエレンの為にも連れて帰ってやりたい気持ちはある。
「さて、どうしたものか…」
銃口を向けるホーリーは“敵”としてマッドナー博士を見ており、俺は中途半端な状態で見ている。
クワイエットに視線を向けるも彼女は私は関係ないと言わんばかりに壁に凭れて楽にしている。
ここはバットの意見も聞きたいが、ここで待っているのもどうなのか。
「すまんがOILIXの設計図を回収したいのだが…」
「回収?博士が持っているのでは?」
「いや、このロッカーの奥に隠した」
「なら開ければ良いじゃない」
「それが開かないのだよ。違うな、開けれないんだ」
マルフ博士はOILIXの設計図がはいったカートリッジを奪われないようにロッカー奥に隠しはしたのだが、鍵を自分が持っていては奪われて簡単に開けられてしまう。
なので信頼できる相手に鍵を預けたという。
「鍵はナターシャが持っている。彼女に会わんかったか?」
「ナターシャ?いや、会っていないが…」
「私達があった女性と言えば、ここに居る面子を除けばグスタヴァだけよね」
「あぁ、そう言う事かグスタヴァがナターシャなんだ」
マルフ博士が言うにはグスタヴァ・ヘフナーが彼の言う“ナターシャ・マルコヴァ”だという。
スネークは昔の記憶を思い出すも彼女がオリンピック選手だったという事と顔は思い出せても、名前まではっきり覚えていた訳ではなかった。
どちらかは偽名かコードネームだろうと判断する。
そんな事よりもこれで方針が決まった。
OILIXの設計図を放置する訳にはいかないので、ナターシャ…グスタヴァを待つしかなくなり、スネークは二重の意味でバット達が合流するのを待つのであった。