メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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 待たせたな!(鼻声)
 すみません遅くなりました。
 ここ数週間花粉症で悩まされ、ダウンしておりました。
 投稿再開致します。


いざ、潜入!

 モロニ共和国ロビト島に上陸したソリッド・スネークとバットは、装備品を確認した後に草木を掻き分けて進んでいた。

 目的地は木々に覆われた森林地帯に囲まれたロビト理化学研究所。

 道中スネーク達にはなんら問題は起こらなかったが、途中途中ロジャーより送られる情報は悪いものばかり。

 未だにピュタゴラスの詳細もフレミングの情報すら不明。

 上陸前に送り込まれたHRTのスペンサー隊は通信途絶。

 さらにロビト理化学研究所はスペンサー達が投入されるより前に、正体不明の武装勢力によって制圧されていたという事実。

 スペンサー隊が音信途絶になった事から全滅したと考えていいだろう。

 となれば正体不明の武装勢力はそれだけの実力を持つ部隊という事になる。

 研究所の警備兵を相手にするだけだった筈なのだが、特殊部隊並みの敵対勢力に化けるとは…。

 

 状況は悪化してしまうも研究所だけに目が向いていたのか人手や時間が足りなかったのかは解らないが、周辺地域の警戒まで兵を割いていなかったのでスカウト兵の待ち伏せも無く研究所に近づく事が出来た。

 ただ守りが存在しない訳ではなく、地図的には研究所に近づいた辺りでフェンスが進路を塞いだのだ。

 それも高圧電流が流れるフェンス。

 周囲が森に囲まれている事から動物避けの役割もあったのだろう。

 招かれざる客である蛇と蝙蝠も足を止める事になってしまった。

 

 「高圧電流か…知ってるか?ザンジバーランドで戦ったビッグボスは高圧電流のフェンスに触れても痺れるだけだったらしい」

 「やりたいんですかソレ?」

 「まさか」

 

 パイソンも誰かから伝え聞いた話を少しばかり鼻で笑いながらバットにすると、疑いの眼差しを向けながら呆れた様子で返して来た。

 気持ちはよくわかる。

 高圧電流で痺れるだけだったというビッグボスの異常な肉体に、わざわざ触れに行ったという不明な行動。

 聞いた当初は自身も同じような態度を見せたものだ。

 

 「ロジャー、施設前に到着した。フェンスが行く手を塞いでいるのだが高圧電流が流れているようだ。元がどこにあるか教えてくれ」

 『入り口はどうなのだ?』

 「入り口は…あるが南京錠が掛かっているな」

 『なら南京錠を撃ち落して施設内に侵入するのだ』

 「いやいや、ドラマや映画じゃないんだから…跳弾したらどうするのさ」

 

 ロジャーの解答に声色からハッキリと呆れたバットはフェンス入り口に近づいたらごそごそと何かし始めた。

 何をしているのかと近づいて覗いてみると何処からか取り出した針金を使って南京錠を解除しようと試みていたのだ。

 慣れた手つきで易々と開けた様子に今度はこちらが呆れてしまう。

 

 「…慣れてるんだな」

 「ハッキングやドリル使った力業だったら道具が足りないから無理だけどこれぐらいならね」

 「それもまた父親の教育の賜物か?」

 「いんや、母さんの教育だよ」

 

 呆れるべきなのか、それとも見事な英才教育かと褒めるべきなのか。

 どちらにせよバットは色々と苦労しているという事。

 苦笑を浮かべつつ、バットが開けた入り口を通って施設内部へと侵入する。

 施設内と言っても外延部に入れた程度。

 敵の警備も見受けられない。

 

 『スネーク。心拍数が毎分145拍に上がっている。どうも機器に誤差が生じているようだ』

 「試作機なのだから仕方がないだろうな」

 

 ロジャーの報告にあまり興味なさ気に答える。

 今回支給されたスニーキングスーツには“CHAIN(チェイン)”が搭載されている。

 “CHAIN(チェイン)”というのは最新の生体データ収集端末で、装備者の生体情報や環境情報を収集し、理論上(・・・)は簡易的な遠隔医療を行う。

 説明だけ聞けば大した優れものだが、本格的実践投入は今回が初。

 まだ試作機を引っ張り出してきたわけだ。

 しかも内容的には公の記録には残らないであろうこの任務に…。

 正直バットは数値上とは言え監視されている様であまり好きではないらしい。

 それでも仕方なしと嫌々着たのだとか。

 

 『敵と遭遇する前に彼女を紹介しておこう』

 「あぁ、例のテレパシーとか幽体離脱とかいうアレか」

 『遠隔透視よ。離れながらにして遠方の光景を視るの』

 『彼女にはその力で施設内部のナビゲーションを担当する』

 「…俺は猿の手や水晶玉に命を預ける気はないぞ――うぐっ!?」

 

 紹介と同時にさらりと言われた一言に険しくなる。

 情報というのは早さと正確さによっては、作戦の可否だけでなく味方の命すら危険に晒す。

 遠視能力などというオカルトに頼るなど冗談ではない。

 そう思って口にしたところ、ジト目のバットに横腹を肘打ちされた。

 

 「失礼ですよ。そもそも情報がないのは承知しているでしょう」

 「分かってはいるが…ならお前は命を預けれるのか?」

 「預けませんよ。けれども参考にはするけど」

 『命を預けられても迷惑だけどそこの彼のようにほどほどに(・・・・・)信じたほうが為になるわよ―――おじさん(・・・・)

 「ブッ…クフフ…」

 「笑うなバット」

 「ふふ、中々面白い人みたいだ」

 

 どうもはっきり言う様子を気に入ったようだ。

 俺はおじさん呼びもあって想う所は多いがな…。

 我慢しているようだが肩を震わして嗤うなバット!

 

 『若いが実績は確かだ。FBIに協力して見つけ出した行方不明者は200を下らない優秀な協力者だ。FBI長官のお墨付きもある』

 『よろしくね』

 『それと熟練者たる君らにいうのも気が引けるが――― 命令以外の行動は慎んでくれ。命を預かりきれなくなる』

 「「了解」」

 

 森林からロビト理化学研究所ゲート前へと進む。

 ここまでは見張りも居なかったがさすがに正面ゲートまで続く事はなかった。

 トラックが通れるように舗装された道路は施設内へ続くが、遮るようにゲートとアサルトライフルを装備した兵士が警備に当たっていた。

 

 「数は三名…いや、四名か」

 「お前の耳はソナー並みで助かる」

 

 バットが音を頼りに人数と位置を指し示す。

 位置と人数が解ればやり易いというもの。

 周囲は小屋やトラックもあって遮蔽物は多い。

 隠れながら進むのは存外に楽なものだった。

 ただゲート前でぴたりとも動かない警備だけが問題であったが、近場で身を潜まして物音を立てて誘き寄せ、その間をすり抜ける事で容易に突破する事が出来た。

 

 『誰か…こ…ら、ゲぃ……ゲリー・マーレー』

 

 抜けた辺りで何者かの呼びかけを無線が拾った。

 この周波数帯を確認してみれば一応登録だけはしておいたスペンサー隊のもの。

 まさか生き残りかとロジャーに問う。

 

 「ロジャー。ゲリー・マーレーは何者だ?スペンサー隊の生き残りか?」

 『いや、そんな隊員は居なかった筈だ。警戒しつつ応答して貰えるか?』

 

 潜入したとバレてはいない筈。

 ならば敵の罠とも思え難い。

 不安はあるものの指示通り無線に出る。

 

 「ゲリー・マーレー。応答を」

 『アメリカ人か!?奴らにやられた部隊の生き残りか?』 

 「…まぁ、そんなところだ」

 

 ゲリー・マーレーと名乗る者はこの研究所の研究員だという。

 仕事内容は実験動物の検疫、防疫の指導を行ってはいるが、研究自体を指揮または知る人物ではないらしい。

 現在所員は居住区に閉じ込められ、酷い扱いを受けている。

 ゲリーは隙を見て抜け出し、今はゲート北側管理事務所に隠れている。

 彼はフレミングの居場所を知っており、救出する事が出来れば施設内の情報とフレミングの居場所の両方を得る事が出来る。

 しかし罠の可能性も完全に排除しきれない。

 重要な手掛かりである彼をどうするべきか?

 隠れていると言っても周囲を敵兵が探し回っている様で見つかるのも時間の問題らしく、無線機が途中で壊れてしまったためにそれ以上聞き出す事は出来なかった。

 悩む時間もない事からロジャーが下した決断はゲリーとの合流であった。

 北にある施設に向かい、内部の警備に見つからないように管理事務所で急ぐ。

 警備の兵士の眼を掻い潜りながら進む中、ロジャーより研究所を制圧したのはモロニ共和国の反政府軍に雇われていた傭兵“レオーネ部隊”だという事が判明したらしい。

 ただそれ以上の詳しい詳細や目的、彼らの雇い主の情報はまだ入手出来ていない。

 考えてもこれ以上は憶測の域を出ないので情報をそのまま頭の片隅に追いやり、施設内へと辿り着くと今度はアリスから無線が入った。

 

 『聞こえるおじさん(・・・・)

 「…あぁ、どうした?」

 

 まだおじさん呼びがツボに入ったのかバットが肩を震わせて我慢している。

 スルーして問いかける。

 

 「ゲリーはおじさんの丁度北にいるわ」

 「なにを根拠に…」

 『感じるの。なんて答えでは納得できないかしら?』

 

 納得は出来ないがバットが言ったように何も情報がない状況下では参考にするしかない。

 そんな気持ち有り気のスネークであったが、アリスが続けた“感じた”情報に驚く事になる。

 もっと曖昧なものかと思いきや、アリスは西へ進んで曲がり角を曲がると入り口があると言う。

 研究所内の情報がない中でまるで見ているように正確に道順を指示される。

 サイ機能とはそういうものなのかと疑問と感心を抱いていると、警戒しつつ指示通り進むとオフィスのようにデスクが並ぶ部屋へと出た。

 

 監視カメラも巡回の兵士も居なかったが、代わりにロボットが巡回していた。

 ロジャーが言うにはロビト理化学研究所で開発されたロボットだとか

 簡易的なローラー付きの四足に頭であるカメラ、小型の機銃が取り付けられたもので見た感じは脆そうだが、特殊装甲で覆われて防御力は硬く、対装甲武器を使用するかチャフグレネードで通信を遮断するしかない。

 今ではレオーネ部隊に使われて、彼らの番犬になってしまっている。

 手にしている武器で有効な攻撃武器はグレネードかクレイモアのみ。

 戦わないに越したことはないのでチャフで対処するほかない。

 

 そうやって先に進んだところで人影を目にした。

 オフィスのようにデスクが並んだ一室にて、帽子にコート姿の男が奥へと駆けて行ったのだ。

 格好から兵士のようには見えず追い掛ける。

 しかし先の部屋には男の姿は見えない。

 

 「バット」

 「了解」

 

 バットは目を瞑って耳を澄ます。

 何かを聞き取ったのかあるデスクを指差した。

 銃を向けて警戒しつつ見てみるとデスクの下の隙間に誰かが居る。

 

 「ひっ!?う、撃たないで!」

 「ゲリー・マーレーだな」

 「えっ?なんで俺の名前を…」

 「さっき無線しただろう」

 「もしかして生き残りのアメリカ人か!た、助かったぁ…」

 

 酷く怯えていたようだが無線の相手としると安堵した様子だった。

 あえてスペンサー隊の生き残りと勘違いしているのは正さずにそのままにしておこう。

 

 ゲリーは隙を見て逃げ出して“FAR”に向かう途中、フレミング博士を見つけたのだという。

 “FAR”というのはプラントの一番北にあるフレミング博士が指揮を執っていた研究棟の事である。

 フレミング博士の側近しか入れないそこを職員達は“フレミングの集会所”の頭文字を取って“FAR”と呼んでいた。

 なんにしても“FAR”に向かっていた途中、フレミング博士を発見したのだ。

 …ただゲリーは下っ端でフレミングと面識はない。

 襲撃者に連行されている時に「私はフレミングだ!貴様らどういうつもりだ」と叫んでいた事から本人だと判断したらしい。

 兎も角フレミングが東に位置する居住区へ連れていかれる現場を目撃。

 ゲリーは逃げる途中で見張りに見つかって命辛々ここへ逃げ込んで今に至ったのだ。

 

 「応急だけど治療は終わったよ」

 「助かるよ」

 

 情報は得た。

 逃げていた途中で負傷したゲリーの怪我の処置も済んだ。

 今回はアウターヘブンやザンジバーランドのようにレジスタンスの味方はいないので、ゲリーを誰かに預ける事は出来ない。

 かといってただの職員で負傷したゲリーを連れて行く訳にもいかない。

 

 「ここで待ってろ。終わったら拾いに来る」

 「出来るだけ早く頼むよ…」

 

 不安そうなゲリーをその場に残し先に進む。

 時刻を確認するとGMT01:30。

 

 「不味いな…」

 

 今回の作戦はゆっくりと時間をかけれる訳ではない。

 ハイジャックされた326便は危機的な状態に置かれている。

 乗客はガスで眠らされているも犯人がその気になれば濃度を上げて殺す事が出来、飛行高度が35000フィードより下がると機内に仕掛けた爆弾が爆発する。

 救出作戦も着陸させる事も出来やしない状況。

 さらにそこに時間制限が加えられている。

 犯人が要求した時刻より十時間以内に“ピュタゴラス”を渡さなければならないのだが、要求されたのはGMT19:22…。

 すでに六時間が経過している以上急がねばなるまい。

 焦りが言葉になり、それを聞いたバットがベレッタを構える。

 

 「なら急ぎますか」

 「強行突破は避けたいところだったんだがな」

 「こちらにはこちらの都合があるように向こうにだって都合があるさ。迷惑な事ですけどね」

 

 ベレッタを握りながらバットはため息を漏らす。

 なんにしても急ぎ東の居住区を目指し、フレミング博士を確保しなければ。

 二人は得物を手にして急ぐのであった。

 

 

 

 

 

 

 ハイジャックされた326便機内。

 次期大統領候補であるヴィゴ・ハッチ上院議員は心穏やかではなかった。

 勿論ハイジャックされている事実もだが、それ以上にこの事件に()が関わっているのではないかという疑念が一番の要因である。

 最初は同じく次期大統領候補として名が挙がっているジョージ・シアーズも脳裏を過ったが、あの男がこんな安直な手段を講じて来る筈もない。

 これが奴の仕業であるのなら私の命運はここで尽きるのだろう。

 いや、もしも生存できたとしても()の情報が少しでも漏れることあれば次の選挙で大敗…否、政治家としても終わりを迎える事になる。

 

 何故こんな時期にと頭を痛める。

 護衛にSPを付けては居たものの、この機内に充満するガスでダウンしてしまい使い物にならない。

 寧ろこの機内でまだ動けそうなのは自分と秘書兼SPのレア・アロー、そして後ろの席に座っている少女ぐらいなものだろう。

 動けそうと言っても辛うじてだが…。

 今しがた状況を知るべくレナは席を離れて探っている。

 

 不安が残る彼の前に道化師のような衣装を纏った人形がカタカタと足音を立ててやって来た。

 人形が歩いている光景そのものが異常なのだが、追い打ちをかけるように人形が喋り出したのだ。

 戸惑わない筈がなかった。

 驚きを隠しきれないヴィゴ・ハッチの前で人形二体―――エルジーとフランシスは名を名乗って言葉を続ける。

 

 「私達“ピュタゴラス”が欲しいの」

 「おじさん……持ってる?」

 

 この奇妙な人形の言葉により奴だと確信した。

 絶望に引き摺り落とされた気持ちだった…。

 しかしそれで終わりはしなかったのだ。

 人形たちは楽しそうにお喋りを続け始め、その会話の中で片方の人形が機長と副機長を殺したと言ったのだ。

 ではこの機は誰が操縦している?

 自動操縦だったとしても着陸はどうするのだ?

 疑念が脳裏を過っている間に人形は去り、レナが青い顔でふらふらとした足取りで戻って来た。

 口を布で覆っておいたとしてもあのガスの中を探索したのだから弱りもするだろう。

 

 「…何かあったのかね?」

 「コクピットの扉が開いていて。機長と副機長が…」

 「死んでいたのか…」

 「はい。でもなぜその事を?」

 「先程人形が足元にやって来てな…」

 

 誤魔化す事無く先ほどの事を話すと彼女の顔も悪くなった。

 あの子がハイジャックに関わっているのは確実。

 そして人形が人を殺せるはずはない。

 例え歩こうが喋ろうが何かしら仕掛けがある筈だ。

 だがどれほど巧妙に人形を操ろうと手に乗るサイズの人形ではどうしたって人は殺せない。

 それもレナの話によれば機長と副機長には“1”と“14”という数字が刻まれていた。

 そうなるとこの機内に機長と副機長を殺し、何らかのメッセージを刻んだ人物がいるという事。

 

 「あの子がこの機内に居るのか?」

 「まさかNo16(・・・・)が!?」

 

 こうなっては仕方がない。

 ホワイトハウスに連絡を取って情報を与え、あの怪物(・・)を探させて処理させるしかない。

 ガスの中を探索したレナは暫し休憩を取る。

 ヴィゴ・ハッチは不安に苛まれながらも逆転の眼を探す…。

 

 

 

 

 

 

 

●ちょっとした一コマ:アリスとゴースト 其の壱

 

 十代の少女であるが遠視能力を用いて、数々のFBIなどへの捜査協力にて実績を持つアリス・ヘイゼルは困惑していた。

 今回の任務に協力するに当たり、参加する面子は聞き及んでいた。

 総指揮を執るCIA所属のロジャー・マッコイ大佐。

 アウターヘブンやザンジーバーランドで活躍し、現代の英雄と謳われるソリッド・スネークとバット。

 それにSWATの対テロ特殊部隊“HRT”のスペンサー隊のみ。

 

 “テロリストの要求には応じない”という前提を覆すようなハイジャック犯の要求する“ピュタゴラス”なるものを入手するという任務内容から少数で当たらなければならない。

 最悪情報が漏れた時、蜥蜴の尻尾切りだとしても切断部位は少ないに越したことはないという判断もあるだろう。

 

 そして作戦当日である今日。

 司令部に合流するや否や紹介されたのがリボーン・ゴーストなる不審者(・・・)

 まるで西部劇から抜け出したような衣装にガスマスクで顔を覆った人物など不審者で十分だろう。

 ロジャー曰く上からの護衛兼連絡要員…と言う名目の監視役との事。

 突如の追加人員に不審を抱くも拒む事は出来やしない。

 そんな状態のまま作戦が開始された。

 作戦に参加している面子のほとんどが研究所に投入され、司令部に居るのはロジャーと私とゴーストの三名のみ。

 

 伝手やコネを使って情報を収集し、精査してはスネーク達に伝えねばならないロジャーは、ゴーストの事など全くもって気にしていないようだ。

 逆に私はロジャーほど忙しくはないので、嫌でもゴーストに意識が向いてしまう。

 

 「珈琲はいるかい?」

 「…ありがと」

 

 一応ここの護衛役と言うのに、呑気に珈琲を淹れていたらしい。

 礼を口にして受け取ると、お茶請けにクッキーまで渡される。

 この人は軍事作戦中だというのに緊張感が足りないのではないのかしら。

 いや、最早見世物かなにかと勘違いしているようにも見受けられる。

 

 モニターを眺めながら珈琲を飲もうとするが、ガスマスクにぶつかって少々零していた。

 シミが出来たコートを眺めてがっくりと肩を落とす様子に呆れながら自身は珈琲を口にする。

 

 「…美味しい」

 

 味にうるさい訳ではなかったけれども、今まで飲んで来た珈琲より美味しかった。

 豆の違いというのはこうも違うのか。

 それとも淹れ方が良いのか。

 サクリとクッキーを含み、後味が残る中で珈琲を流す。

 これは良い組み合わせだなとついつい手が止まらなくなってしまう。

 

 「やはりコスタリカコーヒーは旨い」

 

 ようやく飲んだのかゴーストがそんな一言を漏らした。

 あのガスマスク装備で飲めたものだなと思いながらちらりと視線を向ける。

 ガスマスクの隙間にストローが無理やりねじ込まれ、蚊が血を吸うが如くにティーカップの珈琲を吸っているゴースト。

 

 「―――クフッ!?」

 

 不意打ちに笑いが込み上げて思わず吹き出してしまった。

 何故か笑ったら負けのような気がして必死に耐える。

 だがすでに声は漏れてしまった上に、肩がふるふると震えてしまっている。

 突如変な声が挙がった事にロジャーが振り向くも、アリスの不審な様子の意味が解らず首を傾げ、原因であるゴーストを目撃して含んでいた珈琲を噴き出すのであった…。

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