「きゅぴーん☆ ねーねーキャプテン! 私にも同期っていうのしてほしいな☆」
「せやせや! 真知から聞いたで! 強くなるらしいやん! ずるいわー!!!」
「キャプテン、よろしく」
指示(と言っても、見える範囲の敵を教える程度だが)に集中していると、妃十三学園の制服を着た女子が3人話しかけてきた。
一人はキラキラ笑顔のピンク髪ぶりっ子、一人は関西弁の短髪で男っぽい女子、一人は大人しそうな灰色髪の女の子。
「貴方たち! キャプテンは今日来たばかりだし、あまり無理を……」
「白いの。行けると思うか?」
「当然メロ! さっさとやれメロ!」
さすがに町が破壊されているので、出来ることはしておきたい。俺を気遣い止めるように言う雪城さんを無視し、白いのの了承を得たうえで同期を試みる。
3人の特徴イメージをすると、すぐに視界が3つ増えた。正直、指示するのは4人でも精一杯……どころか、傲慢自分勝手女の指示は放棄して3人に指示を出しているだけでも限界なのだが。
「指示までは出来そうにないんですけど、それでも大丈夫です?」
そう言って、女子生徒たちを見て戸惑う。大人しそうな女の子はさっきと変わらないが、関西弁は不服がありそうな顔をしていて、そして何よりピンク髪ぶりっ子は激怒しているようだった。
「えっと……? もしかして同期出来てなかったり……?」
「桜子はぶりっ子なんてしてないもん!!!!!」
「ウチも年頃の女の子やし、男っぽいって思われるのも何かな……」
なぜかイメージした特徴が伝わっているようだった。断じて声になど出していないし、雪城さんも「何を言っているの?」と困惑している。
「そんなこと思っていませんけど……」
「嘘や! キャプテン、ウチのこと男っぽい関西弁って思っとるやろ!!!」
「桜子たちには分かるんだから!!!」
本当に訳が分からず困惑していると、隣で「ふっふっふ」とどや顔している白いのが目に入った。
「同期で思い浮かべた特徴はオルタナたちにも共有されるメロ。だからお前が嫌らしいエッチな妄想とかすると、即座に分かるメロ!」
とりあえず事前に説明しなかった白いのの首もとを掴んで放り投げる。生徒会長の時に胸を想像した気もするが、それよりもかなり深刻な問題があった。
「キャプテンどうしたの?」
「えっと……。別にそんな気にしとらんから、大丈夫や! ちょっと言うてみただけやし……」
ピンク髪と関西弁が心配してくれるが、この二人はまだ真正面から言ってきたから問題ない。それどころか普通に気遣ってくれるレベルだし、ぶりっ子ではなくて天使、男っぽいどころか聖母にさえ思える。
「キャプテン、今は夜獣が大事」
ガクガクブルブル震えていると、大人しそうな女の子が裾を引っ張り注意を促してくれた。何というか、癒される。
「それではキャプテン。行ってきます」
「あ、待ちぃや、結衣! ウチも行くで!」
「キャプテン! あとでちゃんと話すんだからねっ!」
三人はそう言って、各々夜獣へと向かっていく。
「あの……? どうかされたんですか?」
雪城さんの気遣う声よりも、つい意識がそちらへと向いてしまう。
手からエネルギー派のようなものを放つトカゲ人間が、「消えろ!」という声と共に爆散させられる。銃というよりは大砲に近い大きさの武器を持ち、何十という夜獣を蹂躙する姿はまさしく鬼神のようで、仲間であるはずの赤髪女にも「邪魔だ」と冷酷に言い放っている。
「ふふーん、そういうことかメロ。自業自得メロー!」
とりあえず目の前にふよふよ浮いてやって来た白いのは再び蹴飛ばした。
「やったー! キャプテンのおかげで大勝利ー!」
「キャプテン、勝てましたね! 流石です!」
「ふぅ……。どうにか勝てたな」
「桜子のおかげで大勝利だよ! きゅぴーん☆」
「やったなあ、キャプテン! ええ感じや!」
「勝てました。キャプテン、初白星ですね」
普段であれば、女子校生にちやほやされて清々しい気分になるのだろうが、現在は同期の際に思った特徴で殴られるのではないかという不安しかない。
「ん、キャプテン? 真知がどうかしたん?」
「え、いや、何でもないですけど」
「真知~、何やらかしたん?」
関西弁を知らぬ存ぜぬといった風に適当に誤魔化すと、くそったれなことに傲慢女自身に質問の対象を変えやがった。
戦々恐々として、それどころか土下座も辞さない覚悟でいると「別に何もないが」と、こちらを見向きもせずに言いやがった。それはそれで、腹立つ。
「いや、でもそれやったら、キャプテンは真知のことそんなに気にせんやろし……。はっはーん、分かったで。実はキャプテン」
関西弁が空気の読めないアホ丸出しのことを言おうとしたとき、「もう夜獣はいないみたいメロ~」、「みんな、お疲れメロ」と白いのがやって来る。
白いのに感謝するのは、これが初めてかもしれない。
「それじゃあ、妃十三学園に戻りましょう!」
雪城さんの言葉で、みんなで学園へと向かい出す。そして俺も帰ろうとしたところで、唐突に横から衝撃を受けた。
「キャープテン! どうせやし、話しながら帰ろ!」
これが、雪城さんや赤髪元気娘、ぶりっ子などの提案であれば喜んで受け入れただろう。女子校生とお話ししながら、歩けるのだから。
しかし関西弁は論外だ。爆弾に平気で火を着けようとするうえ、見当違いな勘違いまでし始めている。いや、まあ勘違いを解くには話すというのも良いのかもしれないが、それ以上に事を大きくしそうな不安が拭えない。
「で、キャプテン! 真知のどんなとこが好きなん!?」
「そもそも好きじゃありません」
「別に言わへんから! で、で! どんなとこ?」
目をキラキラさせて話に食いついてくる関西弁は……、いや、これちょっと可愛くね?
傲岸不遜爆弾に気を使ってたからうざいと思ったけど、冷静に見てみると、この子可愛いじゃないですか。恋に憧れる年頃というやつですか。
「まず、好きと嫌いという以前にキャプテンとオルタナですからね。正直、まだキャプテンというものをきちんと把握できてる訳じゃありませんけど、いわゆる教師と生徒みたいなものだと思ってますから、恋愛なんてもってのほかで」
どの面下げて言うんだとばかりのド正論をぶつけてやると関西弁は「うっわ、キャプテンそらないわー!」と自身の恋愛観を語り出す。
「ええか、キャプテン? 好きとかいうのに立場とか気にするのはあかん、ほんまあかんわ! 寧ろ、立場の違いがあっても、愛で覆すくらいの気概をもって……」
全面的に賛成だ。
「ちょっ! キャプテン、何笑てるん!?」
「いや、世話好きな大阪のおばちゃんみたいだなと」
そう言うと、関西弁は「お、おば……!?」と顔を引き攣らせる。
「キャープーテーンー……?」
「あ、いや、まあ、あれです! じょ、冗談です!」
女子校生に凄まれ声が裏返る。
情けなくて泣きたくなる。
でも、オルタナって怖いよお横より強いよ。
「まず、キャプテンは女心を学ばなあかん! 男扱いしたうえに、おばちゃん呼ばわりとか、冗談じゃ済まんでほんま……」
ぶつぶつと不平不満を言っているが、どうやらそんなに悪いやつではなさそうで、悪鬼のことを相談してみるのもいいかもしれないと思った。何せ世話好きのおばちゃんだ。快く相談に乗ってくれるだろう。
本当は雪城さんに悪鬼の好きな食べ物でも聞いて、献上するとともに謝罪という計画だったが、雪城さんに悪鬼のことを聞くにも理由がないし、関西弁のような勘違いをされても困る。かと言って、本当のことなど言えるわけもない。雪城さんには好かれたい。
「直子さん、話があります」
「直子ちゃうわ! って、今うちが話しよる最中やろ! そういうところがキャプテンはあかんねん!」
「いや、大事な話ですから」
「うちかて大事な話を……。……は、話だけなら聞いたる」
そして話す。関西弁やピンク髪同様に悪鬼に対して「高圧的で傲慢で自分勝手」という印象のみで同期を行った、と。
「う、うわー……」
「い、いや、でも、そもそもの問題は傲慢女にあってですね」
「いやいや、真知は仕事優先しただけやろ。大体、堅苦しいだけで傲慢やないし……」
そうして関西弁は傲慢女がいかに優しくていい人かを語り出す。正直、堅苦しいのなら年上の人間を敬えと思うのだが。とはいえ、関西弁に言っても仕方がないし、「年上なんだから敬え」とか言う人間と思われても困るので、突っ込まないことにした。
「とりあえず、そんなわけで傲慢女の好きな食べ物でも知らないです?」
「だから傲慢やないって言うてるやろ!」
「いや、名前知りませんし」
「真知や、真知! 天堂真知!!!」
「私がどうかしたか?」
関西弁はやっぱりアホだった。
いや、どうすんだよ、これ。
誤魔化すの? それとも土下座?
堅苦しいなら切腹? 痛そうだし嫌だ。
「真知! 何やキャプテンが謝りたいみたいなんよ」
「あ、えっとですね。その、同期の際のイメージは何と言いますかですね……、強そうにイメージした方がいいと思って、それで傲慢っていうのは七つの大罪とかにもあって、何か強そうだなと」
「そんなことか。私は別に気にしていない」
何か普通に怒っている風でもなく、本当に普通に許された。傲慢女はそのまま再び歩き出す。……何か格好いい。次から宝塚女のイメージの方がいいかもしれない。
「きちんと謝れば許してもらえるものですね……」
「いや、誰がきちんと謝ったんや……」
「……」
えっちらおっちらと山を登り、妃十三学園にたどり着く。関西弁との会話もそれほど悪くなかった。説教7割だったが、女子校生から説教を受けるというのも悪くない。いや、良い。
「はぁ~。疲れた~。風呂や風呂やー!」
「よーし、みんなでレッツお風呂ターイム! あ、そうだ! キャプテンも一緒に」
赤髪女の発言に歓喜する。
「ちょっと待ったーメロ!!! まだ今日の特訓が終わってないメロー!」
いや、知らねえよ。そもそも、よくよく考えると、この白いのが元凶で説教を受けていたんだが。とりあえず、邪魔すんなよ。
「えー! やだー! もう疲れたも~ん!」
「駄々こねてないで、早く行くぞ」
ピンク髪ぶりっ子の演技めいた疲れたアピールに同調しようと思っていると、傲慢女に先手を打たれる。傲慢女が出てきた時点で、詰みのようなものだ。下手なことを言うのは、何か怖い。
「ほら、お前も一緒に付いてくるメロ! 特訓に付き合うのもキャプテンの役目メロ」
とりあえず、女子校生の汗を流す姿は見れるようなので、白いのを蹴飛ばすのは次の機会に回すことにした。