なんか大淀さんのキャラがおかしくなって行ってるきががが。
斎藤と鳳翔の両名が海軍の飛行艇US-2・1088にてイットバヤットのやや北にある無人島に着いた時、時刻はまた0500時頃であった。
コンテナや仮設テントが幾つか並ぶ浜を進み、海軍の軍服を着た男とやや長身の艦娘が敬礼して立っているのを斎藤と鳳翔は見つけ、その二人の元へと進んで行った。
二人を出迎えたのは近藤大佐とその秘書艦である大和である。
海軍と陸軍ではあるが、大佐と特務大尉、つまり実質的な中佐権限では階級的に斎藤の方が一つ下となる為、斎藤から近藤に挨拶をする。
「……陸軍特殊部隊『陸特・第三分隊』の斎藤だ。出迎え、ありがたい」
「遠路遙々、御苦労。私が今作戦の指揮を執る近藤勲大佐だ。よろしく頼む」
二人は互いに敬礼する。
「横須賀大本営第一艦隊の鳳翔です。松平准将からの指令書をお持ちしました」
「お疲れ様です、鳳翔さん。指令書、確かに受け取りました。ただ、深海側との一時停戦により深海側のジャミングが解かれ通信により松平准将から指令を直接受けております」
「はい、こちらも機内でそのように連絡がありました。お気になさらず」
鳳翔はクスッと笑った。
「はぁ、立派になられて。近藤君も今や大佐ですか。養成学校ではやんちゃだったのに、本当、軍人らしくなって」
「いや、鳳翔さんにそう言っていただけますと、はは、面映ゆいと言うのか、いや、少しはマシな大人に成れたかと胸を張れそうです」
近藤は苦笑しつつもその顔に少し誇らしいものを浮かべる。
海軍の提督養成学校時代、鳳翔は近藤達の指導教官だった。普段柔和で優しい彼女だが訓練ともなれば手を抜かない事で有名であり、学生時代の近藤達も随分と扱かれたものである。
当時、ついた徒名は『鬼も逃げ出す仏の鳳翔』。
とはいえ教え子達から慕われる教官だったのは言うまでも無い。
海軍の事には疎い斎藤は、鳳翔が提督養成学校の教官をしていたなど解るはずもなく、おそらく最古の艦娘の一人なのでやはり何かと尊敬されているのだろう、などと思った。
「ところでよ、近藤大佐。長旅でちっと疲れてんだわ。立ち話もなんだ、拠点とやらで少し休ませてもらってもかまわんか?それに現地の状況の話も聞きたい。資料だけじゃ心許ないからな」
と、ややだらけた調子で言った。だが、そういう男であるのは近藤も共通の知り合いである沖田の話で知っていた。
「ああ、確かに。では案内する。拠点と言っても我々の拠点ではなく、今回の協力者のゲシュペンスト氏の拠点です。この島は原則として艦娘も深海棲艦も人間も区別しないという彼の掟に則った非戦闘区域ですのでその辺、理解していただきたい」
「……『破壊神』のナワバリなのか?ここは」
破壊神とはゲシュペンストの事である。
斎藤は物凄く嫌そうな顔をした。
それもそのはず『破壊神』は日本軍の軍人でその存在を知るものならば誰もが遭遇したくないと考えるような相手である。
深海棲艦を三百隻以上、たった一人で全滅させ、その上、公式上で最強クラスと思われる超ド級の深海棲艦(ムサシの深海棲艦)と一騎打ちして引き分けられるような存在であり、一時は『宇宙からの侵略兵器』とも思われていたほどに正体不明かつおそれられていたのである。
そんなもんと関わり合いになりたくねーぞ、と斎藤で無くともそう思うだろう。
斎藤の脳裏に、深海大戦が始まる前のガキだった頃に見た怪獣映画に出て来た、怪獣だらけの島が思い浮かんだ。
「ナワバリというか、彼の拠点だ。というかなんだその嫌そうな顔は。彼は気のいい奴だぞ。俺が保証する。拠点とは言っているが実際には彼が助けた艦娘達を療養させるために建てた『療養所』だ。……彼は何というか、困っている者や傷付いた者を放っておけんタチらしくてな」
「嘘だろ?『破壊神』が艦娘を助けてんのか?」
これには斎藤も驚く。日本軍と敵対するような奴が艦娘達を助けるとはどういう事なんだ?と。
(これはアレか?某怪獣王が段々と破壊の権化から子供向けの正義の怪獣になって行ったのと同じ路線変更なのか?)
そんな事を思わず考えてしまうあたり斎藤の思考はどこか昭和を思わせる感じである。
斎藤はゲシュペンストの姿をまだ知らず、噂や起こした事件などから、何となく怪獣のような姿をしているんじゃないか?と思っていた。
宇宙からの侵略兵器とか、怪光線を発射するとか、空を飛ぶとか、その辺でキン○ギドラとかそういう宇宙怪獣を頭の中でイメージしている。
「話せばまぁ、日本海軍の恥になるが彼は艦娘達をブラックな施設から助ける為に行動をしていたのだ。彼が壊滅させたのはどれも旧軍主導派や旧左派の残党共の息がかかった非道な実験施設ばかりだったのだからな」
鳳翔がその話を聞き、ふむ?と少し首を傾げた。
近藤の人を見る目は確かである。
だが、気に入った人物に対して何というか、その評価に下駄を履かせるような所があり、どうも今回の場合はそうなのではないか?と鳳翔は思った。
とはいえ、彼が気に入ったのは間違いはあるまい。
これは実際に自分の目で確かめねばなるまい、と鳳翔は思いつつも、
「善い方なのですね、そのゲシュペンスト氏は」
とにっこり笑ってそう近藤に返した。
なにしろ近藤はそのゲシュペンストを気に入ったのかも知れないが、何にせよ海軍の基地を壊滅させるような人物なのである。今は協力者かも知れないがその協力する目的や意図が如何なる理由によるのかわからないのだ。
だが、秘書艦の大和が嬉しそうに、
「はい、とても善い方ですよ。傷付いた艦娘達にご飯作ったり入渠施設を作ったり、メディカルチェックしたり。今回の事件でも寄生生物に取り付かれた深海の方々の為に、大型の入渠施設を作って惜しげもなく高速修復剤を投入して感染を治したりしてますし」
と、畳みかけるようにゲシュペンストが善意の人である事を疑うような素振りも無くそう言う。
大和という艦娘は箱入り娘で育った大和撫子的な性格をしている事が多く、人を疑うという事をあまりしない。基本的におっとりしており、根が大人しい事もあり、
(良い子なのだけど人を疑う事も教えなければいけないかしらね)
と鳳翔は大和の事が心配になった。
大和は帝国海軍の呉にて建造された戦艦であるが、その建造は極秘であり、鳳翔がその目隠し役として同じ港に停泊していたという。言わば大和は鳳翔に見守られながら建造されたと言っても過言では無い。
だからなのか鳳翔は大和という艦娘に対して何となく過保護のようなまでに心配してしまうのである。
善人で真っ直ぐ育ったのは見ていて嬉しいし、それは彼女の提督である近藤の人柄の影響を多分に受けたためなのだろうが、正直、いつか騙されないだろうかと心配になる鳳翔であった。
まぁ、海千山千の『お艦』ならではの老婆心……いや、経験豊富な最初の艦娘達ならではの心配なのだろう。
とは言え、近藤と大和の両名からのゲシュペンストの評価は高いようである。
「……高速修復剤ってのは高価なんだろ?金持ちなのか?」
斎藤は斎藤で、なにか食いつくとこが鳳翔とは別の方向だった。今、斎藤の頭の中には成金怪獣という言葉がよぎり、斎藤は
(やっぱキン○ギドラはキンキラキンだからな。金持ってんのか?)
などと思っていたりする。というかキングギ○ラが好きなのかこの男は。
「いや、レシピを覚えているらしく彼が作っているんだ。正直な話信じられんが、貯蔵庫にはかなりの数がある。必要なら躊躇わずに自由に持ち出して使えと彼は言っている」
「後で高額の請求書とか来ねぇだろな、それ」
先ほど成金怪獣のイメージが斎藤の頭から離れず、斎藤の頭の中に、キングギ○ラが葉巻を咥えて請求書を持って金をせびっている様子が思い浮ぶ。
「彼がそういうことをするとは思えないが、来るなら来たで日本海軍が払うさ。それは我々が気にする事じゃない」
「ははっ、違いない」
四人は話しながら丘の長い石段を上がって行く。石段を上りきると、そこは玄関の庭である。
暇を持て余した艦娘達が花壇を作っていたり、磨かれた石の椅子に座ってゲシュペンストが作った将棋盤で将棋をしていたり、小さな畑で芋を育てたり、たらいで洗濯していたり、掃除をしていたりする。
おそらく、彼女達も何もしないのでは暇過ぎるのだろう。ゲシュペンストも彼女達がやりたいようにすれば良いと大抵の事は好きにさせている。
鳳翔はそんな伸び伸びとしている艦娘達を関心したように、斎藤は物珍しそうに見ながら、近藤に連れられて玄関の入口の暖簾をくぐった。
玄関には土方と沖田、高雄(管)、龍田、那智が鳳翔を待っていた。
「あら、まあっ!」
驚く鳳翔。高雄(管)が、龍田と那智に、
「ほらっ!あんたたち、鳳翔さんよ!挨拶なさい!」
と、その背中を押してやる。するとばつが悪そうに龍田と那智が鳳翔に声をかけた。
「あはは~、鳳翔さん元気してたぁ?」
「うむ……まぁ、御無沙汰だな」
テロリストとして政府から逃げ回っていた彼女達とすれば、やはり鳳翔と顔を合わせるのはやはり気まずかったのだろう、逃げて隠れていようとしていたのを、造田博士の元でやはり共に暮らした事のある高雄(管)に見つかり、とっ捕まってここまで引っ立てられたのである。
そんな彼女達で鳳翔は、
「こぉのバカチンがぁ~っ!」
と、どこかの某教師のような感じで言うと、
ごっすん!ごっすん!
とチョップをかました。
「イターッ!!」
「ぐわっ!!」
龍田と那智がそのチョップの威力で思い切り仰け反る。
近藤と土方、沖田、斎藤がそれを見てうわぁっ?!と身を竦めさせる。格闘技や武術経験者にはわかるその威力。
打った瞬間に沈み込めるように体重とインパクトを加えて威力を浸透させる。空手の手刀や古武術の手刀とも違うそのチョップは、明らかにとあるプロレスラーのそれであった。
「ば、馬○チョップ?!」
斎藤が思わずそう言ってしまう。アッポーである。いや、お艦のチョップなのでここは『ははチョップ』と言うべきだろうか。
まぁ、それはさておき。
チョップを放った後、鳳翔は仰け反った二人をキュッと両腕で抱きしめた。いや、締め技では無い。抱擁である。
「バカッ!どれだけ私が心配していたと思ってるんですか?本当に悪い子達!」
「鳳翔さん、痛い……」
「ひ、久々の鳳翔のチョップ……」
那智が久々と言うからには、おそらく造田博士の家で鳳翔を怒らせたりするともれなくチョップが飛んできたのだろう。チョップに名前まで付いてるし。
「そのぐらいで済んで良かったじゃない」
高雄(管)が笑って言い、やはり鳳翔に
「本当、久しぶりね。まぁブリーフィングの時に会えると思うけど、扶桑姉妹と金剛もいるわよ」
と挨拶をした。
「あの子達も来ているの。でもこの子達がここにいるって事は、捕まえられたのかしら?その……刑は、どうなるの?」
鳳翔は不安そうに抱き締めた二人を交互に見る。二人はテロリストとして認定されており、それも本来は見つけ次第、処分、つまり殺せというお触れが出されている。
「大丈夫よ。ここの『主』とフィリピン第二基地の提督が『淀君』と話をしてくれてね。この子達はもう罪を追求される事は無くなったのよ。あくまでもこの二人はフィリピン第二基地の艦娘である、って事になったわ」
『淀君』と言えば、かつて鳳翔の店に中倉平八郎と共に来た事がある。当時は左派政権時代であり、日本を左派から奪還する為に海軍の菅原大将や多くの志を持った者達が『居酒屋・鳳翔』へ訪れ、情報のやりとりをすると共に、親交を深めて行ったのだが、その中に彼女も居た。
だが、その時の大淀の印象はあまり良いものでは無かった。なんというか、暗い闇の底に自分の身を置いてそこに住み着いているような、そんな何か得体の知れないものに見えたのだ。
中倉平八郎の死後、彼女はその父親である中倉翁を通じて軍視局という復讐機関を作り上げた。
その事を知った鳳翔は、彼女が己の闇に飲み込まれたのだと確信した。
大淀は海軍の監視をすると共に中倉平八郎の仇を討ち続けた。テロリストに認定された旧左派の残党を彼女は合法的に処分する権限を彼女は持った。
そして、彼女のテロリスト狩りは苛烈を極めた。確かに大淀の調査や査察は誤認も無かったが、テロリストの家族や知人、そして関わったもの全てが粛清されたとも聞く。
そんな大淀がいくらここの主、ゲシュペンストや第二基地の提督が嘆願したとしてもテロリスト認定された龍田や那智の処分をしないわけが無い。
信じられないと呟き、鳳翔はその大淀とかつて日本奪還計画時に直接数度に渡って会っていた高雄(管)にその実どうなのかと聞いた。
「……大淀さんには特に含みも無いの?正直、有り得ない事だと私は思うのよ」
と、小声で言う。
「彼女は単にゲシュペンストさんを敵に回したくないんだと思うわ。彼は『破壊神』なんてものじゃない、もっととんでもない存在よ。そんな存在が善意で助けようとする艦娘をもし処刑なんてしたら、日本は最大の敵を呼び込んでしまうかも知れないのよ。しかも、あの大淀も彼に助けられている。流石に彼女も恩を仇で返そうなんてしないわ」
高雄(管)はそう語った。
無論、それは高雄(管)の推測でしかない。
実際のところは全く違う理由で大淀はゲシュペンストの言う事を聞いたのだが、真面目で常識人である高雄(管)にはそれは解らなかった、というよりも理解できるはずは無かった。
大淀が何故ゲシュペンストの頼みを聞いたのか。
その答えは単純明解で『ゲシュペンストがそう望んだから』である。
大淀の頭の中でゲシュペンストはもはや神となっており、彼女はその神をもはや信仰する信徒となってしまっていたのである。
曰わく『神が望まれた。ならば信徒としてそうせねばならない』で、ある。
おそらく、ゲシュペンストと玄一郎にとってはものすごい迷惑な話では無かろうかと思うが、幸いな事に大淀は自身の信仰心を隠してゲシュペンスト(=玄一郎)と接している為、気づいては居ない。また大淀としても気付かれてはならない理由もある。
なにしろ大淀はその『神』の一番の望みである元の世界への帰還を阻止する為の計画を企てているからである。
それは最大の不敬であり、背信行為である。
しかしそれでも大淀は『神』への愛からそれを止めることは出来ないのだ。
そんな大淀の思考など、例えいかなる名探偵でも推理も推測も出来ないだろう。
だが、大淀がテロリスト認定された二人の生存を容認した事で驚いている人物がもう一人いた。
それは斎藤である。
斎藤は傷痍し陸特から憲兵隊に異動した同僚や部下達、それ以外からもやはり大淀に関する噂を散々聞いていた。故に、
(……多分、ロクでもねぇ事を考えてやがるんだろう。つーか関わり合いになりたくねぇ)
と思った。ある意味大淀を理解しない中でその斎藤の考えが正しい答であると言える。
(……ま、と言っても)
チラッと鳳翔の方を見る。
あんなに仲間が助かる事で喜んでいるのだ、水を指すこともあるまい、と鼻で息を軽く吐き斎藤は考えるのを止めた。
「……本当、そんな方と知り合えてあなた達、良かったわねぇ。助けていただいたお礼を是非言いたいわ。ゲシュペンストさんは、今、どちらにおられるのでしょう?」
「彼は、フィリピン泊地に飛んで行ったわ。泊地のある島と本島の間を偵察と武装とオペレーション要員のテストをするとかなんとか」
高雄(管)はそう答えた。
「はぁっ?!行くとは聞いていたが、もう行ったのか?!動きが早すぎるだろ?!」
近藤はそんなに早くゲシュペンストが出撃するとは思わなかったらしい。
「えっと、二時間程で帰るそうだから、その間厨房で飲み物でも飲んで待ってて欲しい、との事ですわ。それに、オペレーションシステムであちらの様子も見れるそうなので、通信もできますわ?」
高雄(管)は厨房はこちらです、と鳳翔に言うと、大きなドアも無い入り口へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて一方。こちらはフィリピン泊地のある島とフィリピンの本島の境の海峡である。
ゲシュペンスト(=玄一郎)はその上空を飛びつつ、ゲシュペンストと共に防衛網を構築すべくシミュレートしていた。
寄生生物は人間を補食しエサにしている。だが、もうそろそろ、奴らが備蓄しているエサは無くなりつつある。
寄生生物の弱点は高速修復剤とそして海水ではあり今まで海には近寄らなかったが、だがもうそろそろエサが乏しくなった事で飢え始めている頃である。
おそらく、エサを求めて決死で海峡を渡ろうとしてくるはずである。
「やはり、連中、ここに斥候を出してやがるぜ」
上空から『成虫』の姿が見える。数は7匹。
〔あの7匹の他にはレーダーに反応は無い〕
この様子は無人島拠点の厨房の大型ディスプレイにも映像を送っており、大淀と沖田少佐がモニターをしている。
「聞こえるかい?大淀さん、沖田さん。通信の感度はどうだ?」
《感度良好ですよ、ゲシュペンストさん》
《聞こえてるわ》
「すまねぇなぁ。オペレーターの真似事させて」
《いいえ、管制は作戦において重要ですし対寄生生物戦闘のデータも必要ですから》
《まぁ、私は骨折って戦闘に加われないし、いいんだけどね。ま、気をつけてねゲシュペンスト》
〔了解。沖田少佐、大淀。ゲシュペンストでは呼称として我ながら長い名前だ。コールサインをゴーストワンに変更されたし〕
《了解。ではゴーストワン、武装テストを開始して下さい》
「ゴーストワン了解。では開始する」
ゲシュペンストは一丁のライフルを出した。
形式番号MMP-78。
ドラム型マガジンが特徴的なライフルであり、弾薬の口径は120㎜と戦車砲と同じサイズ。威力と貫通性能に優れたマシンガンである。
これは元々はゲシュペンストの装備ではなく、某公国の緑色をしたモノアイが特徴的な量産型人型機動兵器の武装である。
某白い人型機動兵器のルナ・チタニウム合金の装甲には通用しなかった為、ある意味正当な評価をされない事が多い悲劇の汎用マシンガンであるが、故障の少ない構造と装弾数、そして単発・連射・バーストと弾の発射方式が変えられ、さらにスコープまで装備しており、長射程を生かしてスナイパー的にも使える優秀なライフルなのである。
「M-950の弾じゃ効かなかったが、120㎜対装甲貫通弾ならどうだ?」
スコープを覗き、群れの後ろにいる一体の頭部に狙いを定める。
単発でドン!と弾を発射した。
弾着の際に、何か光る障壁が発生するのが見えたが、120㎜弾はそれを無理矢理に貫き通して着弾、グシャアッ、と寄生生物の頭が吹き飛んだ。
《一体、撃破!》
大淀が一言、そう言ったがその声には驚きの色があった。
「……ふむ、この口径なら念動フィールドも貫けるか。続けて、地上に降りてガトリングシールドと近接武器のテストに移行」
ゲシュペンストは急降下し、そして海峡を背に『寄生生物・成虫』の斥候隊の前に出た。
左腕にはシールドに取り付けられた6銃身75mmガトリング砲、そして右手に五郎入道正宗。
「こっちは通用するかなっと!」
ヴモォォォォォォォッ!!
牛が鳴くような射撃音と共に凶悪な高速弾の雨が『寄生生物・成虫』達に襲いかかる。
やはり念動フィールドは展開したものの、ごり押しとも言える弾幕は無理矢理にそれを貫き通し、前方に居た四体が細切れになって辺りに散らばった。
だが、後ろまでは貫通せず、二体の『寄生生物・成虫』がほぼ無傷で残った。
「悪りぃな、お前らを巣に戻すわけにゃいかねぇ。海峡も渡らせてやらねぇ」
ブーストを一気に噴かし、
「抜かば霊散る氷の刃っ!五郎入道正宗、横一文字斬りっ!!」
音も立てず、五郎入道正宗を一閃。
二体の頭部が、ぽーん!ぽーん!と飛ぶ。その数秒後で胴体から青い血が噴き出して、地に落ちた頭がようやく、
『ギェェェェェェェェェェェェ!!』
と霊消える叫びを上げた。
「やっぱりコイツ等、卵を抱えてやがる。高速修復剤必須だな」
ゲシュペンスト(=玄一郎)はバケツを取り出すと『成虫』の死体にそれを振りかけた。
ジォォォォォォッ、と寄生生物の死体とその腹の卵が溶解していく煙が立ち上がる。
「なるほど、甲殻の中身には高速修復剤は効くのか」
〔うむ。やはりシミュレートとしては重火器と高速修復剤の併用が望ましい〕
「その辺、帰ったら検討しようぜ。とりあえず戦闘は終了だ。データはとれたか?」
《はい、武装のデータはサンプリングしましたが、その武装があるなら、研究施設に人海戦術を仕掛けでも充分に勝算が……》
沖田少佐がそういうが、しかし玄一郎は
「無い」
と短く言った。
《しかし、その火力なら……!》
「いいや、ここが何もない開けたところだから重火器で戦えるんだ。だが、研究施設の内部だと奴らは天井や壁を自在に高速で這い回り、三次元機動で襲いかかって来るんだ。一体だけでも厄介なのに群でそうやって押し寄せて来るとなると、マシンガンでも手に負えない。だからといって人海戦術しているときに、閉所でミサイルやらナパーム弾を使ってみろ、突入した部隊も無事じゃすまない」
《沖田少佐、彼の言うとおりです。彼が柳生提督達を救出に行った際の映像を見せてもらいましたが、あの数と動きでは対応仕切れません》
《……ではやはり単騎で突入するつもりなんですか?あなたは》
「一人なら誰も巻き込まずに最強の武装が使えるからな。一番成功確率が高いんだ。その辺は土方中佐に聞いてくれよ。小島基地の件で見てたらしいからな」
と、突然近藤のダミ声が割り込んで来た。
《おいっ!ゲシュペンストよぉ、お前さん行く前に俺に言えって言ってたろ?!なに勝手に出撃してんだよ!?》
「あ、忘れてた」
《あ、忘れてた、じゃねぇ!ったくよぉ》
「仕方無かったんだ。連中が思ったより早く海峡付近に出たんでな。奴らが海水に弱いとは言っても群れで大量に押し寄せて来たら渡られかねない。斥候を出して来たって事は、おそらく奴らの狙いはフィリピン本島をエサ場にする事だ。一体でも渡られれば脅威だからな」
《そりゃあ、確かにそうだが》
「ま、トラップを仕掛けてから帰る。とにかく作戦前に奴らに動かれちゃ困る、だろ?》
《はぁっ、了解した。ブリーフィング前までには帰って来てくれよ。頼んだぜ?》
「了解だ。ま、どのみち陸軍の人らに装備も渡さにゃならんしな。なるたけ早く帰る」
そう言うとゲシュペンストはヒートロッドに使われるワイヤーリールを創り出した。
「さて、楽しい楽しい防衛陣地構築を始めるかねぇ」
玄一郎はそう言うと、やれやれ、とばかりに溜め息を吐いた。
大淀さんがどんどん変になって行きますね……。M嬢でヤンデレ風で狂信者って(汗)
そして鳳翔さんは逆に疑い深い感じに……。
多分、高雄(管)さんぐらいでしょうか。普通の人って。いや、近藤さんもでしょうかねぇ。