ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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帰って来ちゃったよ。

いや、ウィルスで大変な時なのでバイオテロな話は自粛せんといかんかなーとも思ってましたが、考えを改めました。




【過去話】怨霊艦隊~ゴーストシップ(25)

明石(土)に引っ張られるようにして連れてこられたあぎょう丸の甲板、そのデッキの一角にはこじんまりとしてはいるが特徴的な機材の塊がでーんと鎮座坐(ましま)していた。

 

 もう皆さんそれがなんなのかおわかりの事だろうし、玄一郎にもゲシュペンストにも言われずともこれが何なのかとっくにわかっていた。

 

 そう、T-Linkシステムだ。

 

 こちらの世界では『造田式霊力増幅装置』などと呼ばれているが、それはまんまゲシュペンストのいた世界におけるT-Linkシステムと同じものである。

 

 もっともこの『造田式霊力増幅装置』はゲシュペンストのいた世界のT-Linkシステムよりもかなり旧式な部品によって製造されており、所々真空管や手作りで製作したであろう基盤と回路が剥き出しになっているが、それすらも製作者の美意識を感じさせるほどに、理路整然としてかつ整理された規則正しい配列で組み込まれている。

 このT-Linkシステムに比べれば縞傘の研究室ものは美意識の欠片もないガキが、ただ機能すればいいとばかりに出鱈目にパーツを並べ配線を無理矢理つなげて組み上げたものでしかない。

 

 それほどまでにこれは完成されている。

 

〔……最新鋭のパーツで組まれていたなら、おそらくはかなりの出力が得られるだろう〕

 

(それなら協力するかぁ?)

 

〔いや、正直T-Linkシステムに関しては関わりたくない。治療が目的でなければ関わるのを拒否したいところだ〕

 

 このT-Linkシステムに関わった女性にゲシュペンストのパイロットであったカーウァイ・ラウは酷い目にあわされた過去をもっており、もうT-Linkシステム関連はこりごりだった。彼が拒否していないのは比叡の命を救うためである。

 

「とりあえず、あなたはこの霊波受信板……そこの金色の衝立のようなものです、その前に立つなり座るなりして貰えればそれで良いので」

 

 明石(土)はそう言い、

 

「私は比叡を連れてきますので、そこから動かないで下さいね。もうシステムは霊波を溜める為に作動してますので」

 

 と、さっさとあぎょう丸のハッチに向かい、艦内に入って行った。

 

「……あ~、説明は?」

 

 と明石(土)に言おうとしたが、ガチャンとハッチはしまって声は届いていない。いや、聞く気も答える気も無いようだ。

 

「……行っちまったよ。つか、この前に居れば良いって言われてもなぁ」

 

 その金色の衝立は細い金属の板を幾つも繋げたものであ、本当に金属の衝立にしか見えない。

 

 ゲシュペンストの分析によれば

 

〔チタンベースの精神感応素材で出来ている。T-Linkシステムや某公国のニュータイプ専用サイコミュにも似たようなものが使われているが、かなり初期段階の実験に使われていたものに酷似している〕

 

 らしい。

 

 そんな説明をされても玄一郎の世界にはそんな技術など無かったため、

 

(まぁ、訳わからん)

 

 と、ゲシュペンストだけに聞こえるようにそう答えた。非常に正直である。

 

 明石に引っ張られて連れられたゲシュペンストを追いかけてきた大淀は玄一郎(=ゲシュペンスト)がプレゼントしたPCパッドのカメラを使ってさっきからT-Linkシステムの映像を撮っているが、彼女はもうそのPCパッドを使いこなし始めている。

 基本的な操作を少し教えただけでコレである。物覚えが良いというのか、才能に秀でているというべきなのか。

 

「しかし、全く説明も何もなかったですね……というかこれほどのコンピューターの塊みたいな装置を使って何をするつもりなのでしょうか?」

 

 そう言いつつパシャッ、パシャッ、と映像を撮り続けている。

 

(……しかし、そうやって前のめりで写真撮ってるとおパンツ見えてるぞ?)

 

 玄一郎は大淀の捲れたスカートから見えているパンツをじーっと見ながら

 

「わからん。俺はこの手の機械には詳しくない。だが霊力を比叡に補充させようとしているのは間違いないだろう」

 

(ふむ……大淀さんは清純派の白、レース付きか)

 

 ああ、麗しの白。なんと目にまぶしいことか。しかも大淀の尻はその一見細く見えるその体型からは予想し辛いがむちっとしており柔らかそうなその肉眼がたまらんエロい感じでもう、たまらーん!たまらーん!なのである。

 

 清純系メガネ文系美女のむっちり尻。それはかつて得られなかった少年時代の、もしかしたらあり得たかも知れない青くも甘酸っぱい青春を玄一郎に思わせた。

 

……好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰だろうなぁ。駆け抜けていくメモリアルなんぞ俺の青春には無かった。セーラー服の清純系メガネ文系美女なんぞおらんかったもんなぁ。

 

 が、玄一郎のその覗きタイムはすぐに終わった。

 

「大淀さん、そんなに前のめりになってはスカートめくれてますよ!」

 

 鳳翔が大淀に注意したからである。

 

「ええっ?!」

 

 大淀は慌てて姿勢を正してスカートの後ろを押さえた。そしてゲシュペンストの方を少し上目遣いで見て、

 

「あの……見えてました?」

 

 と顔を赤らめつつ言う。

 

 恥じらいの顔赤らめ上目遣い。美女がやったらそれはもう戦略兵器クラスの武器だといえよう。

 

「………俺が言うとなんか角が立つような気がしたので目を反らしてました、スミマセン」

 

 嘘であるが、ゲシュペンストのアイカメラは視線など動かさずとも広角で見えるのだ。故に頭部など動かしては居ない。つまり向いて無いので誤魔化せる……ハズ、と玄一郎は高をくくりつつ弁明する。

 

(それよりナニこの可愛い人。ぬぅ、俺に扶桑姉妹がおらんかったらヤバかった!つーか文学少女の顔赤らめうるうるヤベェ!)

 

 いや、付き合うどころか告白も何もしとらんのに何を考えているのだコイツ、と思われるかも知れないがそんだけ黒田玄一郎は扶桑姉妹が強烈に好きなわけであり、扶桑姉妹を助けるためなら日本海軍を敵に回しても良いという決断の元、潰しに潰した基地や鎮守府は一つや二つではすまない。

 

 だが、今の大淀のその仕草はそれぐらいヤバかったのである。

 

 大淀はPCパッドで口を隠すようにすると、なにかぷち、ぷち、と聞こえないくらいの小声で「すみません、みっともない所をお見せしました……」などと謝りつつ下を向いてしまった。

 

「いや、その……俺もごめん、しかし良い尻……いや、うん、ごめん」

 

 玄一郎も後ろめたさで声のボリュームは下がり気味だ。

 

 その二人を見る鳳翔の目は笑っているのに無表情な感じで目は鋭く何かを頭で分析しているかのようだったが、しかし二人ともそれには全く気づきはしていない。いや、むしろ奇妙なものを見たという感じですらもあった。

 

(……あの軍視局の淀み鴉が、蓮すら咲かない澱んだ沼の主がどういう事かしら。まるで男を知らない『おぼこ』のように振る舞っているなんて。あざとく、わざと見せていたのかと思ていた、いや、そうなのだけれど……。一体何が起こっているというの?この未確認敵性物体、いえ、ゲシュペンストが彼女を変えたとでも言うのかしら?)

 

 などと酷い事を考えていたが、鳳翔がそのように考えるほどに大淀の今まで行って来た事は酷すぎたのである。

 

 それは大淀の女衒鎮守府時代の事ではない。彼女が軍視局のトップとして君臨してからの事である。

 

 大淀は私怨のためだけに軍視局を作り上げ私怨を晴らすために多くの人間、艦娘を制裁してきた。その数はもはや百や二百を越えるだろう。

 

 だが、誰もそれを止める者は居なかった。

 

 大淀の恐ろしいところは、誰も文句の言えぬ正当な法の元で復讐対象を裁き、そこまでは良いのだが、その対象と関わった者達をもデストロイしていた点にある。

 

 彼女の復讐対象はその全てが日本という国家において犯罪を行っていた者達である。

 大淀はたとえ権力者であろうとも逃れられぬねつ造などではない膨大なその犯罪証拠を調べ上げてつきつけ、そして自らの手で必ず始末してきた。

 

 彼女のそれは法により執行される。

 

 それは無論、民主主義国家としての憲法・法律に基づく判決によるものであるが、過去にテロによる日本簒奪が左派政権によって行われ『独裁政権』の台頭を許してしまった反省からテロやそれに類する犯罪に対して問答無用で『死刑を行使』出来るようになっていた。

 要するにテロに関わった者達は問答無用でその場で始末されるというわけである。

 

 あまりに酷すぎると思われるかも知れないが、しかしかつての『独裁政権』が日本や国民に行ってきた圧制はそれほどまでに酷すぎ、日本を滅亡寸前まで追い込んだ事を考えれば過剰ともいえる刑罰が制定されても仕方は無いといえるだろうし、またかつての独裁政権に関与していた者の死刑に反対する国民はほとんどおらず、むしろ新聞やラジオで報道されるたびに喝采されている。

 

 その法によって大淀は長倉平八郎の殺害に関与した者の親類縁者友人家族、老若男女関係無く、根絶やしに『死刑を行使』、つまり殺害してきたわけである。

 

 殺しに殺したり数百人。人間・艦娘関係無く大淀は死刑を言い渡し、そして自らの手で始末してきたのだ。

  

 復讐鬼、澱み鴉、血に飢えた悪魔、血の池地獄の毒蓮、様々な名で今もなお恐れられた女、それが軍視局局長・大淀の正体だった。

 

 鳳翔が知る大淀は間違いなくそういう存在だったはずである。

 

 その目は暗く濁り、人の目、いや正常な艦娘の目をしていなかった。怨念を抱いて海に沈んだ深海棲艦よりも深く闇に堕ちた黒を宿していた。

 怨念をその身にまとい、その様はもはや艦娘とは言えない黒いオーラすら放ち、これはいつか狂った果てに日本に仇なす存在になるのではないか、と鳳翔と護国同盟のメンバー達は大淀の動向も監視していたが……。

 

(このゲシュペンストの前で乙女の目をしてうるうるモジモジしているこの女はなんなのだ?というか本当にこの女、軍視局の大淀ではなく影武者なんじゃない?)

 

 もはや別人である。

 

(まるで、あのロボットに恋でもしているような……)

 

 と、考えてハタッ!と鳳翔は愕然とする。

 

(ええええええええ~っ?!いや、あの毒沼の吸血鴉が?!腐れメガネの毒淀がぁ?!うそっ?!そんな?!……)

 

 鳳翔は顔を青ざめさせ、だらだらだら冷や汗を滝のように流し始めた。しかし酷い言い様だなあんた。

 

(いや、でもそんな、長倉平八郎一筋な未亡人気取ってた奴が今更?!でもなんか隠そうとしてもどんよりヨドヨドと漏れ出てた澱みオーラが消えてるしっ!つか染み付いた怨念がみんな綺麗サッパリしてるしっ!というか破壊の権化なロボット相手に何やってんのあの女っ?!狂ったの?とうとう狂った頭がおかしくなったの?!)

 

 鳳翔は叫び声を上げてこの場から逃げ出したかった。誰かこの状況なんとかして!!と助けを呼びに行きたかった。

 

 だが、無情にもここに誰かが来るまで時間はかかるのである。何故ならこの25話はここで終わり、次の26話が始まるまで何日か待たねばならないだろうからである。

 

 哀れなり鳳翔。恨むなら物語を放置していた書いてる人に言うのだな。奴は聞かないけどな。

 

 

⬅TobeContinued(?)

 

 

 

 




 果たして鳳翔さんが酷いのか、大淀さんが仕出かしまくった事が酷いのか。鳳翔さんは大淀の暗黒面ばかり見てきてますから、大淀さんに対しての印象がそうなっているんですが、さてはて。

 怨念を吸収する、とかズフィルードクリスタルならやりかねん気がちょっとしてきた。

 大淀さんのお尻は多分むっちり。スレンダーだけどお尻は大きいっぽい気がします。

 というか正規ヒロインェ……。

 
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