ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 スクミズっ!!セーラー服っ!!扶桑型戦艦のあられもない姿再び。

 不幸だわ。


【昔話】黒い亡霊と薄倖の乙女③

 高速修復剤とやらは確かに効いて、身体の傷や骨折、さらに服などは治ったものの、スクミズの女の子は目を覚まさない。

 

 ゲシュペンストが女の子の身体状況を分析し、

 

〔極度の疲労蓄積、それと軽い貧血。休養させねばならないだろうが、バイタルは安定。もう大丈夫なはずだ〕

 

 と玄一郎の頭の中で言った。

 

「そうか、良かった。しかし、この子が倒れていたと言うことはまだ同じように……」

 

 他にも倒れている子がいるのではないかと言おうとしたその時、どーん!どーん!と、どこかで大砲を撃つ音が大きく響き、玄一郎は洞窟の入り口の方を思わずみた。

 

〔玄一郎、この付近の海域で何者かが砲撃しているようだ。昨日のデータにより扶桑という艦娘の砲撃音の波形とほぼ一致。生体センサーによれば深海棲艦と思わしき反応も8。出撃するか?〕

 

「当たり前だ!!」

 

 玄一郎は、その場にあった緑色のバケツ、高速修復剤を掴んで飛び出した。扶桑が前のように負傷していた時を考えてである。

 

〔了解〕

 

 人の意思と機械の自我は共に機体を駆り疾く外へと駆けていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 戦闘している地点はこの島から15kmほど沖合だった。ゲシュペンストのアイカメラで捉えた映像で見えたそれは、あの特徴的な巫女装束のような服装、こちらからは後ろ姿しか見えず顔まではわからないが、玄一郎はそれを扶桑だと思った。

 

 あの時のように巫女装束は破れてはいたが、ズタボロになったセーラー服の女の子二人を庇いながら戦っていた。

 

「扶桑さん!うぉぉぉぉっ!!」

 

 ゲシュペンスト(=玄一郎)はブースターを噴かせてそのまま加速し、そして扶桑を撃とうとしている腕にデッカい歯の着いた大砲を装着している人型の深海棲艦に殴りかかった。

 

 ガインっ!!とやたら派手な音を立ててパンチがヒットしたが、雑魚のクジラの出来損ないのような奴よりは装甲が厚いようだ。一撃では倒せない。

 

〔玄一郎、武装を使え。格闘では時間がかかる〕

 

 ゲシュペンストは玄一郎にプラズマスライサーの起動法を表示した。

 

 ブウン、と手に光が灯り高熱を発する。手刀をチョップの要領で振りかぶり、ぶった斬る。

 

 ズバッ!!とまるで抵抗も無く、固かった敵が真っ二つになった。

 

「ふぉっ?!めちゃくちゃ斬れる?!」

 

〔自分の武装の中では威力はそれほどでもない方だ〕

 

 ゲシュペンストはさらりとそんな事を言う。しかしこれで威力が下だというなら、最大の威力の武装はどんだけなんだろうな、と玄一郎の思ったが、悠長にしている暇は無い。

 

 深海棲艦の数は多い。このまま扶桑達を攻撃されたら、彼女達が死んでしまうかも知れないのだ。

 

 今も遠くの間合いの奴が、セーラー服の女の子二人に狙いをつけようとしている。短髪の子は負傷して気を失っている長いウェーブがかった髪の子を抱えているため逃げられない。

 

〔スラッシュリッパーを射出する〕

 

 ゲシュペンストは背中から、ドローンのような三本の刃のついた回転する武器を敵に射出した。

 

 それは素早く飛び、敵の身体を切り刻み、一体、また続けて一体、と、三体切り刻みバラバラにする。

 

 化け物であっても人の形をしたものが細切れに切り刻まれる様はとてもじゃないがけして気持ちの良いものでは無い。

 

「うぇ、スプラッター」

 

〔気を抜くな。次だ、プラズマソードを使え!〕

 

 左腕に付いている棒状のものを掴んで引き抜くとそれは光剣、ビームサーベルとかライトセーバーのような武器になった。

 

〔ブースト!敵に斬りかかれ!〕

 

「よっしゃあ!!うぉぉぉっ!!」

 

 ブースターを噴かし、敵に素早く接近してすれ違い様に胴を凪ぐ。光剣は容易く敵を両断し、上半身と下半身を泣き別れにした。

 

〔次だ。残るは三体、あそこにまとまっている〕

 

 見れば向こうに距離を置いていた深海棲艦は態勢を整えようと三体並んでいた。前に見た砲台の付いた盾を両手に持った奴二体と、白っぽいセーラー服にマントをつけた下半身すっぽんぽんな奴がこちらに一斉射撃をしようとしていた。

 

〔メガブラストカノンを使う。これも覚えておけ。私の武装の中で長射程かつ最大の威力を持つ」

 

 ガシャコン、とゲシュペンストの胸部の装甲が左右に分かれ、そして光の粒子が集まり、キュオォォォォ……と唸り始めた。エネルギーが充填していき、そして。

 

〔メガブラスターキャノン、デッドエンドシュート!!〕

 

 ドゴーーーーーーッ!!と物凄い光線が発射され、三体の深海棲艦を飲み込んでいく。

 

『ぎゃあああああああああああっ!!』

 

 深海棲艦は甲高く化鳥のような断末魔の叫びを上げて、光の中で消滅していった。

 

 光が収まると、そこには何もなく、海の一部が蒸気を上げてもやがただよっていた。

 

「す、すげぇ。塵一つ残ってねぇ」

 

〔これでも出力は10分の1以下だ。全力で打てば宇宙要塞の装甲すら撃ち貫く事が出来る。使いどころには気をつけろ〕

 

「ああ。出来れば使いたくないな、これは」

 

〔敵勢力全滅。周囲に敵反応無し。玄一郎、ぼさっとするな。彼女達を助けるのだろう?」

 

「そうだった。扶桑さん達は無事か?!」

 

 彼女達は、少し離れた場所の海の上で膝を着いてへたり込んでいた。

 

「大丈夫だったか?扶桑さん!」

 

 玄一郎は駆け寄り、扶桑にそう話しかけた。

 

「……私はねぇさまじゃないわよ。なによ、あんた」

 

「……え?ねぇさま?」

 

「私は山城よ。扶桑型戦艦の二番艦、扶桑ねぇさまの妹よ……」

 

 よく見れば、確かにその顔つきは扶桑に似ていたが、少し目はキツい感じで、勝ち気に見えた。それに、髪の長さが扶桑よりも短い。

 

 着ている服装は扶桑と同じものだが、少しおっとりした扶桑に対して、この山城という女性は少しキツい性格をしているようだった。

 

「……扶桑さんの妹さん?」

 

「そうよ!さっきから扶桑、扶桑って馴れ馴れしいのよ!あんた扶桑ねぇさまのなんなのよ!!扶桑ねぇさまは……もう、帰って来ないのよ!!なんで、なんで死なせてくれなかったのよ!!扶桑ねぇさまのいないこんな不幸な世界になんて……生きていたくない!!なんで助けたのよ!!」

 

 うわーーーーん!!

 

 山城は号泣した。

 

「いや、ちょっと落ち着いてくれ。扶桑さんが帰らない?!そんな……。つい今朝、怪我を治して帰って行ったのに……」

 

 まさか、と玄一郎は思う。やはり怪我が治ったとはいえ一人で帰したのは間違いだったのか。まさか帰る途中、深海棲艦に襲われたのか?

 

 玄一郎の目の前が真っ暗になった。

 

 ガシャン、とゲシュペンストの膝が水面につき、がっくりと頭を垂れる。水面に手をついて愕然とつぶやく。

 

「そんな……嘘だ。あんなに元気になって……。嘘だ、嘘だ……朝、見送ったのに……」

 

「え?あの、今朝に帰っていったんですか?」

 

 ボロボロになった短髪黒髪のセーラー服の女の子がもう一人の女の子を抱えつつ二人の方へやってきて玄一郎に聞いてきた。

 

「ああ、そうだ。うかつだった。やはり俺が送っていくべきだったんだ。そうすればっ!!」

 

「あの、そうするとおかしい事になります。第一次中枢侵攻作戦は昨日です。ええっと……。扶桑さんは、生き残った?」

 

「そうだよ!!あの時助けたんだ!!なのに、なのにっ!!」

 

「……いえ、私達が第二次中枢侵攻作戦で基地を出たのが今朝ですから、その。もし扶桑さんが今朝出立して基地に帰ったのなら私達とは行き違いになってるはずです」

 

「「……へ?」」

 

「いえ、ですから扶桑さん、生きて基地に帰還してる可能性は高いんじゃないかな、と」

 

「……扶桑さん、生きて帰れた?」

 

「ねぇさま、いきてる、の?」

 

「はぁ、おそらく」

 

「「……よかった、扶桑さん(ねぇさま)……」」

 

 玄一郎と山城は安堵の溜め息をつき、立ち上がり、お互いに手を取り合って喜び、そして海の上でぴょんぴょん飛び跳ねて扶桑の無事を互いに喜んだ。

 

 長身の美女といかつい戦闘ロボットがそうやって、

 

「ひゃっはー!!扶桑さん(ねぇさま)バンザーイ!!」

 

などとやっている様を短髪黒髪の女の子は、

 

「えーと、なんなのこの人達」といった目をして生暖かい視線を送った。

 

 

 山城と吹雪と名乗った女の子の負傷は軽い方だったが、もう一人の女の子、如月という女の子が負傷は酷く玄一郎は一つだけ持って来ていた高速修復剤を背中の多目的ウェポンベイから取り出し、かけてやった。

 

 みるみるうちに怪我も服も治ったが意識はすぐには戻らなかった。

 

〔疲労が激しい。この子は栄養状態が著しく悪い。こんな兵士を戦場に送り出すとは……末期だ。あり得ない〕

 

 ゲシュペンストはそう言った。いつも冷静なこのロボットにしては珍しく憤慨した様子で、声に感情がこもっていた。

 

 吹雪の方も見れば痩せており、負傷のせいだけではないよろめきやふらつきが見られる。玄一郎(=ゲシュペンスト)が如月を抱え、山城が吹雪に肩を貸してやり、四人はワタヌシ島の洞窟へと到着した。

 

「ここは、大怪我を負っていた扶桑さんを手当てしたところだ。もう一人、扶桑さんが帰った後で見つけた子を寝かせている」

 

「……あんた、扶桑ねぇさまに変な事してないでしょうね?」

 

「……あのな、俺に何か出来るわけないだろう。ロボットなんだぜ?」

 

「どうだか。あんた、さっき私の胸、いやらしい顔して見てたじゃない。この変態ロボット……!」

 

 そう、山城の服装は敵の攻撃で酷い事になっており、昨日の扶桑の比では無いほどにズタボロで、もう前は丸見えでお尻の部分も見えてもう、とんでも無いことになっていたのである。

 

 扶桑が無事であった事に喜ぶ余り、二人は手に手を取ってはしゃいでいたが、我に帰ったら玄一郎の目の前には半裸どころかほぼ全裸に近い美女、という。

 

 もちろん、玄一郎の頭にはしっかりと焼き付いているし保存もしている。

 

「い、いやらしい顔って、この顔は表情動かんわい!君だってノリノリではしゃいでたじゃないか」

 

「うぐっ!だ、だって扶桑ねぇさまが無事だとわかって、嬉しくて思わず……」

 

「俺だってそうだよ!!」

 

 洞窟に向かって歩きながら口論している二人。そこへ。

 

「そこにいるのは誰でち!」

 

 洞窟の中から水着を来た、しかし洞窟の中に寝かせている女の子とは違う子が二人出てきて、何か大きなミサイルのような物を槍投げの姿勢で構えた。

 

「ゴーヤ、あれ、山城さんよ!それに吹雪に、如月!」

 

 二人は山城の長身を見るとミサイルのような物を下ろして、駆け寄ってきた。

 

「ゴーヤ!イムヤ?!あなた達生きてたの?!」

 

 山城は駆け寄って抱きついてきた二人を驚いた表情で受け止めてやった

 

「イクもハチも無事でち!それより山城さん、それにみんなも酷い怪我でち!はやくバケツ使うでち!!」

 

「いえ、私は服が破れただけで直撃食らってないのよね……。まぁ、バケツあるならもらうわ」

 

「ところで山城さん、この……えーと如月ちゃん抱えたロボット?は?」

 

「なんかよくわからないわ。コレが危ない所を助けてくれたんだけど……」

 

 そういえばよくよく考えても玄一郎、というかゲシュペンストは山城達とは初対面なのである。なんとなく扶桑の事でやたらシンパシー的な物を感じていたが。

 

「俺は……うん、ゲシュペンストタイプS、という。まぁ、とりあえずは俺にもよくわからん事は多いけど……。ところで、中に君達と同じ水着着た子が寝ていると思うんだが?」

 

「イクの事?ああ、意識が戻ったわ。なにか黒くて大きい何かに抱えられて助けられた、とか変な事を言ってたけど、それ、あなたね?」

 

「まぁ、そうなるのかな」

 

「イムヤ、話は後でち!みんな中に入って修復剤を使うでち!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 洞窟の中には玄一郎が助けた女の子と、もう一人スクミズを着た金髪の女の子がいた。

 

 玄一郎が浜辺で助けた女の子は『イク』と名乗り、金髪の女の子は『ハチ』と名乗った。

 

 いま、イクを寝かしていた寝床は未だに目を覚まさない如月という女の子が寝かされている。

 

「イクを助けてくれてありがとうなの。なんとなく、朦朧としてても覚えてるのね!」

 

 イクはどこかの方言なのか奇妙な訛りのある感じに喋る。なんとなくその口調は玄一郎の大学の講師のお国訛りに似ており、たしか茨城の方の訛りだったか?と思いつつその礼を受け取った。

 

 でちでちと何かにつけて語尾にそうつけるのはゴーヤ。ゲシュペンストの機体にぺちぺちと触り、なにか「おおーっ」とか「かっちいいでち!」などとなんかウザいが、実害は無いので放っておく。

 

 イムヤ、と名乗った子はこのスクミズ軍団の中では一番大人びた感じであり、なんとなくこの子達のリーダーなのではないか、と玄一郎は思った。

 

 ハチと名乗った金髪の子は、焚き火に鍋や飯盒をかけてなにかを作っている。鍋の湯にはレトルトのカレーやシチューがかかっており、人数分の何倍かの数が温められている。飯盒の中はおそらくご飯だろう。

 

 食事の支度をしつつ、やたらと玄一郎、というよりゲシュペンストの方を見てくる。おそらくは好奇心からだろう。

 

 全員の前にアルミの食器……小学校の給食で使われていたと思わしい……が並べられている。

 

 もちろん、玄一郎の前にも。

 

〔自分の身体は食事を取る必要は無い。いや、食べられない〕

 

 ゲシュペンストは玄一郎にそう言ったが、玄一郎の頭の中で話すのではなく直接みんなに言えばいいのに、と玄一郎は思うも、このロボットはどうも自分を表に出すのを嫌がっている節がある。仕方が無いか、とそれをハチに伝える。

 

「あー、俺はロボットだ。食事は食べられないんだ。すまない」

 

「……中の人は食べないのですか?」

 

 囁くようなか細い声でハチは言った。中の人、といえば玄一郎の事なのだろうが、機体に人の身体は入ってはいない。おそらくハチはゲシュペンストがパワードスーツのようなもので、人が中に入って動かしてるのだと思っているのだろう。

 

「いや、中の人は居ない。俺は機械だ」

 

 はあっ?!

 

 と全員が玄一郎の方を見る。

 

 それもわからなくも無い。これがゲシュペンストの自我が機体を動かしていたならばまた話は違っただろうが、玄一郎の動き方は人間臭い動きをしている。人の癖があちこちに出ているのだ。

 

「俺はパワードスーツを着てるんじゃなくて、なんというか、ロボットそのものなんだよ」

 

「と言うことはあなたは食べないのね。なら、食い扶持増えたわね」

 

 山城が澄まし顔でそういう。なにかやたらと辛辣である。おそらく裸を見られたのをまだ根にもっているのだろう。

 

「出て来ないと本当にみんな食べてしまうわよ?」

 

 山城はどうも疑ってるようにそう言う。内心、玄一郎は(出られるもんなら出たいよ。カレー食いたい)と思うも無理なのは自分でもわかっている。

 

「ああ、俺の分はみんなで分けてくれ。俺のエネルギー源は核融合炉だからな」

 

「核融合炉!……それは、やっぱりドイツの技術なのですか?」

 

 ハチが飯盒と鍋を持ってきて言う。

 

「ゲシュペンスト、はドイツ語の亡霊という意味です。機体の名前がそうなら、やはりドイツ製だと思ったのです」

 

 どうもこのハチという女の子はドイツが好きなようだ。目になにか憧れのようなものを浮かべて玄一郎を見ている。

 

〔私はマオインダストリーで作られた。マオインダストリーの機体にはドイツ名が多い。おそらくドイツの技師なども設計には関わっていたのではないかと推測する〕

 

 ゲシュペンストがそういう。

 

「えーと、機体の製作にドイツの技師も加わってた、らしいよ?俺は……よくわからないけど」

 

「やっぱりそうなのですか!ドイツ……。海が深海棲艦に封鎖されて海外との通信も途絶えて何年にもなりますが、ドイツの科学力は世界一、ドイツでは艦娘ではない対抗兵器を作ってたんですね!」

 

「……いや、どうなのかなぁ、それは。まぁ、ご飯の後でみんなでいろいろ状況を話そうね?俺にもわからないことだらけだから」

 

 ゲシュペンストもその中の玄一郎の精神もこの世界の存在ではない。それぞれ別の世界から転移してきた者達である。そのへんどう説明するかを悩みながら、玄一郎は心の中で溜め息を吐いた。

 




 スクミズっ!!せぇらあ服っ!!そして山城さん当事者。

 扶桑ねぇさまよりも大破グラはどう見ても露出おおいよね、山城。

 不幸だわ、なんて言う暇もございません。

 しかし過去のゲシュペンスト=玄一郎はなんというかエッチっぽいよね。
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