ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 扶桑ねぇさま、再び。

 スパロボだと火力支援型、ですかね。

 なお、今回、不適切な表現が含まれているかも知れません。あまり酷いようならば、御意見等でこちらに教えていただけますとありがたいです。

あらかじめ御了承ください。


【昔話】黒い亡霊と薄倖の乙女④

 さて、時間帯とするならば山城達が第二次中枢侵攻作戦後にちょうどゲシュペンスト(玄一郎)と手に手をとって『扶桑さん(ねぇさま)バンザーイ!!』をやってた頃。

 

 扶桑は途中で深海棲艦に遭遇……と、言っても遠方を進む深海棲艦数隻を目視で発見したのだが……それと交戦していた。

 

 ル級エリート一隻、ワ級二隻。つまりは物資輸送の深海棲艦の部隊なのだろう。

 

 しかし、なにか様子がおかしい。ル級もワ級もすでにボロボロになっており、なんとか航行出来ているといったほどであり、船体には魚雷ので傷ついたあとと思わしき損傷部位がいくつもあった。

 

 扶桑はそのいくつもの魚雷の跡に見覚えがあった。

 

 小島基地の潜水艦娘達がよくやる戦法である。深海棲艦から物資を奪い取る時に、大破轟沈寸前でわざと沈むか沈まないかのところでとどめるのである。沈んでは物資は奪えないからである。

 

 方法は以下の通り。

 

 海中、深い深度から相手に肉薄し、急速浮上。そのまま浮上する勢いにまかせて水面から飛び上がり、相手の頭上から魚雷をぶん投げてぶち当て、武装を破壊し攻撃不能なまで追い込み、そしてそのまま敵を魚雷で脅しつつ、燃料や弾薬、修復剤、食料その他を強奪……というよりはカツカゲするのである。

 

 えげつない物資強奪の仕方であるが、彼女達はほとんどの場合、燃料や弾薬などギリギリしか与えられず、敵から奪ってなんとかしないといけないほどに困窮しているのである。

 

 それは彼女達が死に物狂いで編み出した海賊戦法、というよりは生存方法だった。

 

 その戦法で大破した深海棲艦がいるという事は、潜水艦娘達はまだ健在で生きている可能性が高いと言うことでもある。

 

 ワタヌシ島の潜水艦娘達の隠れ家の状況を見て彼女達はもう沈んでしまったのではないかと思っていた扶桑は内心ほっとした。

 

 だが、潜水艦娘達がアレを襲ったにしては、どうもおかしいとも扶桑は思った。

 

 彼女達は物資を奪った後、必ず深海棲艦を沈めているはずなのだ。ひょっとすると潜水艦娘の誰かに何かあったのかも知れない。

 

 扶桑は知る由も無い事だったが、輸送艦ワ級の護衛には爆雷を積んだ護衛が着いていてなんとか撃破したもののそれによって潜水艦娘達は大打撃を受け、命からがらまたワタヌシ島に逃げ帰ったのである。

 

 (あの子達、無事ならよいのだけれども)

 

 そう考えるも、このまま基地に向かって進むと必ずあの深海棲艦の艦隊に見つかるのは目に見えていた。手負いとはいえル級エリートは扶桑にとって危険だった。

 

 扶桑は主砲を展開した。

 

 本来ならば戦艦のレンジとして遠すぎる。完全に普通の戦艦ならば砲撃範囲外とするこの距離。

 

 しかしこの距離こそが戦艦扶桑、彼女本来の間合いだった。

 

 扶桑は戦艦としては速度が遅く、また装甲も薄い。かつて大日本帝国海軍の戦艦扶桑であった頃から彼女の抱える問題は多かった。

 

 だがしかし、主砲の火力こそが彼女の唯一といって良い長所。そして高い艦橋は目視により活かされる。

 

 彼女は自分の長所を生かす為の戦法をずっと考察し、文字通り血のにじむような努力と修練によってこの戦法を編み出したのである。

 

 それが超遠距離での正確無比な複数同時狙撃、全砲門での多目標同時狙撃だった。

 

 主砲副砲全てがル級エリート、ワ級二隻の急所を全て狙う。

 

「主砲副砲、全砲門掃射っ!!」

 

 全ての砲が同時に火を噴いた。

 

 ズォーーーン!!

 

 まるで一発だけ撃ったかのようにその音は大きく響き。ただの一回。そう、ただの一回、彼女の全砲門が火を噴いただけで三隻は火を噴いて沈んでいった。

 

 手負いとは言え、いや、おそらくそれが手負いで無かったとしても必中し、沈んだだろう。

 

 では、何故彼女は『第ー次中枢侵攻作戦』でその戦法を使えなかったのか。それは悲しいかな彼女の率いる艦隊の駆逐艦達の練度に原因があった。

 

 彼女が艦隊を組んだ上でこの超長距離同時狙撃を行うには、駆逐艦や軽巡といった前衛艦による敵の囲い込みか、もしくは重巡や戦艦の砲撃による敵艦の誘導が必要になる。

 

 しかし、彼女が所属する基地の司令官はわざと扶桑の得手とする長距離攻撃を封じる為に、訓練も教練も受けていない駆逐艦ばかりをつけて出撃させたのである。

 

 砲撃の照準もあわせられない、魚雷もおっかなびっくり撃つ、何より海の上を真っ直ぐにしか走れない、すぐに転けそうになる、そういう子達だったのだ。

 

 いかに扶桑が熟練の艦娘であっても、それで戦えといわれても無理な話である。

 

 命令には逆らえず、彼女はその子達を守る為に前で戦わねばならず、結果として艦隊全滅。扶桑も轟沈寸前となってしまった。

 

 今頃、司令官は高笑いしている事だろう。あの女提督は気に入らない艦娘に対しては、とにかく死地に追いやる事で自分の憂さを晴らすのだ。

 

 しかし、扶桑は基地に戻る事を選択した。彼女には守るものがあるからだ。大切な妹を置いてどこにも行けはしない。歯を食いしばり、扶桑は海の上を駆けていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 扶桑が基地にたどり着いた頃には、もう昼を回っていた。途中で何回か深海棲艦と遭遇し交戦、負傷したものの小破までも行かないかすり傷程度は負ったものの、なんとか無事であった。

 

 軍港についた時に、痩せた駆逐艦が桟橋で泣いているのを扶桑は発見した。

 

 見れば睦月型駆逐艦一番艦の睦月だった。この睦月は駆逐艦娘の中では練度もある程度……といっても4ぐらい……ある子である。

 

 扶桑は怪訝に思い、睦月に声をかけた。

 

「睦月?どうしたの?」

 

「や、山……いえ、扶桑さん?!無事だったの?!」

 

「……私だけ、なんとか生き残れたわ」

 

「山城さんが、今朝出撃させられて。如月ちゃんと吹雪ちゃんだけで、ううっ、如月ちゃんはあんな身体なのに……」

 

「なんですって?!第二次中枢侵攻は明後日のはずじゃ?!それに駆逐艦二隻だけ?!」

 

「はい……。でも、主力の弾薬や燃料の補給が必要なくなったからって、急にそうなって、睦月も如月ちゃんと出るって志願したけど、却下されて……。如月ちゃん……!」

 

 ボロボロとその大きな目から涙がこぼれ落ちる。扶桑は愕然として海の方を向いた。

 

 主力の補給が必要なくなったのは、玄一郎(=ゲシュペンスト)が全ての深海棲艦を殲滅してしまったため、主力艦隊は出撃する必要がなくなり、武器弾薬を温存できた為であった。

 

「いけない、行かなければ!!」

 

 扶桑は再び海へと向かおうとしたが、しかし。

 

「帰還したと思ったらどこへ行こうと言うのかしら。私への報告も無し?欠陥戦艦はどこまで言っても欠陥戦艦ね」

 

 後ろから声がした。

 

 厭らしい、まるで粘り着くようなこの声。振り向けばそこには無理矢理に太った身体を海軍の制服に押し込んだような、醜い姿があった。

 

 小島基地司令、白鳥万智子中佐である。

 

「……帰還出来ないような作戦を立てて何を言う!!」

 

「あら、でも帰って来たじゃない。その様子じゃ、駆逐艦の子達を見殺しにして、お得意の超長距離攻撃で敵を撃破して帰って来たんじゃないの?海域の深海棲艦はみんな撃破されていたわ。すごいわねぇ。可哀想な幼い駆逐艦達の犠牲で、主力を出す前に攻略なんて、もう欠陥戦艦なんて呼べないわねぇ」

 

「ぐっ……」

 

「入搬してらっしゃいな。今日の戦果に免じてこの後は休みにしてあげる。おほほほほ、報告もしないでいいわ。あなたの顔なんて見たくも無かったですしね」

 

「何故……妹を、山城を出したのです?!何故っ!!」

 

「あら、緊急出撃の必要があったから。それ以外に何か意味でも?」

 

「計画では、明後日のはず!!それに何故、随伴が駆逐艦二隻だけ、それに如月はっ!!」

 

「あら?さっきも言ったはずよ?緊急出撃の必要があったからって。なに?欠陥戦艦は耳も欠陥なの?それに如月も吹雪も駆逐艦の中では練度は高いほうなのよ?あなたにつけた子よりもね。まぁ、あなたが生きて帰ったんですもの。山城も案外帰ってくるんじゃない?おほほほほ」

 

 そう言って白鳥万智子中佐はもう話は終わりだとばかりに、まるで犬を追い払うように手でしっしっ、とやり、基地の方へと歩いていった。

 

 扶桑は白鳥の背中を睨んでいたが、だが自分も後ろ、海の方を向いた。

 

「山城……っ!」

 

 扶桑は妹を助ける為に、また海へと向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 小島基地・司令官である白鳥万智子中佐の頭は怒りでみたされていた。

 

 醜く太り、皮膚の弛んだ顔には異相が浮かび分厚い唇はワナワナと震えていた。

 

 空母偵察部隊による『第二次中枢侵攻作戦』の状況分析の報告内容に対して怒りを露わにし、机の上を力任せにぶったたいた。

 

 内容は『タ級及びル級の残骸を発見。当初海域に深海棲艦の艦影は見えず。敵の艦隊撃滅を確認。なお旗艦山城、他二名の死体は発見出来ず』だった。

 

 つまり、そのエリアの戦闘で自軍が勝ったという報告であった。普通ならば勝利に対して喜んでも良いはずなのであるが、この白鳥万智子中佐は顔を真っ赤にして怒り狂った。

 

「「ひいぃぃっ!!」」

 

 秘書艦の最上と任艦娘の大淀が怯えて身を縮まらせる。

 

「あんのビッチ共がぁぁぁぁっ!!なんでっ!!死ぬように仕向けたのぃぃっ!!」

 

 ガッシャーーン!!とデスクをちゃぶ台返しして叫ぶ。

 

「扶桑も生きて帰りやがったし、それによりによって、欠陥妹までも勝っただとぉぉぉっ!!あの芋娘とビッチ駆逐艦しかつけてないのにどうやって勝ちやがった、死ねよ、死ねよぉぉぉっ!!死んどけよぉぉぉっ!!ド畜生がぁぁぁぁっ!!」

 

 この白鳥万智子は、名前こそはキレイな感じの名前であるが、外見は醜く太っていた。

 

 身長、167センチ、体重167キログラム。胸囲より腹が二倍の太さで、まとった脂質の肉は垂れており、人型の深海棲艦の方がなんぼか人間に見えるぐらいにクリーチャー的だった。

  

 あえて説明するが、性別は女である。認めたくないが生物学上はそうなっている。年齢も見た目は40越えていてもおかしくないように見えるが20代後半であり、特徴はひたすらに醜い。とにかく醜い。どうやっても醜い。

 

 性格は外見に輪をかけて醜く、とことんまでも、ろくでもない。

 

 自分よりも美しい物が嫌い。性格の良い奴が嫌い。男に可愛く媚びを売るような女など死ねばいい。そんな奴なのである。

 

 この女、と呼ぶにはいささか抵抗のある物体はとことんまで腐りきっている。

 

 とにかく艦娘を殺す為に提督をやっていると言っても過言ではない程の無理な作戦を立てて、とにかく艦娘の損害を出すことに腐心しているのだ。

 

 気に入らない艦娘は過酷な主戦場へとすぐに送る。大破進撃当たり前、気に障る事を自分に言ったならば、とにかく飯抜き補給抜きも当たり前。

 

 特に嫌っているのは扶桑姉妹と如月、曙、熊野、金剛、榛名などであり、とにかく女らしい艦娘が気にくわない。

 

 そのような奴が何故に小規模といえ、基地の司令をやっているのかと言えばひたすらにコネ、としか言えない。

 

 祖父が海軍に出資している財閥の長老、叔父が海軍の顔役、父親が海軍の准将であり、とにかくコネ。ひたすらにコネである。まぁ、扱いに困って家族親族が娑婆に置きたくなかったから海軍に入れて隔離した、という側面も無きにしも非ず。

 

 故に資材等や資金等はかなり潤沢に送られて来るので質が悪い。

 

 とはいえ。

 

 そんな彼女に、さらなる不幸が訪れるのは、そう遠くない話ではあるのだが、まだ彼女はそれを知らない。

 

 

 

 

 




 典型的なゲスな提督という事で白鳥万智子中佐を出してみました。

 女性提督なのは18禁回避の為。

 白鳥万智子中佐は、ショタコンであり、最上のような中性的な艦娘には比較的優遇する模様。比叡には恨まれており、毒殺されかかった事がある(金剛を何隻も沈めたので)。

 なお、わりとすぐに、さぱりと居なくなるので御安心下さい。
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