ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 ようやく長かった昔話の終わりです。

 深海武蔵との決着!

 ゲシュペンスト大破。

 


【昔話】黒い亡霊と薄倖の乙女⑩

 ズシン!!

 

 武蔵の戦艦棲姫は、手に持った錨のような形のバカでかい大剣をコンクリートの地面に一度振り下ろした。

 

 地面が揺れる。それだけでコンクリートが割れてそして砕けた破片がサラサラと砂塵と化していく。

 

〔高周波振動による破砕であると推測。玄一郎、あの赤黒い光に加えてさらに当たってはいけない要素が追加されたぞ〕

 

「……他人事のように言うな。この身体は元々お前の身体だろ。対策は何かあるか?」

 

〔グラビティフィールドを全開にしておく〕

 

 ヴゥン、と音がして、フィールドが先程よりも広くなる。しかし、どこまで通用するか全くの自信は無かった。

 

「それしか、ないのか?」

 

〔無い。近接武器は使うな。あれの一撃でも機体が行動不能になる。掠るだけでも危険だ。間合いを取って射撃武器で削るしかない〕

 

「どうした?怖じ気づいたのか?恐れる事はない。ちょっとの間の地獄を味わった後には、この私が極楽のような永遠をくれてやろうと言うのだ。そう、私という極楽をむさぼる権利を与えてやる。我らが愛し合う永久(とわ)の為の地獄ぐらい、受け入れて見せろ『男』っ!!』

 

 一瞬のうちに武蔵の戦艦棲姫は間合いを詰めて、大剣を振りかぶってゲシュペンストに殴りかかる。

 

「受け入れられるかっ!プリズムファントムっ!!」

 

 ゲシュペンストは先程から作っていた光学ステルス迷彩をぶっつけ本番で展開して攻撃が当たる直前に分身して、武蔵の目の前から消え失せた。

 

「なにっ?!消えただと?!」

 

「拡散バズーカーっ!!乱れ撃ちっ!!」

 

 ズドーン!ズドーン!ズドーン!ズドーン!

 

 上空から拡散するバズーカー砲を撃って撃って撃ちまくる。破裂した砲弾はバラ弾の如く地面にその破片を振りまく。

 

「ぐっ、三式弾?!いや、違う??」

 

 三式弾なら火炎効果があるが、拡散バズーカーの弾はどちらかと言えば散弾である。

 

「くそっ、チマチマチクチクチクチクとっ!!」

 

 武蔵は忌々しそうに上空のゲシュペンストに炸裂弾を放って撃ち落とそうとしたが、そのゲシュペンストは幻のように消え、そして次の瞬間、武蔵の前に現れ、回り込みながら素早くその胴にM-970アサルトマシンガンで攻撃しながら駆け抜けてまた消えた。

 

「『男』ならばっ!!正々堂々と戦えっ!!」

 

 武蔵は見当違いの所に砲弾を打ち込んだが、しかしそれで当たる筈もない。

 

「正々堂々とやるにはお前はやばすぎるんだよっ!!」

 

 散弾ライフルをぶちかましつつ、玄一郎は叫ぶ。

 

 武蔵を倒せる唯一武装は胸部のメガブラストキャノンクラスの攻撃だとゲシュペンストは分析していた。だが、そのメガブラストキャノンはまだ修復出来ていない。あと10分かかる。

 

 だが、修復を終えてもどうやって撃つか、という問題があった。相手はかなり動きが早く、そして生身の女の見た目をしているが、装甲も耐久力も桁違いである。まるで宇宙戦艦を相手にしているような気分にさせられているほどなのである。

 

 いや、これが宇宙戦艦ならば艦橋に攻撃を加えれば無力化させる事もできるだろう。だが、相手は人型であり、しかし人の弱点である頭部に射撃をしようが、心臓の位置にミサイルをぶち込もうが、耐えるようなバケモノだ。かつてやりあったスーパーロボット達が可愛く見えるほどだ。それだけダメージが通らないのだ。

 

 故に、ゲシュペンストが玄一郎に取らせた戦闘方法は

 

 『遠距離からの射撃による高速の機動戦闘と、そして光学ステルス迷彩を駆使して攪乱しつつ、相手の動きを止めてとにかく武蔵に少しでもダメージを与え、削って動けないようにする』という、方法だった。

 

 ゲシュペンストタイプS本来の戦い方ではない、というか非常に苦手とする戦い方ではあったが、ズフィルードクリスタルがあるからこそまだ出来る戦法だった。

 

 今回の戦闘で、玄一郎は気づいてはいないが、かなりゲシュペンストの姿、特に背中のバインダーやブースターなどはもう形状が変わっている。

 

 スフィルートクリスタルが自動的に機体を進化させているのだが、ゲシュペンストとしてはあまりそれは良いことでは無かった。それはゲシュペンストが人類の脅威に成りかねない事だからだ。

 

〔どちらにせよ、長引けばこちらが不利だ〕

 

 玄一郎はゲシュペンストの焦りが分かって、とにかく攻撃を急いていた。ワケがわからないまでもこの機体に共にいるのだ。思考まではわからないがなんとなくそれは伝わっていた。

 

 ありとあらゆる射撃武器や投擲武器を駆使して、とにかく止まらない。ランダムに攻撃方法を選択し、とにかく同じ攻撃をしない事で、パターンを作らない事に徹した。

 

「チャクラムシュート!!マシンガン!!地雷っ!!」

 

 幸いな事に、ゲシュペンストのデータベースにはその手の武器は豊富にあった。

 

「ゲッシーミサイルマシンガンっ!!」

 

 手当たり次第にゲシュペンストが出す兵器を撃ちまくり、待避、ステルス迷彩で攪乱し、そして武蔵の動きを封じつつ確実にダメージを与えて行った。

 

 武蔵はとにかくイラついていた。

 

 ゲシュペンストをとにかく捉えられない事、そして、チクチクチクチクとイラつくような攻撃に。

 

 闇雲に三式弾を撃ち、ばらまき、それでもゲシュペンストを捕らえられず、その怒りたるや白かった深海棲艦特有の肌が、赤く染まるほどのものであった。

 

「がああああっ!!『男』らしくぶつかって来いっ!!なんだその攻撃はああああっ!!」

 

 理性が吹き飛びそうなほどの憤怒を抱えて武蔵は叫ぶ。その身体のあちこちから火が出ており、それは玄一郎の攻撃が確実に通っている事を示していた。

 

「一撃食らったら死んじまうようなのとまともにやり合えるかよっ!!チェーンマイン!!」

 

 後ろから現れた玄一郎は連結された吸着地雷を武蔵に投げつけた。

 

 チェーンマインは、対人型装甲兵器用の武装である。つまり、装甲を破壊する事に対して絶大な威力を発揮する。

 

 武蔵の全身に巻きついた吸着地雷が一斉に轟音を上げて爆ぜた。一個でも凶悪なマインそれが、全身で爆発するダメージは、武蔵であっても耐えきれるものでは無かったようだ。

 

 艤装が吹き飛び服までズタボロにされ、膝を付く武蔵。

 

〔胸部メガブラストキャノンの修復完了!!玄一郎、跳べっ!!〕

 

「うぉぉぉぉっ!!メガブラストキャノンっ!!」

 

 胸部装甲が左右に開き、そしてメガブラストキャノンの砲口が展開された。エネルギーが収束する。

 

 今までに無い程の力を感じ、玄一郎は叫ぶ。

 

「デッドエンドっ!シュートぉぉぉっ!!」

 

 ドォーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 エネルギーの奔流が放たれ、武蔵へとそれは直撃した。

 

「うぉぉぉぉぉっ!!塵になれぇぇぇぇっ!!」

 

「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」

 

 光に包まれ、武蔵は絶叫した。断末魔の叫びが響き、まるでこの海全体にまで届くようなその叫びは、熱線砲が撃ち止むまで続いた。

 

 

 撃ち終わり、玄一郎は焼け溶けた基地の地面を見た。

 

「地面が溶けた硝子みたいになってやがる」

 

 すざまじい温度にさらされた基地の港は、そこがまるで円形のクレーターになったように窪み、海水が入り込んですざまじい湯気を立てていた。

 

 コンクリートも鉄のクレーンも、もう溶け落ちており、ここを基地として使うにはかなりの修理が必要だろう。

 

〔敵機体の反応無し。周囲に深海棲艦の反応ゼロ。戦闘終了。機体修復以外のスフィルートクリスタルの活動を停止する〕

 

「こんだけやりゃあ、あの『武蔵』も一溜まりも無いだろ。はぁ、疲れた……。ゲシュペンスト、帰ろうぜ。扶桑さん達が待ってるだろ……」

 

〔なにっ!!玄一郎っ!!後ろだっ!!〕

 

 振り向く間も無く、ゲシュペンストの肩が何者かによって掴まれた。

 

「くくっ、ククククク……。モウカエルナド、ツレナイデハナイカ」

 

 ジュウウウウウッ、とゲシュペンストの装甲が溶けていく。

 

 「なにっ?!」

 

 振り向き、そして玄一郎は見た。

 

 焼けただれた、女の姿をした怪物を。赤熱し、それでも動く鋼のバケモノを。

 

「熱カッタ……熱カッタゾ。ソウダ、アノヨウナ熱イノガ欲シカッタ……。ククククク、フフ、フハハハハハッ、ヤハリオマエダ!!私ハオマエヲマッテイタ!!オマエヲ待イデ、見ヌウチ二恋ヲシテ、アア、アアッ!!」

 

 ジュォォォォッ!!赤熱化した女がゲシュペンストを捕らえていた。

 

〔信じられん、出力を絞ったとしても、あれに耐えるとは……っ?!〕

 

「愛シアオウ、『男』。サア来イ、器ナド脱イデ、私ト行コウデハナイカ!!」

 

 武蔵はゲシュペンストを抱きしめた。

 

「ぐわぁあああああああああああああっ!!」

 

 ジュォォォォッ、ジュォォォォッ、とゲシュペンストの装甲が溶けていく。だが、それだけではない。赤黒いオーラが武蔵の身体中からゲシュペンストに、玄一郎に流れ込んでくる。

 

 バチッ、バヂヂヂヂッ!!

 

 ゲシュペンストの各部関節の配線が熱に耐えきれずに放電する。

 

「フフ、フハハハハハ、アア、オマエの魂ヲ感ジル……アア、濡レル、早ク、早クオマエヲ引キ摺リダシテ、アア……」

 

「がっ、がっ、ぐっ、ふ、扶桑っ……さんっ!!」

 

 もう身体は動かない。もうだめだ、と玄一郎は思った。頭に走馬燈のように、扶桑の顔が、悲しそうな笑顔が過ぎった。

 

「せ、せめて……ひ、一太刀っ……!!」

 

 玄一郎はなんとか動く拳を握りしめ、腕を振り上げた。死ぬにしても一撃ぐらいは入れたかった。

 

「不粋ダナ。ソノ腕デナニヲシヨウトイウノダ?」

 

 だが、それも出来なかった。武蔵はさらに赤黒いオーラを流し込んで来たからだ。

 

「ぐがぁぁぁぁっ!!」

 

 もう、力も入らなかった。

 

「げ、ゲシュペンスト、すまねぇ……。もう、ダメだ……」

 

 ガクリ、と全ての力が抜けていく。入り込んでくる怨念を振り払う力ももう、持てない。

 

「フフフフフ、ソウダ。ソレデ良イノダ。私ノ念ヲ受ケテ、オ前ハ『男』二ナル。ソウナレバ、アトハ海ノ底でジックリト、私ノ良サを教エテヤル。肌ヲ重ネ、ジックリトナ……」

 

 もうだめだ、と思った瞬間。

 

 ズドドドドーン!!と大きな砲撃の音が鳴り響いた。

 

 それは、武蔵へ過たず全て命中し、その身体を吹き飛ばした。

 

「深海棲艦!!その方を離しなさいっ!!」

 

 凛とした声が勇ましく、第二射を放つ。

 

 ドドン!!ドドドドドン!!

 

 その砲声は一つだけでは無かった。

 

「あーっ、もうっ!!やっぱりやられてるじゃないのっ!!情けない!!」

 

 ドーン!!ドーン!!ドーン!!

 

 ああ、それはゲシュペンストの分析を聞かなくても解る。最初の砲声は扶桑さん、次の砲声は山城だ。

 

「ガァァッ!!キサマラ、私ノ邪魔ヲスルカァァァッ!!」

 

「お黙りなさいっ!!その方は私達姉妹の命の恩人、その御恩に報いらずして、なんの大和撫子かっ!!」

 

 ズドーーーン、ズドーーーン!と何発も砲を撃ち、そのどれもが武蔵に直撃する。しかし武蔵の砲はもうすでにゲシュペンストのメガブラストキャノンによって破壊し尽くされ、反撃も出来ない。

 

「海の中からこんにちわ~っ!!魚雷でちっ!!」

 

 そこに、突然海の中から現れたスクール水着の女の子達が飛び上がり、魚雷を集団で武蔵に投げつけた。

 

「魚雷、イクのぉぉっ!!」

 

 大量の魚雷が、武蔵に必中する。

 

「コノ、潜水艦風情ガァァッ!!」

 

 ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!

 

「そして撤収~っ!!」

 

 潜水艦娘達は魚雷を投げつけるだけ投げつけて、そして素早く海の中に潜行した。

 

「グ、ググッ……。口惜シヤ。モウスグダッタノダガ……」

 

 武蔵はよろめきつつ、ゲシュペンストの方を睨んだ。

 

「『男』ッ!次コソハ必ズ……。必ズオマエヲ手二入レテヤルカラナ!!マッテイロ!!」

 

 そういって、海に飛び込んで沈んで行った。おそらくは逃げたのだろう。

 

「……ぐぅっ、次は、逃げる。もうあんなのと戦いたく無ぇ……」

 

〔同感だ。次は緊急脱出ブースターを装備することを提案する〕

 

「ああ、次は造っといてくれ」

 

 ゲシュペンストの中の二人はそう軽口を叩き合い、ため息を同時に吐いた。

 

 これが人間の身体であったならば、気絶もしただろう。だが機械の身体になった玄一郎は、気絶も出来ず、動けないまま扶桑達がここに来るまで転がっているしか無かったのであった。

 

 

 

 





 戦艦棲姫がこんなにバケモンなわけはないんですが、この『武蔵』は沈んでからの最初に権限した『武蔵』なので、その霊力や怨念は別格だという設定です。

 なお、艦娘の武蔵はここまで強くはありません。

 最初に顕現した艦は長い月日でその神格を上げていくという設定ですので、武蔵の深海棲艦はかなりの強さを持つバケモノになっている、というわけです。

 ちなみに大和さんは最初に艦娘として顕現しており、とうの昔に人妻になってたりする、とか。なんとか。
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