ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 やはりゲス提督は、おっぱい星人のぽっちりすと。

 ゲシュペンストが何故現在何も言わないのか。それは裏で色々と……。

 


バカは死んでも治らない、らしい。

 司令の部屋は通常業務をする執務室のその隣にある。

 

 ベッドもあるが、ゲシュペンストはそれを使わない。だいたいゲシュペンストは眠らない。

 

 ベッドの上には、すぅ、すぅ、と寝息を立てている扶桑が眠っている。ゲシュペンストはそのベッドの隣に置いている専用の椅子に座り、扶桑の寝顔を眺めていた。

 

「……あの時と同じだな」

 

 初めて扶桑にあった時、彼女は大怪我を負い寝ていて。玄一郎は大岩に座って。

 

 こんな綺麗な人、今まで見たこと無いと無い心臓を高鳴らせつつ、ドキドキしつつ、そして様態を心配して。

 

 その頃の彼は若かった。姿形は変わらぬロボだが、精神はかなり若かった。そしてバカかった。

 

 今はどうなのだろう、と思う。

 

 ふと思い出すのは扶桑のおっぱいと薄桜色のぽっちの美しさだが、今となってはそんな事で騒ぐような事も無くなって、まるで老人のような枯れた心境になっている。

 

 いや、見慣れたとか見飽きたとかではない。だいたい、見てしまったのは前にも後にもあの時だけなのだ。

 

 記憶再生で繰り返しはみたけど、見飽きるとか見慣れるとか、そんな恐れ多い。たまに最近でも見たりするし。というか見たいし。

 

 ……いや、それはさておき。

 

 心までがまるで機械に飲み込まれたように、昔ほど動かなくなっているのだ。

 

 今でも、扶桑は玄一郎には特別で、最も美しい女は誰だと問われたならば扶桑であると即答えるだろう。一番、大好きなのも。

 

 そしてそこには偽りは無い。はっきり言おう。扶桑さんは世界一ぃぃぃっ!!と。

 

 あの小島基地での戦いの後、ゲシュペンストは大破した。助けに来てくれた扶桑達に連れて帰ってもらったワタヌシ島で約一週間も動けない状態で世話……と言っても、人間のように食事も睡眠も排泄も必要無いのだが……を受けた後に、玄一郎は彼女達と一度別れる事となった。

 

 海軍が、その海域周辺を調査するために大勢の艦娘達を送り込んで来たからである。

 

 彼女達も海軍に属する艦娘であり、いつまでもワタヌシ島の隠れ家に居るわけにもいかず、そしてゲシュペンストと玄一郎も発見されるわけにはいかなかった。

 

 なにしろ、小島基地を壊滅させたのはゲシュペンストなのだから。

 

 その後は、ゲシュペンストと玄一郎は元の世界に帰る方法を探した。様々な国を渡り歩き、様々な人と出会い、別れ、時には軍に追われ、時には人間のゲリラと戦い、時には深海棲艦とも話をし、時には艦娘達に撃たれたりして、そして。

 

 帰る手立てなどどこにも無い事を、二人は知った。

 

 二人は自分達が死んだ者の残留思念、すなわち幽霊だった事を知った。文字通り、ゲシュペンスト(亡霊)だったのである。

 

 ゲシュペンストの機体は、艦娘や深海棲艦同様に機体に集まった念が具現化したものだった。ゲシュペンストの無念はそれを成すほどに強かったのだ。

 

 ゲシュペンストタイプSは数奇な運命の中で、地球の為に戦う事が出来なかった。敵に鹵獲され、逆に地球の敵として侵略に加担してしまったのだ。

 

 超機グルンガストのある意味プロトタイプとも言える正義のロボットだったはずの自分が、である。

 

 その無念が、世界を越えてたどり着いたこの世界で、再びその姿を顕現したのが、彼であった。

 

 だが、彼は自身をロボットであると認識していた。パイロットがいなければならない、と。

 

 そこに、別の世界で死んだ玄一郎の魂がこの世界に流れ着いて来たのである。ゲシュペンストは無意識にその魂を自身の中心に取り込んだ。

 

 それは異星人達がゲシュペンストに埋め込んだズフィルートクリスタルの性質が出てしまったがためだった。

 

 つまりは、死んだロボットと死んだ人間が二人して元の世界に戻ろうとあくせく世界を旅して、手がかりを探そうと足掻いていたという、笑い話にもならない事だったのである。

 

 ゲシュペンストはその事実を知って、

 

〔玄一郎、自分は君に贖罪せねばならない。仕出かした事に償わなければならない。自分は自身の全能力を使ってそれをするつもりだ。だから玄一郎、しばしの別れだ。次に会うときまで、この身体を頼む〕

 

 そう言ったきり、本当に居なくなったように話もなにもしてこなくなった。

 

 レーダーやセンサー、武装、ありとあらゆる機能は普通に使えているし、ズフィルートクリスタルの制御も問題なく機能しているので行動に問題は無い。

 

 玄一郎だけでは武装を作り出す事は無理だが、そんな事はどうでも良かった。

 

「……ふぅ、贖罪とか償いとか、俺が欲しいのはそんなんじゃねぇよ相棒。お前がいないとつまらねぇだろが」

 

 一番の相棒が居ないこと。それが一番玄一郎には堪えた。今も、ずっと。

 

 扶桑はすぅすぅ寝息を立てている。出逢った時と同じ姿で、綺麗で可憐なままだ。

 

 艦娘は年をとらない。いつまでも若いままで姿を変えることはない。

 

(……と言うことは、扶桑の乳首はあの薄桜色のままなんだろかな?)

 

 などと玄一郎の脳裏にそんな事が過ぎるが、コイツホントは枯れてないだろ。

 

 しかし、取り繕うように。

 

「うん、亡霊は見守るだけでいいんだ。ホントはな」

 

 などとのたまった。台無しである。

 

「んん、んっ……」

 

 扶桑が動いて、手がタオルケットから出た。パラオの夜は、昼間暑いが夜はヒヤリとする。ゲシュペンストはその手を取って、タオルケットの中へと戻そうとしたが……。

 

 どどどどどどどどどどどどっ!!バーーーン!!

 

「扶桑ねぇさまーーーーっ!!」

 

 山城が部屋に乱入してきた。そして、扶桑の手を握るゲシュペンストの姿を目撃。

 

「うぁぁ、あんた扶桑ねぇさまに何してんのよ、このエロボットっ!!」

 

 騒ぐ山城を横目で見て、ゲシュペンスト提督は扶桑の手をタオルケットの中に優しく入れてやる。

 

「見てわからないか?というか、今日も飲んでたのか。近頃は出撃させなくて悪いとは思っているが、若手連中の教官は重要な任務だぞ?二日酔いでは示しがつかんだろうが」

 

「明日は休みです!って、なんかやんなさいよね。邪魔しに来た甲斐が無いでしょうに……。はぁ、不幸だわ」

 

 山城はそう言って溜め息を吐く。息がやたら酒臭い。

 

「あのな、邪魔ってなんだよ邪魔って。お前ね俺がなんか出来るとでも?俺ロボットなんだぜ?」

 

「るせぇわよ。つか、むしろなんかやんなさいよ、つまんない!」

 

「お前、自分の姉だろが。他の鎮守府とかだと扶桑提督になる最大にして最強の障害山城が何を言っとるんだ」

 

「ふん、だ。安心安全人畜無害ロボットめ。はぁ……平和だけど、不幸だわ。主にねぇさまが。ヘタレのロボ提督は指輪すらもねぇさまに用意しない、ゲスロボだったのね……。よよよよよよ」

 

「思い切り酔ってますね?山城さん」

 

「ああっ、その昔、私達姉妹の裸を見て、エロエロエロって笑いながらゲスだったあなたはどこへ行ったの?おっぱいおっぱいってやたらと連発して小躍りしていたのに!!」

 

「じゃかましいわっ!!つかそんな奴ぁどんな過去にもいねぇわっ!!つかお前の中では俺はどんな変態なんだよ?!」

 

「え?裸見たのに責任取らないヘタレ変態提督だけど?」

 

「いや、もういい。つか、俺はこれから用事で出てくるから、適当に休め?つか水を飲んどけよ?マジで二日酔いになるからな」

 

「じゃあ姉妹でベッド暖めておくから~、うっふん」

 

「……俺は寝ないからな?ロボ的に」

 

ゲシュペンスト提督は溜め息を吐きながら部屋を出て行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 夜の基地は静かかと思えばそうでもない。

 

 基地の近くには繁華街も近く、おそらくパラオで最も活気のあるところだと言える。

 

 パラオは世界で安定して安全な国の一つに数えられ、各国の要人や金持ち達が観光に来る。

 

 基地を出て、徒歩で街へと向かう。

 

 ネオンは煌びやかに灯り、人々の笑い声や喧嘩っぱやい若者が言い争う声があちこちから聞こえてくる。

 

 この平和で繁栄している街をみんなが守っていると思うと少し誇らしく、そしてこの喧騒の中に自分という異物の身の置き所が無いというのが少し寂しい。

 

 街を抜けて、ゲシュペンストはとある裏路地にある、スクラップ工場にも似た場所へやってきた。

 

 車や、バイク、時には艦娘の艦装、イ級などの装備していた砲などが混ざる廃材が積み上がる入り口に向かい、入っていく。

 

「やぁ、久し振りだね」

 

 工場の奥の方、スチール製のデスクの椅子に座っている、白衣を着た女性がくるりと椅子ごと回ってゲシュペンストを見た。

 

「どんな感じだ?」

 

 主語を抜き、ゲシュペンストはその女性に言った。

 

「ふむ、本来こういうのは君の所の明石がやれば良いんじゃないかと思うんだけどね」

 

「アイツは腕は確かだが、頭が堅い。作る以前に設計すら拒否するだろう。それにデザインならアマンダだ」

 

「嬉しいこと言ってくれるね。図面はもう出来ている」

 

 アマンダは設計図の青写真を広げてゲシュペンスト提督に見せた。

 

 そこにあったのは、ビッグスクーターのような単車だった。

 

「アンタの身体のサイズ、重量に耐えれて、馬力もモンスタークラス。名付けてペイルホース。どうだい?ウチのフルオリジナルさ。当然、このサイズはあんたしか乗れない」

 

「ふむ……。確かにこの構造は、ふむ。俺のフレーム構造をアレンジして取り入れたんだな?だが、このエンジンは?」

 

「エンジンじゃなく、モーターだよ。超電磁モーター。もちろん、いざとなったらあんたに直結して回せる。つか、エンジンの試作品はそこにあるだろ?」

 

 見れば小型だが同じ構造のモーターが置いてあった。

 

「……仕事が早いな」

 

「そりゃあね。私は明石ん中じゃ、速さは一番って言われてたからね」

 

 そう、このアマンダといまは名乗っている女は、元『明石』である。

 

 昔にこのパラオ泊地に任官していた明石なのだが、現地の男性と結婚して今はこの自動車修理工場を切り盛りしている。なお、この元明石はメカニックとしての腕は確かなのだが、料理の腕は悪く、今旦那は『鉄板焼き屋RJ』まで、今日の晩飯の買い出しに行かされている。

 

「しかし、あんたは自分で走っても早いだろうに。何でまたバイクなんて欲しがるのさ?」

 

「車道でブースターを噴かして後ろの車を燃やすわけにもいかんだろ。足で走ればアスファルトが凹む。空を頻繁に飛ぶわけにもいかん。この身体だ、公共機関も乗れない。自家用車も無理だし、今まで公用で遠出するときなんて、軍用トラックの荷台に寝転んでだぞ?自分で気兼ねなく自由に運転出来るものが欲しかったんだ」

 

「あー、なるほど。言われてみれば確かに。アンタも存外、暮らしに不便な身体だねぇ」

 

「そういう事。それに趣味も作らないとストレスが溜まって仕方ない」

 

「それでバイクってわけかい」

 

「そうさ。休日にいろんな所をバイクで走ってぶらぶらするのってよさそうじゃないか?」

 

「ふむ、タンデムシートに扶桑をのせて?」

 

「いや、無理だろ。俺の背中のバインダー見てみろよ。いろいろ付いてて無理」

 

「ふむ。サイドカーつけるかねえ。どう?」

 

「いや、一人乗りで充分だ」

 

「何かあったときにつけれた方がいいよ?なんなら左右つけようか?」

 

「いや、何で誰かを乗せなきゃいかんのだ?」

 

「いやいやいや、絶対乗せなきゃ。いいからいいから。脱着できるようにするから!」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいやいやいや」

 

 結局、何故かサイドカーをつけることで決定してしまった。

 

 




 相変わらず文章が下手ですみません。

 鉄板焼き屋RJ。鳳翔さんが日本に帰り、艦娘達の憩いの場を守るべくRJさんが後を継いで出した鉄板焼き屋。

 隼鷹や足柄さん達が入り浸ってます。

 なお、龍驤さんのお好み焼きは大阪風。
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