ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 空母水鬼さん、マジ人間の味方。という設定。

 大井さん、怖い。

 ゲシュペンストの復活と主人公の……。


会議室

 会議室である。

 

 主だった者達の修復が済んだため、話を聞くために集まってもらったのである。

 

 海軍側の将校はそれぞれプロジェクターを後ろに座り、その将校の後ろにそれぞれの秘書艦が立つ。

 

 ゲシュペンスト提督の秘書艦は扶桑。土方中将の後ろに長……ナガモン。沖田少将の後ろに加賀。

 

 横に並んだ長机には同盟深海棲艦のボス三人とその副官達が座っている。

 

 まず、パラオ周辺海域の取り纏め役の『空母水鬼』とその副官の『ヲ級フラッグシップ』(ヲ級(パ)と表記する)が。

 

 その向かい側の席に『港湾棲姫』と副官(?)の『ル級フラッグシップ』(ル級(港)と表記する)。

 

 『港湾棲姫』の隣に『北方棲姫』とその保護者(?)の『軽巡棲姫』。

 

 深海勢を見るに、同盟深海棲艦軍の首脳が三人もそろうなど本来有り得ない事態である。

 

 そして、大本営からの連絡によれば。

 

 南方棲戦姫と泊地水鬼も現在、空母の航空機にてパラオに護送中、と打診された。受け入れるしかない。

 

 溜め息を吐きたいが、そうも言ってはいられない。なにしろ、南方棲戦姫を受け入れた佐世保基地は壊滅的な打撃を受け、泊地水鬼を救助したインド方面軍もかなりの打撃を受け、連絡も現在不通状態という有り様なのだ。

 

 ゲシュペンスト提督は溜め息を吐きたくなったが、みんなの手前、なんとか堪えた。

 

 五大同盟深海棲艦、通称『五大艦』の中で唯一戦力を保って無事なのはパラオ周辺海域の『空母水鬼』のみであるが、その彼女の軍勢もやはり襲撃を受け、拠点は占領されている。

 

 戦力を保っている、というのには理由がある。

 

 空母水鬼は『逃げの水鬼』と呼ばれるほどに逃げ足が早い。そしてその配下の軍勢もとにかく逃げ足が早い。

 

 つまりは早くから拠点を捨ててパラオ泊地に逃げて来たから、である。

 

 かつて土方がパラオ泊地の提督をしていた頃にパラオ周辺海域を攻略出来なかった理由がそれなのだから、如何に空母水鬼達の逃げ足が早かったのか、わかろうものである。

 

 海域を進んでも、敵がいない。空母水鬼の拠点に到達してももぬけの殻。

 

 とにかく逃げていない。稀に深海棲艦を見つけても、『ハグレ』であり、空母水鬼の軍勢ではない、といった有り様である。

 

 約3年間もそのような追いかけっことかくれんぼを繰り返し、ゲシュペンストがパラオにふらりと来るまでそんな状況だったのである。

 

 そこでゲシュペンストは土方の策略によって鹵獲……というか、無理矢理に巻き込まれたわけなのだが。

 

 さて、この空母水鬼は確かに逃げる。とにかく戦いを避ける傾向にあるが、では臆病なのか?と言われればそういうわけではない。また、弱いわけでも無く、むしろ本気になれば当時のパラオ泊地の戦力では攻略は難しかっただろうとさえ推測されているほどである。

 

 では、何故逃げ回って戦闘を避けていたのか?と言えば。

 

 パラオの人々が困るから、というのがその理由だったのである。

 

 まず、彼女はパラオで行われる『鎮魂の祭』を非常に気に入っていた。

 

 それはパラオで亡くなった兵士達を弔う為の祭であったのだが、深海棲艦が出没するようになってから、パラオの古老達の発案で海の魂も鎮魂しよう、と言うこととなり、それは結果的に空母水鬼達を『祀り挙げる』事となってしまったのである。

 

 そのため、彼女達はパラオを守護するような存在へと変化していき、同様にパラオを防衛する泊地の艦娘との戦闘を避けるようになった、というのが戦わない理由だったのである。

 

 では外敵である『マヨイ』の軍勢から逃げ出してきた理由は何か。

 

 答えは簡単である。

 

 ゲシュペンスト提督が『港湾棲姫』や『北方棲姫』が避難して来ると伝えたから、である。

 

 港湾棲姫も北方棲姫も、その実力はかなりのものである。それを避難せねばならないほどの軍勢が来るならば防戦してこちらの戦力を削られるよりはすぐに逃げてパラオ泊地と合流する方がより勝算は高くなる。なにより拠点はすぐ逃げられるように、重要な物など一つも置いていないのだから。

 

 パラオとそこに住む者達以外に大切なものはなく、それを守る為ならば拠点も捨てる。

 

 全ては祈りの為に。それが空母水鬼達の全てなのだった。

 

 

「パラオ泊地司令官、ゲシュペンスト大佐。これより、土方中将並びに私、沖田がパラオ泊地に暫定的に着任する。貴君が松平元帥閣下の要請があった場合に単独で出撃する際、貴君の不在時の基地司令代理を勤める事になる。よろしく頼む」

 

 沖田少将がまずゲシュペンスト提督に言った。

 

「そゆことん。とりあえず、ゲーちゃん、状況確認と報告よろしくぅ」

 

「……沖田少将、よろしくお願いします。あと土方中将、あんたはもっと真面目にしてくれ。同盟深海棲艦の方々に失礼だ」

 

 ゲシュペンスト提督は後ろの液晶プロジェクターに画像を映し出した。

 

「まず、今回の一連の事件を『五大艦同時襲撃テロ』と呼称。これはこちらの大本営が暫定的に名付けたものですが、その被害にあった御三方と配下の方々には心より御同情の意を申し上げます」

 

 頭を深々と下げ、ゲシュペンストは語り始めた。

 

「情報によりますと、他、九州南部海域の『南方棲戦姫』とインド洋の『泊地水鬼』のこのお二方も襲撃を受け、現在、航空機によりこちら、パラオ泊地に避難されると言うことです。このような事態でなければ『五大艦』の皆様をこのパラオに迎えるのは光栄であると言えるのですが、事態は深刻であります」

 

 ゲシュペンスト提督は指し棒を取り出し、液晶プロジェクターの画像を切り替えた。

 

「皆様に確認したいのは、まず、襲撃犯がこれらの深海棲艦であったか?ということなのです」

 

 いくつかの深海棲艦の顔の画像が映し出され、それぞれを指し示した。海軍に登録された危険深海棲艦達の画像である。

 

 港湾棲姫はやはり『雷のレ級』の画像にひどく反応した。

 

「コイツだ!コイツが私の胸を引き裂き、噛みツイタ奴ダ!!」

 

 やはり、間違いは無いか、とゲシュペンスト提督は確信した。

 

 だが、北方棲姫はどれも違う、と首を横に振る。

 

 土方中将の話によれば『戦艦タ級』であったとの事だったのだが、海軍のブラックリストに乗っているタ級とは違う、未確認のタ級なのかも知れない。

 

「ワタシ、見テナイカラワカラナイ」

 

 空母水鬼はのほほん。そりゃあすぐ泊地に来たから見てないでしょうなぁ、とゲシュペンスト提督もそう返した。

 

「では、この深海棲艦に見覚えはありますか?」

 

 そう言って、次に映し出したのは『武蔵の深海棲艦』である。これはゲシュペンスト提督が戦った当時の記憶である。

 

「……イヤ、ナイ。トイウカ、怨念の塊のヨウナ艦ダナ……。イヤ、情念力?」

 

「……知らナイ。ダレ?」

 

「……コレ、武蔵サン?デモ、深海化シテタッケ?」

 

 誰も知らなかった。つまりはこの三方の襲撃に武蔵の深海棲艦は出てきていない。

 

「うわ、コイツって小島基地壊滅の時の?」

 

「そうです、土方中将。あと、港湾棲姫を襲ったのは、『武蔵の深海棲艦』と一緒にいた『雷のレ級』です。また、パラオに向かう途中で土方中将や港湾棲姫様の乗った大発を襲撃した『摩耶と鳥海の深海棲艦』が言っていた『武蔵さん』がコイツに当たる、と私は推測しております」

 

「……つまり裏にこの特SSS指定危険深海棲艦一号が絡んで居ると?」

 

「そう思わざるを得ません、沖田少将。現在、高雄と愛宕に『摩耶と鳥海の深海棲艦』を尋問させておりますが、報告が上がっておりませんのでなんとも言えませんが」

 

 そう言って、取り調べ室にゲシュペンスト提督は繋げ、尋問の様子をカメラで見た。

 

 

《んほぉぉぉっ、熱いのぉぉぉっ!!》

 

《助けてぇぇ、愛宕ねぇぇっ!!嫌だ、俺おかしくっ、イヤだぁぁぁっ!!》

 

 アレ?ナニ?ナニコレ?

 

 取り調べ室では、捕虜の手当てに向かわせた大井がなんか軟膏をやたらめったら『摩耶と鳥海の深海棲艦』の臀部に擦り込んで、しかもやたらめったらパシーン、パシーン、とさらにその尻を叩き。

 

《さあ、お泣きなさい!許しを乞いなさい!這いつくばって、北上さんを侮辱した事を後悔しなさい!というか誰がクレイジーサイコレズよっ!!私達の関係は、そんな穢れたものじゃないわっ!!》

 

《んほぉぉぉっ、ずっほぉぉぉっ!!》

 

《やめ゛でぐれ゛ぇぇっ、ねぇぇぇざぁぁぁん》

 

 阿鼻叫喚の地獄がそこには繰り広げられていた。

 

 北上は無関係ですよー的な感じで大井を止めようとはせず、なにか漫画を読んでいた。

 

 そして、高雄と愛宕は途方にくれて遠い目をしながら。

 

《摩耶と鳥海は、今頃何をしているかしら?》

 

《きっともう寝てるわよぉ。明日のシフト、早番だからぁ》

 

 などと現実逃避していた。

 

 深海化し変わり果てた妹の、その凄惨な姿を見て心があっちに行ったのかもしれない。

 

(こんな時に何をやっとるのだアイツ等はっ!!)

 

 ゲシュペンスト提督は、扶桑に小声で他に聞こえないように、

 

「天龍と五十鈴に取り調べ室に向かうように伝えてくれ。洗浄用の水タンクとタオルを大量に持ってけ、と。埒が開かん。大井と北上を排除、高雄と愛宕は下がらせ、早急に情報を聞き出せ、とも伝えてくれ」

 

 と言った。とりあえず、先ほどのパンツ脱がされて軟膏塗りたくられて悶える二人の姿はなんかエロかったので映像保存はしておくが。

 

「……ゴホン。取り調べは軟膏、いや、難航している模様です。では……」

 

 ゲシュペンスト提督はそうやって様々な角度から分析した今回の事件の状況を報告しつつ確認しつつ進めて行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 会議室での状況確認と聴取、説明が終わってゲシュペンスト提督は執務室へと戻ってきた。

 

 その後、上がってきた天龍と五十鈴の報告によれば『摩耶と鳥海の深海棲艦』はブラックだった江ノ島の基地が沈めた『摩耶と鳥海』だった事が判明。

 

 やはり『武蔵の深海棲艦』と接触した事でなんらかの『力』を得た、との事である。

 

 また、同じように『力』を与えられた『雷のレ級』と他数名の同様の深海棲艦達と手を組んで今回の同時多発テロを画策したらしいが、どうも二人にはそのテロの真意や理由は聞かされておらず、今回の事件に『武蔵の深海棲艦』の関与はしてないらしい。

 

 『武蔵の深海棲艦』は小島基地壊滅事件後、ゲシュペンスト提督やゲシュペンスト提督を助けに来た艦娘達から受けたダメージによって、休眠しており、まだそれから目覚めていないというのがその理由である。

 

「とりあえず、空母水鬼の拠点を探る、か』

 

 ゲシュペンスト提督は一人、そうごちる。今は深夜の3時を回った所である。

 

 さて、と。

 

 ゲシュペンスト提督はまた、新たな情報はないかと大本営のデータベースを探ろうとした。

 

 そのとき。

 

 ジジジッ、ジジジッ、と頭の中に激しいノイズが走った。

 

「ぐあっ?!なんだっ、これはっ!!』

 

 そして、無いはずの身体に激しい痛みが走る。それはまるで、かつて武蔵の深海棲艦から受けた、あの魂に直接怨念を流し込まれたのと同様の痛みだった。

 

「う、うわあああああああああああああっ!!」

 

(なんだこれはっ?!これはどうした事だ?!)

 

〔耐えろ、玄一郎〕

 

(なっ、相棒っ?!どういう……っ、ぐあああああああっ!!)

 

〔君の感覚だと久しぶり、なのだろう。私にはつい先ほどぶりだが〕

 

(今まで、何をして、いや、何をしてやがるっ、この痛み、お前がやってるのかっ?!)

 

〔そうだ。耐えろ。私がお前に出来る、贖罪だ。受け取れ〕

 

 ひときわ大きい痛みが玄一郎の『身体』を貫いた。脳から背骨の先まで走るような、激しい痛みだった。

 

 たまらず絶叫し、魂消るような悲鳴を玄一郎は上げた。

 

「ぎゃあああああああああああああああああっ!!」

 

 叫び、玄一郎の意識はそこで途絶えた。

 

 





 摩耶と鳥海のそれは無くても良かっただろうか。

 ゲシュペンストの帰還。しかし……。
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