ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 深海棲艦による近代兵器の運用。

 戦術的、かつ統制のとれた戦闘方法と戦術。

 未だかつて無い、襲撃にゲシュペンストと玄一郎は果たして輸送機を防衛できるのか?!


輸送機護衛作戦・後編

 ゲシュペンストの操作によるガンファミリアは正確にミサイルを撃ち抜き、そして輸送機に到達する前に落とされていたが、しかし、イージス艦からの対空ミサイルはまだ撃ち出されている。

 

 イージス艦そのもののミサイルは尽きているのだが、しかしその甲板上にいる人型深海棲艦達がまだ携行対空ミサイルランチャーを延べ撃ちしているのだ。

 

 シースパローよりも確かに小さいミサイルではあるが、それゆえに迎撃し辛い。

 

 赤城も戦闘機を駆使して迎撃にあたっているが、だがまるで無尽蔵のように撃ちまくられるミサイル全てを戦闘機で撃ち落とすのはやはり困難であった。それに、かなり戦闘機内の妖精さんにも負担がかかっている。

 

 だが、やってみせると言った以上やらねばならない。歯を食いしばり、精神を戦闘機と同調させ、最大の力を込めて迎撃を続ける。

 

 食いしばった歯の歯茎の付け根がぎり、ぎり、と軋む。握りしめた手に爪が食い込み、血が滲む。

 

 だから何だ。一航戦の名は伊達ではない。

 

 赤城の戦闘機群は旋回し、進み、撃ち落とし、そしてまた来るミサイルへと向かう。

 

 と、そのとき。

 

 輸送機の後部カーゴのハッチが開き、そして完全には開ききらないその間から何本もの矢が放たれた。

 

 その矢の色は朱。

 

 朱に塗られた矢は幾つもの、それこそ有り得ない数の戦闘機になり、そして機銃を掃射、ミサイルを容易く撃ち落とし、次、次と全く無駄のない軌道でさらなるミサイルを迎撃していった。

 

 赤城は朱のラインの入ったその戦闘機を見、それを打ち出した後部カーゴハッチの向こうに立つ、弓を構えた女性の姿を捉えた。

 

 それは彼女の師であり、そして全ての空母の母、誰もが憧れ、そしてかくありたいと願う人の戦闘機だった。

 

「ほ、鳳翔、さん?!」

 

『赤城さん、呆けている場合ではありません!シャキッとなさい!まだ噴進弾が向かってきてます!』

 

 無線が懐かしい声を伝えて来た。

 

 赤城は奮い立った。この人の前で恥ずかしい戦いは出来ない!

 

「はいっ!!一航戦、赤城、参ります!!」

 

 赤城の目から一筋、涙が伝う。負けは無い、その確信が胸に湧いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 ゲシュペンストをいつもの速度で飛ばし、玄一郎は面食らった。

 

 初めて体験する生身の身体に掛かるGのすざまじさに歯を食いしばり、なんとか耐える。少しでも身体の力を抜けば押しつぶされそうなほどのG。身体が無かった頃には思ってもみなかった重圧である。

 

「ぐぅっ、こんなにかかるのかよ!?」

 

 それでも耐えられているのは、ひとえにゲシュペンストが強化したためと、ゲシュペンストそのもののGキャンセラーが働いているからであるが、それでも生身にはキツいのである。

 

 だが、速度は緩めない。緩めることが出来ない。

 

 今、赤城は限界の力を振り絞ってミサイルを迎撃し、食い止めているが、赤城の精神力、戦闘機の機銃の残弾数はそろそろ限界だ。ゲシュペンストの操るガンファミリアの弾も無限ではないし、ガンファミリアだけでは全て撃墜するには数が足らない。

 

(どんなけのミサイルを用意してんだよ?!)

 

 近づくイージス艦を睨み、未だ携行対空ミサイルランチャーを撃ち続ける深海棲艦を捉える。

 

 イージス艦の甲板上ではあたかも長篠の合戦における火縄の三段撃ちのように三列縦隊に整列した人型の雑多な深海棲艦がミサイルランチャーを延べ撃ちし、さらにミサイルランチャーのボックスを運び込む運搬係りが走りまわって補充していた。

 

 これは深海棲艦達がただの『マヨイ』や『ハグレ』ではなく、この襲撃の為に訓練を施されている『兵士』であることをさしていた。そして、この襲撃が用意周到に計画されていたことも。

 

 だが、費用対効果は最悪な戦法である。輸送機一機に対してシースパロー数十発、対空ミサイルランチャーも何十発使っているかわからない。下手をすると予算は億ほど消えている計算になる。

 

 とは言え、奴らには特に気にならないのだろう。敵から奪った艦娘には通用しない兵器などいくら使っても奴らの腹は痛まない。

 

「ふざけやがって!!」

 

 玄一郎は減速、スナイパーレールガンを構え、照準をミサイルランチャーを運搬している深海棲艦に合わせた。通常のライフルでは届かないが、この超超距離用ならば届く。

 

 玄一郎はその場で減速する。

 

「ぐえっ?!」

 

 いつもの調子で急にやったために、内臓が潰されそうなほどの衝撃を胸や腹に受けたが、それでも無理矢理に押さえ込んでスナイパーレールガンを構える。

 

 ミサイルを撃っている深海棲艦ではなく、ミサイル弾を運んでいる深海棲艦、そのボックスに照準を合わせる。

 

(まずは補充から絶つ。誘爆を狙えりゃダブルでおいしい!ついでに深海棲艦にも弾が貫通すりゃトリプルチャンス!)

 

 ガキュン!ガキュン!ガキュン!ガキュン!ガキュン!

 

 電磁パルスの火花を散らし、音速を超えて特殊貫通弾が撃ち出された。

 

 ほぼ、撃つと同時の着弾。

 

 ミサイルのボックスは狙い誤たず全て破壊、運んでいた深海棲艦にも弾は貫通し、そして撃たれたミサイルが狙い通り誘爆する。

 

 だが、ミサイルの誘爆はしたものの、周りの深海棲艦には効果は無い。人間の兵器が爆発したとしても深海棲艦には傷一つつけられないのである。

 

「んじゃ、行くぜっ!!ぐえっ?!」

 

 玄一郎はまた加速した。なお、最後のぐえっ、はGにまたやられたのである。慣れとは怖いものである。

 

 急接近し、マルチロック。スプリットミサイルを全弾ぶち込む。

 

〔玄一郎!ミサイルが止まったのでサポートする!〕

 

「おう、ありがてぇ。つか、このG、なんとかなんねぇ?」

 

〔グラビティフィールドを出す。というか、何故使わなかった?〕

 

「……忘れてた」

 

 ゲシュペンストがグラビティフィールドを発生させると今までのGが軽くなった。

 

〔……昔、音速で飛んだ際に私が使っていただろう?〕

 

「そんなもん、記憶の彼方だ。ゲシュペンスト、行くぞ吶喊っ!!」

 

 スプリットミサイルがイージス艦に到達し、着弾。玄一郎はそのまま船の上空へ飛び上がり、そして叫んだ。

 

「究極ぅ!ゲシュペンストキーック!!」

 

 艦橋に向かって最大出力。必殺の蹴りを放った。

 

 ズドォォーーーーン!!

 

 装甲も何もかもぶち抜き、吹き飛ばす。イージス艦の屋根がぶっ飛んだ。操舵室から何から何までが壊滅、勢い余ってなんか白い奴まで蹴った気がしたが、どっかにそれは吹き飛んで行った。

 

 ゲシュペンストは着地と、言って良いのか。何層にも床や壁を突き破り、最後にはめり込んでようやく破壊は止まった。

 

「うげぇぇっ、なんつう柔い装甲だよ、これ」

 

〔戦艦とイージス艦を比べるな。早く抜け出せ〕

 

 ギギギギギ、と手でめり込んだ壁を押し広げて玄一郎は辺りを見回す。

 

「どうやらここは格納庫みたいだな」

 

〔そこまで突き抜けたか。だが、もぬけの空だな。見ろ、ハッチが開いている。ヘリか何かを出した痕跡がある〕

 

 格納庫のハッチから外へ出ると、上空、ゲシュペンストのレーダーではもう捉えられない距離にオスプレイが飛んでいた。なんとか一瞬の視認は出来たものの、それは遥か遠くへと逃げ去った。

 

「くそっ、逃がしたか。あれが敵の指揮官かよっ?!」

 

 スナイパーレールガンの射程圏すらも超えている。

 

〔……なんとか乗っている者の拡大画像は取れたが、不鮮明だ。照合出来ればいいが〕

 

「後の話だ。ゲシュペンスト、この艦に深海棲艦の生き残りは?」

 

「一体だけだ。他は船から飛び降りて逃げているようだ。いや、逃げた奴らも、今、爆雷を受けいる。これは……蒼龍の戦闘機か」

 

 試しに蒼龍の無線に繋げてみると、

 

『南雲機動部隊の、意地ぃぃっ!!』

 

 という叫びが聞こえた。呼吸がかなり荒いのは精神を集中させて戦闘機を加速に加速させて無理矢理にここまで誘導したからなのだろう。空母と言うのは意地っ張りが多いらしい。赤城しかり、蒼龍しかり。

 

 何人か生かして捕虜に取りたかったが、蒼龍にそれを伝える間もなかった。おそらく逃げた連中はもうとっくに殲滅されている事だろう。

 

「……で、船に残っている一体はどこにいる?」

 

〔我々の足元に倒れているのがそうだ。艦橋からここまで蹴り抜いて来たと言うのにまだ息があるとはな。大した大物かも知れんぞ?〕

 

 玄一郎は足元を見てうわっ!と足を上げた。そこには目を回してぶっ倒れている、メガネをかけた長い三つ編みの深海棲艦がやはり服をボロボロというかほとんど布も残らないような状態、すなわち全裸でぶっ倒れていた。

 

 大の字でちちりしふもとと、さらに大股ぱっかー。

 

 普段ならば目のやり場に困ったところだが、相手は敵である。玄一郎は牽引用のワイヤーを腰のハードポイントから外すと、倒れている深海棲艦を縛った。とりあえず気分的には『後手合掌逆海老縛り』な感じだったので、手早く海老反りにさせてしっかり縛って約30秒。

 

 もちろん、記憶に録画……は、人間の脳みそになってしまい、さらにゲシュペンストの脳に記録するのも拒絶されてしまい、泣く泣く自分の目にその光景は焼き付けておく。

 

(くっそーっ、記録して俺のタブレット端末に送ってくれるぐらい良いじゃねぇかよ!!)

 

〔却下だ。なお、タブレット端末に落とした画像、動画は全て消去済みだ〕

 

「な、ななな、なんだとっ?!な、何故?!」

 

〔扶桑姉妹にバレるところだったのだ〕

 

「……ああ、なら仕方ない。では、また新しく……」

 

〔却下だ。正直な話、私はあの姉妹の逆鱗には触れたくない。あの姉妹が夜な夜な念を込めて造っている徹甲弾は私の装甲をも撃ち貫けるほどの『概念』が封入されている。撃たれたく無い〕

 

「……え、マジ?」

 

「『相棒』。彼女達がお前を『武蔵』から護るために造りだした弾だ。さしものあの『武蔵』とてもあれに撃たれれば無事ではいられまい。それほどの想いを扶桑達はお前に抱いている。お前も、憎からず思っているのだろう?何故、彼女達受け入れないのだ?」

 

「……俺達は、確かに階級を持って、泊地一つ任された提督になったさ。だが、俺達は日本海軍の『備品』として登録されてんだよ。給料は出る、地位もある、だが法的には人権は無い。ケッコンカッコカリの申請も出来ねぇんだよ。出しても受理されねぇんだ」

 

〔それは過去のログで見た。だが今のお前には身体がある。それならば……!〕

 

「……さてな。その話はもう聞きたくない。今は仕事中だ。とりあえずコイツの中をウチの連中に調べさせる手筈を整えよう」

 

〔玄一郎……〕

 

 玄一郎は縛った捕虜を肩に担いで後部のヘリポートへ向いた。その時、空港のあきつ丸からの報告が入った。

 

『提督殿、輸送機は無事に空港に着陸。『VIP』二名、乗員他、皆、無事であります!』

 

「防ぎきったか。損害は?」

 

『ほぼ無しであります!輸送機も無傷であります!』

 

「了解。こちらも敵イージス艦を制圧。敵数体が航空機で逃亡したようだが、船内の敵はほぼ壊滅。海に逃げ出した連中は蒼龍が撃沈した。捕虜一名確保。管制室のひじ……いや、沖田少将に繋いでくれ」

 

『了解であります』

 

 ぷつっ、と一度通信が切れ、そして管制室に繋がった。

 

『ゲシュペンスト大佐、お疲れ様です』

 

「俺は疲れない。……イージス艦鎮圧。捕虜一名確保。ウチの部隊は引き上げさせる。奴らはもう戻らないとは思うが、念のため、護衛をつけてキャリアーで夕張と明石をここまで寄越してくれ。それまで俺はここを確保しておく」

 

「了解です。では各員帰投させておきます。なお、キャリアー護衛に泊地の『足柄』『愛宕』え?金剛?土方、あれは御隠居でしょ?ええっ?本人が行くと言ってる?珍しい。雨でも降るのではないですかね……っと、『金剛』、『瑞鳳』が就きます。到着予定時刻は一時間ぐらいになります」

 

「……あのババァが来る?何があった??」

 

『なにか戦況的にあるのかも知れない。あの紅茶楽隠居の御老公の考えは読めないが、アレが動く時にはなにかあります。警戒する必要があるかも知れない。ゲシュペンスト大佐、注意して」

 

「……了解だ。では通信を切る」

 

 玄一郎はふぅ、っと息を吐き、そしてゲシュペンストのハッチを開けた。

 

「装甲脆い癖に意外と沈まねぇモンだな、イージス艦ってのは。しかも小さいと思えば広い」

 

〔軍用艦だからな〕

 

「しかし、こんなモンを奴らどこから鹵獲したんだろな。あちこちに書かれてる表示やここから逃げて行ったオスプレイから考えてアメリカのようだがな」

 

〔データを照合して、この艦の所属はアメリカだ。玄一郎、覚えているか?深海棲艦の群れがアメリカのアイオワを沈めた件だ。その襲撃事件で数隻のイージス艦が出撃してやはり沈められ、そのうちの三隻が行方不明になっている〕

 

「……とすると、アメリカでの深海棲艦の襲撃はコイツを鹵獲するため?しかし計画的犯行って言っても、今回の『VIP』達を襲撃するためって言っても、なぁ。タイムラグがありすぎる。というか艦娘にも深海棲艦にも通用しない人間の兵器なんだぜ?」

 

〔……人間には?〕

 

「……!深海棲艦は人間の兵器を人間に使う為に?!」

 

〔推測の域を出ないが、この艦をスキャンして気づいた事がある。一つは巡航ミサイル『トマホーク』のミサイルサイロが空になっていること。もう一つは甲板にいた人型の深海棲艦達が使っていた携行ミサイルランチャーの生産国だ。あのミサイルはアメリカ製ではない。ロシア製だ〕

 

「……つまり、鹵獲されたイージス艦のうちの一隻がコレで、トマホークは他のイージス艦に運び込まれ、さらにロシア製のランチャーまでもどっからか連中は入手して来た。軍事基地からってわけじゃねぇだろうな。あんだけの数、盗んだなら何かしら情報は漏れて出てくる。多分、どこかの軍事基地の在庫を、どうせ役にたたねぇからって売って懐に入れたイワンのバカが居やがるんだろう」

 

〔その手の武器はかなり中東で見たからな〕

 

「……深海棲艦はのゲリラ化、それも組織的戦術を使うようなとんでもねぇ連中……。なぁ、鹵獲されたイージス艦に、核は搭載されていたか?」

 

〔公式発表上、核は搭載されていない。かつてのアメリカで決行された『プロビデンス作戦』において深海棲艦への核攻撃はなんら効果が無いと実証された。核の搭載はそれ以来取りやめになっている〕

 

「だとしてもトマホークは脅威だ。というか最悪の予想しか浮かばない。奴らの狙いは」

 

〔「大本営のトマホークによる壊滅!」!〕

 

 玄一郎とゲシュペンストは同時に同じ答えに至った。そしてそれは最悪の予測であった。

 





 急展開。

 逃げる黒幕。

 捕らえたほぼ全裸なメガネ三つ編み深海棲艦。

 そして無くなったトマホーク(斧じゃないやつ)。

 なんかメタルでギア的ななにかな雰囲気。

 提督の性欲は持て余したりなんだりするのか?(今までの画像は消去されました)

 次回、イージス艦の居住空間は広いけど、足柄さんのは狭い。でも、ちょっと狭い方が締まりはいいのよっ!!(嘘)。でまたあおう!
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