二人並べると姉妹に何となく見えた気がしてならない。
私はチリビーンズは嫌いではない、と初めに言っておきます。ただ、レーションのはちょっとね?
ワ級の頭の出っ歯なマスクを被ったアーマーにレオタードな怪人が一人。
元集積地棲姫の拠点にあるドックのコンテナ内に隠れていた。
このコンテナには何故か大量のチリビーンズと書かれたレーションがあり、やたら不味いそれを食べながらその怪人はうーむ、と唸った。
彼女の名はカルディア・バシリッサという。形式番号W-06。とある世界で二回ほど自爆したりした経験を持つ白兵戦用アンドロイドである。
このドックには旧世代の技術で作られた軍艦とおぼしき船が停泊しており、カルディアはそれを奪ってこの島から脱出しようと思っていた。なにしろ彼女は地上型の白兵戦用アンドロイドなのである。空を飛ぶことも海を進むことも出来ないのである。
「……不味い。辛い。臭い」
そう言いつつチリビーンズを食している。
彼女はアンドロイドであり食事を必要しないはずなのだが、何故か彼女は空腹を覚え、レーションを食べているのである。なお、他の種類のレーションは無いのだろうか、と思って探したがこのチリビーンズ以外のレーションは無かった。
空腹でいるか、不味くても腹を満たすかの二者択一を迫られた彼女は、食べる方を選んだのである。
サバイバルの基本は食べる事だと某蛇な兵隊さんも言ってた。不味くても腹はなんとか満たされる。栄養も取れる。しかし不味い。
「……もぐもぐもぐもぐ」
ちなみに何故彼女がワ級の頭部を被っているのかと言えば、敵に化けているつもりなのである、だがそれで騙されてくれるような敵はいなかったので逃げてコンテナに潜んでいるのである。
なお、このワ級のマスクは洗って干してあったのを拝借したものである(驚愕!なんと、ワ級のあれはマスクで取り外し可能だったのだ!!マジかよ)。
「……何故ばれたのだろう。完璧だと思ったが」
いや、それはない、とツッコミを入れたいところである。なにやらポンコツ臭がするような気もしないではない。
「しかし、何故食事をとりたくなる?何故食事が出来るのだ?というか何故胃袋がある?それに何故アーマーがパージ……脱げるのだ?まるでこれは……」
彼女は自分の身体の変化に戸惑っていた。搭載されたレーダーやセンサーなどに異常は無い。搭載された武装も問題無く使える。戦闘も問題ない。だが、問題は。
「人間になってしまったようではないか」
そう、身体がどう考えても人間になっていた。手の動脈にはたしかに脈がある。心臓もどくんどくんと拍動しているし、腹が減ってぐうぅぅっ、と腹の虫が鳴いた時にはかなり驚いた。
まさかと思ってアーマーの、開いたデザインのお腹の所、つまり、レオタード状になっている部分の布地を引っ張ってみた。
……下に人間の身体があった。今まで自分の服というかコスチュームというか、その布地を引っ張るなど出来なかったし、その下にボディというか人間のなんというか、裸というか、身体などなかったのにあった。身体があった。まさか脱げないよな?などと思って脱いでみたら、完全に脱げてしまった。
すっぽんぽんに、である。
これには驚愕した。
これが私か?!などと思い、自分の胸とか腹とか尻とか触ったりさすったり揉んだり、もみもみしてみて「あん♡」とか声が出て急に恥ずかしくなり、赤面してまた服を着て咳払い。誰も見てないよな?とキョロキョロするがここはコンテナの中であり、誰も居ないからここに隠れているのである。一人で良かった、とか思ってホッとしたりなんだり。情緒不安定なお年頃(?)である。
とにかく、彼女が人間の身体になっているのは間違い無かった。少なくとも生身の肉体に間違いない。
だが、不可解なのは、人間の肉体になってしまっていたのに戦闘能力やセンサー、レーダー、暗視機能が正常に機能している点である。スザクブレードもピアレスアックスも正常に作動していた。カルディアの内蔵バッテリーからエネルギーを供給されていないにも関わらず、さらにエネルギーを使っている形跡も無いのに作動し、敵を切り裂いていたのだ。さらにはスラッシュリッパーの操作すら、演算を使わずに考えるだけで自由自在に動かせるこの謎。
彼女は苦悩しつつ、仕方なくレーションに手を出す。食べる事で無意識的にこのストレスを解消しようとしているのである。現実逃避、とも言うが。
「不味い、臭い、辛い、もう一箱」
だが、これではストレスは解消されそうにない。うまい物は知らないがこれが不味いのはよくわかる(5個目)。
「……むむむ、これが不味いという味覚か。ならばうまいというのはどういう味覚なのだろうな。しょっぱい、は海に落ちた時に味わったが、ならば甘い、というのはどんな味なのだろうか?」
大勢の敵に遭遇して逃げ回った時に飛び込んだ時に海水が口の中に入ったのだがあれは死ぬほどしょっぱかった。あと、自分が泳げないのも解ったし、窒息死しそうになって流石にあれは焦った。
もぐもぐもぐもぐ、とチリビーンズを頬張り、なんというかクールビューティーな顔にものすごく嫌そうな表情を浮かばせつつやめとけばいいのに、それでも食べるのをやめない。
太るとかそんなことは頭に全く無い。というか自身がアンドロイドだったので体型など崩れるはずはない、と認識していたが、食事のせいで腹が膨れているのも気が付いていない。
見た目がワ級に近い。主に顔のマスクと腹が。これならもしかすると敵に侵入者だと気付かれないかもしれないが、いや、どうだろうか。
流石にうっとおしくなってやはりマスクをはがす。ただ何かに使えるかもしれない、と思って太ももの金具の部分に引っ掛けておく。ひょっとしたら気に入ったのかも知れない。
と、彼女の頭部のアンテナがピクッと動いた。センサーが、この島に高速で接近する飛行物体を捉えたのだ。
「……む?高速の飛行物体がこの島に接近中?……機体識別信号PTX-002?ゲシュペンストのオリジナルの試作型?!」
自分が知る情報に合致するものがこの島に来たと知った彼女は、チリビーンズの容器を床に投げつけて、コンテナから急いで出た。
「地球連邦軍の機体がこの世界にあるのならば、なにか情報が得られるかも知れない」
彼女は走り出そうとして、ぐぇっ?!と腹を押さえる。満腹になった胃が揺らされて、気持ち悪くなったのだ。
「うぐぇ、くっ、腹が苦しい。うぉっぷ、吐き気が……」
食い過ぎで、急に動くとこうなる。
「おえぇぇぇぇぇぇっ!!」
カルディア・バシリッサ、肉体を得て初めての嘔吐であった。クールビューティー(笑)。
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ゲシュペンストと玄一郎は集積地棲姫の拠点近くの海域まで来ていた。現在の艦船の航路からは外れているために確かに隠れ住むのに適していただろうと思われる地点にあり、またかなり大きめの島である。
今回の作戦は敵に鹵獲されたイージス艦二隻の捜索と深海テロリスト集団に占拠された集積地棲姫の拠点の解放、つまりはテロリスト掃討作戦である。
作戦は三段階に分けられる。
一段階では単独でゲシュペンストが島へ向かい、ステルス光学迷彩を展開しつつ島を探索、イージス艦の位置を確認。
二段階では、それに合わせてパラオ泊地の主力艦隊『以外』の艦隊を高速キャリアー船にて島の周辺へ高速展開、爆撃と三式弾による集中攻撃でテロリストを撃破し掃討。
主力艦隊以外というのは泊地をテロリストに襲撃された際の備えとして主力を残すためであるが、実はパラオ泊地には、野球で言うところの二軍選手は居ない。
いるのは全力フル出場全員MVP取れるクラスのベテランか、この前建造されたルーキーか、である。
故にどの艦を出しても良かったようなものだが、扶桑、山城は泊地を動かす事は避けたかった。いや、私情ではない。彼女達は泊地防衛に無くてはならない人材であるからこそである。
大和型すら未だに真似の出来ない匠の技、超長距離射撃は現在、修練に修練を重ね、『精密超超長距離射撃』へと進化しており未だ的を外した事無し。彼女に見つかったが最後、敵艦隊はただの一掃射で壊滅する。それも気付かぬうちに、砲撃準備すらも出来ないうちに。
その扶桑に次ぐ遠距離射撃の名手として大和、ビスマルクがいるが、この二人は扶桑姉妹の弟子といえるかもしれない。頼み込んで超長距離射撃の極意をスパルタ式で教わったという。
それに金剛、長門は残してある。彼女達はパラオの頭脳である。金剛は『状況判断の鬼』、長門は『軍略の要』と松平元帥をして言わしめた人物なのである。
また金剛の妹達も今回、金剛から切り離すべきではないと玄一郎は判断した。高速戦艦の四姉妹は一つのチームとして機能し、判断は金剛、切り込みは比叡、榛名が後衛、霧島が分析、と役割がきっちりと分担されているのである。
さらに今回は『深海五大艦』達+1も協力してくれると言う。最強の防備である。
では、今回作戦に参加しているのは、と言えば。
減俸組と処罰無しの良い子組、ルーキー達である。
軍規というものに考慮に入れつつ、長門が推した者達である。
第一艦隊はチーム『まぁそうなるな』。伊勢姉妹を頭に作られたチームである。(特別な瑞雲が火をふくぜ!)
第二艦隊はチーム『イタリア』。イタリア艦のみで構成されている。(ほらっ!そこっ!ポーラっ!!酒のんで脱ぐな!!)
第三艦隊はチーム『あらあら、なのです!』。戦艦達のサポートである。(おっぱい二人とフリーダム駆逐艦四人でお送り致します)。なお、高雄と愛宕は提督の怪我の手当てをしただけであるとして無罪だったそうな。
第四艦隊はチーム『ルーキー』。アイオワ、ウォースパイト、ガングート、サポートにベテラン駆逐艦の秋月型が三人着いている。(たった数日で練度を30まで上げるウチの指導教官艦ってどんな訓練させてんだろな(遠い目)。
なお、塹壕掘りとか丸太担ぎ、重いコンダラ・グラウンド100周などの訓練が施されたとの報告があるが、艦娘に必要だっけ?それ。
なお、高速キャリアー船内には医療班や武器弾薬等の資材補給班がそれぞれ待機しております。
まぁ、説明が長くなったが。
第三段階は、イージス艦をサルベージ船にて運びつつ解析。
という流れになっている。
なお、集積地棲姫の資材置き場には攻撃禁止である。それは彼女の財産であり、ともすれば彼女のパラオに亡命するための資金にもなりうるものだからである。
玄一郎は高度を落とし、計画通り島から離れた位置に着くと島の様子を眺めた。ゲシュペンストのセンサー、アイカメラ、レーダーを駆使して現地の状況を探る。
島にはかつての大戦で使われたと思わしき建造物と、それ以外にも比較的新しく作られたと思われる木製の小屋のような構造物もいくつかあった。ただ、それは多少古びており、昨日今日に作られたものではない。
「シュウ、あれはなんだ?」
玄一郎は集積地棲姫にそれを聞いてみた。シュウというのは集積地棲姫がそう呼んで欲しいと言ったのでそう呼ぶことにしたのだ。集積地、のシュウである。
『ソレハネ、漁師サン達がツクった小屋ダヨ』
集積地棲姫、シュウがそう答えた。しかしシュウがこの島を根城にしてだいたい30年ぐらい経っているはずであり、玄一郎が見ているその小屋はもっと新しいように思えた。
「漁師?この島に漁師が住んでいたのか?」
『住むノトハ違ウヨ。魚とってて急に海が荒レタリシタ時に島二来て海が穏ヤカにナルノを待つノ。アト、休憩トカ。良く来てタヨ?』
「……お前は、その漁師達を襲わなかったのか?」
『ナンデ?お魚トカクレタヨ?キタラご飯分けてクレタ。ダカラ、船の燃料とかイロイロ交換。お金とかデモ、ワケテタ』
「……商売してたのか。というか深海棲艦なのに?」
『ンー?最初は嵐で避難してきた漁師のオジサン達タスケて、船の修理に必要ナ部品トカアゲタラ、イロイロお魚トカクレタ。そのアト、イッパイ人クるようにナッタ。みんな良い人達ダッタヨ?……艦娘トカ攻めてキタラ、みんな来なくナッタケド』
どうやらシュウは人に危害を加えるような深海棲艦ではなく、日本海軍が攻めてきたから応戦していたようである。つまり、皮肉な事に日本海軍が彼女を敵にし、漁民達の平和を奪ってしまっていたらしい。
「……お前は最初から友好的な深海棲艦だったんだな」
『元々、人の拠点ダッタカラネ。ヤサシイ人が来るトとても嬉しいヨ?港湾サンとかホッポチャン、泊地サンもソウダッタと思うよ?』
耳に痛い話である。かつての海軍暗黒時代における、友好的な深海棲艦に対する外交上の最大の失点は、深海棲艦と見れば敵として攻撃を加えていたということだろう。
「……軍は深海棲艦だと見ると何でも敵だと昔は認識していたからな。今ではそれぞれが独立した勢力で、性質も何もかも違うというのが分かってきたが」
『僕達も最初はワカラナイヨ。漁師サン達は優しカッタ。デモ、海賊は嫌イ。漁師サン達困らセルカラ。攻撃シテクル艦娘はコワい。……提督サン、ご飯くれテ、ヤサシカッタ。会っテみないとワカラナイヨ』
「……良い奴とは良いコンタクトを取りたいモンだな。とは言え、テロリストとはそういうわけにはいかないか」
玄一郎は溜め息をついた。
良い深海棲艦と悪い深海棲艦の境目とはなんだろうなぁ、と思う。悪い海軍と良い海軍の境目すらもわからないのだ。
(……シュウにゲシュペンストキック食らわせたのは今謝ろう。うん)
「シュウ、長門に代わってくれ。」
『ハーイ、ナガトー、提督が代ワッテっテ!』
「長門、艦隊の侵攻、その他遅れはないか?」
『予定通りだ。キャリアー船にて待機位置に間もなく着くと報告があった』
「了解、それではこれよりステルス迷彩展開して探索を行う。無線はドローンのネットワークにてレーザー回線を使用する。以上だ」
『了解。くれぐれも気をつけてくれ』
「では、作戦第一段階指導」
ゲシュペンストはプリズムファントムを展開して、その姿を消し、島へと接近していった。
カルディアさん、脱げる。さらにキャラ崩壊。コードDTDもいっそつけるか?←をい。
次回、チームイタリアは出番あるのか?そしてルーキー達にセリフはあるのか?!
次回、カルディアさん初めてのコードDTD(嘘)でまた会おう!