核弾頭、腐ってた。
(注意)この世界のアメリカは衰退しているという設定ですが、現実のアメリカを批判したり、政治的に何かしら含むところは私にはありません。
艦娘のアメリ艦はめっさ好きですしね。だがメリケン粉。おめーは死語だ。
探索ドローンによる探索中、ゲシュペンストは気になる反応を見つけた。
救難信号、それも地球連邦軍のコードでそれは発信されており、通信回線を開けば『地球連邦軍特殊任務遂行部隊シャドウミラー』などという部隊のカルディア・バシリッサ少尉を名乗る人物からであった。
「お前のいた世界のお仲間か?」
玄一郎はそう尋ねた。『地球連邦軍』という軍にゲシュペンストはかつて在籍していたと何度も語っていた。そしてその地球連邦軍のコードでの救難信号ときたのだ。そう考えるのも当たり前である。
しかし、ゲシュペンストはそのような部隊など聞いた事も無かった。
〔私が破壊された後に新設された部隊かも知れないが聞いたことは無い〕
『何を言っているのかわからないかも知れないが、気が付いたらここにいた。ここがどこで何故私がこんなところにいるのかわからない。地球連邦軍の機体の反応があったので救難信号を出したのだが、出した途端に反応が突然消えたのでかなり焦った……』
テロリストが占拠する島の真っ只中にいきなり出現してしまって、混乱の最中に友軍の反応があったなら誰でもそれに縋るだろう。だが、それがいきなり消えたならそれはさぞ恐ろしかっただろうなぁ、と玄一郎は思った。
おそらくゲシュペンストがステルス迷彩を展開したためだろうが、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
〔そちらの状況はどうか?現在位置はわかるか?〕
カルディアはすぐに位置情報を送ってきた。
『私はここにいる。かなり旧世代の船が二隻ある。機を見てそのどちらかを奪ってここから脱出しようと思っていたが、追撃をされる可能性が高く危険性が高かった。私には射撃武器が無く、さらに泳げないのだ』
「……今、なんつった?旧世代の船?二隻?」
『ああ、わりと古い船だ。装甲が薄い。この廃墟にいた兵士のような連中と戦闘になったが、連中の持つ武器の威力を考えれば持ちそうに無いくらいだ』
〔映像は送れるか?こちらのバンド周波数に出来れば送って欲しいのだが〕
『こんな船の映像を?いや、了解だ』
すぐさまその映像が送られてきた。確かに地球連邦軍のあった世界では旧世代に見えるだろう。それは鹵獲されたイージス艦であり、それも二隻。つまり、探索せずとも場所が棚ぼた式でやってきたわけである。
「……ビンゴ、だ」
『ビンゴ?この船の名称か?』
「いや、そうじゃない。位置データ、確認した。その二つの船はこちらの探索目標だ。今からそちらに向かう。ついでのような形になるが救援に向かう」
『ついでだろうが助かるなら贅沢は言わない。頼む』
予想していたよりもはるかに早く目標物を発見出来て玄一郎は、ふぅ、と息を吐く。これでイージス艦が一隻だけであれば事は厄介な方向へ進んでいただろう。
〔……玄一郎、気をつけろ。なにか嫌な予感がする〕
「……すんなり事が進む時ほど、な」
不幸症、と言うわけではない。常に最悪の事態は予想して動くのが軍人の常である。不幸不幸と嘆くより対処法を的確に。
もっともこれを山城に言ったならばやたら怒ったもので、デリカシーが無いとかなんとか言われるのだが、玄一郎には何故山城が怒るのかがよくわからない。
それはさておき。
二人はステルス迷彩を展開したまま、目的地点へと進んだ。
カルディア少尉のいる隠しドックはちょうど島の裏側の崖に位置していた。ちょっと見ただけではそこに艦船のドックがあるとは気づかない場所にあり、ドックもそれほど大きくは無くさらには老朽化してコンクリートが所々ひび割れ崩れていたものの、まだ使えそうだった。確かにイージス艦は二隻。
二人はカルディア少尉が果たして信用出来るのかどうか観察しつつ、さらにイージス艦を少し遠間からセンサーで走査しながら調べた。
カルディア少尉の観察は玄一郎、イージス艦の調査はゲシュペンストが担当する事になった。
トマホークにはやはり核弾頭が搭載されていたが、弾頭は経年劣化して起爆出来るかどうか解らぬ状態で、さらにはミサイルその物が古く劣化しており、満足に飛ばすことが出来ないような物ばかりだった。おそらくテロリスト達も計画を放棄せざるを得なかったようである。
〔……お粗末、だな〕
拍子抜けしたのか、ゲシュペンストは珍しく、ふう、と息を吐いた。もちろん呼吸器は無いので音声だけだったが。
「使えない核廃棄物か。弾頭も全部揃ってるか?」
玄一郎はカルディア少尉の様子を注意しつつ、ゲシュペンストが出したトマホークの調査結果に軽く拍子抜けしていた。
〔ああ。抜き取られた物は無い。ロケット燃料も劣化して腐っている。使い物にならない。〕
アメリカは、深海戦争で最も被害を受け、そして経済的にも軍事力的にも大打撃を受け、世界一位の座から転げ落ちた国家である。原因は深海棲艦に対する大規模攻撃作戦で核弾頭を使用した事である。
『プロビデンス作戦』と呼ばれるそれは、全く深海棲艦に効かず、それだけでなくより多くの深海棲艦を呼び寄せ、そして現在、深刻な国土汚染と深海棲艦による攻撃により衰退していた。
その現在のアメリカを物語る物がこの核ミサイルだった。
おそらく、このイージス艦にずっとこれを載せたままで運用されていたのだろう。アメリカにも艦娘は何人か確認されていたが、それさえも機能しているかどうかも怪しいと言わざるを得ない。
輸送機を狙った対空ミサイル、シースパローがキチンと作動していたから、トマホークもそうであると思い、警戒しつつ、焦りながら捜索した結果がこんなお粗末なものだとは玄一郎も思ってはいなかったが、これで少しは安心材料が出来たと言えた。
だが、あの輸送機襲撃事件を計画したような奴らが、こんなお粗末な事がテロを諦めるだろうか?と玄一郎は考える。
〔玄一郎、この島の深海棲艦の反応は想定していたより少ない。……おそらく、計画破棄に伴って早くから撤退していたのだろうか?〕
ゲシュペンストもやはりそこが引っかかっているようだ。
「……わからん。だが、あの輸送機襲撃の戦術を思えばこんな結末であっけなく終わるとは思えない。まだ深海テロリスト達は各同盟五大艦達の拠点を占拠している。むしろこれは何らかの陽動と見るべきか?……しかし判断材料が少なすぎる」
〔とにかく、ミッションの第一段階は終了だ。あっさりと見つかった為に第二段階まで時間的余裕がある。どうする?〕
「……カルディア少尉を回収して、こっちに向かってるキャリアに連れてって保護する、か?」
玄一郎はカルディア少尉を見た。なんというかその格好はどう見ても『特殊任務遂行部隊』などという感じではない。レオタードの上になんかの金属のアーマーをつけて、腕や足に刃物をつけて、太股にはワ級の頭をぶら下げている。
まるでコスプレイヤーのように見える。美人だから似合ってはいるものの、なんというか、こう……。
「不知火がアニメのコスプレしてるみたいな感じだよな?髪の色といい、目つきといい。成長したら不知火みたいな。『カルディアに何か落ち度でも?』とか言いそうだ」
〔……隠密行動に適した装備ではある。暗殺用とも取れるが、たしかに射撃武器は装備していない。ただ、あれは防刃耐弾装甲製だな。スニーキングスーツと見れば利にかなっていると思える〕
「潜入用の工作員みたいな感じか?しかし、腹が出ているのはなんでだ?」
〔わからん。デザインかも知れんし他の理由があるのかも知れん。ただ、あの娘、人間ではない。艦娘と同様の存在に見える〕
「……俺達みたいに、一度死んでこの世界で蘇ったってわけか?」
〔その可能性が高い。ひょっとしたら我々のように何らかの機体が人の姿になって、カルディア少尉の魂を取り込んでいるのかも知れん。魂の色は一つだけだが〕
「メカっ娘ってか?だが生身に見えるぜ?しかしたまらん身体してるよな。引き締まった身体にピッチリレオタード。へそまで出ててなかなかこれは……」
〔自重しろ。プリズムファントムを解く。待たせ過ぎれば要らん疑いを持たれるかも知れん〕
「オーケー。特におかしな点はなさそうだからな」
〔プリズムファントム解除。では、行くぞ〕
ブゥン。
光学迷彩を解き、今到着したかのようにカルディア少尉の方へと玄一郎は進んだ。
「カルディア少尉、待たせたな。敵に占拠されている為に慎重にならざるを得なくてな」
玄一郎は相手が軍の階級を持った者ということで、軍務で使っている口調で話しかけた。
「いや、救助に感謝する。いや、こんな所で友軍に会うとは地獄に仏とはこの事でやんす」
真顔で真面目に言っているのに、語尾が変になった。
「……やんす?」
聞き間違いかと思ったが、どうも様子がおかしい。頬が少し赤くなっているところを見ると、言い間違えたかなにかのようだ。
「ごほん。いや、改めまして、地球連邦軍特殊任務遂行部隊『シャドウミラー』所属、カルディア・バシリッサ少尉でありんす!……ごほん、あります」
(ありんす?)
「あー、こちらは日本海軍所属、パラオ海域統括司令官の黒田准将だ」
「日本……海軍?地球連邦軍ではないのか?いや、地球連邦軍ではないのでありんすえ?……ありませんですのことですか?……ごほん!ごほん!しかも、准将とは……いや、失礼した……いえ、失礼つかまつりしまくり……ごほん!ごほん!ごほん!」
(噛みました、というレベルじゃねぇな、これ)
なんだろう、どうもカルディア少尉は日本語が得意ではないのか?と玄一郎は思った。もしくは外国人なので敬語等が苦手なのかも知れない。
「……敬語が苦手なら普段の言葉使いで良いぞ?」
「准将閣下に無礼は出来ないにゃ」
「……にゃ?」
「…………こほん」
カルディアは咳払いをした。恥ずかしがっているのが少し可愛かった。というか不知火と一緒に猫耳と尻尾とフリフリドレス着せて並べたら多分萌える。きっと萌える。確実に萌える。
「そう言ってもらえるとありがたい。そうさせてもらう。で、日本海軍というのは?それにその機体、私のデータにある……私の知るゲシュペンストのサイズではない。ゲシュペンストタイプSは全高で30mだったはずだ」
「カルディア少尉、結論から言えばこの世界に地球連邦は無い。ここは異世界だ。原因は不明だが君は俺達と同じように転移してきたと推測する」
「……やはり、この世界は異世界なのか?」
「そうだ。そして来てから何か身体に異常は無かったか?ゲシュペンストはサイズがこうなった。私は……まぁ、いろいろあったが。君には何も無かったかね?」
「身体に、多少、あった」
そう言われれば、カルディアには納得出来ることだらけであった。
人間の身体になるわ、裸になれるわ、命令コードも指令プログラムも無くなってるわ、記憶等はしっかりとありロストした記憶もちゃんと復元されているわ、何故かコスチュームがキツくなっているわ(それは食事したせいで腹が膨れているせいなのだが)。嘔吐するわ。
多少では無い。なにもかもが彼女もとって異常事態だったのだ。
「まぁ、私も任務中なのでな。詳しい説明は救出後、ミッション全てが終わってからにしよう。幸い、探索目標は君のおかげで確保出来た」
「……この旧型艦船が、か?」
カルディアにはこの古い機構の船が何ら重要なものとは思えなかった。彼女の知る船は大抵が超科学な宇宙戦艦だったのだ。しかし、ゲシュペンストまで出して探索するのだ。なにかしら重要なのだろう、とは思ったが。
「ミッションの性質上詳しくは言えないが、この世界では一応現役だった船だ。あとこれは忠告なのだが……。私の部下の前で『船に古い新しい』とか言わないでくれたまえ。下手をしたら危険だ」
「それはどういうことなのだ?」
「詳しい説明は後だ。とりあえず君をキャリアー船に連れて行く。ここにずっといたいわけではないだろう?」
「確かに。では准将、よろしく頼む」
「ああ、カルディア少尉。こちらこそな」
かくして、カルディア・バシリッサはパラオ陣営へと加わる事になるわけなのだが、それにはもう少し話が進んでからとなるのである。
まだ、続くんぢゃよ?
転移したアンドロイドは言葉がおかしくなるお約束?そんなのは聞いていないぜ~ぇ?
俺達が隠しドックで出会ったのはクールな感じのカワイ子ちゃん、カルディアだった。くぅ~、レオタードがイカすねぇ。
だが俺達はミッション中でゆっくりとなんて鑑賞も出来ねぇと来た。泣けるねぇ。
第二段階へと進むミッション。フィナーレは近い。
次回、おっぱい総攻撃(嘘)でまた会おう!
……スペースコブラ風って案外難しいですね。うーむ。