まさかのあの子登場。
近藤さん、パパになる。
提督が扶桑姉妹とケッコンカッコカリをしたという報は瞬く間にパラオ全土に知れ渡った。
パラオに激震がはし……らなかった。
予想の範囲内であり、誰もが『あー、やっとかぁ』と思っただけだったのである。
パラオの住民達も提督と扶桑姉妹の仲はよくわかっていたし、パラオの守護神ともなった空母水鬼と平和的話し合いで和平を結んだゲシュペンスト提督と日本の別名である扶桑をその名に持つ扶桑姉妹の人気は高かったのである。誰もが温かい目でこの三人の仲を見守っていたのである。
また、艦娘の誰も悔しがる者は居なかった。なにしろ近くで提督と扶桑姉妹を見てきているのである。解らないはずは無かったし、それに日本は艦娘法によって重婚が認められているのである。第一第二夫人が決まっても次がある、次っ!!と彼女達は思っていた。
重巡のM型Aさん『えー?提督はきっと応えてくれます。私の事、いい女だって、プロポーズしてくれましたし……』(なお、目の所には横線、音声も若干修正しております)
重巡のT型Aさん『はい、私のおっぱい大好きって言ってくれたわぁ。これってプロポーズよね?』(なお、目の所には横線、音声も若干修正しております)
駆逐艦S型Yさんと駆逐艦S型Tさん『ん~、提督さんは優しいっぽい!』『そうだね。きっと扶桑と山城を幸せにしてくれるさ。それに、西村艦隊のみんなも、僕らもね』(なお、目の所には横線、音声ry)
戦艦K型Hさん『はい、榛名は(嫁入り)大丈夫です!』(なお、目の所には横線、音声も若干修正しても誰だか丸わかりだっての?!)
なお、上記のインタビューは、日本のテレビ局のワイドショーの映像である。
〈テレビキャスター〉『えー、艦娘の皆さんかなり乗り気です。しかし気になる提督なんですが、はい、どん!(ボードを出して)皆さんご存知の通り、パラオ泊地の提督さんはロボットなんですねぇ。(ゲシュペンストの写真を見せながら)ロボットの提督さんが結婚?と皆さん思われるかも知れませんね。では現地リポーターの浦和さんと中継が繋がっております。リポーターの浦和さーん!』
〈浦和〉「はーい、現地リポーターの浦和です!そう、日本でもご存知!スーパーロボット提督、ゲシュペンスト提督がケッコンカッコカリをしたという事で、今、パラオはその大事件で大騒ぎ!しかしもっと凄い特ダネを、我々現地リポーターは今回、入手いたしました!」
リポーターが、フリップボードに貼り付けた青葉の号外新聞をカメラに向かって晒した。
〈浦和〉「なんと、あのゲシュペンスト提督に実は中身があった!!というのが今回の取材でわかったのです!!」
ドバーン!!効果音。
〈テレビキャスター〉『ええっ?!あのスーパーロボット提督に中の人が?!』
〈浦和〉「はい、この憲兵と思われる男性の隣のTシャツとGパンのラフな格好をした、この男性、これがゲシュペンスト提督の中の人だと……」
という感じで玄一郎の姿がお茶の間に放映されたのであったが。
その同時刻、日本の舞鶴のラーメン屋にて。
「……あー、アイツもとっつかまったか」
近藤大将は昼飯を食いながらそのワイドショーを見ていた。
彼は時折鎮守府を抜け出してラーメン屋で飯を食う。正統派の醤油ラーメンである。鶏ガラとカツオ出汁の背脂なんぞ入っていない、具も海苔、シナチク、もやし、チャーシュー二枚のみの昔ながらの正しい醤油ラーメンである。
ずぞぞぞぞぞっ。
麺を啜り、レンゲでスープを飲む。
「……嫁の居ない所へ行きたい」
はぁー、と溜め息混じりにそう言い、また麺を啜る。
そういや、なんか土方が『第三夫人、間宮になりそうだよ?うひひっ』などと言っていたが、もしかしてあの間宮なのだろうか?と近藤は思い、少しぞっとする。
かつて内閣総辞職、軍主導派幹部壊滅、左派壊滅に追いやった、食の策略家と呼ばれた間宮が大本営にいた。
当時の日本は海軍暗黒期の真っ只中であり、軍主導派が海軍を牛耳り、そして左派による政党が政権与党になっていた。あまりにろくでもない時代だったのである。
だが、そのろくでもない牙城を切り崩した一端は、たった一人の間宮だったという。その間宮は給糧艦のネットワークを最大に使い、全ての間宮を取りまとめ、さらには伊良湖、明石、大淀までもその仲間にし、全政治家、全海軍幹部達の情報を纏めて真っ向から政財界、政府、軍と戦ったのである。それも、食という武器のみで。
たしかに近藤ら『艦娘擁護派』の活動によって今の海軍の体制にはなった。だが、もしもその『間宮オブザ間宮』が動いていなければ、ここまで早く『艦娘擁護派』の天下にはなってはいなかっただろう。いや、もしかすると『間宮オブザ間宮』が画策したとおりに『艦娘擁護派』は踊らされ、勝利者として今なお君臨させてもらっているのかも知れない。
未だに『間宮オブザ間宮』の正体がどの間宮であるのか、海軍もわかってはいない。
だが、なんとなく。そう、なんとなく。
玄一郎の所の間宮が、怪しいと近藤は思ったのである。
間宮は大抵は軍人とは結婚しない。そのほとんどはレストランのオーナーや、外食産業の社長などと結婚して退職していく事が多く、戦場から離れたがるのが今までの傾向だった。また、結婚しなくても退職した後には必ず何らかの食堂を経営しているのである。
だが、好んで提督と結婚したがる間宮の存在に近藤は引っかかっていた。
「……ま、アイツなら大丈夫、か。あの金剛がついてるからなぁ。しかし、パラオにはバケモンが揃うようになってんのかねぇ。いや、アイツ自身バケモン級ではあるんだがなぁ」
丼を両手に持ってスープを飲み干し。
「ふいぃ~、やっぱここのラーメンは最高だ。ラーメンはスープまで飲み干せてこそだ」
近藤のこだわりである。塩分と脂ギトギトなラーメンのスープではクドくて飲み干せない。だが、ここのスープはすっきりとして飲み干した後も嫌な後味も無く、うまいのだ。
と、ラーメン屋入り口が開き、そして一人の少女が店に入って来た。
「近藤大将。高雄達が呼んでいます。早く帰って来い、と」
あん?とその少女の方を向き、近藤は、はぁぁぁ、と溜め息を吐いた。
その少女は、舞鶴鎮守府の警備哨戒班の艦娘達が海で拾ってきた少女であり、名を渚桜花と言った。どうも記憶喪失であるらしく、名前以外わからず、何故か高雄達が気に入って、身元が解るまで舞鶴鎮守府で保護しているのである。
黒髪に儚げではあるが強い意志を宿した瞳。そして鍛え上げられた筋肉をその柔らかな身体に隠している。
近藤の目から見て、ただ者ではないのは解っているのだが、この少女、妖精さんがやたら懐いたり艦娘達に好かれる体質をしている。つまり、悪人ではないのはそれだけで解るので、近藤も特に警戒はしていない。
「つか、アイツら保護してるお前を寄越すかぁ?ったくよぉ……って、どうした?桜花?」
桜花はテレビのワイドショーの映像を見て固まっていた。
「ゲシュペンストタイプS?!それにカーウァイ・ラウ大佐?!そんな、撃破されて消滅した機体が何故この世界に?!」
「え?桜花、どうした?」
「近藤大将、あれはどこに居るのですか?!あれはエアロゲイターに鹵獲され、敵に運用されていたゲシュペンストです、危険な機体なのです!」
いつも物静かな桜花が取り乱しているその姿に近藤は驚くも、両肩を掴んで落ち着かせる。
「落ち着け桜花っ、あれは俺のダチだ。つか、お前やっぱり記憶、あるんだな?ワケありだとは思ってたから無理に聞かなかったが。……まず鎮守府に帰ろう。そんで話をしよう。大丈夫だ。悪いようにしない」
「くっ……わかりました」
桜花は少し目を伏せて、しまった、とばかりに唇を噛んでいた。その様を見て近藤はふぅ、と息を吐くとラーメン屋のオヤジに銭を払い、渚桜花を連れて鎮守府へと帰って行った。
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「つまり、お前はアイツと同じ世界に居た、というわけだな?」
渚桜花の話を聞いて近藤は、ううむ、と唸り少し苦い顔をした。
「そうです。私の記憶が正しければ、あの男の名前はカーウァイ・ラウ。機体は敵性機体に登録されている、ゲシュペンストタイプSのはずです。私には直接の交戦はありませんがエアロゲイターと呼ばれる異星からの侵略者に鹵獲され、ゲシュペンストタイプSは侵略者達の手先として運用、パイロットだったカーウァイ・ラウ大佐はその操縦ユニットとして生体部品にされていたはずです」
「……その辺は本人から聞いている。カーウァイ・ラウという名前に関しては聞いた事は無いが、再生したとか言っていたな。で、お前は?」
「ノイエDC所属……いえ、残党と言うべきでしょうか。地球連邦軍においてはテロリスト側に組していました。スクールと呼ばれる、異星人と戦うための兵士を作り出す機関で育てられ、そして改造され、洗脳されていたのです」
本名はオウカナギサ。しかしその名も研究者の一人で人道的な考えをまだ失っていなかったクルエボ・セロに名付けられた名前である。アウルム1と呼ばれ、アギラ・セトメによって様々な処置をされ、そしてマシンセルとゲイム・システムを搭載された機体、ラピエサージュを自爆させ、アギラ・セトメもろともこの世を去った少女であった。
「なんとまぁ……」
近藤は顔をしかめた。こんな少女に改造や洗脳を施して戦わせ、その上、テロリストとして活動させるとは。
だが、かつての日本海軍の軍部主導派のやってきたことを思えば、日本海軍も人のことは言えない。その時代を知るが故になおさら腹立たしく思った。
愛宕が手で自分の口を被い、目に涙を浮かべた。愛宕はこのオウカナギサをとても気に入って娘のように可愛がっている。高雄もそうだ。そんな少女の辛い過去を聞いて我が事のように悲しんでいた。
(……なんとか、してやんねぇとなぁ)
近藤は桜花をまっすぐ見て、思う。確かに身のこなしや佇まいは下士官そのものだ。今もこうして立っている桜花のその様は、上官に対する下士官の姿勢に他なら無い。それが自然であれば自然であるほどに、近藤にはそれが痛ましく感じた。
だが、まずは聞かねばならないことはいろいろある。それからだ。
「マシンセル、ってのは、ズフィルートクリスタルとどう違うんだ?聞いていると似たようなもんに思えるんだが?それにゲイム・システム?」
「マシンセルはズフィルートクリスタルを参考にして作られたものです。破壊されたゲシュペンストタイプSのズフィルートクリスタルを解析したものだと聞かされてますゲイム・システムは機体の性能を上げるシステムの一種、です」
オウカはゲイム・システムの危険性を敢えて伏せた。近藤や高雄達に要らぬ心配をかけたくなかったからだ。
なんか隠してやがるな?、とは近藤も思った。ゲイム・システムという言葉の響きがどうも『危険臭い』。あえてさらりと言う辺りが特に。
しかも機体の名前がラピエサージュ。フランス語の継ぎ接ぎという意味だ。なんとなく、その辺でとても嫌な予感がした。
「つまり、奴のがオリジナル、と?」
「そうなるのですが、修復不能なまでに破壊されたゲシュペンストタイプSが、何故パラオに居るのか、それにカーウァイ・ラウ大佐も破壊……いえ、亡くなっているはずなのです。あと、私も……生きてはいないはずなのです」
「……ところで、奴にはゲシュペンストがある。お前には機体は無いのか?お前だけなのか?」
近藤は、出来ればあって欲しくないと思った。継ぎ接ぎの実験機というのは危険性が高い。そしてそんなもんにこの目の前の少女を乗せたくない。だが。
「私の機体、ラピエサージュは、海に隠しましたが、呼ぶことは可能です」
オウカは短く「ラピエサージュ、来て」と言った。
すると、オウカの後ろに厳ついロボットがヌッ、と一瞬で現れた。
これには近藤もかなり驚いた。
「……ゲシュペンストみたいなのが、もう一機かよ」
ああ、やっぱあったのか、と諦めにも似た念がわいた。だが、これで目の前の少女の正体もわかった。
艦娘と同様なのである。この目の前の少女は、ゲシュペンストと玄一郎と同様なのだ。
艦娘の本体にあたるのが、オウカ・ナギサであり、艦装にあたるのが少女の後ろのラピエサージュだ。少女とあの機体は切っても切れない。どちらも彼女なのだ。
近藤は今までのゲシュペンストに対する調査から、それを悟った。だが、そのラピエサージュを見て、彼は決意を固めた。何より、放り出すという選択肢は最初から無いのだ。
「私を、カーウァイ・ラウ大佐にあわせて下さい。私は自分が何故この世界にいるのか、いえ、何故死んだはずの私がこの世界にいて、そしてあの破壊され、死んだはずのゲシュペンストとカーウァイ・ラウ大佐もまた存在するのか、確かめたいのです」
確かにそう言うだろうと予測していた。だから近藤も、
「……なぁ、桜花。今日本もパラオも厳戒態勢下にあるんだ。警戒してんのは、あのゲシュペンストを一度破壊しかけたようなバケモンが絡んで来ている可能性があるからなんだわ。そんな状況で行かせんのはちょっとなぁ」
と言った。これは事実であるが、近藤は海軍の重鎮の一人なのである。実際には何とでも出来る。それに少女の後ろに控えるロボットを見るに、おそらくはゲシュペンストと同等以上の強さを感じる。それにオウカの今の霊力も艦娘から考えるに戦艦級のそれを感じさせた。
だが、近藤もカードを出さねばならぬ。
「ラピエサージュとなら大丈夫です。行かせて下さい」
ずいっ、と身を乗り出し、オウカが言う。その動きに追従してデカい機体も後ろで身を乗り出し、ずぉぉぉん。
(これは脅迫に近いモンがあるな。本人は意図もそんな考えはねーだろけどな)
近藤は、確かに大丈夫かも知れんが別の意味で大丈夫じゃないんじゃねーか?これ、と思った。
ゲシュペンストはまだ正義のロボットと言われればそう見える。だが、オウカのラピエサージュはどう見ても悪役ロボットにしか見えないぐらい厳ついのだ。女の子が乗る機体なんだからなんとかならんかったのか?とかも思う。
(ラピエサージュってのはキルトとか作るときの継ぎ接ぎってのを言う言葉なんだからよぉ)
「はぁ、わかったわかった。一応、上に連絡して……いや、しかし、むむむ。お前には、普通の女の子として生きて欲しいんだがなぁ」
近藤は頭をバリバリ掻きつつ、わざとらしく、はぁぁっ、と溜め息を吐いた。近藤は桜花をかなり気に入っていた。また近藤の妻全員も桜花を好いており、全員が近藤に詰め寄り、『このまま身寄りが無ければウチで引き取ろう!』と言ってきた程なのだ。
そして、近藤はカードを切った。近藤勲大将の決断である。
「お前さん俺達の家族、養女になれ」
近藤はいきなりそう切り出した。
「養女、ですか?」
「そうだ。身元不明じゃなんにも出来ん。パラオ行きだって手配もそれでなくても厳戒態勢下で困難なのが余計に困難になっちまわぁ。戸籍用意するにゃそれが一番手っ取り早い」
そう、これは単なる口実だ。こういう事態にならなくとも折を見て切り出そうと思っていた。いや、このような事態だからこそ、と近藤はオウカな目をまっすぐ見て真剣に言ったのだ。
「どうだ?」
桜花は少し俯き、考えた。
「悪い話じゃねぇと思うし、悪いようにもしねぇよ。それに例えば学校通いたけりゃ通わせるぐらいのことはしてやれるし、生活だって……それは今と同じか。ただ夜遊びは禁止。悪い虫はデストロイ!彼氏が出来て付き合うとか……も、ダメだ。それは駄目、特にだ。お父さん許しませんよ!……」
なんか崩れて来た。
べしっ!
近藤の横にいた高雄がファイルの束で近藤をしばいた。
「はぁ、まだ養女になってもらってないうちからこれだもの。あのね、桜花ちゃん。私達は家族よ。養女になってもならなくてもそう思うの。血が繋がらないなんて些細な事だわ。鎮守府のみんな家族で仲間で。寄せ集めだけど誰もそれを否定しないわ。すでにとっくにあなたもその一人だわ」
高雄が柔和に笑い、そう言う。
「そうそう、でもちょっと考えておいて?私達はあなたを娘に迎えたいのよぉ。私達みんな、大好きよぉ?桜花ちゃん」
愛宕もそういってオウカを抱きしめる。
「……受けさせていただきます。高雄お母さん、愛宕お母さん、ありがとう」
「まぁっ!」
高雄が目を見開き。
「きゃーっ、高雄っ、今の聞いた?聞いた?愛宕母さんだって!きゃーっ、嬉しいわ、桜花ちゃん!」
愛宕が抱きしめる力を強めて喜んだ。
「いよっしゃあっ!!」
近藤が立ち上がり、ガッツポーズを決める。
「うぷっ、愛宕さん、ぷわっ、あの、その、バスト、バストで息がっ?!」
「あらぁ、ごめんなさい」
「決まりだ!親父としてちゃんとしてやらぁ!!母親も選り取り見取りだぞ、ウチには俺の嫁だらけだからな!!パラオ行きだな。よーし、パパ頑張っちゃうぞぉ?」
近藤はよほど嬉しかったのか、おどけて力瘤を見せて笑って言った。
オウカねぇさんまさかの登場。
姉キャラですが、もっと姉キャラな高雄さん愛宕さん相手だと、高雄さん達がママキャラになるの法則。
近藤さんが養父、近藤さんとこの艦娘がママになる、という。