近藤さん浮かれる。
オウカ・ナギサさん正式に養女へ。
主人公おさるさんウッキー(R-15故に自重)。
『カーウァイ・ラウ』
ゲシュペンストは自分をそう名乗った。玄一郎はなんとなくそうなのではないかと思っていた。なにしろカルディアの話では『カーウァイ・ラウ大佐』はゲシュペンストタイプSのパイロットであり、そして自分によく似ているという。
もちろん、玄一郎はカーウァイ・ラウという名前では無いし、それならば様々なところで会話の端々にボロを出して昔は人間だったような事を言う、ゲシュペンストの自我は誰なんだ、とくれば誰でも解る。
だから「ああ、そうなん?やっぱしなぁ」で終わりであったが、それは興味の有る無しとかではなく、それがわかった所で、玄一郎とゲシュペンストの関係になんら影響もなく、いつも通りの『相棒同士』なのである。
ゲシュペンストのネタ晴らしは簡単にさらりと終わり、玄一郎の反応もさらりとしたもので、話し終えて、彼らはすぐに執務を始め、カルディアに『ええっ?!』と驚かれたりしたのであった。
と、いうか、カルディアはその元々のキャラを崩してまで「それでいいわけないだろ?!というか、ものすごい事だぞ?!スルーしていいわけないだろう?!」とか言ったが、玄一郎もゲシュペンストもそれに対して。
「いや、とっくにそれ前世みたいなモンだし?この世界で新たな人生やってるし?つかこの世界にゃ関係ねーし?」
〔うむ、その通りだ。だいたい我らは元の世界では死人だしな。命がまた得られただけで儲けものだ〕
と、なんか悟ったような事を言った。
「いや、そうかも知れないが、もっとこう……何かあるだろう?なにかっ!?」
「何年も一緒だからな。今更コイツがどうだって言われてもなぁ。なぁ、カーウァイって呼ぼうか?」
〔ん?ゲシュペンストで良いぞ?何か変わるものでもあるまい〕
どこまでもマイペースであった。
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さて、朝である。
扶桑姉妹と婚約、次の日ケッコンカッコカリをしてしまった三人は、近藤勲大将からの電話で叩き起こされた訳であるのだが、近藤勲大将はテンション高く非常にご機嫌良く、さらには普段厳つい顔なのに今日は恵比寿顔、というなんか悪いもんでも食ったのか?と思うような感じであった。もっとも受話器越しなので顔はわからないのだが。
『あ~、そっちは朝か?すまんなぁ、つか昨夜はお楽しみでしたね?ってか?わははははは、新婚さんは初々しいねぇ、ところでな、俺に娘ができちゃったよ、わはははははは!んでだ、ちょいとな、ワケアリなんだがコレが良い子なんだ、で、なんかお前さん見たらなんだっけな?』
「……えーと、大将、呑んでます?」
『うぃひひひ、呑んでるぜー?嬉しくて嬉しくてよぉ、うん、こりゃあ祝い酒呑まにゃ、わはははは』
『ちょっと、お義父さん!』
『おお我が娘よぉ、ん~っ、パパのお膝においでぇっ、あははははは』
べしっ!!『あがっ?!』ドサッ。
『ええっ?!あの、お義父さん?大丈夫?!って大和母さん?!』
聞いたことの無い声が聞こえた。どうやらこの声の主が近藤の娘のようであるが……。
『……只今、電話代わりました。舞鶴の大和です。えーと、黒田准将、ケッコンカッコカリおめでとうございます。先ほどは大変お聞き苦しいものを出しちゃってすみません』
いつもの如く舞鶴の良心、大和がナニかシタヨウダ。とはいえそこをツッこむとなんか怖いので玄一郎はスルーする。
「いえ、お祝いのお言葉やら何やらありがとうございます。ところで何があったんです?なにやらそちらでも良いことが?」
『はい、私達、養女を迎えたのですよ。近藤などはもう舞い上がってしまって。おほほほほ』
玄一郎は軽く驚いたが、近藤の性格から考えるによほどその養女が可愛くて仕方ないのだろう。あそこまで上機嫌に酒を呑んで騒ぐなど普段の近藤からは考えられない。
「近藤さんがああなるというのは余程、その娘さんを可愛がってらっしゃると見えますね。おめでとうございます」
『はい、私達も初めて見た時から他人のように思えないほどだったのです。うふふっ、娘として迎えられて本当に良かったと思います。で、その娘がですね、どうもゲシ、げしっ、けしぺんしとっ……。ごほん。黒田准将にお会いして話がしたいと言いまして。それで一度パラオにお伺いしたいと』
(やはり噛むのか、大和さん)
「はぁ、私に?」
『あ、ちょっと電話、代わりますね?』
『電話にて失礼いたします。私、オウカ・ナギサと申します。この度、近藤家の養女として迎えられました。よろしくお願いいたします』
玄一郎はどちらが姓でどちらが名前なんだろなぁ、近藤さんとこの娘さんになったのなら、近藤ナギサ?それとも近藤オウカ?などと思った。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。私はパラオ泊地に勤務しています、黒田玄一郎准将です。近藤大将にはいつもお世話に……」
しかし、玄一郎の言葉を遮るようにオウカは鋭く、
『……あなたは、カーウァイ・ラウ大佐、ですよね?』
と、言ってきた。
その名が出てきたのはこれで二度目である。だが、その名前は玄一郎の名前ではない。だが、その名前はもうすでにゲシュペンストから聞かされていた。
それは、ゲシュペンストタイプSに半ば組み込まれ共に破壊された生体ユニット。かつて異星人の侵略者に自我を奪われた男。そして、ゲシュペンストの自我として意思を取り戻した男の名前だったのである。
つまり、ゲシュペンストの機体の方がカーウァイ・ラウであり、中の人が玄一郎という事になる。
だが、その名を知ると言うことは。
「ふむ、その名前が出るってのは、君もこっちの世界に転移してきた、って事かな?」
『そう、なると思います』
「なるほど。あー、悪いが私はカーウァイ・ラウの『方』じゃ無い。あー、近藤大将に代わって欲しいが、まだぶっ倒れてるかね?』
『……えと、起きそうに、無いです』
おそらく、近藤大将の鎮守府のノリにまだ慣れていないのだろう困惑したその声に玄一郎は微笑ましいと感じた。まだ若い声であり養女と言うからにはまだ10代だろうかと推測する。本当は少女らしい性格なのだろう。
「近藤大将のところは良いとこだろ?」
『はい、みなさん良くして下さいます』
「大将があんなに酔っ払うってのはあんまり無いんだぜ?よほど嬉しかったんだ。すまんね、ちょっと君のことを疑ってたよ」
『え?』
「……近藤大将が信じる君を俺も信じるって事さ。君は敵じゃない。悪かった」
玄一郎はとある事で異世界から来た連中が敵型についていると確信しており、彼女がその手先なのではないか、と思ったのだ。
だが、近藤大将はスパイや諜報の人間にはいち早く気づくし、泳がせる事はしても放って置かない。ましてや養女にするなど考えても有り得なかった。それに近藤大将の場合は妖精さんたちが必ずそういう人間を排除にかかるのである。
そう言う意味では玄一郎の疑いは的外れであった。
なお、玄一郎はつい最近まで妖精さんが見えていなかったのだが、扶桑姉妹とケッコンカッコカリをしてから見えるようになり、話も解るようになっていた。
まぁ、妖精さんの第一声が「おせぇよバカヤロウ」だったのにはかなり驚いたが。
『……私、まだ貴方を疑ってます』
「そうだなぁ、『俺を信じるな。近藤さんが信じる俺を信じろ』って訳にはいかんだろうなぁ。で、パラオに来んの?』
「はい」
『聞きたい事はだいたい解る。調べたい事もだいたいな。とはいえ、厳戒態勢中なんだよなぁ。うーむよく近藤さんが許可したね?』
『貴方にゲシュペンストがあるように、私にも『ラピエサージュ』があるので』
ラピエサージュというのは良くわからなかったが、おそらくは何らかの機体であるというのは玄一郎にもわかった。それにその口振りからして余程の強さと自信があるということも。
だから玄一郎は若い兵士にありがちな慢心ではなかろうな?と、少し試しつつアドバイスという名のお節介をする事にした。そう、慢心ダメ絶対。
「君にも相棒がいるって事か。わかった。ただ何事にも過信するなよ。そうだなぁ、後で近藤さんに敵のデータを見せてもらうと良い。知るのと知らないのとでは大違いだからな。道中何があるかわからん。遭遇戦に備えて、後は……」
『あとは敵航空機の限界高度と、機動半径、主砲の命中範囲ですか?』
果たして、オウカの回答は完璧だった。よくわかってるじゃねぇか、と内心思い、
「普通なら必要無い!とか言い出すかと思ってたよ。その通り。後は敵分布の把握、とかなんだが、それだけやっても不十分、海の戦場にゃ境界線はねぇ。陸より広く点と線の戦場だ。君の経験と判断、実力を推し量る物差しはねぇからなんとも言えないがな」
と付け加えた。
『母さん達の敵です。侮ることはしません。それに敵の分析は必ずするべきですしもう済ませてます。カーウァイ・ラウ大佐のPT戦術教本はいくつも読みましたから』
余程、近藤さん達を慕っているのだな、と玄一郎は思いつつ、自分の相棒がそんな本書いてたのか、とも驚いた。
「そうかい。相棒に伝えておくよ。ではパラオで待ってるぜ?だが気をつけろよ?あとはこっちの通信機の周波数は連邦軍の七番だ。わかるか?』
『わかります。七、ですね』
『ああ。日本を立つ前に一度連絡をくれ。あと航路をな』
『了解です。では、またパラオで。黒田准将』
「ああ、歓迎するぜ?オウカ・ナギサ君。ああ、近藤さんが起きた頃に、また連絡すると伝えてくれ。報告する事があってな。データは送信しておいたが、酔ってんじゃまだ見てねーわなぁ」
『はい……えーと、大和さんに……』
「いや、暗号コード化してある。提督間の文書でな秘書艦では読めないようになってる。一種の秘匿文書だな。近藤さんは開示するだろうが、念の為だ。ま、よろしく頼んだ。じゃあな」
玄一郎はそういうと、通話を切った。
「ふぅ、しかしまた厄介なこったなぁ」
「ん。どうしたのですか?玄一郎さん」
息をつく玄一郎にベッドの右隣に眠っていた扶桑が問うた。
「なんか、近藤さんに娘が出来たとかなんとか聞こえたけど?それに遭遇戦とかなんとか。うーん、どんな子?艦娘?」
左隣の山城が好奇心いっぱいに聞いてきた。
「うぉっ?二人とも……。あー、そうか。ああ、そうだったなぁ」
ケッコンカッコカリをして、まぁ、いわゆる、その、初夜を迎えてから2日目。ようは三人は裸のまんまであり、抱き合って寝ていたのである(R-15の表現規制)。
滑らかな白磁の如き白い肌が両の腕に触れて、そしてその身をリネンのシーツがするりと滑るように落ちる。
(……うん、こればっかりはちょっと慣れそうに、ないな)
美人は3日で飽きると言うが、15年、そう初めて知り合い気付けば15年。真の美人に玄一郎は飽きる事など出来ようはずもなく。
肌触れ合って、夜戦を重ねて何回戦、その二晩でこの15年という歳月の想いを遂げるもまだ足りない。
(いやいや、もう朝なのだ。始業までに早く朝飯用意して身を整えて。夜まで我慢っ!)
玄一郎は忍耐力を発揮してぐっとお猿さんになりかける己を抑えた。
「……近藤さんが養女を迎えたんだと。ただ訳ありだ」
玄一郎は、少し困り顔で言った。
「ま、そこんとこは朝飯ん時に説明するよ……シャワー、浴びてきてくれ。俺はその間に伊良湖のパン、買ってくっからよ」
そう言いつつ、二人を両脇に抱えるようにして、右、左と二人の頬にキスをし、離して起き上がった。
腰が辛い。太股がパンパンで、背中も引っかき傷で痛い。首筋も肩も痛いが、手を触れればおそらくは歯形やキスマークの痣があるはずだ。
玄一郎はこれも愛の証か、などと思いつつ、ごっそりと失った体力を補給せんとなぁ、と服をいそいそと着て、朝飯を買いに行くのであった。
俺は童貞だぁぁぁっ!はもう使えない。
強化改造人間で良かったね。
扶桑姉妹は激しい。
次回、間宮マンマミーアでまた会おう!(仮)。