ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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さて、パラオには怖い怖い方達がさらりといたりするわけですが。

ただものではない艦娘達の嫁入り談義、です。

なお、私は政治に関しては特になんら含むところはありませんよ、と最初に言っておきます。

銀○の、エリ立ってますよ?の回はもう一度みたいなぁ。


『護国同盟』

 金剛と間宮は、営業終了した間宮食堂のテーブルで久方振りに語り合っていた。

 

 この間宮の正体からまずは言わねばならないだろう。そうでなければ話は進まぬ。そしてこの間宮と金剛の仲も、だ。

 

 この間宮、近藤が予想した通り『間宮オブ・ザ・間宮』であった。この間宮こそが、かつて海軍暗黒時代を終わらせるための最初の引き金を引いた間宮である。

 

 そして。

 

 そのシナリオを書いた、参謀とも言うべき役割を果たしたのが、この現在パラオに在籍している金剛、すなわち『ザ・金剛おねぇさま』であったのである。

 

 時は海軍暗黒期、艦娘不遇の時代であった。

 

 政府は当時、深海棲艦の度重なる侵攻に保守派は叩かれ、左派政党が政権を握り、より国内政治は混迷し、そして汚職は横行、政治は腐敗し、憤る軍主導派が左派政党に対してテロや反乱事件を繰り返し、国内は荒れに荒れていた。

 

 当時食糧や資源の大半を輸入に頼っていたツケで、国民の大半が飢え、深海棲艦に殺されるよりも餓死する者が多かったという時代まで発展していたのである。

 

 間宮は給糧艦である。その艦装の能力は膨大な糧食を蓄え、運び、そして供する力があった。

 

 当時の海軍の『艦娘養護派』の提督達は間宮のその能力を使い、深海棲艦の被害がほぼ無かった大陸から食糧を輸送し、国民を飢えから解放する計画を立てた。

 

 そして、その護衛の艦隊に、金剛、叢雲、高雄、赤城を当て、計画を実行したのである。

 

 この食糧輸送計画の間宮と金剛が、今のパラオ泊地の金剛と間宮であった。

 

 この二人は作戦を共にする事で深い友情を育んで行った。

 

 そうして食糧輸送計画は成功。数度に渡って実行され、間宮が運んだ食糧派は国民を……。

 

 救わなかった。

 

 原因は、独裁政権化した左派政党による横やりだった。食糧は倉庫に集められ、結局は国民に配られる事は無かったのだ。

 

 彼女達が数年に渡って作戦を遂行している間に国民だけでなく艦娘達も不遇な目にあわされていた。

 

 多くの者が不当に虐げられ、一部の特権階級を与えられた者達が支配し、国は日本の民のものでは無くなったのである。

 

 間宮は絶望した。飢えた人々を救う為にと文字通り命を懸け運んだ食糧が、国民達を苦しませる血も涙もないもの達の私腹を肥やし、力を増しさせて居たとは、と。

 

 膝をつき涙を流す間宮を、しかし金剛は間宮を立たせた。

 

 金剛も怒りに震えていたが。拳を握りしめ、その手から血を流していたが。しかし涙は見せなかった。

 

 金剛は決意したのだ。

 

 護国とは民を護る事を言う。太った豚の為に働くに非ず。

 

 そうして、金剛と間宮は動き始めたのである。

 

 金剛は言った。二年で日本を取り戻す、と。

 

 間宮は金剛の計略の通り、他の給糧艦や工作艦達とコネクションを作っていった。ブラック鎮守府に派遣された大淀達をも巻き込んだ。

 

 金剛は見込みのある将校や将校達や艦娘達を育て、目覚めさせていった。

 

 多くの人材、多くの情報、様々な策略を駆使し、メディアさえも活用し、鳳翔(現在の斎藤一夫夫人)、龍驤(現在の鉄板焼き屋RJ経営者)など最初期に現れた艦娘達のネットワークも引き込み、青葉達のパパラッチネットワークを使って、そしてついには政権を倒し、軍主導派を調伏し、左派議員達を追放したのである。最初の宣言の通り二年で、である。

 

 怒涛の国家奪還であった。

 

 そして、恐るべき事にこの奪還劇の主謀者は未だに何者であるのかわかっては居ない。誰もが保守派の政党が行った奪還劇だと思って居る。まさか艦娘達が作った組織が裏にあったなど思いはしていない。

 

 詳細に近い部分を知る者は一部の議員達と海軍の重鎮であろう。

 

 そんな彼女達である。やろうと思えば人類を艦娘達が支配する世の中さえも作れただろう。

 

 しかし、艦娘達はそれをする事は無かった。全ては民と護国の為と行った事でありそれを曲げる事はしなかったのである。

 

 そんな艦娘が集うパラオ泊地というのはある意味恐ろしい場所である。護国の鬼の島なのだから。

 

 さて、そんな護国の鬼の親玉級が二人。

 

 金剛さんと間宮さんがキャッキャウフフとガールズトークに華を咲かせている。

 

 紅茶は金剛が入れ、クリームの入ったビスキュイは間宮お手製。あえてスコーンではなく、ビスキュイを出す辺りが間宮のこだわりなのかも知れない。彼女の持つ料理のレシピはフランス料理とイタリア料理である。

 

「深夜のお茶会も、何年振りカネー?」

 

「かれこれもう20年ほど前に……って、やだ、なにかオバサンになった気がするわね」

 

 深夜のお茶会はこの二人が日本奪還計画を密かに進行していた時にやっていた会議である。この会議にはかつて鳳翔や龍驤、叢雲もいた。

 

「うっ……、年齢の話はノーですヨー!まだ乙女、ワターシ達、そう、この世に身体持って20数年ヨ?人間で言うと25、6歳ナノですカラ!」

 

 そう、深海大戦が始まったのは今から30年ほど前であり、艦娘の出現はその後であるからして、彼女達はだいたい最年長の艦娘でも30ぐらいなのである。なお、最年長の艦娘は松平元帥の細君となっている最初の叢雲であり、彼女で現在31歳である。なお、金剛さんがドロップしたのは叢雲さんの約半年後……げふんげふん。

 

 まぁ、だいたいの戦艦は大学生ぐらいの容姿をしており、それが30年となると人間ならば50代に相当する。艦娘の容姿は変わらないのであるが、精神年齢的にだいたいそんな感じとなるのである。その辺を考えると、最初に出現した戦艦である扶桑は金剛よりも二カ月年上という事になるが、その辺突っ込んではならない。なお山城は扶桑の一年後であるから、えーと山城さんは……いや、それはさておき。

 

 カラカラカラン、と間宮食堂の入り口の鈴が鳴った。

 

「あら、金剛さん、間宮さん、お夜食ですか?」

 

 鳳翔がなにやら風呂敷に包んだお重のようなものを持って立っていた。そしてその後ろには龍驤がいる。

 

「久し振りやなぁ、『護国同盟』集まんのは23年振り?」

 

 『護国同盟』は艦娘による日本奪還計画を立てた組織の名前である。ここに松平元帥の妻になっている叢雲を入れれば、5人の幹部が揃うこととなるのだが、叢雲は大本営である。

 

「二人とも、ドーシタネー?」

 

「いえ、間宮さんがゲシュ君にプロポーズしたと聞いて」

 

「ん~、おもろそうやったから」

 

 二人はニヒヒ、と笑いつつ手土産をテーブルの上に置いた。

 

 鳳翔の包みにはあんこと、きなこのおはぎ。

 

 龍驤の紙袋にはクレープ。

 

「オゥ、これは美味しソーデス!」

 

「うふふふっ、昔を思い出しますね」

 

 かつてクーデターを企んだ四人は囁かな同窓会を開く。今、企むのは婚活テロ。

 

 鳳翔は企て、金剛は練り、龍驤はツッコみ、間宮は探る。

 

「ここに叢雲がおらんのはちょっとなぁ。アイツもおったらオモロいのに」

 

「まぁ、本国で朋也君と頑張ってるから」

 

「ホウショーぐらいネ、元帥を『君』呼ばわりするノ」

 

「あら、あなたも『トモ』扱いだったじゃない」

 

「あれはまだ少佐だった頃ヨー?将官になってからは……、まぁ、『トモ』で十分ネー?」

 

 あははははは、と四人は笑う。

 

 そう、松平元帥は『護国同盟』の五人に育て上げられたと言っても過言ではない。若くして大本営の山本元帥の直属の部下になったのも、確かに実力もそうであったが、鳳翔と金剛が推した事もその一端であった。

 

 その彼も、間宮に餌付けされ、叢雲に躾られ、鳳翔と龍驤の扱かれ、金剛に学んで元帥までに出世したのである。

 

 故に『護国同盟』の幹部達に頭が上がらなかったりするわけであるのだが。

 

「で、ゲーやんは『提督』かぁ?」

 

 龍驤はニヤリと笑って金剛にツッコミをかけた。鳳翔もニコニコしつつ

 

「その辺どうなのかしら?」

 

 意地悪く聞く。

 

「グッ、ソレは……、トイウカ、それよりマミヤの話デース!」

 

「あら、私もちょーっと聞きたいかしら?菅原大将以来じゃない?あなたがテイトクぅ、なんて呼ぶの」

 

 間宮もニヤニヤ。

 

「ウウッ、マミヤまでーっ、意地悪しないでブリーズっ!」

 

「意地悪やないで?『護国同盟』はな、未だにそれぞれ影響力あるんや。居酒屋鳳翔グループ、金剛一派、間宮・伊良湖連合。チーム・ムラクモ。どれも信用はしとるけど、情報を共有して監視し合うっちゅう仕組み作ったんは金剛やで?ケッコンカッコカリ一つ、結婚(ガチ)一つとってもそれは免れへんでぇ?」

 

 などと言いつつもかなりニマニマしているため、それが単なる建て前でしかないのは全員わかっていた。

 

「そうですね。私の結婚の時も金剛さんはいろいろと根掘り葉掘りと聞いてきたわけですし。フェアにいたしましょう、フフフフフ」

 

「サイトウの時は、陸軍ダッタからジャナイ!アキツマルの事もあったデース!トイウカ、みんなそーだったジャナイ!」

 

「そうね。だから私達も聞いちゃうのよ?」

 

「いや、マミヤ!アナタも聞かれる方デース?!」

 

「観念しいや、みーんなそうなるんや。叢雲も鳳翔もそうやった」

 

「ソーイウRJはどうなんデースカ!!」

 

「ん~、ウチ?独身主義やし?」

 

「ヒキョーです!」

 

「彼氏おらんし?じゃりン子RJやし?」

 

 ホルモンでも焼いていそうだ。

 

「まぁまぁ。で、やっぱり二人ともゲシュ君のとこに嫁入りしたいの?」

 

 二人の艦娘の反応はそれぞれ違った。

 

 間宮はにっこり笑って余裕さえ感じるほど堂々と頷き、金剛は顔を真っ赤にしつつモジモジしながら俯いて小さく『イェース……』と答えた。

 

「で、ズバリ、どこがええのん?ん?ん?」

 

「「気がついたら(デース……)としか言えません」」

 

 二人は態度は違えど同じ事を言った。

 

 だが、二人の経緯は違っていた。

 

 間宮は玄一郎を飢えた子と評した。金剛は共にパラオで戦ううちに、と言った。

 

 間宮が言う飢えた子、というのはゲシュペンストの身体しか持ち得ていなかった頃の玄一郎の状態を言っていた。無意識に人間としての欲求を満たそうとしてロボットの身体ではかなわず、絶望していた頃の彼を間宮は知る故にそう評したのである。

 

 間宮は自分の居るところで飢えた者がいることを許さない、と常に思っていた。練度カンストの間宮は無限食糧庫、究極給糧艦、そしてアルティメットシェフとも言われる。

 

 しかし、その彼女をして救えない、飢えたロボットが玄一郎だったのだ。

 

 しかし、そんなロボットが提督になり、着任の挨拶に間宮を訪れた際に、彼女にこう言ったのだ。

 

『1日三食の食事は言い換えれば、その一食が1日の三分の一の命の糧です。いわば間宮さんはみんなの命の恩人ですね』

 

 その言葉を聞いた間宮は、救われたような、報われたような気がしたのだ。かつて食糧輸送計画で必死に国民の為に彼女は働いた。それが当時の独裁政権によってなんの意味の無い、むしろ国民を苦しませる一端になっていた、その苦しく辛い記憶が溶けて行くかのような、そんな無垢な言葉だったのだ。

 

 他でもない、食事を取ることも、味わうことも出来ぬロボットの身の彼が放った言葉。しかし、だからこそなのかも知れぬ。何気ない言葉、しかし、それは彼女の胸に刺さったトラウマの棘を、淡雪の如くに溶かしたのだった。

 

 それから、玄一郎はMVPを取った艦娘達に御褒美の景品にプリンアラモードやパフェなどの特別なお菓子を用意出来ないか?とか艦娘達の為に様々なアイデアを出してきたのだ。

 

 それは彼がかつて食の楽しみを知っていた人間だった事を間宮に悟らせた。

 

 楽しそうに様々な企画を語る彼の前に、間宮は内心、悲しかった。提督には胃袋も内臓も無い。味覚を感じる舌も無く、食べ物を頬張るための口も無い。心はこんなに食に飢えて渇望しているというのに、いや、それだからこそ艦娘達には良いものをと考える。

 

 痛ましく感じたのだ。

 

 今まで間宮は祈る事しか出来なかった。無限食糧庫?アルティメットシェフ?そう呼ばれても、無力だと思ったのだ。

 

 それが、あの日。

 

 提督がお越しになられた、と間宮にはすぐわかった。その姿を厨房から見て、間宮は涙をこぼした。

 

 嬉しそうに、楽しそうにメニューを迷いながら見て、そして選んで。カウンターに座ってワクワクしながら料理を待って。

 

 まるでその様は子供のようだった。

 

 間宮はすぐに行動した。最上級の肉を取り出し、間宮の知りうる限りのスペシャリテを以て調理した。前菜も副菜も全て作り置きではない。その場で、全身全霊全能力をかけて、けして待たせぬように作り上げた。

 

 間宮はやっとあの方の為に食事を出せる、と思うと全身に歓喜の震えが起こった。

 

 そして、間宮は理解したのだ。これは『愛』だと。

 

 自覚したならば、もう止まらなかった。そして気づいたら、口が言葉を紡いでいた。『妻にしてくださいませ』。今思えば顔から火が出るほどに恥ずかしいと思うが言ってしまったものは仕方ないか、と間宮は開き直る事にしたのだった。

 

「へぇぇ、ふーん、ほぉー、まぁ、ウチもアレが何も食えへんっちゅーのにはちょっと不満やったけど、アンタそこまでかぁ~。まぁ、でもその内ウチの店にも来るかも知れへんなぁ」

 

「うふふっ、間宮さんらしいですね。でも、そうですね、私が居た頃、ゲシュ君には食べさせてあげることが出来ませんでしたから、今度皆さんで食事を用意して持って行ってあげるというのも悪くないかも知れません」

 

「ん~、扶桑姉妹も誘ってネー?お茶会もするデースネー。アレ、コーヒーばっか淹れてるから、紅茶の良さを教えるデース!」

 

「扶桑さん達もかなり料理上手で知られてますから、これは間宮さんも負けられませんね?」

 

「……ところで、比叡は大丈夫かいな?」

 

「比叡はだいぶ安定してきてるネー。なんだかんだ言っても、かなりテイトクにお熱デース」

 

「まぁ、榛名も霧島もラブ勢やしなぁ。ふーむ、せやけど金剛のこっちゃ、ケッコンカッコカリ勢、何人かピックアップしとるんやろ?」

 

「その辺、扶桑姉妹といろいろ協議シマーシタ。マミヤには三番目に、とプッシュしたネ。一番混乱しない人選ヨー?」

 

「順番は何番でもいいのですが、ウチのグループから、赤城さんと加賀さんを私は推したいと思ってます。特に加賀さんは、あのまま行くとドサ回りの演歌歌手になりそうで少し怖いですし……」

 

 なお、加賀さんはパラオで演歌歌手デビューを果たし、CDシングル売上げで那珂ちゃんの新曲を抜いたという実績があったりする。

 

「せやなぁ、ウチは足柄なんとかしたりたいわ。アレ、痛々しくて見とったら泣けてくるでぇ?」

 

「扶桑姉妹は時雨さんも推してるようですが、やはり夕立さんも入れないと」

 

「長門もなんかゆーとったなぁ。大和も乗り気やし」

 

 そうして、海軍軍部に多大な影響力を持つ『護国同盟』のお歴々は、夜通し誰を入れるべきか誰を推すか、とワイワイうふふと語り合うのであった。

 

 主人公の意思などまーったく関係無く。




 間宮さんも金剛さんも辛酸舐めた時期はあったのです。

 主人公は天然ジゴロ。

 それ、アナベルガトーと同じ床屋で刈ったの?連邦の白い奴?とかも言わない。
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