……誰か美少女で救われなかった子とかおせーて。さすがにネタががが。
執務室にオウカを案内すると、そこには何故かにったらこ、にったらこ、と変な笑みを浮かべた土方と、困惑気味な沖田、そしてなんか嫌そうな顔のカルディアがいた。
カルディアの両脇になんかハゲ頭の変なゴーグルはめた、工事のおっちゃんみたいな作業ズボンのガテン系なガタイの大きな男二人が控えており、カルディアは非常に困った顔をしていた。
「……工事のおっちゃん?」
そう言えば、重巡女子寮の青葉の部屋の修理を『真嶋建設』に頼んでいたのだが、その工事で何かあったのだろうか?と玄一郎は思った。しかしならば彼らは何故カルディアの右左でかしこまって控えているのだろうか。
「へい、真嶋建設で働かせてもろてます『安藤A太』と」
「『安藤B作』でおま!」
二人は揉み手をしながらニカッと笑った。胡散臭い関西弁だが、真嶋建設なら仕方あるまい。社長からして関西弁なのだ。
なお、真嶋建設は土方が提督だった頃、泊地の設備全体の建て替え工事を発注した建設会社であり、今でもそのメンテナンスは真嶋建設がやっている。
信頼と実績は折り紙つきなのであるが、何かと濃ゆい社員が多く、真面目な性格の艦娘達は真嶋建設の社員達を少し苦手としていた。
「ええっと、工事で何かありました?」
扶桑が少し怪訝そうに聞いた。扶桑もやはり真嶋建設の社員達が苦手なようで若干引き気味である。
「いえ、奥さん、ちょっと昔の上司にバッタリ出会いまして」
「んで、ワイらも素性が素性なんでご挨拶しろと言われまして」
「……はぁ、コイツ等は私の部下だった量産型アンドロイド兵士だ。まさか来てるとは思わなかったが」
カルディアは何かうんざりするように言った。
「へい、ワイら、これこのような感じでして」
A太が、ふんぬっ、と身体に力を込めると、ガシャコンガシャコンと、機械的な音が鳴る。
「武装展開出来るんですわ」
ガチャンガシンガコン!!と装甲が展開し、確かに戦闘用アンドロイド兵士といった姿になった。
Aが青、Bが赤で、武装もそれぞれ違うようだ。
「前の世界では、どっちもカルディア隊長と一緒に戦ってましてん」
「まぁ、こっちの世界では真嶋社長に拾われて佐官工と大工やっとりますけど」
フロントバイセプスとかサイドバイとか決めつつ二人はニカッ!と笑った。お前らボディビルダーかよ。
「さすがに、一般人の中にこんな奴らが混じって普通に生活するのは問題があると思ってな。私もどうすれば良いのかわからなかったので、意見を聞こうと思ったのだ」
そんなもん、真嶋社長んとこに置いとけよ、と玄一郎は思った。というか間違ってもパラオ泊地に置いておきたくない感じの人種というか、筋肉というか、暑苦しいというか、なんかスゲー嫌だった。
だいたい、こんな濃ゆい連中をどうせぇと言うのだ。というか真嶋の親分も良くこんなのを雇う気になったな、というかあの親分だからまだ雇ったんだろなぁ。
「真嶋建設で真面目に働いてんならいいんじゃないか?」
真嶋社長のところなら問題無かろう。なにしろ社長からして問題のある性格の人間なのだ。一人や二人、なぁ。
「いや、ワイら、隊長の元で働きたいんですわ」
「そうじゃ、やっと探しとった隊長と出会えたんじゃ、カルディア隊の復活や!!」
と、いちいちポージングをしつつ言う。暑苦しい。非常に暑苦しい。
だが、何故かそれを見て土方はやたらとニマニマ笑っている。それはどうも玄一郎達が困っているとかそういういつもの意地悪な何かではなく、筋肉を見てニマニマと笑っているのである。
「……お前、こんな濃ゆい奴らを率いてたのか?」
「いや、前の世界ではコイツ等には自我が無かったのだ。というか人間の身体を持って自我が備わるとこんな奴らだったとは……」
カルディアもショックを隠し切れない様子だった。確かに玄一郎もカルディアの記憶で量産型戦闘アンドロイドの姿は見ている。その戦闘するところや行動する様子などでは、まさかこんな連中になってしまうなんて普通思わないし予想も出来ないだろう。
というか、武装を解除したコイツ等はなんというか。
玄一郎の脳裏に『超兄貴』とか『サムソンとアドン』という言葉がよぎった。
(頭からメンズビームとか撃たないだろうな)
「……とりあえず、土方さん、どうします?」
ニヤニヤと笑っている土方にとりあえず話を振る。
「採用!!」
土方は即決した。
「ええっ?!あんたなに言ってるダァ?!」
あかん上司に聞いてしまった!!
「そうよ、これなの!!足りなかったのは筋肉なのよ!!そう、今気付いた。マッチョ系が私には足りなかったのよぉぉぉっ!!」
土方は立ち上がり、そしてボディビルダーよろしくポージングしている二人の作業ズボンにお札をぐいっ、ぐいっ、と入れていく。
「ナイスポーズ!ナイスバイセプス!ナイス広背筋!!うーひひひひ、たまらーん、たまらーん!!」
土方は暴走していた。ペタペタと二人の筋肉に触り、腕に頬ずりしたり、抱きついたりしてやたらとにったらこ、にったらこ、とあかん笑みを浮かべてやたらと幸せそうな顔である。
慌てて沖田が後ろから土方を羽交い締めして止め、そしてそのままスープレックスを打った。ドラゴンスープレックスである。
どごーん!
「ぐぇぇ、ま、マッス……リャ……」ガクリ。
沖田のスープレックスにより、土方轟沈。
「はぁ、はぁ、はぁ。……とりあえず、その真嶋建設の社長さんに話を伺いましょう。てか、土方がマッチョ好きだったなんて知らなかったわ」
沖田が息をきらせながら提案した。
「……あのーお札入れられても」
「ワイら、困るんですけど」
「……まぁ、御祝儀と思ってとっとけ?なんの御祝儀かはわからんけど」
どうせ玄一郎の金では無く土方の財布から出たお札なのである。腹は痛まないので適当に玄一郎は言った。
というか、オウカと話をするために執務室へと連れてきたのになんなんだこの展開は。と思い玄一郎はオウカの方を見た。
「む、オウカ?あれ、どうした?」
「……アラド、ラトゥーニ、ゼオラ、ああ、あの子達の元に帰りたい。なんなのこの世界」
目を見開いてブツブツと何事か言っている。
「ラピエサージュが女の子なのはまだいいわ。いいとして、カーウァイ・ラウ大佐がゲシュペンスト、マッチョ変態のアンドロイド兵にお義父さんの同僚の中将がマッチョ好き、スープレックスかます少将に……ブツブツブツブツ」
「うわぁっ?!いや、オウカちゃん?オウカちゃん?!」
玄一郎はオウカを揺すってなんとか正気に戻そうと試みたが、しかし首をカックンカックンとするだけで目が少しヤンデレみたいにハイライトが消えて、もう処置無しな感じだった。
「ちょっとどいて!」
山城がそこへカットイン。
「斜め45°のTVブラウン管チョップ!」
ずびしっ!
「はっ!私は一体……」
「気がついたようね。大丈夫よ。私がついてるわ」
山城はぐっ、と親指を立ててオウカに言った。
「山城、さん。私っ、私ぃっ」
ひーん、とオウカは山城にしがみつき、泣いてしまった。
「よーしよし、よーしよし怖かったのね?普段変態なんて見ないものね。というか、大丈夫。あいつらだけだから、変態は」
「……まさか俺まで入って無いよな?山城」
「夜だけなら良いけどね?」
流し目で言う。うっ、やたら色っぽいぞ?!しかし玄一郎は言葉を返した。
「……いや、俺ノーマルだ。オウカちゃんを間宮食堂に連れてって行ってくれ。甘いもんでも食べたら落ち着くだろう。ほい、間宮のスペシャルデザート券」
「OK、扶桑ねぇさまと行って来るからあと二枚頂戴」
「……俺もまだ食ってねぇのに。つか俺のポケットマネーで支払われる事になってんだぞ?これ」
「にひひ、可愛い妻達のおねだりよん?」
「あの、山城、私はいいのよ?」
扶桑はそう言うが、ええい、あの時の夕食のお返しだ、とばかりに三枚の間宮券を玄一郎は差し出した。
「ええい、もってけ!扶桑さんも行ってきな。つかオウカちゃんを頼むわ」
「はぁ、では行って参ります……」
扶桑姉妹がオウカを連れて部屋から出て行ったのを見て、玄一郎はマッチョ二人に向き直った。
ずかずかずか、と二人に近寄り、土方がズボンに積めた札をそこから一枚ずつ徴収する。
なお、間宮のスペシャルデザート券一枚が万札一枚の値段である。せこいと言う無かれ、青葉の部屋の修理代で玄一郎の通帳は結構目減りしているのだ。今の玄一郎としては損失は少しでも少なく行きたかった。
「あっ、御祝儀が?!」
「ひでぇ?!」
「損害賠償、損失補填だ。二人ともあと六枚残ってんだろ?残虐行為手当てで全部取らないだけ有り難いと思えっての」
「残虐行為手当て……うっ、トラウマがががっ?!」
「駄フォックスっ、うううっ?!」
どうやら、彼らは前の世界で『残虐行為手当て』をされたらしい。
「それはさておき、カルディア。お前はどうしたいんだ?それを聞こう。つか、判断に迷う理由は?」
「私は今、この世界では軍属ではない。保護されている身だ。故に元部下をかかえれる立場ではない。それに提督に無理強いする事も出来ない」
「……正論、だな」
「た、隊長……」
「ううっ、そうやったんか……」
「本音で語れ、カルディア。仲間なんだろう?」
玄一郎は真剣にカルディアに問うた。まっすぐにカルディアの目を見る。
「……いや、こんな暑苦しいのはちょっとやだ」
本音だった。
「のぉぉぉぉっ?!」
「いや、隊長ぉぉぉっ?!」
「いや、確かにそれ本音だろうけどストレート過ぎっ?!」
頭を抱えて涙するマッチョ二人。だが、玄一郎もだいたい同意見であったので、さらりと。
「そういうわけだ、二人とも。残念だが、君達は……」
「ちょっと邪魔させてもらうで、ゲシュちゃーん?」
と、そこへドアを開けて入って来た男が一人。蛇皮のジャケットに黒いレザーのパンツ。眼帯にジャケットからチラリと覗く和彫りの刺青。そして特徴的な関西弁。
真嶋建設社長、真嶋吾郎であった。
「ああ、ありがとうなぁ、潮ちゃん」
どうやら潮に案内されてここまできたらしく、廊下に向かって礼を言う。強面のどう見ても極道な人物なのだが、妙に駆逐艦達には懐かれている。まぁ、友好的な堅気の人間に対しては悪い人物ではないが、まぁ、その道では狂犬と呼ばれて恐れられている。
「ゲシュちゃーん、久し振りやなぁ、ってホンマに人間になってもうたんかぁ?テレビでやっとった通りやなぁ」
「ああ、真嶋社長、久し振りですね」
「イヒヒヒ、さっき嫁さん二人にバッタリ会うて来たでぇ?ゲシュちゃんおめでとうさん、ホンマ別嬪さんやなぁ、扶桑ちゃんも山城ちゃんも。それに幸せそうやないかぃ」
「ありがとうごさいます」
「まぁ、お祝いの言葉言いに来たんもそうやけど、なんやウチのボンクラ共から電話が入りよってな?ながーいこと探しとった姐さん見つけたとかなんとかいいよってな?」
真嶋はカルディアの方を向いて「ほう、あれがお前等の言うとった隊長さんかぃな。エラい別嬪さんやのぉ?」と、A、B二人に言った。
「こいつらはなぁ、生き別れて消息不明なこの隊長探してな?隊長は生きとる、会うまで死なれんてずーっとぉ頑張っとったんや。やっと会えた言うてなぁ。ワシ、貰い泣きしてもうたわ」
真嶋は真っ直ぐ玄一郎の顔を見た。
そして、ぐっ、と頭を下げた。
「ゲシュちゃん、頼むわ。こいつら、隊長さんと一緒におられるようにしてやってくれ!この通りや!」
「真嶋社長……」
「こいつらの忠義、ホンマモンや。それにけして悪い奴らやない。ウチのきっつい仕事にも耐えれる根性もある。そやから是非頼む!これでもあかん言うんやったら、土下座でもなんでもやったる!」
真嶋社長のその真摯な態度に玄一郎は漢を見た。この真嶋吾郎がここまでしているのだ。玄一郎も首を横に振るような事は出来ない。
「敵わないなぁ、真嶋社長にそこまでされては否とは言えない。真嶋社長、頭を上げて下さい」
「ゲシュちゃん!」
「わかりました。二人をカルディアにつけましょう。カルディアもやはり部下と再会出来て感無量という感じですし、それを引き裂くような事は私も出来ませんよ」
さらりとカルディアに押しつける気全開である。
「おおきに、おおきにやで、ゲシュちゃん!」
「いえ、私もどうこの話を真嶋社長に切り出そうかと悩んでいたのですよ。大事な真嶋建設の社員さんですし、二人を引き抜くような事をすれば真嶋社長に迷惑がかかる、と」
しれっと心にも無い事をさらりと言う。ゲスや、お前本当にゲス提督やわ。
「ウチはええねん。ええんやそんな事は。せやから二人の事はくれぐれも頼んだで?」
「はい、わかっております。お預かりする以上、こちらもちゃんとそのように体制を整えますよ」
「ホンマ、ゲシュちゃんは話が早よぉてよぉわかってくれるなぁ。そしたら頼んだで?ああ、結婚式にはワシも呼んでや?ドデカい御祝儀用意したるさかいな?」
真嶋社長をそう言って部屋を出て行った。
玄一郎は真嶋社長が建物から出て行ったのを確認すると、カルディアに言った。
「と、いうことだからカルディア。責任もって二人の管理を頼んだ。良かったな、部下と再会出来てな。いやー、万事これで解決だ」
「ちょっと待て、私の意思は?!」
「無い。却下。無駄。というわけだ。A、Bのお二人さん。ほーら、カルディア隊再結成だぞ?喜べ?」
「おおおおお、ホンマありがとうごさいます、提督!」
「さすがは提督!兄貴って呼んでもええやろか?!」
「俺を兄貴と呼んでいいのはツンデレな妹だけだ。だが、カルディアになら姉御と呼ぶ権利を与えてやろう!」
「おおっ!カルディアの姉御っ!!一生着いていきやすぜ!!」
「姉御っ!!ワイらの姉御っ!!」
「いっ、嫌だぁぁぁぁっ!!まだ不知火にねぇさん呼ばれてるのがマシだったぁぁぁっ!!」
「はっはっはっは、これにて一件落着!イヤーイイハナシダナー」
もはやヤケクソで玄一郎は笑った。
一番の被害者はオウカ。
救われないのはカルディア。
本当にゲスになったゲス提督。
真嶋の兄さんはゲスト出演です。
次回、悪を断つ剣(嘘)でまたあおう!