敵の正体が朧気に見えてくる今回。
しかしウォーダンが味方側についてくれると頼もしいよなぁ。
マッチョ共をカルディアに押し付けとりあえず執務室から追い出した玄一郎は、とりあえずぶっ倒れている土方を見つつ、沖田に言った。
「……ところで、これ、目を覚まさねーんだけど?」
「やりすぎた。でも反省しない」
「反省しなくてもいいけどよ。つか、このまま目を覚まさなければ裏山に埋めるか?」
「うーっ、痛っつつつ、コラ、シャレになんない事言うな。これでも上官だよ?私」
「あのな、あんたら上官なら上官らしくしてくれよなぁ」
「あれ?マッチョ達は?」
「カルディアに押し付けた。採用決定だ。真嶋社長に頭下げられたら断れねーよ……」
極道な真嶋吾郎が頭を下げて来るというのははっきり言って脅迫以上の威力がある。
真嶋吾郎は日本海軍の資料に登録されている深海棲艦と戦うことのできる人間の一人である。
しかも。そこらに転がっている鉄パイプや金属バット、ドスなどでボコ殴りしたりぶっさしたりしている映像が資料として残されており、はっきり言ってそんな事が出来る人間を人間と認めても良いのだろうか?というレベルなのである。
斎藤ですら深海棲艦と戦う際には鳳翔刀がなければ無理だというのに真嶋は平然とやってしまう。真嶋は
「気合いじゃ、き・あ・い!!」
と言うが、そんなもんではないと思う。気は気でもキチ○イのレベルだ。
昔、軍がスカウトしにいったそうだが「お前ら気に入らんのや。だいたいやなぁ、目ぇが腐っとるんが気に入らんのや!!」と難癖つけてボコ殴りにして帰したという。
なお、真嶋吾郎が日本に居られなくなったのはそれが元だったらしいが真偽はわからない。だがありそうなので怖い。
しかし、彼のいた日本の某街にはまだ数人、同様に深海棲艦をボコ殴りに出来る人物がいるらしい。
恐るべしジャパニーズヤクーザ。
はぁ、と溜め息を吐き、玄一郎は頭をバリバリ。ともかく本来の仕事を進めようとタブレット端末を開いた。
ゲシュペンストはオウカのラピエサージュとなんか妙な感じになっており、なんというか、キャッキャウフフな感じのラピエサージュの相手をしてやたらと『オジサン』な感じである。なにをしてんだか。
〔昔の部下のところの娘を思い出す〕
(あー、そうですかい)
「フィリピンの第二基地の調査団の報告はまだ出ませんか?」
「昨日からずっとやってるけど、難航してるってさ。特に潜水艦用のエアロックのゲートとか見たこと無い制御システムらしいからね。またゲー君と黒やんが出張る事になるかもね、これ」
土方は自分のタブレット端末に、シュウ、こと集積地棲姫の拠点だった島の地下に作られた真新しく、そしてこの世界の技術ではない未知の構造物を使った施設の画像を映し出した。
地下通路の先には海底ドックが作られており、そして、小型の潜水艦か何かが停泊していた形跡があったという。
つまり、テロリスト共はその地下通路を使い、ゲシュペンストが張り巡らせた監視網をかいくぐり、潜水艦に乗って島を脱出したのである。
しかし普通ならば数日で作れるような設備ではない。だが、こんなものがもしも有ったならばシュウが知らないはずはないし、それにこんな未知の技術の固まりが過去にあったとも思えない。
だが、それを可能に出来る技術はある。
〔私のズフィルートクリスタルか、ラピエサージュに搭載されているマシンセルならば可能だ。もっとも、かなりのエネルギーが必要だが〕
〔これらの構造物はアースクレイドルに使われていたものに酷似しています。潜水艦のドックの形状はDCのキラーホエール型に対応したデッキになってますし、映像を見れば稼働式クレーン等の位置もほぼキラーホエール型のカーゴの位置に来ています〕
ラピエサージュはそのアースクレイドルという物のデータをゲシュペンスト経由で玄一郎、土方、沖田の端末に送った。
「……なんぞこれ?なんかめちゃくちゃ馬鹿でかい建造物だな」
〔今、見ていただいているのは『メイガスの門』で、アースクレイドルの本体では無いのですが。アースクレイドルは地下冬眠施設で、マザーコンピュータに制御された地下冬眠施設で人類とその遺伝子を保存しようという物でしたが……〕
どうもその計画チームの一人『イーグレット・フェフ』というマッド・サイエンティストがろくでもない事をしでかし『アギラ・セトメ』とかいうクソババァとか『シャドウミラー』とかと手を組んで人類粛正とか云々やったとか言う話だったわけである。
〔はぁ、概ね間違っては居ないのですが、いえ、その通りですね。特にオウカは改造や洗脳、それにゲイムシステムによって寿命を縮めてしまい、最後には弟さんや妹さん達を守るために、『アギラ・セトメ』を道連れに私を自爆させました。酷い目にあったのです〕
おそらく、マッチョ達を見てショックを受けてた時に呟いていた名前がオウカの弟や妹達の名前なのだろう。
「しかし、『シャドウミラー』か。というかカルディアがそんなこと言ってたような。あのマッチョ共のおかげで話を聞かねばならんのを出て行かせちまったからなぁ」
〔後に聞けばいい。ラピエサージュから受け取ったデータを解析。。。。む?ゼンガー?それにエルザム、カイ……。というかゼンガーが二人?〕
〔それはウォーダン・ユミルという『シャドウミラー』のアンドロイドです。ゼンガー少佐の人格と動作をコピーした……〕
ラピエサージュがウォーダン・ユミルの説明をしている最中に。
バンッ!!
と、執務室のドアが開けられ、
「俺を呼んだかっ!!」
大きな声でデカい体躯の男が入って来た。
ボサボサの長髪に伸びたヒゲ、そしてボロボロの服を着た、なんというか、なんぞこの遭難者、という感じであった。
〔ゼンガー?!〕
いち早く反応したのはゲシュペンストだった。かつての部下と同じ声だったので、彼も驚いたのだろう。
「否っ!我が名はウォーダン・ユミル!ただのウォーダン・ユミルだっ!!」
かつてメイガスの剣と名乗っていたが、メイガスが無いこちらの世界ではそう名乗るしか無いようだ。しかし、なんというタイムリーな時に来るかなこいつは。
タブレット端末には、ご丁寧にラピエサージュがウォーダン・ユミルとゼンガー・ゾンボルトの二人の画像を送ってくれていたが、違いは服装とマスクぐらいだった。しかし、今の彼にはマスクが無い。これがウォーダン・ユミルならばマスクはどうしたのだろうか。
「うむ、マスクは何か奇妙な女に攻撃を受けてな、壊れてしまった」
聞いてもいないのにウォーダンは言った。
〔……はい、確かにウォーダン・ユミルです。W15、の反応です〕
「む?これは……。ラピエサージュ?」
〔はい、ラピエサージュです。ウォーダン、スレードゲルミルはどうしたのですか?〕
「うむ、ここにいる。太刀となっているのだ」
ウォーダンは腰に下げた大きな太刀をポンと叩いて言った。どうもこちらの世界に顕現化した際に彼の機体はその大太刀になったらしい。というか、なんとなく三式斬艦刀の変形前に似ているような……。
「……で、そのウォーダン・ユミルがなんでウチの泊地にいるんだ?それもそんなボロボロの格好で」
バタバタバタバタ……。
「あーっ、こんなところにいたでち!イムヤーっ、おっちゃんここにいたでち!」
「あーっ、もうっ!大淀さんの事務室はそこじゃないって!隣の隣だって!」
ゴーヤとイムヤが執務室に入ってきた。いや、イクやハチやゆー達もぞろぞろとやってくる。
「……お前ら絡みか」
玄一郎は潜水艦娘達を見て悟った。こいつらが拾って来たのだ。
「失礼なのね。イク達、遭難者を救助したのね」
(遭難した者の救助は海軍としても確かにやらねばならんだろうが、それにしてもエラいもん連れてきたなこいつら)
とはいえこいつらが特にウォーダンに対して警戒とかしていない所を見ると、実際には悪い奴では無いのだろう。
「ふむ、で、大淀に届けを出そうとしたら、こっちに来た、と?」
一応、遭難者を救助したならば書類を書いて届け出せねばならない。
本来ならば憲兵詰め所に直接連れて行って手続きしに行くのだが、先に大淀の所に行こうとしたのは、こいつらもウォーダンが只者ではなく、先に憲兵の所に連れて行ったらトラブルが起こると悟っているからなのだ。
イムヤ達がやろうとしている方法は、まず大淀で書類を作って、そこから書類だけ憲兵の所に通す、つまり海軍が遭難者認定した後なら憲兵も何も言えない。つまりそれを見越したやり方だ。
おいおい、それでなんかあったら俺の責任になるんだぞ、と玄一郎は苦笑したが、
「おっちゃんは保護対象者でち。島に流れ着いてたでち」
ゴーヤは頑なにそう言った。よほどウォーダンを気に入っているようである。こう見えて潜水艦娘達は人を見る目がある。なにしろこの道15年以上のベテランなのだ。スク水着てるけど、人間の年齢に直すと20代後半ぐらいなのである。スク水着てるけど。そう、良い歳こいてスク水着てるけどな?
「ふむ。ウォーダン、あんたははこちらに来て長いのか?随分と資料よりも髪の毛もヒゲも伸びてるが」
「む?かれこれ半年か。小さな無人島に居てな。サバイバル生活をしていたのだが、島が小さすぎて食料に困って、それならばと筏を作って隣の島へ、そのまた隣の島へと食料を求めて渡って行ったのだが、途中で面妖な姿をした女に攻撃を受けてな。戦って追い払えはしたが腹が減って倒れてしまったのだ」
「……面妖な女?」
「うむ。背中から蛇のような武装を生やした、セーラー服を着た女だ」
「……よく無事だったな。そいつは単艦、いや一人だけだったのか?」
「うむ、かなり強かった。スレードゲルミルが居なければ苦戦しただろう。だが、すぐに撤退していった。『こちらに来い』と言っていたのでおそらくは俺を捕まえようとしていたのだろうが」
(……なるほど。つまり敵は異世界から来た者達を積極的にスカウトもしくは捕まえて協力させてんだな。こいつは厄介だな)
「イムヤ、ウォーダンを見つけたのはお前等のアジトの近くだな?……その付近の海域には調査が終わるまで近付くな。おそらくそいつは北方棲姫を襲った未確認の『タ級』だ。その辺に潜んでいる可能性がある」
「……仕方ないわね。ま、私達のアジトはどうするつもり?」
「ん?アジトなんてまた作ってたのか?ふむ。見つけたらごっそり資材とか全部没収するかもしれんが、お前等の事だ。かなり巧妙に隠してんだろ?付近の海域の探索はしっかりと行わねばならん。お前等のアジトの探索に裂いている時間は無いな」
玄一郎はわざと知らなかった振りと、探すつもりはない、と言うのを遠回しに言った。
イムヤ達が行っている事はある意味海軍の職務を利用した私財の溜め込みに他ならないので大っぴらには認めるわけにはいかない。だが、かつて彼女達のそれで扶桑や山城、如月に吹雪は助かったのだし、それに私腹を肥やすために彼女達はやっているのではなく、それはいざという時の備えなのだ。
故に玄一郎も甘くならざるを得ないのである。
「……ありがと。まぁ、嫁入りの支度金としてそのうち持ってくるわよ?」
幼さの残る顔で、やたらと色っぽい目でイムヤは言う。そういえば玄一郎は海に逃げ込んだ際に連れ去られかけたが、やはりそうなのか、と悟る。
「……お前等もか。つか、いや、それはおいておいてだ。北方棲姫を襲った未確認の『タ級』はかなり強い。そいつだけでなく、『雷のレ級』もテロリストに荷担している。どちらもかなりの強さだとみていい』
「……雷まで?あの子何やってんのよ。って事は、あの『武蔵の深海棲艦』も出てくる可能性があるってわけ?」
「わからん。だが可能性は高い。故の厳戒態勢だ。今は核攻撃のリスクが無くなってレベル3に落ちたが、しかし奴らの目論見もわからん。だからお前たちも気を抜くなよ?」
「気は抜かないでち。海ではゴーヤ達は生きるか死ぬかだったでちからね」
「……その辺、お前等は変わらんなぁ」
「テートクさんも変わらないのね。中の人が出てきても、ちょっとイケメンになったぐらいなのね」
「はぁ、あんがとよ」
そういえばイクは昔からやたらと玄一郎に懐いていた。
(小島基地壊滅事件以降も、トラック周辺海域や他の地域でこの潜水艦娘達とはわりと会うこともあったが、どうも、なぁ)
少し困ったような嬉しいような。
「……ふむ、やはり信頼に篤いと見えるな。カーウァイ・ラウ大佐」
「ああ、それよく最近間違われるんだ。あんたが前の世界でゼンガー・ゾンボルト少佐と間違われるぐらいにはな。俺は黒田玄一郎であんたはウォーダン・ユミル。だろ?」
「むぅ?なるほど。これは一本取られた」
ウォーダン・ユミルはすぐに理解した。これがかつてのウォーダンならばこのようにさらりとは流せなかっただろう。
ゼンガー・ゾンボルトとの死闘を経て、彼は変わった。死んだ後ではあるが、己は己であると受け入れられたのだ。どちらが本物であるという事では無いのだと素直に受け入れたならば、玄一郎の言わんとしている事もすんなりと理解できた。
つまり玄一郎という男はウォーダンを他でもないウォーダンという存在だと見ている、と示したのだ、と。
その玄一郎の度量は飄々としてはいるが、なかなかの人物とウォーダンは見た。
「ま、カーウァイ・ラウはそっちのゲシュペンストがそうだ。俺はパイロットだがな」
〔うむ、私がカーウァイ・ラウだ。機体に組み込まれていたのでこちらの世界で顕現化してもやはり機体に取り込まれたままだ。これはこれで特に困らないがな〕
「顕現化?ふむ。私は確かに負けて機能停止……いや死んだはずだ。だが気がつけば人間の身体になっていた。スレードゲルミルも刀に変わった。お前は何か知っているのか?」
「知ってる事は知ってるが、それを話す先約がここに来ている。まぁちょっと今は出ているけどな。帰って来るまでもう少しかかるだろう。その間に大淀の所行って書類書いて出しといてくれ。その場で遭難者支給金ってのが貰えるから、ついでにその金で銭湯行って来いよ。流石にその風体じゃ困るだろ?」
「……わかった」
「他にも俺達みたいにこっちの世界に来たってのがいるんだ。全員揃ってから俺とカーウァイ・ラウが知っている事は全て話す。つか、一人一人に話してるより早いからな。それでいいか?」
「うむ、異議はない」
「ではそれで。とりあえず夕飯の後でここに集合だ。イムヤ、お前たちはこれで上がりだろ?ウォーダンの世話、頼んだぜ?」
「わかったわ。ん~、床屋も行かせた方がいい?」
「あと、服屋な。……支給金じゃちょっと足りねーかもしれねぇ。はぁ、しかたねーな」
玄一郎はジャケットの懐から自分の財布ではない別の薄い皮財布を取り出した。いざという時に艦娘達に渡す用の『個人的な』経費が入っている財布の一つだ。ぶっちゃけ、経費で落ちない時に使うへそくりである。
「ほれ、持ってけ。そいつで服とか見繕ってやれ」
それをイムヤに渡す。
「うわー、提督太っ腹っ!ついでに私の……」
「そいつはウォーダンの財布だ。必要なもん買ったらウォーダンに渡せよ?」
「む?」
「あんたの財布だ。返す必要は無い。そのまんま当面使ってやってくれよ。先立つものが無きゃなんも出来んからなぁ」
「助かる。この借りは必ず返す」
「遭難者を助けんのは海軍の仕事だ。だが、力を借りにゃいかん時にはこき使う予定だから貸しにしとくぜ」
玄一郎は笑って、しかし本気で言った。
「うむ、その時は声をかけてくれ」
ウォーダンもその気なのだろう。頷き笑う。
「ああ、そうするぜウォーダン」
二人は笑いあい、うまくつきあっていけそうだとお互い感じた。
それはかつてのカーウァイ・ラウとゼンガー・ゾンボルトのそれに似ていた。ゲシュペンストは少しそれにデジャビュを感じていた。
ウォーダンと潜水艦娘達が出て行った後で、ゲシュペンストは言った。
〔気骨も意思も何もかも、私が知る頃のゼンガーを上回っている。ゼンガーはあれに勝ったか。いや、ラピエサージュのデータをみる限り、エルザムもカイも成長したものだ〕
〔おじ様は、かつて教導隊の隊員全員と同時に模擬戦闘をして勝ってらっしゃるとデータにありますが?〕
〔昔の話だ。君が交戦した時の連中とやりあったならば、模擬戦闘でも私は負けるだろう。流石に成長した連中相手ではな。1:4の確率、私が1だ〕
「それでも四分の一の勝率あんのかよ」
玄一郎はゲシュペンストのその言葉が誇張なのかどうなのかわからなかった。だが出来ればそういう相手を敵に回したくは無いな、と思いつつ。
「はぁ、やはり全員呼ぶしかないか」
と呟き、オウカの心労を思って溜め息を吐いた。
全員、というとあのマッチョも呼ばねばならないし、それにオウカとウォーダンは前の世界で同じアースクレイドルにいたようだ。
うまく立ち回らねばならんだろうし、釘も刺しておかねばならんだろうなぁ。
「提督は辛いよ。しかも上司はこんなだしなぁ」
静かだと思って土方を見れば。いつの間にかぶっ倒れていた。
どうやらウォーダンの身体の筋肉を見て暴走しかけて、沖田にまたやられたようだった。
「この人抜きでいいんじゃないか?」
はぁぁぁぁぁぁっ、と溜め息をまた吐く。こんなんばっかや。
散財な主人公。
敵勢力にノイエDCの影。
半裸ですがゼンラー、いやゼンガーではない。
なお、ウォーダンにやたら懐いているのはハチ。ゼンガーにおけるイルイポジになるか?
次回、桜花発狂でまたあおう!(嘘)