ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 土下座から始まる物語。

 氷つく波動とマグマオーラ。

 51センチ砲。

 長門との回避勝負。



キング・オブ・DoーGeーZa☆

 パラオ、である。

 

 玄一郎は扶桑姉妹の前で今、まさに。

 

 土下座中、だった。

 

 滂沱の涙を流し、大の三十路の男が土下座。ジャパニーズ・ドゲザである。その様は一流のドゲザーかくあらんや?という感じでビシッ!と決まっているが、漢の人生において土下座でキメたくはないもんである。

 

「扶桑、山城、すまん……」

 

 その横には仇敵であるはずの『ムサシ』が腕を組んで立っている。不敵に笑い扶桑姉妹と対峙している。

 

「……状況は、松平元帥と舞鶴の大和さんからお聞きしております」

 

 かなりの冷気を含んだ、というよりも一瞬にして全てが凍りつくような声である。扶桑は怒るとまず冷静になるタイプの女である。だが、怒りすぎると凍てつく波動を出すとは流石に玄一郎も知らなかった。 

 

 ピキッ、ピキピキッ、ビシッ、ビシビシビシッ!!

 

 物理的に、応接用のテーブルの茶が凍り付いていた。暑い南国パラオの執務室の空気が凍てつく。窓に霜が下り、さらにビシビシビシッとそれが凍りついていく。

 

「随分と、楽しい謀(くわだて)をしてくれるじゃない。人の男をNTRって?ざけんじゃないわよ!!」

 

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!

 

 山城の後ろに炎のオーラが見えた。いや、それはマグマの如き熱量を持った怒気であった。

 

 じゅぉぉぉぉっ、と扶桑の冷気が山城の周りだけ蒸発していた。蒸気が満ち、しかしやはりそれがダイヤモンドダストの如くキラキラと舞い落ちる。

 

 だが、止む事なき怒りのブリザードと噴火の嵐である。その様たるや、南極大噴火、ブリザードとマグマの荒れ狂うが如し。

 

 玄一郎は土下座、土下座、ひたすらに土下座である。

 

 何でこんなことになったんや、と内心思うも、全部松平元帥と叢雲が悪い!!と結論づける。しかし、結論づけた所で何にもならない。

 

 対して、ムサシは涼しい顔をしてさらりと言う。

 

「ふん、寝取るなど、そんなつもりは無い。この男程の『漢』が、女の一人や二人で収まるはずはなかろう。否、収まってはならぬのだ」

 

 そして言い放つ。

 

「『提督』たるもの、艦娘達の想いを受け止めんでどうする!!慕われ、愛されているならばそれに応えてこその『漢』!!それを妻たるお前達が支えなくてどうするっ!」

 

 ずどーーーーん!!

 

 扶桑姉妹に衝撃が走る。

 

 凍れる波動も活火山のオーラも霧散してしまった。

 

 そして何故かいた金剛型四姉妹+タ級、レ級+シロガネが拍手する。

 

「Oh!さすがムサーシデース!」

 

 金剛が喝采の声をあげる。非常にうれしそうである。

 

 いや、だから何でいるかな。

 

 というか。何でテーブルセット持って来てそこでお茶会しながら優雅に見物してんのこいつらっ!!

 

 しかも、しかもっ!そこのタ級っ、あんたは深海勢力でしょおおおおっ!つかレ級もっ!あとさらっとなんでいるかなシロガネっ!!君、訓練はっ?!って、訓練教官山城だった~っ!!

 

 土下座の姿勢を崩さず、玄一郎はぐぬぬぬぬぬっ、と唸る。

 

 金剛の企てている事は玄一郎もよく理解していた。要するにとっととパラオの現状の内情をなんとかしろ、という事なのだ。どうせ金剛の事である。とっくに次のケッコンカッコカリの艦娘を選んでても玄一郎はもう驚かないぞ、と思っていた。

 

 さらに、金剛の戦略を玄一郎は今まで覆せた試しはない。それは将棋やチェスであっても演習であっても、そして、こういう謀事であってもだ。

 

 確かに、いずれは扶桑達の他にも嫁艦を娶らねば、パラオの艦娘達は収まらない事は玄一郎にもわかっている。だが、やっと扶桑と山城とケッコンカッコカリ出来たのだ。

 

 15年、そう、15年。時に守り、時に助けられ、時に離れ、そして長い旅路の中でも忘れずにずっと想ってきた女達とケッコンしたのだ。玄一郎としては、ちょっとぐらい甘々な新婚生活してもいいじゃない!!と思っていた。

 

(……どうせ逃げられぬならば)

 

 玄一郎は金剛の企てを、ただ唯一覆す方法を一つだけ思いついた。いや、企てそのものは覆せない。ただ、一矢、そう、ただの一矢報いる手段を。

 

 どうせ金剛は己を第三夫人には置かない。金剛はいつも自分を根幹から離して考える癖がある。故におそらくは別の艦娘を推してくるはず。

 

「まぁ、ムサーシの言うことも一理あるネィ。扶桑、山城、確かに小島基地壊滅事件の事はあったケド、基地とあの提督以外に被害はなかったデース。それに、ムサーシとレ級がやらなければ、あの海域全てが呪われた海になってたのは間違いないデス。……ゲンイチローの大破の件も、理由があったのですし?」

 

「……かも知れませんが、ふぅ。しかしまさか宿敵に諭されるとは思わなかったわ。事情もわかってみれば……」

 

「敵ではあったけど、ある意味同士だったなんてね……」

 

「ん~、マァ、昨日の敵は今日の嫁友、ネー?」

 

「まぁ、過去の遺恨の理由も聞けばもっとも。玄一郎さんの大破も言ってみれば、今の状況がもっと早く訪れていたかも知れないと思えば……」

 

「15年間、私達は何をしてきたのかしらね?空はあんなに青いのに……」

 

「あの、俺のトラウマとかあん時の激痛とか、大破して動けなかった状況とか、その辺は?」

 

「……ケッコンカッコカリもしていない女性、しかもその女性の初めてを奪った男が何か言ってるわね」

 

「……やはり責任問題かしら?」

 

「責任問題ネー?しかも相手は同盟艦のビッグネームデースシ?」

 

「……あの、襲われたの俺の方なんですけど?」

 

 土下座しつつ玄一郎が手を上げておずおずと言ったが。

 

「試製51センチ砲を稼働させた方が悪い」

 

 山城がぴしゃり、とそう言い放った。

 

 レ級が呆れながら、

 

「……どんだけあるのよ口径」

 

 ズズズっと紅茶を飲みつつ言う。そんなにあるようには見えないのよね~。

 

「……挿れるのに、苦労した」

 

 ムサシが顔を赤らめて告白した。

 

「言うな恥ずかしい!」

 

「ひぇぇぇぇぇ」

 

 想像したのか、比叡が顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「……あのっ、榛名は……ごくり」

 

「おい、だからやめれ」

 

「わ、私の計算によると、司令の司令塔は……」

 

「主砲なのか司令塔なのかどっちだよ。つか司令塔が股間て、お前ね……」

 

「股間でものを考える男って最低よねー」

 

 また山城にぴしゃり、と言われる。

 

「俺の傷ついた心を、みんなしてそうやって抉って……。ああ、もう俺は立ち直れないかも知れない。……中東の砂塵が懐かしい。もう、女の中に男が一人ってのは……辛い」

 

 しくしくしくしくしく。

 

「提督よ、嘆くな。漢ならば立て。私はなんと言われてもお前に着いていくぞ?」

 

「……いえ、なんというかあなたが発端なんですけど、この状況」

 

「……あの時は介抱だけにしておこうと思ったのだ。本当だ。だが、お前を看ていたらこう、積年の思いが爆発して止まらなかった。気がついたらやってた。後悔はしていない。反省も無い」

 

「……俺、ちょっと中東に行ってくる」

 

「まぁ、待て、逃げるな。流石に飛んで行かれては我らは追えぬ……訳でもないか。シロガネならば追いつけるしな」

 

「はい、速度も航続距離もゲシュペンストの最高速度を追えます!、あとありとあらゆるセンサーとレーダーは決して提督を見逃しません!!艦首の機体発着モジュールと搭載コンテナを使えば皆さんを運ぶ事も可能です!!……妹達には火力と防御力で劣ってますけど」

 

 そう、シロガネは宇宙戦艦であり、さらに他の艦娘とは違い艦装が本物の戦艦なのである。たしかに重巡サイズのミニチュア版といった大きさだが、パラオの艦娘をだいたい6×4人、つまり第一艦隊から第四艦隊までを搭載コンテナに積んで、さらに艦橋に10人は乗せて運べる能力があった。

 

 しかも飛べるわ水中航行出来るわ、宇宙まで行けるわ、キャリア船より遥かに速いわ、という破格の能力を持ち、火力云々と言うが、ビーム砲やらビームの対空ファランクスみたいなのを積んでるわで破壊力はかなりのものを持ち、さらにさらに、やや狭いが風呂やら船長室やら船室等もあるのである。

 

 さらに、トロニウムエンジンにより、燃料の補給は要らない。

 

 難点とすれば、修理コストは高い。大和型×4程度が必要であり、かつ入渠時間は大和型の二倍と最長。要高速修復剤。あと、弱点は第三艦橋と左舷の弾幕がやや薄くなることらしい。

 

 なお、現在の練度は26である。

 

「地球……ではなく、我に逃げ場無し、か」

 

 ガクリ。

 

「でも、シロガネの経歴を読んだのだけれど。他人のようには思えないわ。姿も、スカートと袖以外は、なんとなく私達姉妹に似ているし」

 

「まぁ、金剛型の着物とも似ているけど、顔立ちがちょっとね?」

 

(不幸オーラが似ているとは言うまい)

 

 玄一郎はみんなの意識がシロガネの方に向いている隙に、ゲシュペンストに造ってもらっていた人間用のプリズムファントムを作動させつつ、そろりそろりと執務室から逃げた。

 

 そう、独りきりになりたかった。ぐすん。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 海、である。

 

 演習場では、ソースケが長門にしごかれていた。

 

 旧日本海軍ではかつてしごきのキツイ、今で言うブラック企業ならぬブラック艦と言うべき艦についてこう称した。

 

『鬼の山城、地獄の金剛、音に聞こえた蛇の長門、日向行こうか、伊勢行こか、いっそ赤城で首吊ろか』

 

『地獄榛名に鬼金剛、羅刹霧島、夜叉比叡、乗るな山城、鬼より怖い』

 

 と。

 

(……必ず山城がランクインっつーか、上位に来てるじゃねーかよ。いや、この場合ワーストか?)

 

 蛇の長門がキャニス・アルタルフに乗った『ソースケ』に、やたらとキツイ訓練を施している真っ最中である。

 

「力任せにターンするな!!戦闘中はその無駄な軌道が隙になる!!」

 

 ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!

 

 ブイを旋回するキャニス・アルタルフに遠慮なく主砲をぶちかます長門。

 

「ぎゃーーーっ!!」

 

 直撃。とはいえ模擬弾頭なのでペイント塗れになるだけだ。しかし赤白黄色緑青黒とすでにキャニス・アルタルフがまだらになっている所を見ると、かなりやられているようだ。

 

「だからっ、回避する余裕の無いような軌道をするんじゃないっ!!それではただの的だ!!速く動くだけではすぐに捉えられる!こんな風にな!!」

 

 ズドーン!ズドーン!ズドーン!

 

「うわーーーっ!!なんでそんな砲が当たるんだ?!大砲なのにっ!?」

 

「山城で無くて良かったな?奴なら演習弾など使わず、全て実弾でやるぞ?」

 

(……うん、我が嫁ならやるだろなー)

 

「くっ、三次元回避ならばっ!」

 

「飛ぶなバカモノ!さらに良い的になるだけだ!」

 

 ドドーン!!ドンドーンドーン!!

 

 ビシャッ、ビシャッ、ビシャッと全弾ぶち当たる。

 

「これが実戦ならば、お前は何度死んでる?この死にたがりが!!男ならガッツを見せろ!!」

 

「うぎゃーーーっ!!」

 

(あ~、いかんなぁ。レーダーやセンサーに頼りっきりで反射神経だよりだからそうぶち当てられるんだ)

 

 もはや機体の元の色がわからないぐらいになってもまだ、ペイントでコーティングされている。なお、ペイント弾であってもわりとダメージは食らうのだ。

 

 玄一郎はキャニス・アルタルフに通信を繋いだ。

 

「おい、ソースケ。もう少し視野を広くしろ。レーダーやセンサーで反応を捉えてからではもう砲弾は直撃軌道に来ている。いいか、相手が撃つ気配を自分の五感で捉えろ。あと回避モーションは的確に。やってみろ」

 

「んな事言われても、ってか師匠はできるのか?!」

 

「やれてなければ生きてはいない。俺は実戦でやってきた。わかった。お手本を見せてやろう」

 

 キャニス・アルタルフへの通信を切り、長門に繋げる。

 

「長門、俺だ。どうもそこの小僧が手本を見せろと言って来た。済まんが、飛び入り参加してもいいか?」

 

「ほう、提督がか?久しぶりだな。では昔のように実弾でやるか?」

 

「良かろう。だが最初はお手本として小僧にわかりやすいのを頼む。その後は昔みたくやってくれ。俺に当てられたら、間宮フルコース券を進呈しよう」

 

「ほう?ではその時は一緒に行こうではないか。食事が出来るようになったのだろう?」

 

「……間宮、か。むぅぅ、間宮はちょっとなぁ。いや、うまいのは知っているが、ぐぬぬ」

 

「知っているぞ?間宮にも告白されたようだな?提督。彼女はずっと待っているぞ?そして私達姉妹も、大和型姉妹も、高雄、愛宕、足柄、天龍、龍田……。もうそろそろ、答えを出してくれないか?生殺しは……嫌いなんだ」

 

「……はぁ、何だろうねぇ。浮気や他の女にうつつを抜かさず、良い夫になりたいと思ってたんだけどな?」

 

「パラオの艦娘全てにとってそうなればいい。とはいえ今すぐに答えを出せとは言わん。考えろ」

 

「解ってはいるんだがな」

 

 玄一郎はコールゲシュペンストを使い、ゲシュペンストを呼び出す。

 

「ま、当たるつもりは無いぞ?長門」

 

「ふっ、安心しろ。こちらは必中で行く」

 

 海の上、長門が笑うのが見えた。

 

「ゲシュペンスト、行くぜ!!」

 

〔応っ!!〕

 

 回避模範演習の火蓋は切られた。

 




 駆逐艦達は、さて、love勢は誰と誰になるんでしょうかね?

 夕立、時雨、不知火、如月、他は?

 曙、霰はどうなのかねぇ。

 次回、ジュウコンフォイアーフレイ!でまたあおう!(嘘)
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