クール系引っ掻き回し愉快犯である。
しかし。
ええ子なんですなぁ、これが。
玄一郎が黒田土下座右衛門になっていた頃。
カルディアとエキドナ、そしてマッチョ二人は伊良湖ベーカリーで食事をとっていた。
カルディアもエキドナも、レオタードとかそんな格好ではいかんと言われてレモンに見繕ってもらった服を着ており、カルディアもエキドナも、ワイシャツに灰色のベストを羽織り、スカートもプリーツの入った灰色のものをつけていた。
どこかで見たような姿であるが、それと同じ姿をした一人の艦娘がやってきて、ようやくそれがわかった。
二人の格好は、不知火と同じ格好だったのである。
不知火は平然とした顔で、「おそろいですね、姉さん達」と言って二人の座るカウンターの隣の席に着いた。
カルディアとエキドナは
「「くっ、やられたっ!」」
と、思い、いらんことしいの創造主のアホな悪戯に頭を抱えた。
その服装を渡された時には事務員の服装だろうか?などと思って何も思わずに着た二人であったが、不知火本人を見てようやくこれが不知火のコスプレだと気付いたのである。
この三人、髪の色といい顔といい、何故か割と似ており、実際にこうして並ぶと姉妹に見えてしまう。
実際にはカルディアとエキドナは姉妹であるが、不知火も加えると三姉妹と間違えられても仕方ない程なのである。
なお大抵、エキドナは何故か長女に見られてしまうが、年齢設定的に仕方あるまいと思っている。が、自分のある種プロトタイプと言えるカルディアの年齢設定が自分より若く見えるあたりで少し不満に思う所も無いではない。
まぁ、カルディアもエキドナもこの不知火に対しては特に嫌う理由もなく、寄ってくるなら普通に接しているのだが。
「不知火の嬢ちゃんも朝飯ですかい?」
「はい、ABさん達も姉さん達とご飯ですか?」
しれっと二人を姉呼ばわりをする不知火。この不知火はあまり表情が変わらないため、それが冗談なのか本気で言っているのかわかりにくい。悪意が無いのはわかるのだが、どうも性格が掴めないのである。
「おう、そうやで?」
AとBはにこやかに答える。AB二人はカルディアに良く似ている不知火には以前から好意的に接している。
二人は真嶋建設で働いている時から泊地の工事や修繕などで出入りしていたため、ここの艦娘達とは大抵顔見知りである。その風体から避けられる艦娘はあったが、駆逐艦とはだいたい仲が良い。
なお、レモンはただの量産型重戦闘アンドロイドが何故こんなマッチョな、サムソンとアドンのような感じになったのか理解出来ないと言い、それでも面白いからヨシ!としているようだ。
「……不知火、その、まだ生き別れの姉とかいうのを信じているわけじゃないよな?」
姉さん達と呼ばれてカルディアは少し不安になった。この不知火の言うことはどうも掴みきれない。
「ええっ?!そうではないのですか?!」
不知火はポーカーフェイスのままそんな事を言う。その不知火を見て、不知火の性格をカルディア達よりも知っているABは苦笑しつつ言った。
「不知火嬢ちゃんはホンマ人担ぐんが好っきゃなぁ」
「担ぐとは少し心外です。お二人とは他人のような気がしないだけです」
しれっと言う。
パラオの不知火は少々他の不知火とは性格が異なり、土方歳子中将が建造しただけあって、かなり変な性格になっている。大抵の不知火が実直で静かだが少々物騒な感じの性格であるのに対して、この不知火は、静かだが飄々としており、ポーカーフェイスのまま人を担ぐ。ようは面白がってからかったりするわけであるが、素のきょとんとした顔でそれをやるのでなお質が悪い。
例えば初めてカルディアを提督から紹介された時も、実際はわかってて提督とカルディアの反応で遊んでいたし、提督の『生き別れの兄』発言でも玄一郎が提督であることはとっくにわかっててノリノリで抱きついて慌てさせつつも提督のスメルとか身体の肉感を堪能するという事をしていたのである。
まぁ、気に入った人間以外にはそのような行動はとらないのである意味それは親愛の情的なものだと言える。
「あら、カルディアさん」
と、トレイを持ってアインストカグヤがやってきた。お連れに幼児二人、ティスとラリアーのロリショタコンビを連れている。
「う……、カグヤか」
カルディアは少し苦い顔をした。
カルディアは前の世界で楠舞神夜達と戦った事がある。もちろん、このカグヤはその楠舞神夜ではなく、アインストの作り出したコピーであるというのは理解しているし、アインストの親玉が滅びたのも理解している。
さらに悪い奴では無いのも話をしてみてよくわかってもいた。性格も何もかも楠舞神夜そのままにアインストは生み出していたのだから、悪いはずもあるまい。
だが、カルディアがカグヤに対して苦い顔をした理由は、自分同様に地上での戦闘しか出来ない仲間だと思っていたら、アインスト・カグヤにはペルゼインリヒカイト的な機体があり、しっかりと空戦や海上戦がこなせると言うことがわかった為である。
カルディアは確かに地上戦ではそこそこに強い。しかし敵が海に現れたならば、海も空もユニット適性がないなら手出しも出来ない。故に、パラオにいてもはっきり言って無駄飯食いになっている気がして、かなりカルディアは焦っていた。
妹のエキドナのように飛べる機体でもあれば話は別なのだが、カルディアは機体を持たないし、もし作られたとしてもそれは何の霊力も持たない兵器であり、深海棲艦には通用しないのだ。
故に、カルディアはアインスト・カグヤに対してコンプレックスを抱いていた。
(ぐぬぬぬぬぬ、このままでは私はアイツに見限られてしまう)
と、焦っていた。
この場合のアイツとは、玄一郎の事である。なにしろ、このアインスト・カグヤはとにかく乳がデカい。さらにむちむちであり、さらに海上戦もこなせるわ性格もいいわ、もっと言えばハーケンのコピーがこちらの世界に顕現化出来なかったせいでフリーだわ、よしんばハーケンのコピーが居たとしても、あの悪側の性格はごめんだと本人が言い、さらにはどうも玄一郎に気があるのではなかろうかという素振りすらしている。
おっぱい星人の玄一郎の事だ。あの乳に誑かされるおそれがある。
だいたい、カグヤは男を見る目がはっきり言って無い。そういう部分はオリジナルと変わらないが、よりによって玄一郎とは。
いや、だからといってどうだとは言わないし人の勝手だが、問題は自分が海上戦が出来ない事なのだ。
やはり無駄飯食いになるのは避けたい。とにかく……。
「ニヤニヤニヤ」
気がつけば隣で不知火が無表情のくせに口で言って笑ってます的アピールをしながらカルディアを見ていた。
「……なんだ?不知火」
「大丈夫、兄さんは誰も見捨てない」
「いや、そんな事は思っていないが?」
「ニンマリ。使える人はとにかく使う。姉さんの才能や能力は私達艦娘よりもある意味上だから。レモンさんも何か工廠でやってるし、大丈夫。あと、兄さんは割と姉さんも大好きだと思う」
「というか誰が兄さんかっ?!」
「提督認定、義理の妹」
不知火が自身を指差してニンマリ。どうやら不知火は玄一郎を兄と呼ぶことをやたらと気に入ったらしい。
「ええっと、何の話でしょうか?」
話についていけないアインスト・カグヤが困ったように言う。
「……おっぱいと愛と海の話」
「はぁ……?」
間違ってはいないような気はするがそれでわかるわけは無い。
どうも、不知火はカグヤのその大きなおっぱいに対しては何らかのコンプレックスがあるようで詳しく語りたくないようである。
「……愛宕さんと言い、カグヤさんと言い、なんでそこまでおっぱい大きくなるんですか。乳ビンタ要員ですか。まったく。参考までに揉ませて下さい」
「いえ、その、困ることこの上無いんですが?」
「私は一向に困りません。経るものじゃ無し」
揉みっ。
「あんっ、いきなり何を?!」
「……質、柔らかさ、張り。愛宕さんとどっこいどっこい。肉の壁め……」
「なんでそんなこと言われるんでしょうか、くすん」
「いや、この子のやることは私にもわからんのだ」
「はぁ、とにかく言えることは一つ。提督の重婚の突破口は開かれてしまったという事ですが、そこで素直に慣れなかったり乗り遅れたりすると、提督が重婚生活に安定してからは出番がなくなりますよ、と言いたいのです」
「はぁ、そうなのですか?」
「故に、フラグを今のウチに回収しつつ、出番を増やしておく必要があるのです。絡めるうちに絡んで無理矢理レギュラーの座を掴まないとヤバいのです。最近建造された戦艦3人など、必死に鬼とか夜叉とか言われてきた指導教官に食らいついてようやく現在練度89まで追い上げて来ましたからね。ニューヒロインの窓口は狭い。アイオワが来るかウォースパさんが来るかガングーさんが来るか。それとも、という所なのです。うかうかしてられないのです」
「……なんかメタで無茶な話だな?」
「……とにかく、婚活ラストスパートなのです。互いに頑張りましょう、という話なのです」
「まぁ、私はおそらくカルディア姉さんのサポートになると思うから、婚活など……。うむ、まぁ食事を終えたから、日用品の買い物に行こうと思う。ああ、そういえば下着とかまだそんなに無かったな。うむ、姉さん、付き合ってくれないか?」
「……おまえ、焦っているな?」
「何を言うのだ、姉さん。日用品と衣類が無いのは姉さんも同じではないか」
「……うむ、ここは姉妹同士協力をだな?」
「それ以外無い、か」
W-06とW-16は参戦を決意したようである。
「……ちょっと、エステに行ってきま~す」
アインスト・カグヤはそそくさと去り。
ABは「姐御ぉ、荷物持ちなら任せてくだせぇ!!」とカルディアとエキドナの後を追った。
「えーと、僕達はどうしたらいいんだろう?ティス」
「わかんないわよラリアー。とりあえず部屋に戻るしか無いじゃない」
幼児は仕方ないなぁ、と席を立った。
そして不知火はニヤリ、と笑い。
「これで厄介な人達の人払いは済みました。後は長門さんの策がうまく行くのを待つだけです」
と言って涼しい顔でアイスコーヒーをストローでズズズッと啜った。
そう、不知火の役割は長門の根回しが効かない艦娘以外の転移者達の人払いであった。これで少なくとも夕刻までは人払いは出来たはずである。
(金剛、あなたからの恩を返す時です。うまく行って下さいね)
不知火は心の中で祈るように思った。
長門の策略は、こうして支えられてるんですねぇ。
金剛さんの人望もすごいのです。
なお、不知火の嫁入りの時はブルマを履かせたい。とある動画を見てそう思う。
次回、キヤノンボールは誰がために(?嘘?)でまたあおう!