ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 さて。金剛さん婚約。

 提督散財。

 ゲシュペンストさん何でも作れるなー。


重婚多重奏曲~ヒット・ザ・ダイヤクイーン~

 うまいものを食べると幸せオーラが出ちゃうよね。そして好物の紅茶までも最高の茶葉だったらもう言うこともないよね?ははははは、笑顔が眩しいねぇ、金剛さんよぉ。

 

 玄一郎は紅茶を啜り「あ、うまい」と思う。

 

 生前、つまり肉体を持っていた頃、玄一郎はコーヒー党だった。しかしこの紅茶はうまいと思うのだ。たまに飲むのは悪くはない。

 

 そう考えてやたらと金剛が気になる。

 

 勢いだけでなんか一心報いるとか考えていたが、ぐぬっ、とその勢いが止まりそうになっていた。

 

 うーむ、と紅茶のカップを眺める。

 

 重婚なんぞしてたまるか、という反抗心。裏で動いていた金剛達に対する叛逆心。

 

 とはいえ、パラオ泊地の治安維持の観点を考えれば艦娘達の暴走というのは非常に厄介なのだ。

 

 たしかに一連のテロ事件は収まった。

 

 発端はアメリカにいる転移者達とその転移者達と連んでいるアメリカ軍の高官達が起こした『ゴーストシップ計画』が発端だったのだが、そのゴーストシップ計画がとんでもない失敗であったのと日本政府の圧力によってそれらの動きはとりあえず終息し、さらにはその『ゴーストシップ計画』の次の段階、強力な同盟深海五大艦を捕らえてその体細胞から新たな『ゴーストシップ』を生み出す計画を阻止しようとしていた『ムサシ一派』がさらに同盟艦入りした事によって厳戒態勢は解かれたわけであるが。

 

 だが、全ての危機は去ったわけではない。

 

 故に金剛達が危惧するのもわかる。

 

 確かに平和な時であればどんちゃん騒ぎも良かろう。前に夕張が言ったように『祭』と称せるだろう。とはいえ追い回されるのは御免だとは思うが。

 

 然るに。

 

 安定をもたらす為には重婚カッコカリしかないのも理解出来るのだ。したくないけど仕方無い。

 

 別に玄一郎はハーレムを作りたいわけでもなければ大勢の艦娘達を侍らせたいわけでもない。

  

 そもそも、扶桑姉妹と出会わなければ、こんな事にはなってはいない。パラオでとっつかまって鹵獲兵器としてこき使われる事も無ければ提督なんぞしてはいないのだ。

 

 とはいえ発端はそれでも、同僚として知り合った艦娘達、助けた艦娘達、他の所から転属したり、ここで建造した艦娘達、さまざまな艦娘達が部下となり、扶桑姉妹のみならず彼女達が平和に暮らせる場所に、とやってきた。

 

 みんな抱えてきたのは同様だ。今まで通りと考えればいい。毒を喰らわば皿までとも言う。

 

 だが、しかし。やはり気になるのだ。

 

 金剛、お前はどうなんだよ、と。

 

 あの艦娘達から追っかけられて逃げ回って部屋に帰って来た俺を出迎えた、スケスケなネグリジェ姿のおぱーいを思い出す。むっちむち。形のいいおぱーい。何故今の俺には録画機能が備わって無いのだ、と思った。

 

 ぐぬぬぬぬぬぬ。

 

 いや、そういう事じゃない。そういう事じゃないんだ。そう、金剛のおぱーいの先っちょは……ってそうでもない。

 

 そこまでして、なんで一歩引いて自分じゃなくて他の奴を推すんだよ。つか、そこは違うだろ、と玄一郎はそう思って少しイラつく。

 

 なんであんたは自分の気持ちを言葉で言ってくれねーんだよ、というのが実際の玄一郎の気持ちだった。

 

 間宮が天龍に連れられて来た。

 

 ああ、そうだな。間宮は心を伝えてくれたよなぁ。いや、長門も大和も、過激だったが天龍も龍田もそうだった。

 

 長門が何かしらを間宮に伝えていた。

 

「大変、結構な味だった。非常に堪能させていただいた」

 

 ああ、うまかった。確かにうまかったが、ただこのままでは後味が悪い。

 

 玄一郎は長門の言葉の後に続いて間宮に言った。

 

「うまかった。それ以外に何も言えないほどにうまかった。身体を持つというのがどれだけ幸せな事かを実感する料理だった」

 

 本音である。料理の評論家のようなボキャブラリーも無ければグルメというわけでもない。味覚は鋭いが、それ以上でもそれ以下でもない。食べることが好きなだけの学生だった男なのだ。だが、間宮の料理のどれもが間宮の食にかける思いや食べる者への気遣い、様々な想いが込められている事がありありとわかった。

 

「本来ならプロポーズしたいところだが、だが片付けねばならない案件もある。軽蔑されても愛想尽かされても仕方はないかもしれないが……。ああ、天龍も龍田も、頼むからここにいてくれないか?その案件を今、片付けようと思うんだ。すぐに済むかどうかは……」

 

 玄一郎はすっと席から立ち上がる。

 

 武術であるならば消える動き、見えない動きというものに相当する動作だ。これには長門もとっさに追えまい。玄一郎としては金剛の不意をつければ良いだけなのだが。

 

 そして金剛の座る席のすぐ隣に片膝立てて座り込む。

 

 海軍制服の胸ポケットに手を入れて今朝からゲシュペンストに頼んで作ってもらっていた指輪の箱を取り出す。

 

「金剛次第、なんだ」

 

「フェェェッ?!ホワット?!」

 

 急にすぐ側に現れた玄一郎に驚く金剛。玄一郎の一矢報いる矢は放たれた。

 

 指輪の箱の蓋を開けて、金剛に差し出す。

 

 ケッコンカッコカリの指輪ではない。婚約指輪である。材質はプラチナ、デザインは亀甲金剛紋を彫り込み、真ん中に金剛石、つまりダイヤをあしらったものである。

 

「……金剛、あんたと会ったのはパラオ泊地で俺が鹵獲された時からだったな。あんたは土方から俺の指導教官を任された。忘れないぞ。この俺を実弾の的にしてバカスカと全艦総出で砲弾ぶち込んだのを。鳳翔さんと一緒になって、飛行訓練1日三時間を計八回やらせて完徹でさらに三回追加しやがったのも」

 

 恨み節炸裂である。ムサシ以外にゲシュペンストを大破させた存在と言えば、金剛と鳳翔の二人、である。

 

 実弾訓練で要するに長門がソースケにやったような演習を散々させたのがこの金剛と鳳翔だったのである。

 

 まだ長門のペイント弾による訓練は優しかった、という。

 

「だが、提督になってからは紅茶楽隠居とか言っていたがパラオ方面海域攻略ではあんたがどれだけ頼もしかったか。艦娘達との間に入っていろいろ動いてくれて、どれだけ助かったか。俺は知っている。ずっと一歩引いた場所で俺を見ていてくれたのも知っている。全部だ」

 

 ずいっ、と玄一郎は指輪をさらに圧すようにぐいっ、と差し出し、

 

「あんたがいたから今の俺がある。今日の今だけでいい。一歩引いた所じゃなくてここで答えてくれ。俺はあんたを嫁に欲しい。返答は如何に?!」

 

「え、ええ、エエエーッ、その、あの、テートク?!」

 

 おろおろしながら、助けを求めるように間宮や長門、大和、天龍や龍田、隼鷹を見る。だが、周りの仲間達はニヤニヤニヤニヤと笑っていた。

 

 間宮はイケイケゴーゴーとはしゃいでいるし、長門はうんうんと頷き、大和はなにやら貰い泣きしているし、天龍は親指を立ててぐっとしているし、龍田はぎゅっとしたな?な格好をしているし、隼鷹など伊良湖からクリュグの瓶を受け取っていたりする。その魂胆は金剛にもわかった。つまり、了承したら栓を抜くからとっとと指輪を受け取れ、と言っているのだ。

 

 しかし、この流れで、一番『え?なんで?あれ?みんな何でそんなノリなの?!』と焦っているのは玄一郎であった。おそらくは金剛の計略に乗ってここにいる艦娘達は間宮を推していたはずなのだ。計略を潰されて怒ると思っていたのに何故にこのノリなのだ?!

 

 金剛は、ふぅ、と息を吐くと言った。

 

「策士、策に溺れるとはこのコトネー。長門、やってくれたネー?」

 

「ふふふ、何のことだ?私は何もしていない。金剛の策通りに動いていたが、まさかこんなハプニングに見回れるとは、なぁ?」

 

「ええ、本当ですね。まさか金剛が先にプロポーズされるとは思ってませんでした」

 

 間宮が口を手で隠しつつにこにこ。

 

「……えーと、なんで?」

 

 玄一郎は訳が分からず言う。というか玄一郎としては金剛の策通りに行くのがなんか腹立つから一矢報いる為に、自分の中だけで計画していたのだ。誰にもバラさず長門達にも何も言ってはいない。

 

「提督はプロポーズに集中してください」

 

 大和にぴしゃりと言われた。

 

「そうそう、次はアタシ等だぜ?忘れんなよ?」

 

「うふふっ、わぁっ♪」

 

 くっ、金剛はわかっているようだから後で聞こう。

 

「……お受け致します、テートク」

 

 金剛はシルクの手袋を取って左手を差し出した。

 

「テートクの手で、はめてクダサーイ」

 

「う、うむ」

 

 玄一郎は金剛の薬指に婚約指輪をはめた。それこそ計ったかのように指輪はピッタリと金剛の指にはまった。

 

「殿方がいつまでもレディの前に跪いてるのはノーなんだからネッ?」

 

 金剛はそう言い、玄一郎の手を取って立たせた。

 

 そして、金剛は金剛の代名詞たるあのセリフ、そう

 

「テートクぅ、バーニングラアァブ!!」

 

 嬉し涙混じりに、玄一郎に飛びつき、バーニングラヴをかましたのだった。

 

「うぉっ?!」

 

 金剛のバーニングラヴはかなりの勢いがあるが、だがそこは強化人間である。玄一郎はしっかりと受け止めた。

 

 ぽん!ポポポポン!!

 

 そこへ、周りの艦娘達からのシャンパンシャワーが鳴らされた。

 

「ちょまっ?!それ貴賓食堂の地下ワインセラーのクリュグじゃねーかっ!!一本十数万……?!」

 

 クリュグが合計ひいふうみぃ、八本。全部で約八十万円。

 

「なお、フルコースディナー券では落とせませんので、提督持ち、ですわね?」

 

 間宮が無情にもそう言い放った。

 

「ひえぇぇぇぇぇっ?!」

 

「あ、テートクぅ妹達の分も指輪、ブリーズデース!」

 

 首にしがみついたまま、金剛はそう言った。

 

 かくして、玄一郎の金剛に一矢報いるぞ計画『ゴッドゴーガン・ラーイ!作戦』(そんな名前つけてたっけ?)は達成されたが、どこからバレたのか?あと何でそんなに散財せにゃならんのか?もう計画とかやらん方が財布には優しかった事は確かなのだが、やっちまったものは仕方ねーよなぁ。

 

 頑張れ!提督、負けるなゲシュペンスト!まだまだこの重婚多重奏はメインに差し掛かったばかりなのた!!

 

 あと、変な策は立てない方が何かと財布には優しいぞ?!

 

 





 短いですが、ようやく、金剛さんのバーニングラヴが出せました。なお、ケッコンカッコカリ指輪ではなく、ゲシュペンストさん作のプラチナオリジナル婚約指輪です。

 クリュグ八本。せめてドンペリにして(実勢価格一万ちょい)。

 次回、足柄さん推しは誰かやって、でまたあおう!(嘘)
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