ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

68 / 111
婚約指輪を主人公達が作ってる間のRJのお店。

この中に未成年がおる。おまえやーーー!!

「早くかえりたい」

ソースケが雷のレ級のお艦本能にとらわれつつある、という。


重婚多重奏曲~カラオケの間奏

 鉄板焼き屋RJは盛況であった。

 

 店がもう閉まっているというのに、歌声が響き、一体何の騒ぎなのだという感じである。

 

「とーどけー、とーどけー♪」

 

「あにきっ、あにきっ!」

 

「むーらくーもさん~腹黒い~♪」

 

「ぷろていーん!」

 

 今、歌っているのは吹雪とカルディア隊のマッチョABコンビである。とあるアニメの主題歌を替え歌で歌っているのであるが、まぁ、ぼかしてるのでわかるまい。

 

 絵面的には女子中学生っぽい女の子の両脇でマッチョがシャウトしつつポージングするというカオスな感じである。さらに深夜、ええんかコレ?

 

「……混ぜるな自然、やな」

 

 龍驤が呆れながら言った。 

 

「あはは、つか元帥夫人を腹黒いって言えるあの子が怖いわ~。叢雲は確かに腹黒いけど?」

 

 山城がケタケタ笑いながら言った。

 

「まぁ、あの子は昔からいろいろおちゃめだったから」

 

 扶桑が困ったように言うが、否定はしない。

 

 扶桑も山城も、深海戦争初期に叢雲と艦隊を組んで出撃していた頃がある。故に戦友の性格もよくわかっていた。

 

 そんな艦娘のおねーさん達の会話を聞くとも無しに、イーグリット・ウルズ改め『ソースケ・ウルズ』になった少年は何故僕がこんな深夜にこんな所にいなきゃいけないのだろう、と思いつつも黙々と出されている、お好み焼きなる料理を食べていた。

 

 お好み焼きというものは、うまい。確かにうまいが、ここにいて店の艦娘達の会話を聞いていてはまずいような気がしてならなかった。

 

 そう、赤裸々に語られる、なんというか女の園の見てはならない部分的に。

 

 それはまだ子供だしわかんないよね?的に子連れで行われる母親同士の大人の会話的な感じに似ているかもしれない。

 

 だが、ソースケも思春期クンなのである。そういうのは非常に困る。困るので黙々とお好み焼きを食べて嵐が去るのを待つしか無かった。

 

(……師匠もこういう中でよく生きてこれたな)

 

 ソースケは玄一郎に対してある種の信頼のようなものはあったが全く尊敬などしてはいない。だが女だらけの中でよくやってこれたな、ということに関しては尊敬しても良いかも知れないなどと思いつつ、無口にもぐもぐ。

 

 ソースケはアラド・バランガの体細胞から作られたマシンナリーチルドレンだけあって、食事摂取量はわりと多い。長門の激しい訓練で体力の消費が激しかったのもあり身体が栄養を求めていたのもあるが、現在、お好み焼き大サイズ六枚目である。

 

 テーブルの鉄板でお好み焼きを焼いているのは『雷のレ級』である。なぜかソースケに甲斐甲斐しく世話をしている。

 

「あー、もう食べちゃったの?よく食べるわねぇ、ちょーっと待っててね、もうちょっとで焼けるから」

 

 などと何か嬉しそうにソースケに言う。今焼いているのは緑黄色野菜たっぷりのベジ豚玉である。

 

 何故にそんなに嬉しそうなのだと思うも、ソースケは何も言わなかった。ソースケが自分で焼こうとして、ひっくり返した時に盛大に失敗したのを見かねて『雷のレ級』が焼いてくれているわけなのだが、この『雷のレ級』からはかなりの強さを感じて、何も言えないのである。

 

(……ムサシって言うのにもかなり驚いたけど、他にもこんなのがいるのか、この世界には)

 

 ちらり、とカウンターで長崎風皿うどんを食べているムサシの方を見る。

 

(昔に師匠はあれと戦って大破したとか言ってたけど、うん、そりゃ大破するよ。無理、絶対無理!)

 

 ソースケはパラオに連れて来られてから、様々な艦娘達や深海棲艦達を見たりしたが、その強さが解るに連れて昔の高慢なぐらいの自信が無くなっていた。そのおかげか、相手の強さを正しくみれるようになっている。

 

 ソースケはフェフの命令で、他の二人のマシンナリーチルドレンと深海棲艦捕獲作戦をやらされてたいたが、その時に見た深海棲艦とは別次元の強さにぞっとした。

 

 さらに、その隣にいるヤマトと名乗った南方棲戦姫、そのさらに隣の港湾棲姫や泊地水鬼、空母水鬼からも尋常ではない力を感じて、もしも捕獲作戦が実行に移されたならば、おそらく自分達は死んでいただろうな、とも思った。

 

 これが目の前にいる『雷のレ級』であっても同様であろう。

 

「怖がる事は無いわよ?だーいじょうぶ、何にもしないわよ!」

 

『雷のレ級』は、にはははは、と笑う。どうやらソースケが思っていた事を悟られたらしい。

 

 まぁ、実際に友好的ではある。だが、故に何かおかしい気もする。アメリカ政府は深海棲艦を『人類の敵にして根絶せねばならぬもの』と言い、ソースケの製作者であるフェフもそのように言っていた。

 

 確かにバミューダ海域の怨念を垂れ流すタイプの個体達(マヨイ)はそうかも知れない。だが、パラオにいる深海棲艦達は対話が出来る。その辺の差はどこから来るのかソースケには解らない。

 

 というか艦娘とか深海棲艦とか、その存在は何なのか。そして師匠である玄一郎は『この世界での俺達も彼女達と同じモンだぜ?』と言ったが、それすら考えても実感がわかないし、本当にそうなんだろうか?と思ってしまう。

 

「……お前、強いんだよな?」

 

「ん~?少しは強いと思うわよ?あそこにいる人達にはかなわないけど」

 

 カウンターの辺りを指して言うが、そりゃあそうだろうなぁ、とソースケは思った。だが、カウンターの港湾棲姫が振り返り、少し睨んできた。

 

「……何をイウ。オマエはワタシを退けた。レ級をハルカニ越えテるだろうが」

 

(あれより強いのか?!)

 

 ソースケは愕然とした。その反応を見て、

 

「うぅーっ、だからそれは謝ったじゃない。それにあの時は私だけじゃなかったし!」

 

 少し涙目であわてて『雷のレ級』は言う。だがそんな『雷のレ級』を見て、そしてソースケにも目をやり、港湾棲姫は少しニヤリと笑った。

 

「……む?ナルホド、イヤ、スマナイ。そうだな、男の子の前デハ、か弱い振りモシタクナル、か?」

 

 フフフフフ、と笑い、お邪魔したなと、また港湾棲息はカウンターの方へと向き直る。

 

「うぅーっ、そんなんじゃないからねっ!」

 

 なぜかソースケにそう言うが、訳が分からずソースケは首を傾げる。が、目の前のお好み焼きがやや焦げそうなのに気がつき、

 

「あ、お好み焼き、焦げる」

 

「あらいけない、ひっくり返さなきゃ」

 

 どうも『雷のレ級』の性格は単純なようである。

 

「くすくすくす、雷も可愛い所あるのですね」

 

 隣のテーブルのタ級が言う。このタ級は小島基地にかつて所属していた榛名が沈んで深海化した存在であり、『雷のレ級』とは付き合いが長い。昔話編でもちらっと……まぁ、妹の霧島の深海棲艦化したのが扶桑に撃破されたその余波で大破してたのが実は彼女だったという。なお、その時の霧島の魂は何の縁があったのか、このパラオの霧島に転生しているとかなんとか。

 

 もちろん、扶桑姉妹とも生前(と言っていいのかわからないが)はよく話をしていた事もあり、かなり馴染んでいる。

 

「むぅ……。わからん」

 

 そのタ級の対面にいるのはウォーダンである。何故自分がここに連れ出されたのかわかっていない。気がついたらタ級に引っ張られてここに連れて来られたのである。

 

「はい、焼けましたよ?」

 

「む?うむ」

 

 お好み焼きの乗った皿を受け取りつつウォーダンは、

 

(……何故コイツは俺に構いたがるのだ?)

 

 などと思っていたが、美味いものを前にして思考を中断させた。

 

 なお、お好み焼きが『夜のスタミナ焼き』である辺り、元榛名さんの黒い何かが垣間見えて龍驤はうわぁ、とか思ってそれを見ていたりするのだが、何も言わなかった。

 

「うむ、美味いなこれは美味い」

 

 牡蠣の旨味と刺激的な黒胡椒ガーリックの味がうまい。

 

「ああ、ビールお継ぎしますね?」

 

「む?ああ。酒は……飲んだ事は無いのだが」

 

 なお、ゼンガーの体質を知る方々ならばこの後どうなるかおわかりだろう。

 

 ゴクリ、パタッ。

 

 ビールを一口飲んだウォーダンは倒れ、そしてあらあら、と言いつつ嬉しそうに『榛名のタ級』に担がれて退場。うきうきとお持ち帰りである。その後のウォーダンがどうなるかは、誰も知らない。

 

「うふふ、初々しくて良いですね」

 

 などと鳳翔が龍驤に言ったが、

 

「あれを初々しい言うあんたが怖いわ」

 

「あら、恋は一に押して二に押して、三枝で新婚さんいらっしゃーい、ですよ?」

 

「あかん、それ、いろんな過程抜けとる」

 

「ケッコンだけに、過程(家庭)は要るでしょう、くすくすくす」

 

「あんた、酔っとるな?」

 

「久々に良いお酒ですから。嬉しい事が沢山ですもの。」

 

 ウォーダンが退場していくのを、ソースケは驚愕の目で見ていた。今、食べているお好み焼きを思わず見て、さらにレ級を見た。

 

 だが、レ級も「ええっ?!」とタ級の方を見て驚いているところを見れば、雷のレ級はそんな工作はしていないようだ。

 

「……あ~、ハルナがそうだったなんて知らなかったわ。大人は怖いわね~」

 

 振り向いてソースケにそう言って溜め息を吐く。

 

「……マジ怖い」

 

「お腹足りた?まだ食べるんなら焼くけど?」

 

 雷のレ級はあっけらかんと言ったが、ソースケは何か恐ろしいこの場所からなんとなく逃げたくなり、

 

「いや、流石にお腹いっぱいだよ、ありがとう」

 

 と、無理矢理笑って言った。すると雷のレ級はずいっと身を乗り出して言った。

 

「遠慮はいらないわ!も~っと私を頼っていいのよ!」

 

 どうやら、ソースケには雷の『お世話本能』を擽られる何かがあるようである。つまりは自分がついてないといけないと思わせる『リトルお艦』センサーに引っかかる、そんな物があるようである。

 

「うん、ありがとう、ははははは……」

 

 まぁ、雷のお眼に叶う者は大抵の場合、指導者や提督の資質を持っている者に多い。さらに、優柔不断系で押しに弱いタイプならばかなりの部分で気に入られるのである。

 

 だが、ソースケは知らない。

 

 雷に気に入られるという事は、霞や曙といった少々厄介な心を折る系の駆逐艦にも気に入られて絡まれる可能性が大という事でもあるのだ。

 

 負けるな、ソースケ。挫けるな、ソースケ。ある意味君は君の師匠よりも厄介な奴らに群がられる運命が待っている可能性極めて大っ!!

 

 なお、ウォーダンさんはパラオの夜の街の、シティーホテルという名の、なにかこう、独特の場所に連れ込まれた模様。

 

 合掌、チーン。

 




 ウォーダンの、その後はいかに?!(ご想像にお任せします)

 次回、吠えよスレードゲルミル!!でまたあおう(嘘)。

 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。