アメリ艦娘秘書入り(見習い課程)。
大和撫子(笑)。
というか、書いてて英語なんてわかるかーーーっ!!と思った。
精力剤というものは、本当に効くのか。そんな事を思いつつ玄一郎は昼に来た扶桑と山城から貰った精力剤を飲みつつ思った。
扶桑が言うには龍驤から1ダース貰ったという話であるが、そう言えば鉄板焼き屋RJには行ったこと無かったな、と思った。時間が開けば夜にでも、などと思うも今晩は間宮に行かねばならぬ。
昨夜は間宮の前で金剛を口説いたのだ。そのフォローは早くせねばなるまい。
それだけではなく実際の所、間宮の飯は美味く、それが口説くまで食えないのは、辛い。
扶桑達の作る飯に不満は無いし、その料理の腕は間宮と比べても劣るものではないが、しかしここは海軍なのである。任務の状況によっては扶桑達も出撃せねばならぬ事もあるし、何より美味い飯屋というのは確保しておきたいものである。
玄一郎はこの世界にくる前、つまり生前の趣味は美味いものを食べ歩く事だった。北海道から沖縄まで、様々な所へ行った。とにかく様々な場所、様々なものを食べた。そんな食道楽な男だったのである。
ロボットの身体になってから、何も食えなくなって約15年。その食への渇望たるやいかばかりだったろうか。
それが今や解禁なのである。何でも食える肉体を得たのである。なのに美味い飯を出す間宮に行けないこのストレス。
実際、間宮が素晴らしい女性であることは玄一郎もよくわかっている。金剛が何故間宮を推していたかも理解している。ぐぬぬぬぬぬ、食いたい(料理を、である)。
では金剛ではなく先に間宮を口説いたら良かったのではないか、と思われるかもしれない。
だがそれが出来るお利口さんな頭と打算的な思考回路を玄一郎は持ち合わせていない。それぐらい金剛に対してモヤモヤとしたものを感じていたのと、頭の中に生まれた疑問を棚上げしと行動する事が出来ない性格なのである。金剛達のおっぱい見ちゃったからなぁ、というわけなのである。
別に、『美味いもの』<『おっぱい』というわけではない。
確かにええもん見せてもらいました、というのも無かったわけではない。むしろ『ありがとうございましたっ!』なのだが。
というか朝には直に見て触ったり当たってんのよ程度ではすまない、組んず解れつ突撃ラブハート的かつ、あなたの遺伝子を私の中で混ぜて、ここで希有なファイト、といったそういう感じでもう、金剛型すんごく、えっろーい!!ラヴがバーニングしてウォーだったのである……って、いや話を元に戻そう。
間宮さんなら襲われる心配も無い……と、思う。うん、多分、きっと。
そう、信じたい。うん、信じてる。
さて、今から来るのは大和とアイオワである。
秘書艦は週代わりで変わるのだが、海軍の慣例として第一夫人艦は固定として秘書室長となる、というのがあるそうな。
舞鶴鎮守府における大和(実は第三夫人であるが舞鶴の高雄、愛宕は秘書艦には向かない性格らしく、舞鶴の秘書室長は大和が行っている)。松平元帥の叢雲など、そういう形式が今の海軍では主流だという。
これは各鎮守府や各基地、泊地の運営や営業における顔を第一夫人艦に置くことでその性質や体制を確固としたものにする、というよくわかるようなわからないような事でそうなっているようだ。
つまり扶桑がパラオ泊地の対外的な顔ということになる。
今まで秘書室長などというものを置いた事は無かったが、慣例ならば、とそういう体制にしたわけである。
とはいえ、パラオでの週交代の秘書艦制は変わらず行う事になっている。秘書艦を勤めた艦娘はやはり練度の上昇が他に比べて高くなりやすいからである。
とはいえ。
アイオワの練度を見て玄一郎はおぅふ?!と唸る。
大和から提出された書類に書かれてある事が本当であるならば、玄一郎が今朝の時点で知っていたアイオワの練度より、現在10も上がっている事になるからだ。
つまり、現在のアイオワの練度は99。つまり練度カンスト状態である。練度上げの為の秘書教習いらねーんじゃねーか?
「……数日でどうやったら新造艦娘がレベルカンストするんだ?」
額に手を当てて揉むようにしつつ、玄一郎は大和に問うた。どう考えても有り得ない。チートなどという何かでも無ければ起こりうる現象ではない。
「ええっと、その、アイオワはかなり優秀な艦娘であり、さらに訓練に対しての食いつきもすごく、ついつい……山城さんや他の方々もカリキュラムのハードルをどんどん上げて行って、その、空母水鬼さんとか、南方棲戦姫さんとかムサシさん達の協力の元……演習を繰り返し繰り返し……」
アイオワ達新造艦娘達の練度の急上昇の原因。
それはつまり、同盟深海五大艦のうち、海上深海棲艦のうちの空母水鬼の艦隊や南方棲戦姫の部下達との演習、そして最後に跳ね上がった9もの練度は、そこにムサシが加わって仕上がったのであった。
そりゃあボスクラスの深海棲艦と演習とはいえ戦闘を繰り返しやっていたら、そらみるみるうちに練度が上がるのは当たり前であろうが、ボスラッシュを毎日やってよく心が折れなかったものだ。
何よりラスボスがムサシ。
考えただけで玄一郎の胃はトラウマでキリキリと痛んだ。
「止めようがありませんでした。毎日来られて、アイオワ達と演習を。かなりの手加減をしていただきましたが、正直、山城さんの演習が天国に思えるような訓練でした。私と妹の武蔵、赤城さんを加えて演習に望んだのですが……」
その顔を見ればわかる。負けたのだろう。
聞けば南方棲戦姫とムサシ、空母水鬼の三艦VS大和、武蔵、加賀、アイオワだったという。
南方棲戦姫の強さは知らないが、ムサシの強さと空母水鬼の厄介さは玄一郎もよくわかっている。
とはいえある種、裏表の艦による演習と言えた。
南方棲戦姫の正体は深海側の大和、ムサシも武蔵の深海側であるし、空母水鬼は不明だがある意味赤城に似た部分がある。それにこちらにアイオワを加えられていたが、正直に言えば、霊格の差はかなりの開きなのである。これはなかなか覆せるものではない。
玄一郎がもしも指揮するならば、扶桑か山城もしくは長門、赤城の相方の加賀をそこに加えたいところである。
はっきり言ってその三艦を相手によく耐えたと誉めてやりたかった。しかし。
「というか、報告にはそんな事は全く上がって無かったぞ……?」
「バレなきゃ問題無いって土方中将が面白がって……」
「またあの人かっ!!つか土方さん、アイオワ達と直接接触してねーだろな?!」
戦艦とはいえ、まだ建造されて一週間と少し。土方の無意識の『介入』の影響があったら大変な事になる。
「それはありません。沖田少将が止めてくださいましたので」
「はぁ、だと良いが、アイオワ達がナガモン化したらエラいことになってたぜ。しかしアイオワ、災難だったな。いや、厳戒態勢下で俺の出撃もあり、俺の監督、管理不行き届きだった。本当に済まん」
「ノー。アドミラル。それはノー。むしろ望んでミーは、演習を受けたワ」
「む?それはどういう事だ?」
「ミーは、強くなりたい。あの何も出来ない屈辱……博物館にされていたのは仕方ないワ。でもあのテロ事件。襲われる人々を助ける事も何も出来ずに沈んで行ったあの屈辱。でもミーはここで戦える身体を得たワ。なら、戦う為に強くなる。そのためなら何でもするワ!」
「……お前は沈んだ時の記憶を持っているんだな?」
「イエス。この泊地に来た事もネ。扶桑のパワーに導かれて来たのよ。導かれて無ければソウルがダークサイドにフォールして、今頃連中の仲間入りだったワ」
「……扶桑さんグッジョブ。ナイスだ俺の嫁」
アイオワが深海化していたら、はっきり言ってかなり厄介な鬼姫級になっていただろう事は想像に難くなかった。それでなくとも、現在のアイオワの能力は長門、大和クラスなのだ。クワバラクワバラと玄一郎は心の中で唱えた。
「ソウソウ、ユーの声、聞こえていたワ。『彼女らは仲間になりたくて来るんだ。むしろ喜んで迎えてやってくれよ』って。嬉しかったわThank you!押し掛けたのにね?」
「押し掛けられるのには慣れてるんだ。パラオ泊地も俺もな」
皮肉混じりに軽口を叩く。
「……とはいえ、そこまで記憶があるということは、事の顛末はわかっているのか?」
「オフコース、だいたいは長門に話したとおりよ。私は腐敗したアメリカ軍の将校達の起こしたテロに見せかけた核強奪の目くらましの為に沈まされたのね?」
「……誰から、それを?」
「みんなの話している事を聞いて組み立てたのよ。Anyone can start a rumor, but none can stop one.日本語では人の口に戸は立てられない、かしら?」
「まだ、調査中としか俺には言えない。君はその存在的になんというか、微妙な立ち位置にあるからな」
玄一郎はアイオワに事実を語っても良いのかと一瞬悩み、肯定する事を控えた。アメリカ出身の彼女にアメリカが彼女にしたことを言いたくなかったのもあるが、何よりいらない不信感を彼女に持たせたくなかった。
「アメリカの戦艦だもの、しかたないワ。でも、Thank you、気を使ってくれてるのね?」
だが、彼女はもう事実を知ってそれを肯定しているようだ。玄一郎の気遣いをわかって苦笑していた。
「さてな。海外の艦はドイツ、イタリアといるがアメリカは初めてなんだ。それでなくとも女の子の扱いはよくわからんのだ。その辺は俺に期待しないでくれ」
玄一郎もそれに苦笑する。彼女はどうやら察しがいい艦娘のようで、見た目以上に頭が回るようであった。
「……サラトガとかはここにはいないのね」
「サラトガ、ああ、確かアメリカの空母だったか?艦娘になってたのか」
まだサラトガに関する資料は無い。おそらくはアメリカ側は隠しているのだろう。
「よく、博物館になってた私の所に良く来てたワ。あの事件の数週間前から見てないけれど」
「……アメリカは昔の癖なのか、こっちにはやたらと軍事機密よこせとか言うが、向こうは何も寄越さんからな。サラトガの艦娘か。初めて聞く」
「今は同盟国なのに?」
「……誰だって手の内は晒すのはイヤなもんだ。ま、サラトガね。空母建造の予定は無いが、来たら歓迎するさ。パラオは仲間なら受け入れる」
「アリガト、アドミラル。良いアドミラルでよかったワ。でも、アメリカはお嫌い?」
「……アメリカ海軍のレーションのチリビーンズ程度にはな?」
玄一郎は前にイージス艦にやたらと積み込まれていたそれを皮肉って言った。集積地棲姫やカルディアがもう見たくないと言っていたそれだ。
「どんな味なの?食べたこと無いワ」
「……知らぬが仏って事だ」
粘土の風味が何故かした。アメリカにイージス艦ごとつっかえしたぐらいだ。
「???」
玄一郎は首を傾げるアイオワに苦笑しつつ、
「君はそうだな。この券で食べれる間宮のアイス盛り合わせぐらいだ」
と、間宮券を渡し。
「今日は顔合わせだ。これからの業務はとりあえず休んでよろしい。間宮でそれを食べて明日からの業務に備えて休んでくれ」
と下がらせた。
「ああ、大和は残ってくれ。同盟深海棲艦との演習の状況を聞きたい」
勿論、大和は残らせる。確かに演習に関して聞かねばならないが、本来の目的もあった。
「……はい」
大和は何かを察したようで、少しはにかんで動かない。
玄一郎は婚約指輪を恐る恐るに指輪の箱を開けて差し出した。
「……本来なら、もう少しムードのある場所で渡したかったが、なかなか思いつかねぇ。許してくれ」
本来なら大和には菊花紋。しかし菊花の紋を指輪の紋に使うのははばかられた。故に桜の紋を散りばめて透かし、ダイヤも桜色のものをはめたデザインにした。
差し出した大和の左手の薬指にそれをはめてやり、やはり大和には桜、と思う。
そしてケッコンカッコカリの指輪もあわせてはめてやる。
「提督、いつもありがとうございます。連合艦隊の旗艦を務めるよりも、敵戦艦と撃ちあうよりも、今、こうしている時が私は一番好き。大和は・・・ずっと提督の、あなたの側で、頑張ります」
涙を流しながら大和は玄一郎を抱きしめつつ言った。
ケッコンカッコカリ。艦娘と強い絆を結びました(完)。
「と、言うわけで」
あれ?
「大和っ!ランニングスリャーっ!」
よいしょっ、と言いつつ大和は玄一郎の身体を肩に担ぎ上げた。
「え、え、あれ?なんで?」
「いえ、ムサシの話では、提督は逃げようとするから、とにかく捕まえろ、との事で」
タタタタタタタタッ!ガチャン←玄一郎を抱えつつ、執務室の扉を指差し、そして走り、その内鍵を閉める。
「そりゃ!」
「いや、なんで捕まえられにゃいかんのだ?」
再び玄一郎の自室を指差しタタタタタタタタッと走り。
「そりゃ!」
ガチャッ、バタン!ガチャン←ドアを開け、閉めてまた内鍵を閉める。
「いや、だからなんで?!いや、ちょまっ?!」
「これでっ!まだ終わりじゃありませんよっ!!」
ベッドにドサッ!
「大和、抜錨します!!」
「脱ぐなぁぁぁっ?!それ抜錨やない、脱衣やぁ~っ!!つか俺まで脱がすなぁぁぁっ!!」
「そぃっ!」←ズボンを脱がす。
どさっ!←ダウン攻撃に移行
「戦艦大和っ、夜戦を敢行しますっ!」
「まだ真っ昼間ぁぁぁっ!!みぎゃああああああああああっ!!」
提督の叫びがこだまする。今日もパラオは平和だなぁ。……そう、提督以外。
アイオワさんの嫁入りはまだ先。
パラオの大和さんは投げ技と寝技が得意ですよ。
どこのクラークさんだい?