ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 近藤大将の重婚も主人公の重婚騒ぎも、全てはビアン総帥のせい(間接的)。

 なお、昔のスパロボを知らない世代は知らないキャラが多いかもしれませんね。

 リリーさんの色っぽさとか。ユーリアさんのかっこよさとか。

 ビアンオヤジはわりと変態的なところがあると思う。ヴァルシオーネとか。ヴァルシオーネとか。


幕間。天災科学者ビアン・ゾルダーク

 

 間宮に向かう途中、玄一郎は廊下で金剛に呼び止められ、貴賓食堂で出されたワイン『金剛ピノ・ノワール』の意趣返しだと言ってチリ産のワイン『カミノレアル』を渡された。

 

「間宮と一緒に飲んでクダサーイね?」

 

 金剛曰わく『ワインの返しはワインでやるデース』とのことで、何かしら意味があるようだ。

 

 念の為、ゲシュペンストと通信してワインについて調べてみたがなかなかの意趣返しだった。

 

 まず、この前の貴賓食堂で出された『大将ワイン』と呼ばれ、海軍軍人に親しまれている菅原ワイナリー謹製の『金剛ピノ・ノワール』。

 

 これは『艦娘擁護派の父』と呼ばれた元海軍大将の菅原道夫氏が始めた果樹園で作られたピノ・ノワールという品種の葡萄を使って造られたワインであり、このワインの特徴は、赤ワインであるが色が淡く薄く透き通るようである。さらに渋みが少なく味わいが繊細であり、上品な後口だという。

 

 この特徴が彼の部下だった金剛の性格に良く似ていると菅原大将が思い(異論は割とあるかも知れないが)そのワインに金剛の名を冠した、という。

 

 なお、玄一郎は知らなかったが、金剛型にプロポーズするするときの定番のワインであるらしく、寄りによってその菅原大将の元にいた金剛本人にそのワインを出してきた隼鷹の根性には敬意を別の意味で払いたい。つか禁酒令だしたろか、と玄一郎は思った。

 

 そもそも、金剛はかつて菅原道夫大将を敬愛していたが当時ケッコンカッコカリも無かった頃である。また金剛はすでにその頃には艦娘として海軍から外せぬ存在になっており、菅原大将を追って退役も許されなかった。

 

 また、菅原大将の側には常に高雄(現在の菅原夫人)がおり……と、つまり金剛は恋に敗れたわけであり、そのワインを出されたのは金剛にとって複雑なサプライズだったろうと思われる。

  

 さて、その意趣返しとして金剛が用意したこのワイン。カミノレアルであるが、こちらははっきり言って『金剛ピノ・ノワール』の比ではない程に意味深である。

 

 このワインのルーツは19世紀の太平洋戦争(第二次世界大戦ではなく、それ以前の南米で起こった戦争である。主に海戦が行われたため、太平洋戦争と呼ばれる)である。

 

 この太平洋戦争での帰還者数は出兵した兵士の過半数以下であったとされているが、そんな戦争に出兵する一人の若者が、恋人とワインを酌み交わし『帰還したら結婚しよう』と約束したという。

 

 通常ならば立派に死亡フラグである。

 

 だがその若者は激戦を戦い抜いて見事帰還、恋人と結ばれ、そしてその一族はカミノレアルのワイナリーを開いたという。

 

 これをよく考えると。

 

 恋人の女性とカミノレアルを一緒に飲む→戦場での死亡フラグ回避→帰還→人生の死亡フラグ(結婚)。

 

 という図式が玄一郎の頭の中に浮かんだ。この男にかかればロマンチックなワインのエピソードも、そうなる。ワイナリーの方々に謝れ、とか思うわけであるが、それはともかくとして。

 

 今からプロポーズしに行くわけであり、縁起担ぎとしては悪くは無い。玄一郎はそのワインを持って間宮食堂へと向かったのであった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 さて、ほぼ同時刻。

 

 地球軌道上、月面裏。

 

 この世界では未だにそこで活動するものはいないというのに、クレーターの一つに停泊している宇宙戦艦があった。

 

 アルバトロス級宇宙戦艦『マハト』。かつてのコロニー統合軍旗艦であった。

 

 だがその艦体のサイズははっきり言って小さかった。かつてのアルバトロス級の大きさに比べればクジラとイワシ程に違い過ぎる。

 

 艦が縮小されてデフォルメされたかのような大きさである。このアルバトロス級『マハト』もシロガネ同様、艦娘化しているのであろう。

 

 

 

【Sideマハト】

 

 

「月面にはムーンクレイドルも無し、特に何の反応も探知せんか。こちらの世界の月には何も転移していないようだな」

 

 ここはアルバトロス級宇宙戦艦、コロニー統合軍旗艦『マハト』のブリッジ。その艦長席で初老の男がヒゲを捻りながらそう言う。

 

 もう皆様おわかりの事とは思うが、この男はマイヤー・V・ブランシュタイン。かつてのコロニー統合軍司令にしてビアン率いるディバイン・クルセイダーズ(DC)と手を組んで地球連邦に反旗を翻した人物である。

 

 かつてのDC戦争の折にこのアルバトロス級コロニー統合軍旗艦『マハト』で軍を率いて戦い、そして戦死したが、この世界に彼も顕現化し、復活したようである。

 

 誰それ?という最近のスパロボしかわからないという人に説明するならば、謎の食通トロンベ兄さんとその弟のSRXのライ君の父親である(ぶっちゃけすぎ)。

 

「はい、その他人工建造物の存在はありませんね。アポロの月面着陸跡もアームストロング船長の足跡もありません。きれいなものです」

 

 コロニー統合軍の将校といった感のする服を来た、実直そうな少女がマイヤーに言う。彼女が艦娘『マハト』である。きっちりとした軍服を来ており、ウェーブがかったアッシュブロンドの髪を後ろにまとめてバレッタで止め、軍帽をかぶっている。

 

 なお、深海戦争勃発により、この世界の宇宙開発は遅れに遅れている。人工衛星などもまだ少なく、ようやく日本が主導で人工衛星打ち上げ用のロケット開発が軌道に乗ってきたぐらいである。

 

「ふむ……。わざわざここまで秘密裏に調査に上がって来たが、何も反応が無いならば我々の単なる杞憂に過ぎなかった、か?」

 

「マイヤー総司令、ヴァルシオンから通信です」

 

 オペレーター席に座っている副官、リリー・ユンカース中佐がマイヤーに報告する。この人もこちらの世界に来ていたのである。

 

「ユンカース中佐、私はもう総司令ではないぞ?まぁいい、繋げ」

 

「失礼しましたマイヤー施設監督官。では繋ぎます」

 

 マイヤーは現在、日本空軍宇宙開発機構の北方施設監督官という地位を得ていた。この日本空軍宇宙開発機構は気象人工衛星や軍事衛星、などの打ち上げなどを行う組織であり、技術部、ロケット製造総監督等にビアン・ゾルダークが就任していたり、食堂にはマイヤーの息子の嫁、すなわちエルザム(謎の食通トロンベお兄さん)の奥さんが居たり、秘書官にリリー・ユンカースがいたり、警備部長に元トロイエ隊の隊長のユーリア・ハインケルがいたり、その部下にビアンが拾ってきたスクール出身のシエンヌ、シアン、シオのアルジャン三バカを雇っていたり、と旧DCの勢とプラス三バカが集まっていたりする。

 

 世を忍びつつ、日本空軍のお仕事の傍ら、時折こうやって打ち上げロケットに偽装したマハトで宇宙に出てはエアロゲイターなどが侵攻してこないかを監視しているのである。

 

 なお、使い捨てロケットでは無く、燃料以外は使い減りしない艦娘のマハトちゃんを使っての打ち上げなので費用も削減、資金はきっちりと使い捨てロケットの金額で計上しているので、かなーり資金は潤沢に溜め込んでたりするわけだが、それは私腹を肥やすためではなく、地球の危機などの、いざという時の為の資金として一切手をつけてはいない辺り、彼らはその理念を変えてはいないと言える。

 

 まぁ、流石にテレビによる報道などでロケットの打ち上げなどを放映されるときはキチンと使い捨てロケットを用意していたりするのだが。

 

 今回、彼らが宇宙戦艦なんぞを使って月に来た理由は、月から救難信号とおぼしき通信が発せられたからである。

 

 その信号は地球連邦のものでも、DCのものでもなかったが、月になにか来ている可能性があった。故に調査の為に出張ってきたのである。

 

『マイヤー、こちらビアン。静かの海付近にエネルギー反応有り。微弱だが未知の反応だ。救難信号らしきものはちょうどここから発せられている。……今、目視した。映像を送る』

 

「む?これは……PT?いや、見たことのない機体だ。エアロゲイターの物とも違うようだが?」

 

『機能は停止しているが、我々の機体と同様、スモールサイズになっているようだ。まるでパワードスーツのようだ。月面にめり込んでいる。掘り起こして回収する』

 

「了解した。くれぐれも気をつけてくれよ?」

 

『このヴァルシオンならばそうそう滅多な危険は無い」

 

「ダイテツの所の赤城がな、慢心ダメ!絶対と言っておったぞ?」

 

『……あの食い倒れ空母娘がそれを言うときは大抵体重計に乗った時だろうが。まぁ、慎重にやる。では作業に移る』

 

 なお、彼らのいる北方のロケット打ち上げ施設のすぐ近くの北方泊地の提督が、皆さんご存知、シロガネとハガネの艦長だったあのダイテツ・ミナセだったりしたりなんかする(現在、深海テロ事件の時にほっぽちゃんを庇った時に受けた負傷が元で入院中)。まぁ、この世界に来てからは過去の遺恨等無く、普通にお付き合いしていたりするが、お互いに異世界から来たという事もあり、その辺の事情を隠す為の同盟のようなものを結んでいる。

 

 なお、ダイテツの所の間宮さんとマイヤーさんの義娘のカトライアさんはお料理友達であり、ほっぽちゃんを二人して餌付けし、そのおかげで戦わずして北方海域攻略したという話もあるがそれはさておき。

 

 ダイテツさんとこの赤城の体重は日本海軍全赤城一重い。間宮さんとカトライアさんのせい。間違いない。

 

 

 

【Sideビアン・ゾルダーク】

 

 

 ビアン・ゾルダークもやはりこの世界に来ていたが、彼がこの世界に現れたのは今からすでに40年も前である。

 

 当時、彼は民間で発明家をしており、霊力で動くモーターを使った円盤型の自動掃除機『タンバ』や、霊力で空飛ぶラジコン式のおもちゃ『ドロローンタンバ君』などを造って、それらの特許でそれなりの収入を得て生活していた。何故に名前がタンバなのかというと、やはり霊界はある!という事でタンバなのである。テツロー。

 

 彼がこの世界に現れた時は、大戦が終わり、日本はようやく復興して経済発展を始めた頃であった。

 

 平和な時代に、彼はひっそりと人が幸せになるようなそんな物を造って行こうと『ゾルダーク研究所』を設立し、家庭で役立つもの、子供が楽しめる教育玩具、家族がみんなで豊かに暮らせるものを発明していった。

 

 その特許件数は5000件にも及び、かのトーマス・エジソンを超える偉業を打ち立てた。しかも、トーマス・エジソンとの違いは、誰かの理論を全くパクらず、独自理論でやらかして来たのである。また、誰かが同じ研究をしていたならば、途端に興味を無くして辞めるという飽きっぽさもあって、誰からも文句の出ない超発明王として有名となっていた。

 

 この世界の霊力という概念を解き明かした偉大な研究家としてビアン・ゾルダークは賞賛される事になったが、だがそれがいけなかった。

 

 深海戦争が勃発し、彼は再びその頭脳を戦争へ使わざるを得なくなったのである。

 

 未知の生命体『深海棲艦』。

 

 これには人間の通常の兵器は通用しない。そんな未知の敵生命体は彼の研究所のある横浜にも、深海棲艦は攻め込んで来た。

 

 こんな事もあろうかと、と、彼は作り上げた己の発明品、『試製霊力機関搭載のゴーストバスターパック』を背負い、上陸しようとした深海棲艦と戦った。

 

 やたらと場末の発明家にありがちな発明品であり、映画のパクリな装備ではあったが、おおっぴらに街の発明家が超兵器など造れるはずも無いがゆえの装備だったが、威力は絶大。

 

 警官や自衛隊の銃器も通用せぬ深海棲艦をバッタバッタとなぎ倒し、彼は横浜の平和を守ったのであった。

 

 その時にドロップしたのが、現在松平元帥の妻になっている叢雲だったりするので世の中、縁というのはわからぬものである。つまり、ビアンがおらねば初期艦叢雲も居なかったのだから。

 

 その時の彼の横浜攻防戦によって彼は海軍に招かれ、そして対深海棲艦用の兵器開発の協力をする事になった。そして、艦娘建造システムを開発。だが、その艦娘建造システムを造った事をビアン・ゾルダークは後に後悔する事となる。

 

 時は海軍暗黒期、大量に建造された艦娘達は、戦略無き物量作戦にてその命を多く落とし、さらには怨念による霊力反転現象により深海化し『マヨイ』というさらなる人類の脅威へと変貌したのである。

 

 その艦娘達の運用法に激怒したビアンは軍上層部の腐敗を糾弾したが、折しもその時代は上層部のみならず政府も腐敗していたのである。結局、反逆罪という汚名を着せられビアンは軟禁される事となる。

 

 数年間にも渡っての軟禁生活、しかしビアンは必ず腐敗した海軍、政府を打倒し、艦娘達を救うと決意して施設から逃げる時を虎視眈々と待っていた。

 

 そして時は来た。

 

 ビアン・ゾルダークは海軍の研究施設を逃げ出した。折しも時は菅原大将の時代、艦娘擁護派の一部の若手達の力を借りて、遠く艦娘擁護派が左遷されて集まっているという北方まで逃げた。そこからはロシアへと渡るつもりであったのだが……。

 

 北方で提督をしていたダイテツ・ミナセに出会い、そしてこれまでの経緯を話した。

 

 ダイテツの元にはかつての友であったマイヤーやその部下、そして義娘が集っていた。

 

 そこでビアンはダイテツ達と北方から艦娘達を救う事を決意し、当時の菅原大将の支援をしていったのであった。

 

 なお、こちらの世界でのビアン・ゾルダークの艦娘関連の発明は艦娘建造機だけではない。

 

 その後、彼は艦娘達への贖罪としてケッコンカッコカリシステムとケッコンカッコカリリングを作成した。これは、辛い暗黒期を生き残った艦娘達に幸せになって欲しいと願いを込めてである。

 

 なお、今も絶賛量産増産中。

 

 ビアンが造った艦娘建造機を使い、世界で初の艦娘量産を行った舞鶴鎮守府を解放した近藤大将の所に大量のリングを送りつけ、艦娘達から逃れられぬようにした張本人がこのビアン・ゾルダークであり、そしてまた、この物語の主人公である黒田玄一郎に松平元帥が大量に送ったケッコンカッコカリリングの出所もやはりビアン・ゾルダークだったりしたりなんかしているので、男達の知らないところでかなりの影響を与えているのである。

 

 流石はビアン総帥と言わざるを得ない。

 

 天災科学者ここにあり、であるが、まぁ、それはそうとして。

 

 なお、ヴァルシオンが居るのが判明したのはつい最近だったりするので、ビアン・ゾルダークのヴァルシオンは泣いていいと思う。

 

 そういうわけで、ビアン・ゾルダークさんはある意味艦娘建造の父とも言える存在だったりするわけである。

 

 まぁ、それはさておき。

 

 月面で発せられた謎の信号。そして月面にめり込んだ謎の機体の正体は?!

 

 待て!次回っ!

 

 ビアン総帥の華麗なる活躍を乞うご期待!!




 トロンベお兄さんとライ君のオヤジのマイヤーさんにリリーさん、トロイエ隊のユンカースおねぇさまに、カトライアさん、アルジャン三バカにダイテツ艦長。あと『マハト』の艦娘。

 てんこ盛りな登場人物でお送りする北方方面の面々。

 なお、北方のマスコットキャラはほっぽちゃん。

 次回、女騎士とビアンばかん、そこはおへそなの、でまたあおう!(大嘘)。
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