ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

75 / 111

 間宮さん。むっちりむちむち。おぱーいデカい。

 ビアンさんの受難の始まり。

 フー=ルーさんは老け専ですよ?←をい。


重婚多重奏曲~間宮でお食事を~老いらくにラブ

 ワインを飲み、酔う。

 

 ワインと、清楚で綺麗で働き者な優しい女性と、その手からなる料理を共に楽しむこの幸せ。

 

 間宮とはこんなに気さくで愛らしい人だったのかと玄一郎は思った。

 

 普段の一面と今の間宮の明るくてそれでいてほっとさせてくれるこの親しみのわく笑顔。少し幼さを感じさせるその柔らかな顔は酒気を帯びてやや赤くなり、それもまた新鮮だった。

 

「うふふっ、少し私、飲みすぎたみたい。こんなにはしゃいだのはいつ振りかしら」

 

 と、にこやかに笑う彼女はまるで少女のようだった。

 

 生前、玄一郎はまったく女性とは縁が無かった。享年21歳。高校は男子校。大学は圧倒的に男だらけの工学系の学部。女性と縁のない方面の青春を過ごしてきた。そんな青春黒歴史。

 

 いや、女性とワインを飲みながらなんてそんな洒落た事などは……いや、あったが、あれも黒歴史だ。外資系のファミレスでバイトしていた頃に、その支社長に誘われて大学卒業したらウチの会社に来いと言われた時に一度だけ。確か支社長の名前はジェニファー・フォンダとか言ったっけ。

 

……酔っ払った女支社長にホテルに連れ込まれそうになって逃げたんだよなぁ、あん時。

 

 いやいや、と玄一郎は頭の中から嫌な記憶を追い払う。

 

 今は間宮と素晴らしい時間を過ごしているのだ。

 

「人と食事をしていてこんなにときめいたのは初めてだよ」

 

 玄一郎は間宮を見ていてドキドキしつつ、酒の入って軽くなった口でそう言う。

 

「あらっ、私も殿方にときめいたのは初めてですわ?」

 

 くすくすくす、と間宮も笑いながらも軽く言う。ただ、その目には悪戯な光が見え隠れし、何かを期待するかのように細められる。

 

「カ・ミ・ノ・レ・ア・ル」

 

 ワインの名前を一言一言、切るように言って、またくすくすくす笑う。

 

「こんなに嬉しいワインを貴方と飲めるなんて。こんなに幸せな気持ちになったのも初めてです」

 

 間宮はワインの瓶を指差す。

 

 間宮は貴賓食堂の地下のワイン倉庫の管理もしている。それだけでなく和洋問わず酒の知識はかなりのものであり、カミノレアルの由来を知っていて当然だった。

 

「うふふっ、カミノレアルを共に飲んだ男女は結ばれる。有名ですもの」

 

 間宮の笑顔は期待するように玄一郎を見つめた。

 

「あ~、本題をいつ切り出すかってタイミング図ってたんだが、まぁ、そういう事なんだ、うん」

 

 玄一郎は懐から小さな箱を二つ出した。

 

 一つは婚約指輪の箱。もう一つはケッコンカッコカリの指輪である。

 

「まぁっ!」

 

 まず、婚約指輪の蓋をあけると間宮の目は驚きに見開かれた。

 

 その笑顔が喜色満面から、喜面絶頂といった顔へと変化する。

 金剛が贈られた指輪の綺麗でしっかりと纏まったデザインとその精密な造形は間宮も貴賓食堂で見ていた。だが、自分にと玄一郎が用意した指輪を見てそれが予想以上のものだったので驚いたのである。

 

 実は間宮用の指輪は玄一郎の予想以上の出来になって特別な指輪に仕上がってしまっていた。

 

 本来の玄一郎のデザインではプラチナに紋を彫ってダイヤをあしらうシンプルなものだったのだが、しかし妖精さん達が予想以上の頑張りを見せたためにゴージャス化してしまったのだ。

 

 間宮用の指輪の元々のデザインは稲穂をモチーフにしてイエローダイヤをあしらったものだったのだが、妖精さん達は間宮羊羹などを貰っているお礼にと張り切り、頑張り、いつも以上の能力と精密さ、そしてその技術力を発揮し、デザインそのままでアレンジと改変を加えてしまったのである。

 

 稲穂の紋に金をはめ込んだりイエローダイヤが最も輝くようにと指輪の裏に透かしを施し、さらに表面に顕微鏡で見なければわからないような細かい妖精語の祝福の言葉を紋様にして施し、さらに料理をする時に首からかけておくための金のチェーンまで用意したのだった。

 

 正直、間宮用の指輪は他の艦娘用とは一線を画する出来映えになってしまっていた。一体どこから純金を持ってきたのか考えると謎だが妖精さん達が本気でやらかす時、想定外のスペックの物が誕生してしまうのだ。

 

『出来てしまったものは仕方ねーわなぁ』

 

 とハンマー妖精さんは開き直って言ったものだ。

 

 とはいえ作り直す時間も無し、ここまでのクォリティーに仕上げてくれた妖精さん達に、流石に他の指輪とクォリティーが違いすぎるから、他のもなんとか同じように仕上げてくれ、とお願いしたわけであるが、妖精さん達は気まぐれなのである。他の指輪もある程度はやってくれたが、間宮さん用のに匹敵するクオリティのものはわずか数個だった。

 

 なお、妖精さんが力を入れて仕上げた指輪は誰と誰と誰用なのか、とかここでそれを言うのは野暮というものであろう。

 

「イエローダイヤのfancy vivid級、プラチナにゴールドのインレイ……こんな指輪を、私に?」

 

 やはり、間宮の審美眼はかなりのものであるようだ。もっと正しく言うならばプラチナは900。ゴールドは削れないようにと18金であるが、そこにはまったダイヤは少し大きめの色の濃いイエローダイヤの最高級等級fancy vivid。加工精度はおそらく世界最高の精密レーザー加工機による。仕上げは確かな技術をもつパラオ工廠の妖精さん達。しかも妖精さんアレンジタイプ。

 

 ホロリ、と間宮は笑みを浮かべたまま涙をこぼした。嬉し涙である。

 

「間宮、左手を出して」

 

「はい!」

 

 玄一郎はすぐさま差し出された間宮の左手、その薬指へと指輪をはめてやる。

 

 キラリと輝くイエローダイヤ。それは間宮の指を飾るに相応しく、しっくりと納まった。

 

 ケッコンカッコカリの指輪も併せてはめる。

 

 玄一郎は知らない。

 

 これが間宮が提督と呼ばれる存在とケッコンカッコカリをした初めてのケースである事を。

 

 さらに、この間宮が全ての間宮を統括する最古の間宮かつ、間宮・伊良湖ネットワークの頂点『間宮・オブ・ザ・間宮』と呼ばれた影の実力者である事を。

 

 まぁ、特に悪いことは起こらないが、そんな実力者が草食系だと言うはずも無いが、この後の展開は推して知るべし。

 

 なお、間宮さんのバストサイズは、愛宕さんとタメを張るほどの大きさである。嘘と思うならイラストとかで確かめてみようね?

 

 それはさておき。

 

 間宮さんすんごい、もうすんごい、とだけ言っておこう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 その頃の宇宙、月面では。

 

 ビアン・ゾルダークによる未知の機動兵器のサルベージが行われていた。

 

「うーむ、ほりほり、ほりほり、ほりほり」

 

 ヴァルシオンで月面の地面を彫りつつ、独り言をぶつぶつぶつ。

 

「この世界ではアポロもアームストロング船長も月面には来とらんかったとは。ふーむ、そういや昔、月にはダイヤがゴロゴロしとるという説もあったのう。まぁ、探知に引っかからん所を見ると無いようだが。チタンや鉱鉄、ボーキサイトはあるか。……採掘してどっかに横流しして資金稼ぎとか出来んだろかな」

 

 横流しというがそれを人、密売と言う。

 

 かなり深くめり込んでいるので掘る穴もそれなりである。月の表面には鉱物資源が集まって分布しており、実は割と硬い部分がある。なかなかに岩盤は硬く、掘るのも一苦労である。某マインでクラフトなゲームのようには行かない。

 

『……いや、済まない。流石にここまで埋まっては自力で何とも出来ないのだ。感謝する』

 

 実際は埋まっているというよりは岩盤の亀裂の中に突然出現したような形になっており、鉱石を含んだ岩盤は如何にブースターを噴かそうが、機体のパワーで抜け出そうとしようがビクともしなかった。

 

 これが亀裂ではなく地層の中ならば機体はどうなっていたことか。某ロールプレイングゲームの如くリアル壁の中にいる、になって死んでいただろう。

 

 実際、ヴァルシオンのディバインアームでガッツンガッツン岩盤を砕かねばならない箇所も多く、作業は難航したが、なんとか硬い岩盤は除去できた。しかし武装の剣で岩を砕くというのはなんともはや。修復剤をぶっかけたら治るとはいえ、勿体ない気もしなくもない。

 

「いや、まぁ、災難だったな、フー=ルー・ムールーと言ったか?向こうの世界の月はエラいもんだったのだな。いや、平行世界という可能性が高いのか?」

 

「フー=ルーでいいわ。……ここが我々の月では無いのは、理解した。貴方のいた世界と私の世界が同一なのかどうかは私にもわからないけれど、私も自分が死んだ事もわかっているわ。ヴォーダの闇ではなく、この世界にいることも」

 

 そう、機動兵器の正体はラフトクランズ・ファウネア。そして中の人はフー=ルー・ムールーであった。

 

 男を見る目が無い戦闘狂な女騎士で、なんというかこう、あんまし色気を感じないタイプというかなんというか、だがその辺が良い←をい。

 

「お前のように物分かりがいい奴ならこの世界に仇なす事も無いと思うが、この世界では私達のような存在は客人のようなものだ。その辺をわきまえて過去の要らぬ妄執や欲望は捨てるがいい。その上で、まず普通に生きてみる事だ。……時として人は過ちを犯す。私とて、それがわかっておったはずなのだがな」

 

『……貴方のような御人でも、回避は出来なかったと?』

 

「異星人の魔の手から地球を、人類を守る為には手段を選んでいられぬ状況だった。敵の企んでおることがわかっていたからな。そして確かに私の死後、私の世界は異星人に打ち勝ったようだが、けして許される事ではない。それにこちらの世界でも、私は多くの子達を不幸にしてきた。それもいずれ償わねばならん」

 

 ビアンの背負った罪は大きい。しかし彼はその全てを一身に受けて償う道を歩き続けている。だが、それを成す為に独りでは何も出来ないこともよくわかっていた。

 

『私は、何も救わなかったわ。尊敬する騎士の遺児達や同僚の恋人の道をふさいで敵討ちの邪魔をしていた嫌な女よ』

 

「……それでも、その子達を成長させたのではないか?多くの正しき戦士達を目覚めさせ、そして成長させたのではないか?とはいえ教訓として自戒すべきところは多くあるだろう」

 

「そうね。少なくとも私は自分の生に納得はしているわ。死に際の約束は守れそうにないけど」

 

「ふむ?」

 

『……亡くなった偉大な騎士を父に持つ少年に、御父様に貴方が最強の騎士に成長したと伝えてあげる、的なことを言ったけれど、ここは死後の世界ではないようだし』

 

「……こっちにいる限りは果たせそうには無いな、それは。いや、こっちの世界にその騎士が来とるなら叶うかも知れんが。っと。よし、掘れたぞ。これで引き上げれそうだ。どれ、腕を出せ」

 

 フー=ルーはラフトクランズ・ファウネアの右腕をヴァルシオンに差し出した。ヴァルシオンはそれを掴んだ。

 

 その時だった。

 

 きゅいいいいいいいいん!!

 

 二体の機動兵器、そしてビアンとフー=ルー・ムールーに共振現象が起こった。

 

「ぐっ?!これは……霊力の共振かっ?!」

 

「な、なんだこれはっ!!」

 

 以前、玄一郎とカルディアに起こった現象と同様の現象が二人に起こった。

 

 これはしばしば起こる現象であり、比較的に安定した古い霊的な存在と顕現化して間もない存在が接触したときに起こりやすく、おそらくまだ顕現化して間もない新しい存在がその不安定な霊力を安定させようとするのではないか、とビアンは推論を立てている。

 

「落ち着け、これは霊力の共振現象だ。お前自身がこの現象を引き起こしておるのだ。お前は存在として不安定な状態で、それを私の霊力で補おうとしとるのだ」

 

 とはいえ、ビアンとしてもフー=ルーの記憶が流れ込んで来るのはなんとも複雑だった。若い女性の記憶を垣間見るというのはなんとも申し訳無く、こう、洗濯をしているときに、洗濯機の中に自分の娘のリューネの下着が入っており、それが予想外に大人な感じだったのを見たときのような感覚だった。まぁ、パパの物と一緒に洗濯しないでとか言わないような娘だったのはビアンとしてはまだ救われていた(?)のかも知れないが。

 

 霊力の共振が終わり。

 

 フー=ルーは口を開いた。

 

「……グ=ランドンなどただの自己満足なアホだと気づいたわ」

 

 ビアンの記憶を見て、ビアンの人となりと人間としての器がわかったのだろう。しかし仮にも生前あんた惚れとったろうに、グ=ランドンが草葉の影で泣くぞ。

 

「おそらくお前は私の記憶も見たと思うが、そんなもんに価値は無い。過去は過去だ。とりあえずは引っ張り出すぞ」

 

「ワカッタワ『ビアン総帥』」

 

 何か、反応がおかしい。なんというか意識がはっきりしていないような口調である。

 

「しっかりしろ。総帥は止めてくれんか。こちらの世界では普通に研究者しとるのだ」

 

 穴から引き起こして、ようやく、ラフトクランズ・ファウネアは出ることが出来た。

 

「うむ、では行くか。ここから少し行ったところに我々の戦艦がある。酸素と推進剤は大丈夫か?」

 

「大丈夫よ。『ビアン様』」

 

 なんだろう、やたらフー=ルーはビアンに敬称をつけようとするのだが、それは果たしてビアンの過去を見て尊敬に値すると思っての事か、それとも……。

 

「……様もいらん。普通でいいぞ?」

 

「いえ、やはり貴方のような方を呼び捨てにするわけには!!」

 

「いや、今はただの場末の発明家だからな?つか、お前は実際のところ地球の敵だった勢力の幹部であろうが。あちらの世界ならばそれこそ……」

 

「いいえ、人と人は分かり合える。そう、私はそんな事も知らなかった。私、あなたともっと知り合いたいわ。いえ、記憶は全て見た。だから、その……」

 

 熱っぽく語るフー=ルー。あかん、そういやコイツの男の趣味って……。

 

「いや、それは気の迷いというものだからな?とりあえず今やるべき行動をするのだ。旗艦に帰還するのだ」

 

 とにかく、ビアンもコイツやっべぇと思ったのだろう。

 

 フー=ルーの想い人グ=ランドンはやたらと何かオッサン臭い感じの奴だった。普通だったら同僚のアル=ヴァン・ランクス辺りを想い人にするはずである。

 

 つまり、このフー=ルーの男性の好みは、おそらく、ぶっちゃけ、老け専なのだろう。それも人のトップに立つようなそんな感じの。

 

「……いけずな方ね」

 

「私は老人だからな?実年齢換算したらもうとっくに80代だからな?ジジィだからな?」

 

「……私なんてタイムスリープしてた年月数えたらもう数十億歳なのだけれど?」

 

「そういう問題ではない。と、とにかく帰還だ。大丈夫だ。時間が立てば精神も安定してくる。一時の気の迷いで振り回されるな」

 

「……私はそうではないと思うのだけれど、わかったわ。貴方についていきます」

 

「……言い回しがそこはかともなく何か違うような気がするが。行くぞ」

 

 ビアンにおいては非常に珍しいことにかなり焦っていた。そう、ビアンのゴーストが囁いていた。『コイツほったらかしにして帰ろうか?』と。

 

 そのゴーストの囁きに応じず旗艦『マイヤー』まで戻ったのは、まだ人道という言葉がビアンにあったからであろう。

 

 あと、何かしらの情報も得られるかも知れないというのもあったが。

 

 がんばれ、ビアン。負けるなヴァルシオン。この物語に出たら、大抵のマトモなキャラはおかしくなるのだ。

 

 ギャグコメディだからな!!←投げやり。





 なお、この物語の登場人物の性格はかなり改変されており……。

 でも、グ=ランドンを想い人にするフー=ルーってどういう審美眼してんだろなぁ。あんな性格なのに。

 オッサン好きの老け専なのか?とか思うとこうなった。

 やったね、ビアン総帥。嫁が来たよ?(押し掛け)。

 次回、ビアンばかん、は前にネタで出したけど、反応イマイチというか、今の人達ってしらんのか?でまたあおう!(もういい加減)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。