ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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暴走してぶっ飛んだマッチョアンドロイドのABとそれを追って行ったエキドナのアンジュルグが、ビアン達の乗った『マハト』を目撃してしまい……。




暴走マッチョABとエキドナ。そして『マハト』

 一方、その頃。

 

 暴走してぶっ飛んだ重アンドロイドに追いついてなんとかレーザー通信にてテスラドライブユニットの飛行制御プログラムを渡す事に成功したエキドナは、やっとこさ安定飛行出来るようになった重アンドロイドA、Bと、太平洋は日本近海を飛行していた。

 

 パラオから日本近海まで一気に最大速度を超えるマッハのスピードで来てしまっていたのである。

 

 どんだけの出力があるんだよとか思うが、レモンの製作したテスラドライブユニットの性能が高すぎるせいであり、エキドナのアンジュルグ・ノワールがアンジュルグ改になっていなければおそらくは追いつけなかったであろう。

 

 そう、アンジュルグ・ノワールも近代化改修されており、パワーアップされていた。

 

 ほぼ機体形状は変わりないが、性能の底上げがなされており、特に機動性能と飛行能力の向上と武装の追加がなされている。……何故かコードDTDが機体に追加されていたりするが、一体どのような効果があるのかは不明である。不明だができれば使いたくないなーと、エキドナは思っていたりするがそれはさておき。

 

 なお、アンジュルグ改と今後は呼称される事になる。

 

「まさか日本近海まで来てしまうとはな」

 

 エキドナは安堵の息を吐き出した。ここまで来るとパラオへの無線通信は範囲外なのだが、幸いな事にパラオー日本間には光回線による通信網が構築されており、サーバーを介せば連絡は出来る。

 

 エキドナはレモンに状況報告のメールを送りつつ、速やかにパラオへ帰る為の直線ルートを割り出した。

 

「エキドナの姐さん、すんまへん」

 

「いや、ほんま死ぬかと思たわ」

 

 重アンドロイド達はエキドナの両脇に並んで飛んでいる。飛行にまだ慣れていないのか、それとも飛行制御プログラムがまだマッチングしていないのか、少し不安定ではあるが、それでもなんとか制御している。

 

 重アンドロイド兵も改になっていたが、どちらも追加装甲と武装を外付けで装備しており、Aの装備がアサルト、Bの装備がバスター、と差別化が図られている。

 

 Aの装備はリニアアサルトライフルとウエポンシールド、右肩には実弾型ヘビーランチャー、テスラドライブユニットのウィングと両脚部にはHスプリットミサイルポッド、両腰にコールドナイフ二本。コンセプトは重装強襲型、近距離から中距離用である。

 

 対してBの装備はオクスタンライフル改に、シールド、テスラドライブユニットのウィングと脚部にミサイルポッド、両肩にバスターランチャー、腰にコールドナイフ、背面に探知用のレドーム、センサーユニットを背負っている。こちらのコンセプトは重装遠距離攻撃型、中距離から遠距離用、さらに電子戦もこなせる。

 

(こうして外部装甲を展開させて武装を装備するとまともな重戦闘用アンドロイド兵に見えるのだがなぁ)

 

 エキドナはそう思いながらも、その中身のマッチョ剥き出しなハゲな普段のABコンビの姿は少し苦手であった。

 

 確かに話をしてみれば人格も良く、さらに建設会社で働いていた事もあって力仕事や雑用なども厭わず進んでやり、細かい事にも良く気が付き、さらに明るい性格をしている。いい連中である。

 

 だが、筋肉とニカッと笑う笑みが暑苦しい。そしてやたらとボディビル的にポージングするのが暑苦しい。

 

 本来、量産型アンドロイド兵は自我を持たない筈だったのだが、こちらの世界に来たらこんな風になっていた。カルディア曰わく『真島建設の社長のせい』らしい。いったいどんな経験をすればこんなに暑苦しくなるのかとエキドナは少し悩むもこれでも一応は仲間なのだと思い直し、二人に声をかけた。 

 

「とりあえずパラオへ帰還するぞ。ここにいても仕方ない。テスラドライブユニットの調子はどうか?」

 

「へぇ、フライトプログラムはなんとか使えとりますが、やはり専用のプログラムに改変が必要ですわ」

 

「まぁ、まっすぐ飛ぶのには充分ですさかい、飛びながら調整しまっさ」

 

 似非関西弁で二人はそう答えた。

 

 レモンの話によれば、この重戦闘用アンドロイド兵A、Bの基本性能は通常の量産型と比べてスペックは高いらしい。思考演算等もかなり高くカスタマイズされており、自己でプログラム等の調整も可能らしい。

 

 つまり『量産型アンドロイド兵』<『重量産型アンドロイド兵』<『Wシリーズ』と、カルディアやエキドナに次ぐ性能なのだという。自我が生まれたのはその辺が関係しているのではないか?とレモンは推測していたが、それはともかく。

 

「早く帰らんと間宮が閉まってしまう。コンビニ飯だけは嫌だぞ、私は」

 

 エキドナは溜め息を吐きながらそういう。コンビニ飯をバカにするわけではないが、やはり間宮の飯のうまさとは比べものにならない。当たり前だ。電子レンジでチンした飯と出来立てホカホカなうまい飯とどちらが良いか、と言われれば誰でも後者を選ぶだろう。

 

 パラオまでの直線ルートを二人に渡し、とにかく急いで帰還しようと促すと、二人は慌てたようにテスラユニットのウィングを起動させた。

 

「それはあかんで!!おい、B、早よせぇ飯食いっぱぐれるで!!」

 

「わかっとるわ!……って、ちょお待て!上空になんやデカいんがおる!!」

 

「どないしたんや?」

 

 Bは突然、背部のレドームを起動させ背面のアームを動かして電子戦モードを起動させた。レーダーアンテナなどをガシャコンガシャコンと背面から伸ばし、背部の大型光学スコープを展開しつつ、頭にレドームを被る。

 

 その見た目は編み笠を被った仏僧のようである。

 

「エキドナの姐さん、宇宙戦艦や。アルバトロス級、せやけど全長約600メートル?なんやミニチュアみたいになっとる」

 

「アルバトロス級?ふむ、データを見せてくれ。あとアルバトロス級の進路はわかるか?どこに向かっている?」

 

 エキドナのアンジュルグのセンサーやレーダーに反応は無い。アルバトロス級が本当に上空を航行しているとするならば、それはかなりの対電子装備を持ち、それを展開しているということである。

 

 それも高性能のレーダーユニットを背負ったBでなければ察知されないほどの、である。

 

「へい、進路的には北方海域ですわ。方向、降下角共に日本海軍北方基地方面、いや、進路上には日本空軍北方宇宙基地?なんでまた北方にそんなもんが。凍結したら宇宙ロケットも飛ばせんやろに」

 

 データを二人に送りながらBはそう言ったが、北方宇宙基地は元々は深海戦争時に深海棲艦にロシアが攻め込まれ、放棄と共に日本に返還した四島に作られたそれぞれの北方の第一から第四基地に物資を空輸するための空軍の航空輸送基地であったのだが、北方の解放と北方海域のボスであった北方棲姫との和解により、空輸基地の一つが何故か宇宙基地になってしまった、という訳の分からない経緯がある。

 

「……目標は北方宇宙基地やろか。というか日本空軍なぁ。海軍のデータはゲシュペンストはんから貰とるけど、空軍のはあんまし無かったわなぁ。わけわからん」

 

「……B、今のデータは記録してあるな?パラオ泊地に帰投して、提督に報告せねばならん」

 

 エキドナは非常に厄介だと思った。アルバトロス級戦艦の事をこの場で報告する事は可能である。だが、ここで報告するにはまず、日本からのサーバーを介さなければならない。つまりそのサーバーは日本海軍大本営のサーバーである。

 

 大本営のサーバーは常に監視されている。軍用回線なのである、それは当たり前と言えるが、状況報告ならまだしもこのデータを通信するのは何故かエキドナには躊躇われた。

 

 空軍が本来ロケット開発や打ち上げに向かない北方に宇宙基地を作ったという謎。それがアルバトロス級を運用するためであったならば、たしかに合点は行く。宇宙戦艦は宇宙ロケットとは違い、吹雪が吹き荒れようが嵐に巻き込まれようが航行する事が出来る。宇宙の重力嵐にも耐えるように設計されているのだ。そして単独で大気圏離脱を易々とする推力。北方に発進基地があっても充分以上に宇宙へと出られるのだ。

 

 だが、そのアルバトロス級は海軍ではなく、空軍の基地へと帰還しようとしている。

 

 この情報を海軍大本営が知ったならば、おそらくは上へ下への大騒ぎどころの騒ぎではすまないだろう。

 

 いや、海軍も空軍がアルバトロス級を運用していることを知っている可能性もあり、それは双方で機密となっているとも考えられる。

 

 もしくは日本空軍がノイエDCと繋がっている可能性もある。

 

 何にせよ、とにかくパラオに帰り提督に判断を仰ぐ必要がある。エキドナには判断がつきそうにない。

 

「早く帰るぞ。長居は無用だ!」

 

 エキドナは二人を促すと、隊列を組んでその場を飛び去った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……見られちゃいましたね、マイヤー司令」

 

「そのようだな、マハト君」

 

 ここはアルバトロス級戦艦『マハト』のブリッジである。マイヤーは「あー」と妙な声を上げつつ座席にもたれて天井を見つつ、どうするかなぁ、と悩んだ。

 

 ここは日本近海の上空な事もあって厳重にステルスをかけ、元の世界の通常のセンサーやレーダーであっても見つからないぐらいに隠れて航行していたのだが、だが、相手は予想以上に高性能かつ高精度なレーダーや光学スコープを持っていたようだ。

 

「データベースには無い機体ですが、機器の反応等から連邦軍側の技術だと思われます。また、目視で女性型の特機も見られ、こちらは海軍の記録がありました。パラオ泊地に滞在中の『ゲスト』の乗機のようです。名称を『アンジュルグ・ノワール』とのことです」

 

 マハトは艦の光学カメラで撮影した画像をモニターに出して説明したが、やはりあちらもジャミングしていたのか、機体の映像はともかく、装備などの詳細なデータまでは解析出来なかった。

 

「……パラオ泊地、か。ううむ、あそこは確かエアロゲイターに鹵獲されたゲシュペンスト・タイプSが提督をやっておる所だったな。厄介な事になったものだ」

 

 マイヤーはヒゲを捻りながら唸った。マイヤーとビアンは常にエアロゲイターや異星、異世界の敵性存在に対して監視や調査を行っている。無論、パラオのゲシュペンスト・タイプSに対しても例外ではなく、パイロットである『黒田玄一郎』と名乗っている『カーウァイ・ラウ』に対しても目を光らせその動向を常に探っていたのである。

 

「マイヤー。パラオには現在、数機の特機と機体、あとシロガネが滞在していると聞く。それに艦娘達もレジェンド級の者達揃いだともな。一度、接触を図ってもいいのではないか?」

 

 マイヤーにビアンは思案しながらそう言った。

 

「しかし、エアロゲイターの陣営にいた者だぞ?信用するわけには……」

 

「だが、これまで情報を集め、その動きを探って来たがおかしな動きも何も出て来ん。提督になる前の行動もまるで艦娘達を守るヒーローのような行動ばかりだ。奴はエアロゲイターの精神支配から解かれているのかも知れん。ならば、今のうちに接触して二度と操られぬように処置する事も出来よう」

 

 ビアンはそう言いつつ、懐から小型のタブレット端末を取り出してそれを操作すると、ふっ、と笑みを浮かべた。何かを懐かしむように、タブレットに表示されたデータをなぞる。

 

 そこには艦娘の名前と出現場所、年数が記載されていた。そして現在の所属もである。

 

「……ふむ、パラオにはあの子達が居るのか。ならば取り次いでもらうことも出来るな」

 

「……何を考えているのだ?」

 

「……パラオには、私がかつてドロップし、山本(元海軍元帥)に託した娘達のうちの数人がいる。我が娘同然の子達がな」

 

「ふむ、そうなのか?」

 

 マイヤーは少し嫌な予感がした。ビアン・ゾルダークには実の娘がおり、その名をリューネ・ゾルダークというのだが、ビアン・ゾルダークはその娘を溺愛し、娘の為ならば大抵の事はやってきたような所がある。

 

 そんなビアン・ゾルダークが『娘同然』と言うのである。

 

「……君が発見した艦娘は数人いるとは聞いていたが、ダイテツの所の赤城達だけでは無かったのか?」

 

「……何人かは亡くなってしまったり引退したり嫁いでいったがな。パラオに今居るのは、扶桑、山城、む?金剛と足柄もおるのか」

 

 そう、ビアンが娘同然と言った艦娘の中で、さてパラオ提督の嫁艦はさて、何人いるだろうか?

 

 初期にドロップで出現した艦娘の中には、このビアンがドロップした者は多い。

 

 例えば、山本元元帥が養女に迎え、そして松平元帥に嫁入りさせた「叢雲」や、今は亡き他の初期艦「吹雪」「漣」「電」「五月雨」もビアンがドロップした艦娘であるし、艦娘擁護派の父と呼ばれた菅原道夫元大将の妻となった高雄も、パラオに在籍している世界で初めて顕現した戦艦である「扶桑」その妹の「山城」、「金剛」「間宮」、最初の礼号組の「足柄」、そしてビアンはもう解体され処刑されたと思っているが、かつて暗殺部隊にいた『隻眼斬鬼の天龍』と『鮮血の薙刀姫、龍田』も彼がドロップした艦娘である。また、鳳翔、龍驤、隼鷹もそうであり、もう艦娘史を語るにビアンの存在は欠くことが出来ないぐらいなのである。

 

 だが、ビアンの功績はこの世界の表には出ることは無い。かつての海軍暗黒時代にビアンの名前は隠され、それらの功績は海軍の功績とされていた事もあるが、そもそもビアンはこちらの世界において表舞台に出る気は無く、名前が出ないならその方が好都合とさえ考えていた。

 

「あの、ビアン様、パラオの扶桑と山城と言いますと、確か……、パラオ提督とケッコンカッコカリをしたとワイドショーでやってましたね」

 

「うむ。知っておる。故にだ。そう、故になのだよ。私がカーウァイ・ラウに会わねばならぬのはな。娘の婿に挨拶ぐらいはしておきたいと思うのは、男親ならば当たり前だろう。最も、娘を不幸にするような男ならば、塵も残さず機体も残さず殲滅するがね」

 

 ゴゴゴゴゴゴ……!!

 

 ビアンの背中から異様なオーラが出ていた。

 

 やっぱり、とマイヤーは思い、ため息を吐きつつ。

 

「相手は海軍准将だぞ。本国の大本営にいるのではないが、今の我々のような技術士官とは違う。それに我々はまだ目立つ訳にはいかんのだ」

 

「……わかっておる。それにバレないようにこっそりとやるさ。策はもう出来ておる」

 

「……その策というのが非常に厄介な臭いを放っとる。穏便な方向で頼むぞ。君の策は大抵、テロ的なものが多かっただろう。平和的に頼むぞ」

 

「なに、極々平和的だ。まぁ、聞くがいいマイヤー。これならば誰も文句は言わぬだろう」

 

 ビアンはマイヤーにひそひそと、その策を伝えるのであった。

 

 




ビアン総帥、動く!

扶桑姉妹をドロップしたのはビアン総帥だった、という事で、子煩悩な親父が婿に会いに行くという展開に。

多分、天龍とかめっさ可愛がってただろ、この親父はとか考えると話がかわっていってしまいましたが、大筋は変わりません。多分。

次回、俺の義父はビアン?!(嘘)でまたあおう!
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