十重二十重に囲まれたフィリピン近海。ゲシュペンストと玄一郎は果たして?
無人島に家が出来ました。
大淀さん、ひぎぃぃぃっ。
あれから、二日経って。
ゲシュペンストはなんと40名超に増えた艦娘達の為に、ログハウスを建設していた。
わりと大きな無人島であり、自生している木も人が入らない分大きく、木材には困らない。
ゲシュペンストはズフィルードクリスタルで作ったシシオウブレードで木材をぶったぎり、ゲシュペンストのパワーで運び、柱を地面にドスン!とぶっさし、せっせかせっせかと建築していた。
その造りを見るになかなかに頑丈そうな高床式ログハウスである。
製材にどこかで見たようなトマホークやらドリルやらも使って組み上げていく様など、もはや建築ロボットなのでは無かろうかと思うほどにその作業は早い。
……しかし何故彼らがそんなものを建設せねばならなくなったのかと言えば。
彼の装甲にあちこちついている、未だ修復が完了されていない損傷を見れば一目瞭然であろう。
「……正直、舐めてた」
この一言が雄弁にこの事態に陥った様を語っていると言える。
高雄達を助けてすぐにこの無人島の近海の各所で艦娘と深海棲艦の戦闘の反応があり、彼はすぐさま艦娘の救助に向かったのだが、正直な所、深海棲艦の数が多過ぎたのである。
これが五年前の小島基地の事件の時のマヨイのように統率のとれていない軍勢ならばここまでやられはしなかっただろうが統率され各艦の連携も練度も高い深海棲艦の群れが相手ではゲシュペンストであってもフルボッコだったのである。
無論、ゲシュペンストの装甲はこの世界では大和クラスを遥かに越える硬さを誇り、さらにグラビティウォールも完備しているのでほとんどの攻撃は通らなかったが、しかし、中には中ボスに当たるような強さの者もおり、それらの攻撃によってゲシュペンストの装甲の表面は傷だらけにされたのだった。
正直、そんな中をかいくぐって艦娘達をフィリピンの基地へ無事に送り届けるのは正直不可能というか無理っ!!と判断せざるを得なかったのである。
フルボッコにされながらも、襲撃されていた艦娘達全員をこの無人島に連れて来られたのが正直奇跡なぐらいだったのだ。
ゆえに、玄一郎は助けた艦娘達に、
「悪いのだがフィリピンの日本海軍の基地に連れて行くのは無理である」
という旨を彼女達に懇々と諭し、事態が解決するまでこの無人島に留まってもらう事にしたのであった。
それが何故にログハウスの建設につながるのだ?とまだわからない方にさらに説明すれば。
昨日のうちに彼女達を寝かせておくために軍用のテントを建てていたが、突然のスコールが降ってきて、軍用テントではとてもじゃないが過ごせないと言うことがわかったのと、人数が増えすぎてテントの数も足りなくなった為である。
フィリピン付近は温暖な熱帯に位置する南国であり、スコールも季節にもよるが降ってくる。
流石にそんなところで療養させるわけにも行かず、さらにどれほど長い期間滞在してもらうかわからないとなれば、拠点の設営は必要である。
それに、たとえサバイバル生活に突入するとしても、艦娘とはいえ女の子達に滞在してもらうにはやはりそれなりに快適な住居を作ってあげねばなるまい、と玄一郎はゲシュペンストに主張し、高床式ログハウスの建設に踏み切ったのであった。
「あの、私達は艦娘、元は海軍の軍艦ですから、そんな大げさなものは……」
と、高雄は言ったが、玄一郎にとっては女の子にしか見えない。
そもそも、スコールで濡れて透けたワイシャツから見えるおぱーいを包む白いレースのブラジャーを見るに(濡れた上着は木に引っ掛けて乾かし中であった)、ブラジャーを着用する船など見たことは無い!!スコールグッジョブ!!濡れ透けワイシャツサイコーっ!!巨乳万歳!!
と、もはや最高のテンションで玄一郎はゲシュペンスト設計の元、ログハウスを超スピードで建設していったのである。
「ふっ……完成っっ!!」
どぉぉぉぉぉん!!
完成したログハウスは、どう見てもただのログハウスでは無かった。
いや、確かに丸太で作ってはいるのだが、手造りログハウスの域では無い。
言ってしまえば、ログハウス風の邸宅のようにきっちりと作られており、屋根にはきっちりと岩を薄く斬って作った瓦が敷かれている。
高床式なのはスコール対策であり、その分入り口には階段が作られているが、その段も一つの大岩をレーザーで切り抜いて作った精密かつ一段一段が均一に作られている。
さらには、入り口まで続く通路はやはり薄く斬った岩のタイルが敷き詰められており、もはやこんなん、サバイバル生活の拠点やない、アウトドア風高級邸宅やがなーーーっ!!と、言いたくなるほどの出来であった。
高雄の濡れ透けワイシャツから見えるブラジャーだけで、ここまでの物を作ってしまう主人公って、どんなけだよ……。
なお、フィリピン周辺海域が解放された後、このログハウスは台湾~フィリピンでの日本海軍の中継基地として転用されることとなるのだが、まぁ、それは別の話である。
食糧採集に出た高雄達は、帰ってきて思い切り驚いたが、まぁ、それもしかたあるまい。
なにしろ朝に出て行って、昼に帰って来たらもう家というか大邸宅的なものが、ずどぉぉぉん!!と出来ていたのだから。
高雄の想像では、こじんまりとした丸太小屋ぐらいだろうと高をくくっていたのだが、ここまでの物を用意されると凄いとか言う前に退く。
「あ、おかえりなさい。ログハウス完成したよ」
手を振るゲシュペンスト(=玄一郎)に、引きつった笑みで対応するしか、彼女達には出来なかった。
(そんなんログハウスじゃねぇっ?!ログ大邸宅よっ!!)
と、彼女達はみんな、心で叫んだとさ。
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大淀は、見知らぬ木造の梁が剥き出しになっている天井を見て、ここはどこの基地だろうか?と思い、起きようとして全身に走る痛みに
「ひぎぃぃぃっ?!」
と、何か18禁ないけない同人誌で女性がアレな責められ方をした時のような叫び声を上げた。
まぁ、実際、彼女がかつていた環境はそういう特殊な事もありえた場所であり、そういう『ひぎぃ』感たっぷりな事も過去にその身に受けたり経験したりもしたわけなのだが、この『ひぎぃ』は戦闘で敵の艦砲で吹き飛ばされた際に受けたムチウチによる痛みなので、あんまりそういう想像、イクナイです。
「ぐがっ、がっ、せ、背中が、首が……っ」
痛みに涙目になっている大淀の横には、彼女の護衛役として随伴していた艦娘が座っていた。
「あ、大淀さん気がついたクマー」
軽巡球磨型一番艦の球磨、である。
「ああ、良かった!大淀さん、大丈夫か?」
同じく、護衛役の球磨型八番艦の木曾が大淀を覗き込むようにして声をかけてきた。
「ぐっ、あなた達……確か、砲弾の直撃を受けたはず……。というか、か、身体が……、めちゃくちゃ痛いです……」
大淀は、海上であった事を思い出した。
日本の佐世保から立った彼女達は台湾からフィリピンへ向かう途中で、深海棲艦の待ち伏せに会って戦闘に入った。
待ち伏せしていたのは、深海棲艦の中でも雑魚である、駆逐イ級やそれほど強くない敵ばかりだったので、その場は易々と勝利し、またフィリピンへの航路を急ごうと進んだ先で、とてつもない遠距離から飛来した砲撃が降って来たのである。
それは戦艦から発射された三式弾、それも深海棲艦側のものではなく、艦娘、つまり日本海軍の戦艦が撃ったものであった。
球磨と木曾達は、それをいち早く察知し、大淀を庇って盾になってくれたのだが、三式弾の爆発で、大淀は吹き飛ばされ、そして意識を失ったのである。
「ああ、大破沈没しかけたさ。だけど助かったのさ。ウチの艦隊のみんなもちゃんと生きてるぜ?大井ねえさんと北上ねえさん達は食糧とか探しに出てるけどさ?」
「ううっ、あなた達はもう入渠済ませたんですね……というか私も修復しないと、痛みでまた気絶しそう、うぐっ……」
「あー、見た目負傷してるように見えなかったから修復剤かけてくれなかったクマねー。ちょっと修復剤もらってくるから、そのまま待ってるクマー」
球磨はクマークマーと言って、部屋というには広すぎる、調度品も何もないこの場所の、ドアの無い出口まで歩いて出ていった。
「修復剤をもらって来る?いえ、ちょっと待って下さい。高速修復剤は高価な薬剤ですよ?!もらって来るって?!」
「あー、俺達、高速修復剤で回復してもらえたんだよ。海で沈みかけてる時にさ」
「はぁ?そんな気前の良い方がいるわけありません!あれは縞傘製薬が高値をふっかけて売りさばいているものですよ?!しかも、艦娘擁護派には要請があっても売りしぶるような事までしている……」
「クマー、修復剤渡してくれるだけで良かったクマー?」
「いや、彼女に謝っておきたいんだ。単に気絶しているだけだと思って、修復剤を使って無かったから」
ガション、ガション、ガション、と球磨の後ろから何か大きな音が聞こえた。
「大淀さんお待たせクマー。修復剤が来たクマー!」
ドアの無い、大きな出入り口から、球磨が帰ってきた。そして。
ガション、ガション、と大きなロボットが重量感たっぷりな足音で、出入り口から、ずおおおおん!!と入って来た。
大淀は、そのロボットの姿を資料で見たことがあった。
それは、五年前の小島基地壊滅事件の際に土方歳子中佐によって撮影され、映像資料として大本営の資料室に提出された資料の中にあった。
謎のロボット、日本海軍認定未確認敵性物体、通称『アンノウン第一号』。
海軍大本営の上層部に置いては、このアンノウン第一号が出現したならば破滅をもたらすと畏れられている。
小 島基地を始めとする、五つの海軍基地を壊滅させた、実在する脅威。
それが今、自分のすぐ近くまで迫って来ている?!
大淀は恐怖のあまり、ふへら、と意味不明な呻きともなんともとれないような間抜けな声を出して、ぐるん、と目を白目に回して、再び気絶した。
ぱたん。
「あー、やっぱりダメージ大きかったクマねー?」
呑気に球磨がそう言ったが、妹の木曾はゲシュペンストを横目で見て、
「あんたは大本営では畏れられてっからなぁ。内勤の大淀さんには外で活動してる艦娘達が話してるあんたの噂もあんまし伝わってねーだろうしな」
「白目むいて気絶されるほど、俺は彼女に怖がられてるのか?」
「一目瞭然クマねー。ゲシュは良いロボクマにねぇ?」
木曾は、しゃーねぇなぁ、と言うとゲシュペンストからバケツをひったくるようにすると、その中身を気絶している大淀に思いっきりぶっかけた。
ゲシュペンストさんがいれば、なんでもできる。
家が建つ家が建つ。鎮守府なんかじゃないけれど。
ようやく大淀さん登場。
次回、淫乱メガネは夜に鳴く(嘘)でまたあおう!