ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 それはまた別の機会が次でもいいじゃない、と言うわけでゲシュペンストと扶桑の出会い話。

 黒田くん、扶桑さんのおっぱいを見る、の巻(ヒデェ)。


【昔話】黒い亡霊と薄倖の乙女①

 

 青年は、ある日けたたましく異常な音声で鳴るスマートフォンの音を聞いた。

 

 それが、人間黒田玄一郎の人間としての身体での最後の記憶だった。

 

 アラームの音でもなく、着信音でもない不気味な音。その音がまるで彼の終わりを告げる音のようだった。

 

 光を見たような気がする。

 

 光は強く青白く。何もかも、それに包まれて、そして彼は居なくなった。自分の世界、自分の何もかもを失った。

 

 それが、彼の最後の記憶。哀れな黒い亡霊のわずかな終わりの記憶。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 目覚めれば、暗くそして重くのしかかる何かの中だった。彼、黒田玄一郎は意識を取り戻し、起きあがろうとする。

 

 意識は不思議なほどに鮮明だった。

 

 夜を思わせる暗闇の中で、まだ夜中だろうかと思い、頭を持ち上げて周りを見回す。

 

 かすかに、ドーン、ドーンと打ち上げ花火を打ち上げるような音が聞こえてくる。上を見上げても何も見えず、何の音なのか、気になった。

 

 ふわり、彼の身体は浮かび上がり、少し驚く。

 

 ゴポゴポゴポ、と自分の周囲で音がして何だろうと目をこらせば突然周囲が明るく鮮明に見えた。

 

 その光景は彼を驚愕させた。

 

 海。海の底。

 

 そこには船の残骸が至る所にあり、木の船、鉄の船、様々な壊れた船が沈み、そこを幾多の不気味な姿の深海魚が泳ぎ、訳の分からない、見たことのない生き物が蠢いていた。

 

 なんだここは?!

 

 彼は本能的に海の上を目指した。これは夢かそれとも現かと思いつつも焦りが彼の身体を動かした。

 

 ずおぉぉぉぉっ、と何か背中で唸る音がする。ゴポゴポゴポと海の中で気体が発生する。

 

 ごぉぉぉぉっ!!と彼の身体の至る所で何かが噴射し、その身体を海の上へと押し上げる。

 

 プラズマジェット、と頭の中で何かが言ったような気がする。何故かわかる。

 

 海上まで数十秒。センサーに未知の反応あり。注意、海上で二つの不明な集団が何らかの戦闘行為を行っている模様。

 

 頭の中にそんな情報が駆け廻る。

 

 花火の音が海面に近づくと共に大きく聞こえ、そして海の上に出たならば、それは轟音となって彼の耳をつんざいた。

 

 それが砲撃の音であると、頭の中の何かは告げる。分析し、知りもしない知識が脳内に走り、知らないはずなのに認識する。

 

 俺は頭がおかしくなったのか?と思うも、どこからか飛んできた砲弾が彼の背中に向かって飛んできた。

 

 回避、と何かが告げて紙一重でそれを避けた。

 

 それが飛んできた方向を見据えて、彼は衝撃を受けた。

 

 それを彼に向けて撃ってきた者は、怪物としか思えない姿をしており、クラゲと人の死体、そしてワカメとか昆布とかとグロテスクな何かを掛け合わせたような、一言で言えば悪夢の産物のように思えるものだったからだ。

 

 ギュケ……ギュ、ギュギュ……。

 

 そいつは何かを言っているのか、それともその発している音には意味はないのか、それすらも分からないような不気味なうなり声を発した。

 

 目のような部分に砲を生やしたそれは、デカい歯のような物が生えている、口をゆがめた。

 

 (笑っていやがるのか?コイツはっ?!)

 

 彼はその不気味な何かに対して怒りを覚えた。普通ならばこのような化け物に遭遇したならば、恐怖を感じるはずなのに、彼はそれをまったく恐ろしいとは思わなかった。

 

 ギシュン、と握り拳が握られ、怒りの意志のまま彼はそれを睨んだ。

 

 ごぉぉぉぉっ!!と背中から自分の身体を押す力を感じ、気がつけばさっきは遠くにいた怪物が自分の目の前に現れた。

 

 いや、怪物は移動してはいない。自分がコイツの目の前に来たのだと彼は気づく間もなく握った拳をその嫌らしい顔面とおぼしき所に叩き込んだ。

 

 ガション!!と金属が金属を叩くような音を立てて、拳は怪物を粉砕した。

 

 吹き飛ぶでもなくめり込むでもなく、怪物は一撃で飛び散り、粉砕し、そして四散して遅れて爆発した。

 

 その直後、すぐにまた頭の中でけたたましい警告音がしたかと思うと、彼めがけてまた何かが飛んでくる。

 

 彼はうんざりしながら、それを今度は余裕で避ける。

 

 後ろからだ。今度は出っ歯のクジラみたいな奴。その出っ歯には非常に嫌悪感を覚えた。

 

 ついつい、腹立ちのままに彼は叫んだ。

 

「この出っ歯の間抜け野郎ぉぉっっ!!」

 

 一匹ぶん殴り、倒した後で見れば周り中そんな化け物がやたらと群れており、彼は腹立ちと苛立ちのままそいつ等を睨んだ。

 

 一匹一匹殴るのはめんどくせぇ、と思った瞬間、背中から何かが発射されたかと思うとそれが分裂してクジラの化け物に降り注いでまとめて爆発させて始末した。

 

 頭にスプリットミサイルと表示され、それが拡散ミサイルのような物だと理解する。が、そんな事はどうでもいい。

 

 頭の中でまだ何かがいる、と直感以上の正確さでなにかが言う。まだデカいヤツがいる。

 

 クジラの化け物は単なるザコだと彼は認識した。何故か理解できた。

 

 大きな反応があったところを目視すると、デカい盾のようなずらりと砲が生えたものを両手に一つずつ持った、人型だが気持ち悪いオーラのようなものを纏った奴が見えた。

 

 それの近くに、何か人のような、背中から大砲を背負い、それを化け物に構えている巫女服のような着物のようなものを纏った何かが見えた。

 

 血を流して、立っているのもやっとといった感じの、女性だった。

 

 かすかに音声が聞こえた。

 

「やっぱり私……沈むのね。○○は……無事だと良いけれど」

 

 誰かの名前までは聞こえなかったが、それは確かに死を覚悟した言葉だった。

 

 彼はその言葉に腹を立てた。何故だかわからないが、非常に不愉快だったのだ。物悲しいその声に。綺麗な声だからこそ余計に。

 

 あの女性のいるところまで距離はかなり遠い。だが、彼には関係無かった。届く、と頭は理解し、そして身体はすでにそこへと到達し。

 

 突き上げのアッパー気味の拳が、その怪物の腹に突き刺さる。だが、コイツは他の化け物とは違ってかなりタフらしい。故に彼はコイツがぶっ壊れるまで殴ると決めた。とにかく、殴らないと気が済まなかった。

 

「うぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!」

 

 ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!バキッ!!グシャッ!!

 

 力任せに、何度も、何度も、フック、ボディ、アッパー、振り下ろし、突き上げ、正拳。

 

 連打、連打、連打の嵐を思う存分に叩き込み、

 

「どりゃあああああああっ!!」

 

 叫び声と共に渾身のストレートをぶち込んだ。

 

 ストレートを受けたその身体が、ギギギギギギ、と金属がひしゃげる嫌な音を立てたかと思うと、タフだったその化け物は爆発四散した。

 

 ガシューッ、と背中から何か熱い気体が吹き出し、そして頭の中の何かが、戦闘終了、と短く言った。

 

 それと同時に、バシャンと水面に何かが倒れる音が彼のすぐ近くでし、目を向けると先ほどの大砲をいくつも背中に背負った女性が沈んでいくところだった。

 

「いかん!」

 

 彼はその女性の手を掴むと海から引き上げ、そして見た。

 

 さっきまで苛立ちや腹立たしさで血が上っていた頭が急速に冷えて行くのを感じた。

 

 死んでしまったのか、と思って彼女を見たが、頭の声が様々にそうではないと伝えてきた。

 

 (呼吸確認、心音確認、生存)

 

 見れば胸が緩やかに上下に動いている。息をしている証拠だ。どうやら気絶したようだ。そう、丸くて大きくて形のいい、ちょっと薄い桜色の……。

 

「桜色の、ぽ、ぽ、ぽっ、ぽっち……。お、おおおお、おっぱっ!?」

 

 冷静になったのが、今度は別の意味で頭に血が上った。

 

 いかん、見てはいかん!!

 

 彼はなるべく彼女の破れてボロボロになった服からこぼれてしまっている、こう、男のアレなナニかを奮い立たせるであろう、ロマン的なそれを見ないように抱えると、頭の中の声に従ってとりあえず安全な場所であると思われるところまで走った。

 

 そう、彼は全く気づいていなかったが、海の上を、その足で。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 潮騒が聞こえた。

 

 私、海に帰ったのね、と扶桑は思った。

 

 妹の山城は無事かしら、無事だと良いけれど……と思いながらも、ふとあることに気づく。

 

 額に置かれた冷やした濡れ手ぬぐいの感触。はっとして彼女は起きあがろうとしたが、その瞬間、身体のあちこちに激痛が走って、再び身体を床に戻した。

 

 痛みがあるという事は生きているという事だ。

 

 彼女は寝ながら周りを見回した。

 

 岩肌の露出した薄暗い洞窟のようなところに自分が寝かされているのを確認した彼女は、自分の身に何があったのかを思い出そうとして暗く重い事実に行き当たる。

 

 彼女は敵の数を減らす為に、主力艦隊を無傷で海域を通す為に出撃させられた捨て艦の部隊を率いていた旗艦であった。

 

『扶桑型は欠陥戦艦だから。海軍で初めて発見された戦艦と言っても、そんな欠陥戦艦なんていらないのよ。せめてあなたはちょっとでも役に立ってから沈みなさい。安心しなさい、あなたの妹の欠陥戦艦は次の時に捨て艦させて同じように沈めてやるから!!』

 

 彼女の所属する女提督の声が耳から離れない。

 

 せめて一緒に出撃させられた、小さな駆逐艦達は守ってあげようとしたが、みんな轟沈していった。本当だったらまだ最初の訓練をしている頃の幼い子達ばかりだったのに。

 

 ホロリと扶桑の目から涙がこぼれた。それはポト、ポト、ポト、と彼女の頬を伝い、床へと落ちて行った。

 

「ううぅっ、ううっ、うっ、私はっ、あんな小さな子達すら守れなかった……。死なせてしまった。私はまた何も守れない、この身体を得ても、何もっ、うううっ」

 

 扶桑は泣いた。己の力の無さに。情けなさに。何者も守れない弱い自分に。死んでいった駆逐艦達に。

 

 ひとしきり泣いた後に、誰もいないはずの所から声がした。

 

「……すまん」

 

 声は、不思議な響きを持っていた。まるでスピーカーから聞こえるような微かなエコーのかかった、しかし気遣いが伝わるような声だった。

 

 辛うじて動く頭を声の主に向けると、そこには鉄の塊、いや鋼の人型が岩の一つに座っていた。

 

 大きい。艦装を纏った自分よりも大きい。黒く漆黒の鋼の身体を持つ巨人だ。

 

 それが身じろぎもせずに、動かずそこにいた。

 

 そういえば気を失う前に、黒い何かが見えた気がする。あれは……。扶桑は記憶を探り、確かにあれは、この巨人だったと思い出す。

 

「俺が、もうちょっと……いや、何を言っても、どうにもならない。助けられたのは君だけだった」

 

 静かに、その巨人は首を扶桑へと向けた。

 

「ワケがわからない。どうなっているのか、わからない」

 

 巨人はそうつぶやくと、俯いた。

 

 はぁーーーっ、と深い溜め息をついてまた扶桑の方へ顔と思わしき部分を向ける。

 

「わかるかい?俺、人間だったんだぜ?」

 

 扶桑は一瞬、彼が何を言っているのか理解出来なかった。人型ではあるが、どう見ても彼はそうは見えなかった。

 

 テレビか何かで見たロボットとか、それとも人間というのならば、その機械はパワードスーツという奴で、この中に入っているのか、と思ったが、彼の言うことはそういうことでは無いようだった。

 

「いや、君には関係無い事だよな。君だって大変な目にあったんだ。……すまない」

 

「……あなたは、誰なのですか?私は扶桑型戦艦、一番艦の扶桑と申します」

 

「扶桑……?戦艦?よくわからないが、扶桑さん、と呼べば良いのか?俺は黒田玄一郎だ。いや、本当に自分が黒田玄一郎なのか、なんか自信が無くなってきたけど」

 

 そう言って玄一郎と名乗った巨人は頭を掻く仕草をして、ギュリリッと嫌な音を立てた。

 

「くうっ?!」

 

「うわっ、ああ、すまない。変な音立てた。……どうも、本当にこの身体は機械のようだ。なんでこうなったんだろうなぁ」

 

「いえ、こちらこそすみません。というか、本当に……ロボットとかいう物なのですか?あなたは」

 

「人間だったんだ。気がついたらこんなロボットの身体になってた。しかも、気づいたところは海の底の、船とかがたくさん沈んでたところで。海の上に出たら、変な怪物みたいなのに撃たれて、腹が立って殴ってたら、爆発した。あれはなんなんだ?」

 

「……深海棲艦、という人類の敵です。かつての戦争で戦った軍艦達の怨念や憎しみ、苦しみといったものが集まり実体化したもの。しかし、ロボットがあれを撃破できるわけが……」

 

「いや、殴ったら爆発したんだ。最後の、君が戦ってたデカいのは何回かたこ殴りしなきゃ無理だったけど」

 

 あれはしぶとかった、タフだった、と玄一郎は腕を組んで唸った。

 

 扶桑は絶句した。

 

 深海棲艦は、人間の兵器では傷一つつけることも不可能であり、辛うじて昔の刀や念のこもった打撃で傷つける事が出来る。ただし、傷はつくが致命傷には程遠く、一回攻撃したならばその人間は次には肉塊となって死んでいるだろう。

 

 ましてや魂の無い機械に。

 

 そう思い、目の前のロボット、機械の身体になってしまったという黒田玄一郎と名乗るそれを見た。

 

 魂の色が見えた。

 

 艦娘は軍艦の、それも護国の為に戦った雄々しくも尊い魂が人の思いに答えて具現化した存在である。故に魂のこもったものがわかる。

 

 確かにこのロボットの身体には強い魂が宿り、そして艦娘以上に強い霊力と念の力が満ち溢れていた。

 

 それは、艦娘と同じく人を守り、人の為に戦った機械に幾多の魂が集まり、そして生まれた何かなのだと扶桑は感じたのである。

 

(おそらく、『黒田玄一郎』と名乗る魂がその核なのでしょう。ですがそれならば、彼の身体はもう……)

 

 扶桑は彼がもう死んでいるのだと悟った。死んだ彼を取り込んだ英霊か救国を求める魂達がこの機械の身体に入らせて、彼の第二の身体として与えたのだと。

 

 ゆえに、言えなかった。あなたはもう死んでいるのだと。

 

 では、私はなんだろうか、と扶桑は自問した。

 

 軍艦の魂と乗組員達、そして護国の願いを押し込めたこの女の身体は。私も、死んでいるのか?と。

 

 嫌な考えを頭をふって追い払う。それでも自分は皇国の戦艦扶桑なのだ、と。

 

「いえ、あなたなら確かに出来るでしょう。……まだ命を救って下さったお礼も言ってませんでした。救っていただき、ありがとうございます。本当に。なんと言ってよいかわかりません」

 

 そう、今の自分の身体は生きている。救われた礼を言わねば。

 

「いや、その。本当、大したこと、してないし出来てないよ」

 

「いえ、命を助けるというのは、大したことです。私は命に対して何もする事が出来なかった。誰も守れなかった」

 

「……俺には、それがまだわからんけど君が生きててほっとしたよ」

 

「……ところで、ここはどこなのですか?洞窟、というのはわかりますが」

 

「ワタヌシ島、と看板が出てた。無人になった島らしい。人の生体反応はもう無かった。この洞窟はどうもこの島の住人の避難場所だったみたいだ。医療品や食料は手付かずでまだ使えたから、君に使った。肋骨は幾つか折れてたから、当分は安静にしないと」

 

 その島の名前は扶桑も覚えていた。同じ鎮守府に所属している潜水艦達が資材をへそくっていると言っていた島だ。

 

 扶桑の所属している鎮守府の女提督は艦娘達の美しさに嫉妬しており、さらにヒステリーをよくおこす。ヒステリーを起こした日には大抵無補給で出撃させたり、食事も与えないのだ。

 

 特に潜水艦達は資材を集めさせる為にこき使うだけこき使って、何日も何日も無補給で使い続けるような提督なのだ。

 

 潜水艦達は資材や食料、そしていざという時の高速修復剤を無人島となったここに隠して置いていた。

 

 その潜水艦達もここ数日の深海棲艦の大規模侵攻で何人か帰ってきてはいない。

 

 ここが彼女達の秘密の集積地なら、ここに潜んではいないだろうか、と思ったが、周りの雰囲気から、何日も彼女達はここを訪れていないようだ。

 

 やはり、彼女達も……。

 

 少し扶桑は目を伏せたが、悲しんでばかりも居られない。そう、本当に不幸な時は、不幸だとは言っていられないのだ。

 

「……その、この洞窟の中に緑色のバケツのようなものはありませんでしたか?『修復剤』って書いてあるやつなのですが」

 

「……あった。デカい砲弾とか鉄の塊とかと一緒に、幾つか。それが、なにか?」

 

「持ってきていただけませんか?それが今、必要なのです」

 

「よくわからんけど、わかった。持ってくればいいんだな?」

 

「はい、出来れば中身がいっぱい入っているのをお願いします」

 

 玄一郎はそんなバケツをなにに使うのかといぶかしんだが、扶桑の言うとおり、洞窟の奥からそれを幾つか持って運んできた。

 

「持ってきたよ。しかし水が詰まってるだけのバケツだが、これをなにに使うんだ?」

 

「これは艦娘用の高速修復剤です。艦装と身体を早く治せる、言うなればお薬ですね」

 

 扶桑はそういうと、いたたたた、と言いつつ、起き上がってミドリのバケツに手をかけた。

 

「くうっ、よいしょっと!」

 

 痛みに耐えつつ、そのバケツをひっくり返して自分にぶちまける。

 

「なっ?!」

 

 玄一郎は驚いた。この人なにやってんの?!とか最初は思ったが、その水をかぶった瞬間、扶桑の破れて形のいいお胸が見えていた部分とか、顔の傷とか、いろいろと本当に一瞬で治ってしまったからだ。

 

「治っちまった?!傷どころか破けてた服まで?!おっぱい見えてたのに?!」

 

 いかん、本音が出た。と誤魔化そうと玄一郎は思ったがもうスピーカーはおっぱいと言ってしまっている。だめだ、誤魔化せない。

 

「ええ、服も艦装ですのでこうして……って、え?おっ?…ぱい?」

 

「いや、見てない。うん、俺、見てない。黒田玄一郎、ウソツカナーイ」

 

 何故に機械になってるのにこうも話すことが嘘臭くなるのか。いや、嘘だけど。

 

「……えっち」

 

 和風の服装を着た和風美人が言うと、コレほどクる言葉はあるまい。そう、心に響く。えっち。魂になにかクるものがある。むしろこれは萌えだ。

 

「……いや、傷見るのに、手当てするのに、偶然。包帯巻くのに、ちょっと。桜色が綺麗でつい。……ごめん」

 

 いかん、どんどん墓穴掘ってるぞ。この男。いや、ロボだけど。

 

「あの、その……。いえ、今回は……。命の恩人、ですので、許します。でも、あの、はずかしい……です」

 

 顔を赤らめる扶桑に玄一郎はドキッとした。美人なのになんか可愛いぞ、この人。

 

 たぶん、自分が人間のままだったらものすごく赤面していただろうな、と思いつつ、よく考えたら今までの人生でこんな綺麗な人見たこと無いぞ、とか考えたら、玄一郎はすごく嬉しくなって舞い上がってしまった。

 

 なんで嬉しいのかわからんけど。

 

 ああ、心臓など無いのに胸がバクバクする。

 

 脳内では、プラズマリアクター過剰出力、などと表示され、なんかそれいかんではないか?!とか焦る。

 

 いかんいかん、プラズマリアクターって言ったら核融合炉じゃね?!落ち着け自分、クールになれよ、そう、KOOLだ。ビークール、ビークール、ビークールってなんかビーチクに似てるよな、とか玄一郎の頭の中はむちゃくちゃでごじゃりますがな、という状態になっていた。

 

 さらに頭に、扶桑の破れてポロリしていた時のおっぱいの映像がいくつもいくつも浮かび上がり、【映像記録再生】などと表示され、さらに手当てしたときにいろいろ脱がした姿までが浮かび上がる始末。

 

 あああ、いかん!これはいかん!!嬉しいけど、鮮明に色鮮やかに綺麗、美しい、可愛い、だめだだめだ、クソッ、この融通のきかないメカ脳みそめっ!!グッジョブ!!いや、だから今は再生やめてっ!!

 

 突然悶えだした玄一郎に、

 

「?」

 

 と、扶桑は首を傾げた。

 

 当然、玄一郎の機械の脳みそはそこの部分も可愛く【REC】。

 

 とっておきの記憶になった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 深かった扶桑の傷も治り、洞窟の備蓄庫の中から艦娘用の燃料や弾薬を補給して、扶桑は基地に戻ると言った。

 

「戻って、妹や皆をまもらなければ」

 

 そういう彼女が玄一郎はとても心配になった。また、酷い怪我を負うのではないか、それとも最悪また……。

 

「……俺も……いや、だめか」

 

 玄一郎は俺も着いて行く、とは言えなかった。

 

 普通の人間の姿ならばいざ知らず、いや、おそらく人間の姿でも彼女のいう基地には入れまい。軍の施設だから。

 

 ましてやこんな訳の分からない機械の身体のなにかだ。銃や砲で撃たれてしまうに違いない。

 

「……あなたのお気持ち、ありがたく受け取っておきますね。でも。あなたはあなたのやるべきことがきっとある。また……いえ、では、私はもう行きます。あなたの事は忘れません」

 

 彼女は振り向かずに海へと出た。また会いましょう、など言えるはずもない。

 

「扶桑さん!俺は、この島にいる!隠れてるからっ!!何かあったら、そう、助けに行くっ!!だからっ、無事でっ!!」

 

 玄一郎は、大きな声をスピーカーに出力させ、叫んだ。

 

 これが、ゲシュペンストと扶桑の最初の出会いだった。

 

 




 過去。

 そう、ゲシュペンストにとって、扶桑との出会いはおっぱい(あと薄桜色のぽっち)。

 でも、扶桑ねぇさまの大破姿って、可哀想なのに綺麗なんですよねー。ああ、扶桑ねぇさま綺麗。

 さて、冒頭のところはおそらく色々と皆さん想像するかも知れませんが、特定の何か、を私は批判するつもりはありません、と言っておきます。

 ゲートが開いたのかねー、とボケときます。ええ。


 
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