ゲス提督のいる泊地   作:罪袋伝吉

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 さて、近藤さん達が艦娘達の艦隊を率いて無人島に向かってるよ?という話。

 なんか、扶桑姉妹が出てこないよ?不幸だね?

 大淀さんの過去話だったはずなのに、いろんな子達の過去も絡んで来るよ?

 ひぇぇぇぇぇ。
 


【過去話】怨霊艦隊~ゴーストシップ⑧

 叢雲が松平朋也准将に集めさせた艦娘達は大本営の所有する特殊揚陸艦『あぎょう丸』に乗り組んで航行していた。

 

 特殊揚陸艦は日本海軍がまだ自衛隊だった頃のヘリ搭載型の揚陸艦として建造されたものを改修改装をした、艦娘キャリアー艦の先駆けともいうべき揚陸艦である。

 

 艦娘キャリアー艦は、長距離大規模作戦における艦娘運搬を目的とした『多目的海上基地艦構想』を元に改装された。

 

 まず、艦娘達の航続距離やその速度は各艦で違うのもあるがそれは如何に訓練・教練・演習をしても足並みが揃うものではなく、足並みを揃える為には早い艦娘が遅い艦娘に合わせる他無いのである。

 また、長距離航行の場合、燃料消費もそうだが、艦娘達の体力や精神的な疲弊は必ず出るのである。

 

 それらの艦娘達の負担を軽減させる他、この艦娘キャリアー艦は、現地海域での司令艦としての役割も持ち、司令官が乗員する事で直接作戦司令を行うことも可能となっている。

 

 さらにはこの艦娘キャリアー艦には入渠施設等もあり、提督の技量や裁量によっては海上鎮守府とも言うべき艦に化けるほどの性能と能力を持たせる事も出来るのである(例えば、間宮・伊良湖に乗艦してもらえば綺羅星つけまくり、など)。

 

 ただ、この『あぎょう丸』クラスの艦娘キャリアー艦の難点を上げるとすれば。

 

 昔の艦船の改造なのでそれ自体の費用はさほどかかってはいないが燃費と維持費が非常にかかる。

 

 また、深海棲艦に対する攻撃能力は皆無に等しく防御力に至ってはいかに装甲をつけたところで紙同然という事だろうか。

 

 そう、深海棲艦の攻撃を食らえばたたの艦船なとでおそらく一撃で沈する可能性が非常に大なのだ。

 

 つまり、深海棲艦の攻撃を食らえば運んでいる艦娘達はともかく、人間の乗組員や提督の命の保証は全く無い。

 

「……こりゃまた高けぇ棺桶用意したもんだなぁ」

 

 近藤大佐(後の大将)はあぎょう丸の甲板の上で昇る朝日に照らされつつ、独り言ちる。はっきり言ってこの近藤勲、生まれは山、育ちも山、海など見えない所で育った山男、海は苦手であった。

 

 その横には大和が苦笑しつつ付き添っているが、おそらく彼女はこの揚陸艦が深海棲艦に襲撃される可能性を考えていざという時の為についているのだろう。

 

「深海棲艦の気配は無いから大丈夫でしょ。それにウチの加賀が哨戒機飛ばしてるし、万が一来てもなんとかなるんじゃない?」

 

 土方が気楽そうにそう言う。この土方は元々大きな神社の娘であるからなのか霊感が非常に強く、深海棲艦の気配も感じられるほどの能力を持っている。

 

 その彼女が言うならば、艦の周辺には深海棲艦は居ないのだろう、と近藤は少し安心する。

 

 土方は小島基地提督に就任していた。

 

 提督不在どころか壊滅した小島基地に、まるで、というよりは嫌がらせそのもので大本営の旧・左派陣営や白鳥財閥から賄賂などを受け取っていた日本海軍の大将達によって追いやられたのである。

 

 無論、一から基地を作らねばならない島に、艦娘達数人をつけて、である。

 

 それはあまりに酷い仕返しとも言えた。

 

 幸い、艦娘宿舎や入渠設備等の損害はあまり無く、松平准将や近藤大佐、そして中島基地の老提督の支援の元復興出来たが、それまでかなりの苦労はあった。

 

 とはいえ、救いと言えば五年前の小島基地壊滅事件後、深海棲艦の来襲が激減した事であろうか。

 

 あの事件では周辺海域に存在した約400体もの『マヨイ』を含む深海棲艦が『アンノウン一号』によって討ち滅ぼされたのである。出現が少なくなったとしてもそれは不思議な事ではあるまい。

 

 故に、施設が不充分な中でもなんとか再建するまで持ちこたえられたのである。

 

 ただ、そんな中でも様々なトラブルは発生した。

 

 その一つとして、艦娘達が哨戒任務に出ると敵も撃破していないのに多くの艦娘がドロップして来る現象、通称『艦娘入れ食い事件』は壊滅後の基地としては非常に困るトラブルであった。

 

 艦娘達を養って行くための衣食住をどうするかという問題が新生小島基地を襲った。

 

 おそらく『アンノウン一号』に撃破され、怨念が晴れた深海棲艦達の艦霊が一斉に顕現したのだろうと思われるが、土方はそれに対して狂喜乱舞した。

 

「艦娘入れ食い状態やーーーっ!!うわーっ、うわーっ、みんな私んとこの子にしてええんやぁーっ?!えへへへへ、うひょーっ!!むひょーっ!!提督になって良かったぁぁぁぁっ!!」

 

 彼女にとっては、左遷されようが壊滅状態の基地に住もうが、艦娘達と暮らせるならばそれで幸せだったのである。怒涛の衣食住の確保にそれこそ邁進した。

 

 深海棲艦のほとんど出ない海に、艦娘の護衛をつけて漁船を繰り出し魚を大量に確保して内陸の市場に売りに行ったり。

 

 資源の確保の為の遠征を無理の無いペースで行ってそれを大本営に売りつけたり。

 

 様々な野菜などのハウス栽培を大勢の艦娘達と広範囲に行ったり。

 

 やたらと島に自生しているシソやクレソン、バジルなどのハーブや野草を採取したり。

 

 様々な事をしてどの艦娘も手放す事もせずに守り抜いたのである。

 

 彼女の隣に立っている加賀もその一人である。

 

 この加賀の練度は現在、69。実直にして勤勉。無口で寡黙。仕事は確実に行い、慢心も無い。何より『最初の鳳翔』が目をかける程に能力は高い。

 

 土方としては『ううっ、今まで苦労かけた娘がこんなに立派になって……!』などと内心思っていたりする。

 

「しっかし、コイツ、おめぇに迷惑かけてねぇか?」

 

 土方の性格と行動を知るが故、近藤は加賀に声をかけた。しかし加賀は全く表情を変えずさらりと言った。

 

「もう慣れたわ……慣れたく無かったけど」

 

 その言葉に、近藤は、ぺしりと右手で自分の顔を覆うようにし、ガックリとうなだれた。

 

「提督んなったからってコイツの悪癖が治るってわけでもねーとは思ってたが、苦労かけてんなぁマジですまねぇなぁ……」 

 

「まぁ……悪い方では無いのですけれどね?」

 

 大和が苦笑しながらフォローするが、加賀もやや苦笑気味に、

 

「分かっているわ」

 

 と答える辺り、実直な加賀も土方を嫌ってはいないのだろう。多少のセクハラじみたスキンシップは多めに見る程度は。

  

 加賀のその言葉が嬉しかったのか、土方は加賀に抱きつこうとした。

 

「うううっ、分かってくれてるのね?!」

 

 がっばぁ!と手を広げて来た土方の額に、ぺし、と手のひらでしばく無表情な加賀。

 

「いったぁーっ?!」

 

「扱いも、少し慣れたわ」

 

 ぺし、ぺし、ぺし。

 

 先ほどの苦笑が嘘のように無表情で額をぺしぺし叩く。

 

「痛っ?!痛っ?!痛っ?!あうううううっ……」

 

 額を連続でシバかれ、うずくまる土方。おそらく小島基地でのブレーキ役は加賀なんだろうなぁ、と近藤と大和は思った。

 

 なお、舞鶴鎮守府では曙と霞がその役だったが、その二人は今回は留守番であるので近藤は連れてきてはいない。

 

「……まぁ、小島基地が平和なのはわかったが、しっかしいくら敵が来ねぇからって最大戦力の金剛型二人を連れて来て良かったのかぁ?つか、あの比叡、まだ療養中じゃなかったのかよ?」

 

「……松平先輩の要請の中に比叡の名前があったのよ。私も不安だったけど、金剛が一緒ならって比叡がね」

 

 額を押さえて涙目だが、真面目な話に土方は答えた。なんだかんだで切り替えは早い女である。

 

「先輩が要請したのか?……そいつぁ解せねぇなぁ。あの先輩が弱った艦娘を出させるなんざ、どう考えてもおかしい。あの比叡は確か戦闘に出せるような精神状態じゃないってお前、以前言ってたよな?」

 

「ええ。保護した時と比べればかなり回復はしているけれど、金剛が側にいなければまだ霊力の安定もしないし、精神状態も不安定な状態なのよ」

 

 比叡はかつての軍主導派によって実施された艦娘強化実験における成功例であった。しかし、その代償として彼女の心は半ば崩壊してしまい、土方が保護したときには廃人寸前の状態になっていたのである。

 

 通常ならば、比叡のように精神を崩壊させてしまった艦娘はその兵器としての危険性から解体の後廃棄されるものである。ましてや強化され、危険性を増した艦娘ならばなおさらに上層部は廃棄せよと圧力をかけて来たが、土方は保護した比叡を見捨てる事はしなかった。

 

 甲斐甲斐しく金剛と共に比叡を介抱し続けて約二年。なんとか比叡は普通の生活を送れるまでには回復したが、まだまだその精神状態は安定せず、姉艦である金剛と共におらねば保てない状態なのである。

 

「そんな艦娘をも戦力にせにゃならんほど、厳しい戦場になるというのか?フィリピン周辺海域は……」

 

 近藤は思わず自分の鎮守府の最大戦力たる大和を見る。この大和も松平の要請で艦隊に組み込んだが、他にもこの『あぎょう丸』に乗り組んだ艦娘の面々を考えて近藤は押し黙る。

 

 大本営の武蔵、長門、伊勢、日向。

 

 舞鶴の大和、陸奥。そして舞鶴に駐留している扶桑姉妹。

 

 小島基地の金剛、比叡、加賀、赤城、

 

 大戦力過ぎるのだ。あたかも最終決戦の如き主力戦力、圧倒的な戦力である。

 

 周りを囲む重巡、軽巡、特殊艦、駆逐艦もかなりの数であり、もはや過剰戦力にも思えた。

 

 そしてそれを支える兵站の用意周到さも気にはなっていた。入渠施設付の移動鎮守府とも言うべきこの『あぎょう丸』に、明石が乗り組み、さらに間宮と伊良湖までいる。

 

 早朝からめったに食えない間宮の飯が食えて、伊良湖のデザートが付く、この贅沢さはなんだろう、まるで末期の飯のようにも思えて近藤は少し怖くなった。

 

 とはいえ、もっと不可解な事はある。

 

 この艦の規模からすればざっと四倍以上の大量の糧食に大量の資材。しかし、向かうのは無人島であるが、拠点設営のための建材等は積んでいない。

 

 この艦に揚陸させて基地とするつもりなのだろうか?とも思うのだが、全く作戦の方向性も見えて来ない。

 

 なにより、松平は人員や艦娘達を集めるだけ集めて、

 

「後は君達に全権を委ねる。幸運を祈る」

 

 なんぞと言って丸投げなのだ。

 

 武器弾薬兵糧を過剰につけられて、前線に送られる現場指揮官の、このプレッシャー。しかも一騎当千の艦隊付き。

 

「……なぁ、土方。俺、すんげぇ嫌な予感しかしねぇんだけんどな?」

 

「……あ、やっぱそう思う?まぁ、今回は間宮さんと伊良湖さん付きだし、荒事は想定してないような気もするんだけどね?」

 

 この場合、近藤が悲観主義であるのか、それとも土方が楽観主義であるのか。それはさておいて。

 

 全ては山本叢雲の思惑の通り。いや、全ては最良解の未来の為に、物事は動き始めていたのである。 

 

 そう、みんなが笑える幸せな世界のために。

 

 





 大淀さんのヒロイン話?それは幻想だ。

 比叡がやたら……。

 いえ、最後は扶桑姉妹が決めてくれる……かな?深海側の。

 なお、加賀さんはむっちり。赤城さんはもっちり。

 次回、ひぇぇぇぇぇ(嘘)で、またあおう!
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