どうせギャグになるなら、重くてもいいよね?とか思いつつ。
入れ忘れた部分をお蔵出し、です。
『大淀』という艦娘は優秀かつ才能溢れる艦娘である。
だが、その大淀の中にあって任艦娘の大淀の頂点に立つ大淀という艦娘はコンプレックスの塊である。
この大淀は様々な異名や徒名、蔑称を持つ。
『大鴉』『淀み鴉』『淀君』『エロメガネ』。
恐れられたり、役職からの徒名だったり、過去を揶揄されたり。
どれも彼女に纏わる一面をそれぞれ表している別名だが、どれもが本当の彼女では無い。
彼女はコンプレックスの塊である。
彼女は彼女を知る者達が知るように、思うように、強くは無い。
むしろ弱さの塊なのである。
彼女は普通の艦娘では無い。いや、普通のどの艦娘達がそうであるように存在する事を許されなかった。
礼号組の大淀ならば、普通の艦娘であれただろう。もしくは他の任艦娘の大淀のようにあれたならばもっと彼女も普通でいられたかも知れない。
男達に売られて、その身を汚され、何も知らなかった大淀は、その恐怖の中でそれでも生きることを手放さず、自分の生命を守るために、その汚れを受け入れて生きてきた。
男達の嗜虐心をそそる、容姿はどれだけ痛めつけられても傷つくことは無く、どれだけ責められても死ぬことは無い。
しかし、心に刻まれた傷には入渠も高速修復剤も効かず、むしろ彼女を苛んできた。
そうして、心を病み、責められても何の反応も示さなくなった彼女は、若く、女も知らぬ潔癖症の若手議員をからかうためだけにタダ同然で買われ、その若手議員に押し付けられた。
彼女にとって、それは幸運だったのか不幸だったのかわからない。いや、最初は幸運で最後は不幸だった、と言うべきかも知れないし、最初から不幸だったとも言うべきなのかも知れない。
長倉平八郎に与えられた彼女は、初めて受ける人の優しさを知ったが、いつも怯えていた。
長倉が信じられなかったのでは無い。人間そのもの全てを信じていなかったのだ。
いつか長倉も豹変するだろう、いつも自分に対する人間は欲望で自分を傷つけるのだから、と彼女は思っていた。
それは確かに彼女の偏見だったが、しかしそのような境遇しか彼女は知らなかったのである。そのような人間しか見たことがなかったのである。それは仕方の無い事であった。
いつそうなっても良いように、もしくはそうならないように彼女は長倉に与えられた仕事を出来うるだけ、持てる能力の全てを以て必死でこなして来た。傷つけられたくない一心で、怯えながら。
長倉はその大淀の能力を賞賛したが、大淀は自分を常に卑下していた。
植え付けられたトラウマは、どれだけ主に賞賛されたとしても癒える事は無かった。
長倉は一度も彼女を愛する事は無く身体を求める事も無かったが、それを大淀は道具としての自分を長倉は求めているだけであり、長倉にとっての自分にはそれだけの価値しかないのだ、と思っていた。
長倉からすれば、彼は大淀の境遇を慮り出来るだけ過去に触れないようにと思っていただけであったし、彼が妻を娶ろうともしなかったのは、彼がいつか日本を奪還できたならば、そのときは大淀を娶ろうと思っていたからなのだが、不幸な行き違いは、後に悲劇を呼んだ。
大淀が長倉の真意を知ったのは、日本奪還計画の実行を間近にして、彼が暗殺された後だった。
その後の大淀は壊れた心のまま、長倉の望みを果たす為に自分の全ての能力を発揮した。知略、知謀、今まで長倉と培ったコネクション、それらを使い、影から日本奪還を果たした。
だが、それでも。
コンプレックスの塊は彼女の心に重石としてずっとのし掛かり続けている。
愛していたのだと気づいたのは主を失ってからだった。
あまりに気づくのが遅く、悲しみと負い目と共に彼女は今も他者に望まれるまま課せられた自分の仕事のまま、動いている。
歯車の噛み合わない、心を抱えながら。
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さて、大淀さんはエロメガネである。
エロいメガネを掛けた、脳みそピンク色の、淫乱艦娘である。
いいや、実は清楚で清純、優しくて可憐な艦娘である。
いやいや、才色兼備、戦闘指揮もこなして確実に艦隊を勝利に導く理想の上司である。
ははは、何を言う。彼女は気が弱く、見ろよ、ゲシュペンストを見ては恐怖で気絶し、『血濡れの薙刀姫』の眼光を見ては失禁して気絶する。そんなか弱い女性なのだ。
さて。
どの大淀が本当の大淀なのだろうか。
高雄が知る大淀は、長倉平八郎と共に日本奪還の為に働いた才女としての彼女である。
木曾達が知る彼女は指揮に優れ、判断能力も間違いの無い理想的なリーダーとしての彼女である。
龍田達が知る彼女は、抜け目が無く、鴉のように狡猾で蛇のように執念深い、化け物のような彼女である。
では、玄一郎が知る大淀という艦娘は?
その答えは簡単である。
気絶しちゃった怖がりの、裸がエロいメガネの図書委員的おねーさん。
ほら、コイツにかかればコレだ。
いや、大淀にもしも彼女についての印象を話さなければならないとしたら、裸云々はバレたらいけないので『怖がりの成長した文学少女系おねーさん』となるだろう。
ある意味、大淀の弱さをやたらと玄一郎は見てしまっている、というか、気絶したり失禁したところをやたらと見たわけであるからして、そういう認識を持ってしまったわけだが、玄一郎は正直なところアホである。
バカと言っても良いだろう。
とは言っても、このアホの良いところは、人の弱さを気にしない。人の失態を気にしない。人の世話を特に嫌がらないし、誰だって失敗はあるし怖いものは怖いだろうし、仕方ないよね?と肯定する単純さだろうか。
欠点だらけの自分を知っているが故の、完璧を求めない直感人間。感情で動いて墓穴を掘る、善人(変態)。頭は回る癖に、その頭をアホな事に使う天才。器用貧乏な高性能自爆男。
それが、黒田玄一郎というバカの正体であった。
バカを相手にする、玄人(いろんな意味で)のおねぇさん。
どっちが活動的とかそういうレベルでは無い。土俵が違いすぎて取り組みさえできないほど掛け違った存在なのだ、これは。
玄一郎と大淀は、天の軽い空気と、地の底のマグマほどにレベルが違う。
しかし。
交わらないと思うのは、浅はかである。
時として天の空気は下降し、地のマグマは天に噴き出すものだ。
男女の関わりと言うのは摩訶不思議なもんだなぁ、などと言いつつ。
未来に繋がる、脳天気な善人ゲス男と重ドM系メガネ女子の話はさらに続く。
厳密には、この10年後の過酷なベッドウエー夜戦を乗り越えたり、尻に敷かれたり、むしろ上に乗られたりいろいろする未来が待ってるよ?(台無し)。
大淀さんは、確信ド級M。普段の仕事ではドSですが。
革のボンデージより、荒縄が似合うような、そんな玄人的な……げふんげふん。
まぁ、いけない図書委員長的な感じですかねー。まぁ、過激なアレは無いですよ?R15ですし。