ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「悲しい時はいつも」



久しぶりの投稿と番外編です。因みに元ネタはそのままのザ・コックピットの成層圏気流です


第105話「成層圏気流(前編)」

Ⅴ2事件から翌日、俺はベットの上に寝っ転がり暇を持て余していた。身体に巣くう放射能の毒はハルたちのおかげで浄化されもう苦しくないのだが、あの戦いで少し骨をやってしまったのでしばらくは出撃禁止令が出ている。たまにエイラや菅野がお見舞いに来てくれるがそれ以外はすることもなく、あるとすればスマホをいじることぐらいだ。因みに俺のスマホはエミリアのスマホと同じソーラー充電式のため電池切れの心配はない。すると・・・・

 

コンコン

 

と、ノックの音が聞こえた。誰だろう?俺がそう思っていると

 

「入るぞ疾風」

 

と、そこへエミリアが入って来た。

 

「ああ、エミリアか・・・・なんか用?」

 

「用ってわけでもないけど。一人じゃあ退屈だろ?遊びに来てあげたわよ」

 

と、そう言い、菓子と炭酸水を取り出し椅子に座り、俺は戸棚からグラスと皿を出す。

 

「・・・・・・で、身体の調子はどうだ?」

 

「ああ、今のところなんともねえよ。後はラル少佐が出撃許可をくれればパーフェクトなんだがな」

 

「何を馬鹿なことを・・・・右足の骨にヒビが入っている人間を少佐が出撃させるわけないだろうが・・・・・」

 

「あはは・・・・」

 

エミリアの言葉に俺は苦笑しエミリアはグラスに炭酸水を注ぐ。そしてエミリアはカレンダーを見る

 

「8月15日・・・・・・」

 

「ん?その日がどうかしたのかエミリア?確かその日って第二次大戦が終結した日だよな?」

 

「ああ・・・・それと同時に第三次大戦・・・・・『テロリスト戦争』が終結した日でもある」

 

「なんという偶然だな。それは・・・そうかあの戦争は俺が消えて数日後に終わったのか・・・・・エミリア、お前も大変だっただろう?」

 

と、そう言うとエミリアは炭酸水をグイっと飲み

 

「ええ、戦争って言うのは始めるよりもその後始末が大変だったわ。テロ側にいたほかの奴らは戦後、就職とかにかなり苦労したって聞いたけど幸い私はパイロットの腕を買われてのちにドイツ連邦のパイロットに再就職ができた。その時はものすごく冷たい目で見られたわ。まあ、元テロリストだからそうだったんだけどね・・・・・」

 

と、その時エミリアは少し暗い顔をする。俺はその顔を見て

 

「エミリア・・・・・お前大戦中に何かあったのか?・・・・・・いや、言わなくていい。人の過去を聞くのはマナー違反だからな」

 

と、そう言うとエミリアは

 

「別にかまわないさ・・・・・お前になら話しても構わないだろ・・・・・・疾風。お前、戦後でのあんたの異名知っているか?」

 

「え?異名?「レッドファイター」か?」

 

と、そう言うとエミリアはふっと笑い

 

「まあ、それもあるが戦後でのあんたの異名は『世界最強の戦闘機乗り』よ」

 

「はぁ?俺が世界最強?なんで?」

 

「なんでって、世界最多の撃墜記録を持つお前がその称号をもらっても別におかしな話はないだろう」

 

「でもさすがに大げさな気がするが・・・・・」

 

世界最強って、俺はそんなに人外な腕を持っていない。あの撃墜数は仲間との共同撃墜が大半だ。

 

「それにその称号ならお前にも与えられるんじゃないかエミリア?」

 

そう、その称号はどちらかというとエミリアが似合う。向こうの世界で連合軍の仲間から聞いた話では顔所はたった一機で40機以上の敵機を撃墜したという話がある。それに空戦の経験の腕も俺よりも長い。俺がそう言うとエミリアは

 

「いいや、私の評価は低いわ「漆黒の悪魔」なんて呼ばれたことがあったけど戦後・・・特にナチス時代の仲間からは「卑怯者」なんて呼ばれたわ」

 

「卑怯者?なんで?」

 

俺が首をかしげるとエミリアはグラスを持ちなぜか遠くを見る形で窓を見

 

「・・・・・・あれはあなたが行方不明になった4日後のことの話よ・・・・・・・」

 

そう言いエミリアは語り始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

100年前、人が成層圏を飛ぶことを誰が信じたであろうか・・・・人間が成層圏を飛び戦うなどはかない夢にしか過ぎなかった。なぜならそこは神々の領域だと信じられていたからだ。

 

 

そしてある星が煌めく真夜中、二機の戦闘機が飛んでいた。その機体はfw190A5。ドイツが開発した初の空冷型エンジンを搭載した戦闘機であった。この二機の任務は敵機が入ってこないように偵察する夜間哨戒をしていたのだ。そしてそのfw190に乗っているのはかつて疾風の好敵手であり『漆黒の悪魔』と恐れられたエミリア・ハルトマン少佐であった。すると彼女の列機の戦闘機の翼から飛行機雲が出てくる

 

「ノイマン。飛行雲が出てるぞ。スロットルを絞れ。敵に見つかるぞ」

 

「了解」

 

と、列機であるノイマンがスロットルを絞ろうとした瞬間、上空から銃弾が列機の翼に命中しノイマンの乗るフォッケは火に包まれる

 

「っ!?」

 

私はその銃弾が飛んできた空を見上げるとそこからは三機のスピットファイアが見えた。私は増槽を捨てその銃撃を躱す。すると炎に包まれるフォッケを見て

 

「何をしているノイマン!早く脱出しろ!!」

 

『だ、ダメです!キャノピーが食い込んで開かない!・・・・・・うわああああ!!』

 

彼女から悲鳴が上がった瞬間、彼女の乗るフォッケウルフは爆散した。

 

「くっ!よくも!!」

 

と、私は操縦桿を握り直し捻り込んで奴らの背後につき銃弾を叩きつける。そして一機を撃墜することはできたが他の機体には当たらず。その二機は私の背後に回り込んだ。こちらも旋回して回り込もうとしたが高高度のせいで出力が出ない。そして・・・・

 

ボォン!

 

と、いきなりエンジンから煙が上がった。そしてそこからエンジンオイルが漏れ始める

 

「くそっ!こんな時に故障か!!」

 

と、そう言いながらも背後からスピットファイアからの銃撃が続く。エンジンが故障したせいでさっきよりも動きが鈍くなり、いつ撃墜されるか時間の問題となった。そして私は無線機を取り

 

「こちらハルトマン、現在マンハ湖上空で敵と交戦。エンジンの不調により敵の追撃を振り切れない。ただちに機体を捨てて脱出する」

 

と、そう報告し私は機体のキャノピーを地上へと向け脱出装置の装置を引く。するとキャノピーが外れ、そこから私は脱出するのであった。そして今、私が落下傘で降り立った場所はその湖で、そして今私は湖の上に浮かび星空を眺めていた。そして夜空に瞬く星空は私がどれだけ小さい存在なのかを知らしめているように見えた。

 

「あいつがいなくなって四日・・・・・何だか戦うことも生きることもどうでもよくなってきたな・・・・」

 

と、水面に浮かぶ私はそう呟く。あいつが・・・・疾風が戦死したという知らせを聞いた時、私は脅威がいなくなった喜びよりも虚しさ、そして悲しさという感情が込み上げていたのを覚えている。確かにあいつは敵ではあったが私怨は一切なくたまに会ううちに親友といってもいい間柄になっていた。そして何より私の生きがいは自らの手で好敵手であるあいつを倒すことだった。だが、やつは四日前に謎の失踪を遂げ戦死となった。その時からだ。私が戦うことに異議を感じるようになったのは、あいつがいないこの空で戦って何の意味があるのか・・・・その私の疑問の思いに答えてくれる奴は誰一人もはいない。

しばらく水面を漂った私は、岸の方へ泳ぎそして草原を歩く。するとどこからかボルトを動かす音が聞こえる。もしかしたら敵かと思い私はホルスターから拳銃を取り出そうとする。するとそこから現れたのはドイツ軍。といっても連合側のドイツ連邦ではなく友軍のナチス国防軍であった。

 

「ここが内地じゃなかったら、今頃ゲリラかレジスタンスに殺されていたぜ。運がよかったですな少佐。それに・・・・・・あんたの愛機もね」

 

と、そう言われ、私は彼の向く先を見るとそこにはエンジン不調とはいえ銃弾の痕もない無傷のまま不時着していた私の愛機fw190が朝露に濡れた草原に横たわっていた。まるでエンジンが故障しても私はまだ戦えるのに放棄したこの私を恨んでいるかのように奇麗なままで横たわっていた。

 

「友軍機がやられたのにエンジンが故障しただけでおめおめ逃げるなんて、なにがナチス空軍のエースパイロットもとい武装親衛隊だ。そんなに命が惜しいのか!」

 

「ふっ、空よりも地上の兵士たちの方が勇ましいのかもな・・・・」

 

と、皮肉を込めて言う歩兵に私は背を向け歩き出す。その時以来、私は誇り高き精鋭軍、武装親衛隊でもかつてのあだ名『漆黒の悪魔』でもなくの他に戦わずして戦闘機を捨て逃げた卑怯者という烙印を押されてしまった・・・・・この時、私は敵と相打ちを覚悟で戦い、そしてそこで・・・・愛する祖国の空の上でフォッケウルフとともに死ぬべきだったのかもしれない・・・・・・

 


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