ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
ED「あさきゆめみし」
第116話「セダン基地へ」
「あともう少しでガリアだな・・・・・」
「ああ、そうだな。予定だと翌日の昼くらいには506の本隊の基地があるセダン基地に着くらしいな」
夜中の列車の中、俺とエミリアは席に座りながら夜空を見上げながらそう話す。因みに銭形刑事とマリアさんは列車の客室に先に行って寝ている。
「本隊ね・・・・・あの基地って確か私たちが向かっているセダンの本隊基地の他にディジョンにB部隊があるらしいわね。まったく、同じ航空団が別の基地に二つ・・・・どうしてこうなったのやら・・・・・」
エミリアは目を細めはぁ~とため息をつく
「ロスマンさんが教えてくれたんだが、506はガリアが解放された後ガリア方面防衛のために新設された部隊だけど・・・・結成する時、各国の政治的意図や国内事情が絡んだうえに部隊の『隊員は貴族ウィッチだけで構成する』という無理難題な話やらリベリオンやブリタニアの反対やらでいろいろと複雑な事情で貴族中心のA部隊。リベリオンとかブリタニアとかの一般ウィッチを中心としたB部隊に別れたそうだぞ?」
「両隊の仲はどうなの?」
「さあ、俺は見たことが無いからわかんないがメディアや世間ではあまり纏まりがないそうだ」
「はぁ‥‥全く頭の痛い話ね・・・・・どこの世界も纏まりがない部隊ってあるのね。話を聞くとまるでフランスのBC部隊を思い出すね・・・・」
「え?エミリア。お前、BC部隊のこと知っているのか?」
「ええ、大戦初期。当時フランスとドンパチやっていたころ相手の軍がどんな感じか調べるように軍に命令されてそこの兵士に変装して潜入調査したんだけど・・・・・その・・・・部隊の雰囲気は・・・・・疾風その後、私の言いたいことわかるわよね?」
「ああ・・・・何となくわかった」
とエミリアの引きつった顔に俺は苦笑し答える。BC部隊。それは自由フランス軍がマリー中佐の指揮の元、結成した精鋭軍なんだが・・・・その部隊は貴族出身組と平民組と別れていて結構対立が絶えない。知り合いでBC部隊の平民側に配属していたエルザ・デュノア大尉曰く「纏まってれば強いんだけど・・・・長年の貴族、平民の対立の根が深くてなかなか纏まらない」とのことだ。その結果、ナチスドイツに善戦はしたものの結果は敗北。部隊は壊滅状態になったという。因みにBC部隊に所属していたデュノア大尉は生き残り。その後、自由フランス空軍の通称『ジャンヌダルク隊』の隊長になり、俺の率いる501戦闘隊とともに戦かった。そして大尉とかは俺の副官であった杉田曹長と結構仲が良くたまに買い物に出かけたりしたっけな。まあ俺は荷物持ちだったけど・・・・・
「まあ、なんにせよ俺たちが向かう部隊は501や502以上に一癖も二癖ありそうだな・・・・・」
「そうね・・・・・・・ん?」
「ん?どうしたんだエミリア?」
「いや。別に大したことはないんだけど、今気づいたんだがあんたのそのコートの袖についているパーソナルマークって・・・・」
「え?ああ。このマークか。このマークは俺が率いていた501『抜刀隊』の部隊マークだよ。このコートを買う時、特注でつけてもらったんだ」
そう。俺のコートの袖には俺が最後に所属していた343海軍航空隊で俺が指揮をしていた戦闘機部隊501戦闘隊通称『抜刀隊』のエンブレムであった。するとエミリアは
「そう?特注ね。あなたのパーソナルマークといえばあなたの機体の赤い二本のストライプ模様か尾翼の白い稲妻マークかと思っていたけど。それがそうなのね・・・・でも奇遇ね。私の軍服にも特注で私の指揮した部隊、301戦闘隊のエンブレムがあるのよ」
「え?どこに袖って言ってもお前の袖って武装親衛隊服特徴のハーケンクロイツのマークしかないぞ?」
「あなたどこを見ているのよ。そっちじゃなくて反対側の袖よ。小さく書かれているからわかりにくいけどほら」
とエミリアは右腕の袖を指さすと確かにそこには小さなエンブレムが描かれていた。それは縦型の額縁があるがそのマークはエミリアの愛機の尾翼に描かれていた髑髏マークであった。そしてその下にはドイツ語で何か書かれていた。そのドイツ語の意味は・・・
「・・・死を招く翼っか・・・・・・」
「へ~あんた、ドイツ語が話せるだけじゃなくてドイツ語読めたんだ」
「ああ、義母や先生のしつけでなあとドイツ語だけじゃなくて英語はもちろん。ロシア語、フランス語、イタリア語なんかも読めたり話せたりできるぞ」
他にも中国語とかも習ったが、そこはあまり得意じゃない。まあ日常会話くらいはできるが・・・・・
「何それ、あなた、確か私より2歳年下でしょ?それなのに5か国の言葉を話せる上に、剣士であり元の世界でもこの世界でもスーパーエースって呼ばれているし・・・・・ほとんどチートじゃないのよあんたは・・・・・」
「あはは・・・・」
と、半ばあきれ顔でそういうエミリアに俺は苦笑するのであった。
506統合戦闘航空団セダン基地の書斎室では・・・・
「・・・・・助っ人じゃと?」
「どういう意味ですかキーラ少佐?」
と、506統合戦闘航空団ノーブルウィッチーズのA隊の隊長であるロザリー・ド・エムリコート・ド・グリュンネ少佐と戦闘隊長であるハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン大尉がコートを着た女性にそう訊くこのコートを着た女性の名はクリス・キーラ少佐ガリアの諜報員である。なぜガリアの諜報員がこの基地にいるかというとそれはジャックザリッパー殺人事件が始まる前、セダン基地の格納庫が突然原因不明の爆発事故を起こしたのだ。そこでガリア諜報部はこの謎の事故を調査するために彼女、キーラ少佐を送ったのだ。そしてその数日後に例の事件が起きたのだ。
「そのまんまの意味だよ。先ほど上からの指示でな。今回の殺人事件でちまたを騒がせているジャックザリッパーを捕らえるために506のAとBの隊員の他、近距離戦闘に強い人材を助っ人として呼ぶことになったのだよ」
「なっ!?助っ人などいらぬ。そんな殺人鬼、わらわ506だけで十分であろう!!」
「ハインリーケさん落ち着いて・・・・・」
と、そう言うハインリーケにグリュンネ少佐はなだめるとキーラ少佐は
「これはもうすでに決まったことなんだよ大尉。それとも何かね?君は対人戦闘の経験はあるのかな?」
「う・・・・・」
そう言われハインリーケは言葉に詰まる。彼女を含め506にはネウロイとの戦闘経験はあるが対人戦闘の経験は皆無であった。すると
「それでキーラ少佐。その助っ人とは誰ですか?まさか殺し屋でも雇ったのですか?」
「いいや。殺し屋なんか雇わないさ。私の言う助っ人とはある英雄さ」
「英雄?」
「そうだ。君たちも知っているだろう?突如どこからか現れ、ガリアだけでなくペテルブルグ、ロマーニャを救い世界初の男性ウィッチであるあの黒の剣士のことさ・・・・・」
「なに!?まさか『黒の剣士』、『レッドファイター』と呼ばれている疾風村正大尉か!?」
「ああ、その通りだ大尉。彼には今回の事件に限り、506に配属されることになったのだよ。そのことは知っているはずであろう少佐?」
「え、ええ・・・・上層部の人に一時的に配属されるウィッチがいるって聞いたけど・・・・・・まさかあの疾風大尉とは・・・・・で、キーラ少佐。その疾風大尉が来るのはいつですか?」
「予定ではもうすぐ私の部下が大尉と一緒にセダン基地の近くにある駅につく頃だよ。では私は彼らを迎える準備があるため失礼するよ」
そう言うとキーラ少佐は部屋から出ていく。そして残された二人は
「まさか助っ人って疾風大尉だったとわね・・・・・」
「そうじゃの・・・・・」
「ん?どうかしたのハインリーケさん。そんなに険しい顔をして?もしかして助っ人のことの件が気に食わないの?」
「それもある。じゃが、それ以前にその疾風という男。胡散臭い・・・・・」
「胡散臭い?」
「考えてもみろ。その男は去年、いきなり501のもとに現れ男性なはずなのにユニットを履きネウロイを撲滅しガリアを救い、それ以外にペテルブルグ、ヴェネチアにいるネウロイを多く撃墜している。その数はあのスーパーエース、エーリカハルトマンを凌ぐ。そのような男が今まで記事にならなかったのが不思議なのじゃ」
「そう言えばそうね・・・・・確かに大尉の腕なら。ガリア以前にすでに記事になっていたりしてもおかしくなかったはずなのに・・・・・・」
「それにおかしな噂も聞いた」
「おかしな噂?」
「そうじゃ。噂ではそやつはスオムスのウィッチを嫁にしたり。そしてそのウィッチの間に子を設けたと聞いた。じゃがそれ以前に有名な噂は、その子供が実はネウロイじゃないかっという噂だ」
「その噂は私も聞いたけど。でもそれって噂なんでしょ?それが本当かどうか定かじゃないんでしょ?」
「ああ、とにかくじゃ。私はそいつのことをどうにも信用できぬ」
「まあ、まあ、ハインリーケさん。判断は彼に会ってからにしましょ」
と、そうなだめるとグリュンネは時計の方へ向き疾風が到着する予定の時刻を見るのであった。
一方、疾風たちは・・・・・
「なあ、マリアさん?俺たちは確かセダン基地に向かっていたはずなんだよな?」
「え、ええ・・・・そのはずだ」
疾風たちは無事にガリアの駅に着くのであったのだったが、その着いた場所は
『ディジョン・・・・・ディジョンに到着しました~』
と、アナウンスがなる。
「確かに506基地のある場所についたは着いたけど、この地域って確か本体とは別のB隊の基地のある方よね?」
そう疾風たちが付いた場所は506統合戦闘航空団本体であるA隊の基地であるセダンではなくB隊の基地の近くにあるディジョンであった。
「おい、どうなっているんだガリアの諜報員さんよ?なんでセダンではなくディジョンに着いているんだ?」
と、銭形刑事はジト目でマリアを見ると彼女は
「どうやら乗る列車を間違えてしまったようだ。私としたことが不覚だ・・・・・」
と、マリアさんは申し訳なさそうな顔をして謝る
「それよりもどうするの疾風?次の列車、翌日になっちゃうわよ?」
「う~んそうだな・・・・・・まあ幸いここはB隊の基地が近いからまずがそこに行ってみようか?」
「・・・・そうだな。翌日まで駅で待つよりはいいわね。二人ともそれでいいかしら?」
「俺は別にかまわないぞ?」
「私のせいでそうなったんだ。問題はない」
と、言うことで俺たちは506統合戦闘航空団のB部隊のあるディジョン位置へと向かうのであった。