ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「~たった1つの想い~」

ED「花・太陽・雨」


第132話「永久の罪」

「俺が殺すと言った以上、貴様の死は絶対だ」

 

疾風は刀を鞘に納めて構える。それを見たレイナーレは

 

「これは・・・・・・噂で聞いた日本の剣術技の一つの抜刀術の構えか・・・・・」

 

レイナーレは疾風の構えを見てそう呟く。

『抜刀術』それは日本の剣術技の一つであり刀を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つことで剣速を二倍、三倍に加速させ相手に攻撃を与える隙もなく一撃を加え切り伏せる文字通り一撃必殺の技である。

 

「(疾風の剣技は速い恐らく抜刀術による鞘の抜く速さもまさに神速の速さ・・・・・・躱せるか)」

 

レイナーレは疾風の抜刀術を躱せるかどうか、焦る。今までどんな相手を仕留めてきたレイナーレだったが、相手が、接近戦の得意といわれる日本人。しかも剣術が得意で何よりも本気で殺気のこもった疾風相手に攻撃を躱し、仕留められるか考える。

 

「(抜刀術は一撃必殺の故、放った後は完全な無防備、仕損じれば自分自身の死につながる諸刃の技・・・・だが、やつの神のごとき早い剣撃を躱せるか・・・・抜刀の瞬間さえ・・・・・・いや、待て)」

 

するとレイナーレはあることに気が付き

 

「(いや、勝てる!・・・・これは躱せる!!)」

 

そう何かを確信しレイナーレはナイフを構え

 

「行くわよ疾風!!」

 

と、そう言いレイナーレは疾風に向かって突進する。そしてレイナーレは

 

「(疾風・・・・・貴様には私を仕留められない!あんたには抜刀する際、致命的なところがある!それは癖だ!!人には様々な癖がありそれを直すことはなかなかできない!あんたの場合は刀を抜く時、1・5秒、刀を抜くのが遅い。それは抜刀術を極める者にとっては致命的な弱点だ。そのわずかな差が私にとっては絶対の好機!!)」

 

先ほどの戦闘で疾風のわずかな隙を見抜き、レイナーレは疾風に斬りかかり、疾風の射程内に入った瞬間疾風はカット目を見開き刀を抜く。その刀を抜く速さを見たレイナーレは急ブレーキをかけその一撃を避けようとするがしかし・・・

 

「(は、速い!?私の思っていた以上に!?だけどこの一撃をよければ・・・・・・・・私の勝ちだ!)」

 

そう言いレイナーレはギリギリのところで疾風の一撃を躱す。躱したことにレイナーレは勝利を確信し二っと笑い

 

「(躱せた・・・・・躱せたぁ!!)」

 

そしてレイナーレはナイフを振り上げ

 

「私の勝ちだっ!疾風ぇ!!!」

 

そう言い放った瞬間、彼女の腕にものすごい衝撃が襲い鈍い音が鳴り響く

 

「っ!?」

 

激し痛みが彼女の右腕に走り、彼女はその腕を見ると自分の左腕に疾風の差していた刀の鞘が自身の右腕に当たりそして彼女の腕があらぬ方向に曲がっていた。そう先ほどの鈍い音は彼女の右腕が折れた音であったのだ。疾風の攻撃にレイナーレは崩れ落ち、

 

「(ま、まさか・・・・剣と鞘の二段抜刀術だとっ!?」

 

折れた右腕を抑えながらレイナーレは疾風の方を睨む。すると疾風は

 

「北郷流抜刀術、『双竜撃』・・・俺が抜刀する際、若干遅い癖なのは重々承知。それを補う技が今の技だレイナーレ」

 

この技の名は『双竜激』。抜刀がかわされた場合に無防備になるため、斬撃の勢いを利用した鞘での次撃に繋ぐ二段技であり、疾風が唯一、北郷流剣術の名を改名しなかった技の名の一つである。因みに某人斬りの放つ流派の名と技が同じなのだが全くの偶然である。

 

「ひじの関節を砕き筋を断った。これでお前の暗殺者としての命は終わった・・・・・・・・そして」

 

と、そう言い疾風は刀を振り上げると

 

「お前の人生もこれで終わりだ・・・・・・・」

 

殺気を含んだ目でそう言い放つ疾風。それを見た黒田が

 

「(は、疾風大尉・・・・だ、ダメです・・・・)」

 

必死に声を出して疾風を止めようとする彼女だが、心の一方に掛かり肺機能が麻痺した状態お彼女には声を出すことができなかった。

そんな、なか疾風は刀を振り上げたまま一向にレイナーレに振り下ろす様子はなくそれを見たレイナーレは

 

「どうしたの…疾風。何をためらっているの?さっさと私を殺しなよ。そうじゃないとあの子に掛けた心の一方を解くことができないわよ。それに私を生かしておけば。私は必ずあんたを殺すわ。それだけじゃない。あんたの婚約者のエイラ中尉や娘のように慕っているあの子も殺すわよ」

 

と、そう言った瞬間。疾風の眉間がぴくっと動く

 

「さあ、疾風。冥途の土産にあんたの白刃私に振り落としてくれ」

 

と、そう言うと疾風は殺気を含めた目で

 

「そうだな・・・・お前なんかに冥途の土産なんかあげるつもりはないが、黒田を救うため・・・そしてエイラやアイたちを守るため、俺はもう一度血で汚れるさ」

 

と、そう言いきった瞬間レイナーレは笑いだし

 

「そうよ!それでいいのよ!さあ、早く、その凶刃を私に味合わせなよ!!」

 

と、狂気の笑みでそう叫ぶレイナーレに疾風は

 

「・・・・・死ね」

 

そう言う。それを見た黒田は

 

「(だ、‥ダメです疾風大尉・・・・・その人を殺しちゃ・・・・・ダメです!だめです!だめです!!!)」

 

黒田がそう強く思ったその瞬間

 

「だめえぇーーーーーー!!!」

 

「「っ!?」」

 

心の一方で声が出なかった黒田が突如そう叫ぶと疾風は刀をレイナーレに振り下ろし、彼女の頭に振り下ろす直前に止め、黒田の叫び声とともにレイナーレと供に驚き黒田の方へ見ると

 

「だ・・・ダメです疾風大尉・・・・・・人を殺しちゃ・・・・・人殺しに戻っちゃだめです・・・・・疾風さんの婚約者さんが悲しみます・・・・から」

 

「あの小娘・・・・・自力で解きやがったよ」

 

レイナーレが驚く中、息を切らし涙目でそういう黒田。そして黒田はふっと倒れそうになると

 

「黒田ぁ!」

 

疾風はすかさず黒田を受け止める

 

「大丈夫か?」

 

と、そう訊くと黒田はにこっと笑い

 

「だ、大丈夫ですよ…あの大尉」

 

「なんだ黒田?」

 

「これ、誘拐とか傷病手当とか出ますか?」

 

「おろ?」

 

いつもと変わらぬ黒田の言葉に疾風は目を丸くするが無事だとわかり疾風はほっと安心すると

 

「あんたやハルトマン大尉ならいざ知らず、まさかこんな小娘に私の心の一方が解かれるなんて、あんたにさんざん腑抜けていると言った私自身もいつの間にか腑抜けていたようね・・・・・」

 

疾風の背後にレイナーレが残った左手でナイフを持ち立っていた

 

「やめろレイナーレ。左腕だけのあんたにもう勝ち目はない。大人しくお縄につけ」

 

と、疾風がそう言うと

 

「いや・・・まだよ。まだ終わっていないわ。まだ残っているのよ・・・・・・」

 

そう言いレイナーレはナイフを振り上げ、疾風は刀を手に思振り向いた瞬間

 

「後始末がね!!」

 

と、そう言いレイナーレはナイフを疾風にではなく自分の胸に深く突き刺し彼女の胸から血しぶきが出る

 

「ふ・・ふふ・・・やっぱりこの感触いいわね」

 

と、そう言い倒れる

 

「レイナーレ・・・お前、いったい何を・・・・」

 

レイナーレのいきなりの行動に疾風と黒田はわからないという顔をしていた。するとレイナーレは二人の感情を読み取ったのか

 

「二人とも・・・わからない面をしているわね・・・・・言ったでしょ?後始末よ。私が生きて捕らえられ尋問されれば私に殺人の依頼をしたガリア政府のお偉いさんに行きつくからね・・・・・」

 

「な、なに!?」

 

「何驚いた顔をしているんだ疾風。まさかこの世界は人間同士の殺し合いが無縁の世界だと思っていたのか?だからあんたは腑抜けたんだよ」

 

と、そう言いレイナーレはフーと息をつき

 

「ネウロイだなんだと言って力を合わせて戦ってはいるが、その裏では政府によるお偉いさん同士の醜い殺し合いがあるのさ。人間の本性なんてどんなに共通の敵が現れても平和になっても何より、どの世界でもそれは変わらない。この世界だってネウロイが消えれば、やがて人間同士殺し合う。特にネウロイによって領土を破壊された国が資源確保や復興のため他国の領土に侵行するようになるわ。それこそ私たちのいた世界の大戦のようにね・・・・・今の戦争もやがては来る人間同士の大戦の準備体操みたなものなんだよ」

 

と、そう言うと黒田が

 

「そんなこと絶対にさせません。そんな世界は絶対に私たちが来させませんレイナーレさん!!」

 

と、そう言うとレイナーレは黒田を見てふふっと笑い

 

「甘っちょろいわね・・・・あんたはまだまだ青いわ。だが、その甘っちょろさがあんたらの強さの一つかもしれないのね・・・・・・・」

 

「レイナーレさん。レイナーレさんは本当に人殺しが好きだったの?」

 

黒田がそう訊くとレイナーレは

 

「生き方を自ら選べる人間がどれだけいると思う黒田中尉。ナチスに占領された国に生まれた私には自らの生き方を選べる権利なんてなかった。なぜなら私はユダヤ人だからだ。何千年の間、迫害された種族だからだ。奴らに劣等な種族と蔑まれ。その汚名を返上してやる代わりにナチの兵士になり暗殺稼業をしろと言われ私はその道を選んだ。そしてこの世界の半年前ナチスの追っ手を逃れた私はなぜかの世界に来た。恐らく私がここに飛ばされたのはこの世界のバランスを保つためよ」

 

「バランス?

 

「ええ、大尉。この世界はあんたやハルトマン大尉やその他のウィッチのように正義の心を持った者がいるだけじゃバランス的にも悪いのよ。悪役のいない世界なんてつまらないだけだわ。だから私はこの世界に呼ばれた。私はそう思っている」

 

「そして、私はある組織のボス・・・・政府のお偉いさんに買われ暗殺をするようになった。今更人殺しの道を抜けられないし抜けたくもない。そして向こうは暗殺者を欲しがっていた。互いの利害が一致し、この半年間暗殺をし続けたこれがジャックザリッパーの誕生ってわけだ・・・・・・だが今、利き腕を破壊され暗殺の道を絶たれた私はこういう最後を選んだ。暗殺ができずに生きる人生なんてつまらないだけだからね・・・・・・・」

 

「レイナーレ・・・・・・」

 

「そんな悲しい顔をするな疾風。私を殺すと言ったあんたの目はもっといい目をしていたわよ」

 

「っ!?」

 

レイナーレの言葉に疾風は目を見開きレイナーレは

 

「やっぱりあんたの本性は人殺しよ・・・・・同じ人殺しが言うんだから間違いないわ。人を殺めたものは決してその身についた罪という血を拭い去ることは決してできない。死ぬまで人殺しのまんまその罪を背負い続けるのよ・・・・・・・あんたが、どこまで、ウィザードと言い続けられるか地獄の淵で見ていてやるわ・・・・・・」

 

と、そう言いレイナーレは静かに目を閉じ、そしてふーと息を吐いた後、再び呼吸をすることはなかった

 

「レイナーレさん・・・・・」

 

黒田が悲しそうな顔をする中、疾風は

 

「人殺しは死ぬまで人殺し・・・・・か・・・・一生」

 

レイナーレの言葉に疾風はそう考えていると黒田が

 

「大尉・・・・・・・帰りましょ」

 

「そうだな・・・・・・」

 

と、そう言う。疾風と黒田は基地へと戻ると黒田は

 

「大尉。その腕大丈夫ですか?」

 

疾風の赤黒く血で染まった怪我した腕を見て心配そうに訊くと

 

「大丈夫だ。こんな傷放っておけば治る」

 

「そんなわけないじゃないですか!?ちょっとじっとしてください」

 

「え?」

 

黒田はそう言うと疾風のコートをいきなり脱がし、さらにシャツを脱がすといきなり傷ついた肩を舐める

 

「なっ!?く、黒田!?お前何をしているんだ///!?」

 

「傷をなめているんです雑菌入るとまずいですから」

 

「みょ。妙な気遣いはいいよ///!?」

 

「とにかくじっとしてください。包帯巻きますから」

 

顔を真っ赤にしてそういう疾風に黒田は疾風の傷をなめた後ポケットから包帯を取り出し肩に巻き

 

「これでもう大丈夫です」

 

「す、すまないな黒田」

 

「いいですって。私たち戦友じゃないですか」

 

「・・・・・ああ、そうだな。だからこそ礼を言う。ありがとう黒田。もし、あそこで黒田が声をかけてくれなかったら俺は完全に人斬りに戻っていたよ」

 

と、疾風は不敵の笑みでそう言うと黒田は少し顔を赤くし

 

「どういたしまして大尉♪やっぱり大尉はあの時の怖い顔じゃなくてその笑顔が似合ってますよ♪」

 

と、嬉しそうに言うのであった。すると・・・・・

 

「いた!?おい、黒田、疾風!!」

 

「黒田さん!疾風さん!大丈夫ですか!?」

 

夜間哨戒という名目で二人を救出しに来たハインリーケとジェニファーが飛んできた。

 

「あ、大尉。ジェニファー」

 

「大丈夫か!・ジャックザリッパーはどうし・・・・て、疾風おぬし怪我をしておるではないか!?」

 

「ああ、ちょっと油断した。けどもう大丈夫だ事件は解決したよ」

 

「そ、そうなんですか・・・・・」

 

その後疾風と黒田は二人に背負われセダン基地へと戻るのであった。この時、疾風たちは知らなかった。まだジャックザリッパーによる殺人事件が完全に終わっていなかったことを・・・・・・・

 

 




おひさしぶりです。投稿遅くなって誠に申し訳ございません。リアルが忙しかったのとプラモ作りに夢中になって書くのを怠けてしまいました。

次回は少し閑話話を入れたいと思います

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