ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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ED「ブックマークア・ヘッド」


第11話「黒きウィッチと負傷」

あの事件から数日後

 

談話室に歌声とピアノの音が響く ミーナ中佐の歌と、サーニャの伴奏…「リリーマルレーン」だ

先日襲ってきたキューブ型ネウロイを倒して基地に戻ってきた思ったら、突然これだ

いや、いい歌だぞ?うちにもそういう歌手とかいたしな。確か「数え役満☆姉妹」だったけな・・・・

歌が終わり、今度は拍手が鳴り響く

今度ロンドンに行ったら、レコードでも買ってみようかな

 

「とっても素敵な歌でした!」

 

「ありがとう」フフッ

 

「サーニャのピアノはどうしター?サーニャのー?」グイグイ

 

「へ、ほっへもふてきれひたぁ」

 

「え~い、もっと褒めロー宮藤~」グイグイ

 

「エイラ、それくらいにしてやれよ」

 

「い~や、まだまだダー」

 

「いは、いはいでふよ、エイラひゃ~ん!」

 

爆笑する一同。その中で中佐は、何かを押し殺すように笑っていた

その夜、俺は一人中佐の部屋に向かっていた。借りていた資料を返すためだ

 

「今日撃墜したキューブ型についての資料も欲しいな」

 

中佐の部屋の前まで来て、ドアをノックしようとした時、中から声が聞こえた。思わず手を引っ込める

 

「…こんな思いをするくらいなら、好きになんてならなければ良かった…てね。でも…そうじゃなかった」

 

疾風(誰と話してるんだ?)

 

俺は疑問に感じつつ悪いとは思いつつもそっと聞き耳を立てた。

 

「でも、失うのは今でも恐ろしいわ。それなら…失わない努力をすべきなの!」スチャ

 

「…ずいぶんと物騒だな」

 

「(少佐?)」

 

「約束して。もう二度とストライカーを履かないって」

 

「それは命令か?そんな格好で言われても、説得力がないぞ」

 

「私は本気よ!」

 

盗み聞きの趣味なんてないが、この場から動けなかった。当初の目的なんて忘れて、ドアの向こうのドラマに耳を傾ける

 

「私はまだ、飛ばねばならないんだ…」

 

少佐がドアに方に向かってくる。ドアを開けたときに死角になる位置に移動する。

運よく、少佐は俺と別方向に向かって廊下を歩き出した。おもわずため息をつく

俺は少しためらったが、ドアをノックし、中に入る

 

 

「ミーナ中佐、夜分に失礼します、資料を返しに…!」

 

中佐はまだあの赤のドレス姿だった。月明かりに照らされ、どこか官能的な雰囲気をかもし出している

だが、その手にはワルサーPPKが握られており、俺はなぜかスパイ映画の女殺し屋を思い浮かべた 。

 

「…もう読み終わったの?」

 

俺の姿を視認すると中佐はそそくさと銃をしまい、何事もなかったかのようににこやかに振舞う

 

「…ええ、役に立ちました」

 

中佐に資料を手渡しし、一礼してから部屋をあとにしようとする

ドアのところで立ち止まり、意を決して言葉を発する

 

「…今日、いえ、過去に何があったのかは聞きません。あなたが何を失ったのかもね」

 

「!」

 

「ただ、ひとつだけ言わせてください。過去に縛られ、死者を想っていては、生きていけません。軍人ならなおのことです」

 

「あなたに…あなたに何がわかるって言うの!?」

 

普段の落ち着いた性格からは想像できないような声を上げる

 

「これは遠まわしの忠告ですよ中佐。あなたはまだ何もわかっちゃいない」

 

ドアノブに手を掛け、部屋を出ようとする

 

「…あなたも…昔誰かを失ったの…?」

 

先ほどとは打って変わって、今度は泣きそうな声で問いかけてくる。

 

「…4歳の頃に姉を失い・・・・・そして初めて戦闘機部隊に配属された時は敬愛していた先輩搭乗員を目の前で失った。」

 

「…」

 

「おやすみなさい」

 

そう、あれは俺がラバウルに配属されたばかりの話だ。当時俺は少尉で愛機も紫電改じゃなく零戦だった。俺はその時ある人の2番機を務めていた。その人の名は雪ノ下雪蓮少佐。 源田司令の知り合いだったらしい。その人はなんていうか、軍人らしくない人だった。誰にでも優しく振舞い。情に厚い人だった。けど腕はすごく強くを俺がが何度も模擬戦をしても勝てなかった。そのうち俺はその人を超えようとしていた。しかしある時爆撃機の迎撃に上がったときに確かナチスがアメリカのB17をコピー生産したやつだったけ。その迎撃をして少佐は見事撃墜したが同時に少佐の愛機も火を噴き高度が下がっていった。俺はその時のことをはっきり覚えている。

 

「少佐!!早く脱出してください!」

 

「・・・・・疾風、日本のこと・・・・後のことは頼んだわよ・・・・」

 

そう言い少佐の機体は海にへと墜落し水柱が上がった…俺はただそれを眺めることしかできなかった。

基地に帰投した夜、おれは誰もいないところで泣いた。せっかく自分が超える目標がいたのに、あなたと一緒なら何か変われると思ったのに・・・・そう思いながら俺は雨の中泣いていた・・・・・

しばらく部屋にいたが

小腹が空いたので食堂に行ったらエイラが居た

 

「もう起きたのか。・・・て、エイラ何食べてんだ?」

 

「サルミアッキ、お前も食うカ?」

 

「・・・・いただこう」

 

黒い飴だろうか?臭いはちょっと変わっているが、気にせず口に放り込む

 

「ん、なかなかうまいじゃないか」カラコロ

 

「オー、疾風は話がわかるナァ。ナーンカ皆まずいって言うんダ」

 

「へー、そうなのか」

 

まぁ、向こうに居た頃は敵に包囲されて食料がない時ゴキブリとか食ってたから、味覚がちょっとおかしいのかもな 。エイラはこれからユニットの調整をするというのでお供することにした

 

 

 

 格納庫

 

「そういえば、お前のストライカーて変なストライプ模様があるな?」

 

「ん?ああ、これは隊長機の証で敵から仲間を守るためつけたんだよ。」

 

その模様は太平洋戦争の初代343航空隊のエースパイロット菅野直中佐のストライ模様と同じにしている。違いは黄色じゃなくて赤色なのが特徴だ。

 

「‥‥レッドファイター、か」

 

なんか、敵にもそう言われたことがあったな尾翼の雷よりもそっちの方が目立ったな・・・・

 

「ところでさ、宮藤とペリーヌのユニットは何処へ?」

 

「そういえばないナ。ペイント銃はあるし…何しにいったんダ?」

 

訓練は午前中にやったはずだし、午後は飛行訓練の予定はなかったはず… そういえばあの二人珍しくもめてたな・・・

 

「発進装置のラックの中に銃がない…まさか…」

 

ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「警報!?」

 

「行くぞエイラ!」

 

 

 

 上空

 

 

「じゃあ、宮藤は一人で向かったんだな!?」

 

「すみません、元はといえばわたくしが…」

 

「その件はそのネウロイを落としてからだ」

 

(余計な気を起こすなよ、宮藤…)

 

いろいろあったが、状況を説明する。ネウロイが出現し、それを受け宮藤が単機先行、俺たちはあとを追っている

 

「エイラ、夜間哨戒明けなのに平気か?」

 

「平気ダヨ。お前は自分の心配してロ」

 

「何かあったら言うんだぞ?」

 

「お前は私の保護者かよ…」

 

「というより彼女を気遣う彼氏だね♪」

 

「!?///」

 

「ハルトマン・・・」

 

「冗談だから。そんなに睨まないでよ…」

 

『宮藤さんが、ネウロイと接触したのは間違いないわ。でも、そこから先はサーニャさんにもわからないって』

 

「あいつ、まさか捕まったんじゃ?」

 

「縁起でもないこと言うなよ」

 

「離れるようには言えないのか!?」

 

『それが、ネウロイが何か、ジャミングのようなものを仕掛けているのかも』

 

「通信妨害電波か・・・・厄介だな…」

 

「とにかく急ぐぞ!」

 

そう言い俺たちは速度を上げた。

 

「まだ追いつかないのか、ミーナ!?」

 

『それが、ネウロイはガリア方面に引き返しているわ。巣に戻るつもりじゃ…』

 

「…!? 少佐!あそこ!」

 

その先に、小さな人影が映る

 

「!?」

 

少佐が眼帯を外し、魔眼を発現させる

 

「…宮藤のほかに、ウィッチがもう一人居る…いや、コアが見える。あれはネウロイだ!」

 

一方宮藤は胸からコアを見せたウィッチもどきに手を伸ばそうとしていた。

 

「あ…」

 

『何をしている!?宮藤!』

 

「あ!坂本さん!」

 

『撃て!撃つんだ宮藤!惑わされるな!そいつは人じゃない!』

 

「違うんです!このネウロイは…」

 

そう言い宮藤は人型ネウロイを庇おうとした。

 

「撃たぬなら退け!」

 

そう言い少佐はネウロイに銃口を向けた。

 

キィィン!

 

「おのれ!」

 

「キュイィィン!」

 

ネウロイは警戒態勢になり少佐はネウロイに向かって機関銃を撃った。彼女もお返しとビームを放ち、少佐はシールドで防ごうとしたが、ビームがシールドを貫通し機銃の弾薬庫に命中そして暴発した。

 

「ぐっ!…がぁぁっ!」

 

「!?」

 

「少佐!?」

 

「坂本さん!!」ブゥン

 

少佐の足からユニットが抜け落ち、海に向かって落ちていく。ペリーヌと宮藤が落下の途中でキャッチする

 

『どうしたの!?何が起きたの!?』

 

「少佐が撃たれた!繰り返す、少佐が撃たれた!救助チームを要請する!グリッド南東第25地区だ!」

 

「シールドは張ったのに…まさか!?」

 

『バルクホルン大尉…ネウロイを追いなさい、命令よ!』

 

泣き叫ぶように中佐が言う。無線からはわずかに嗚咽が聞こえる

 

「くそっ!」

 

編隊に前に飛び出て人型ネウロイに3式機銃を撃つ

 

人型ネウロイはウィッチのように回避機動を取り光弾をかわす。両手をこちらに突き出し、ビームを発射する

 

「疾風!避けろ!」

 

「言われなくても!」

 

予測線を使ってギリギリのところでビームを回避する

 

「キュゥイィン!」

 

ウィッチで言うユニットの部分に着弾するが、さほどダメージを与えられないもう一度攻撃しようと銃口を向けるが、なぜか人型ネウロイは動こうとしない

 

「?」

 

「キュイン」

 

不審に思っていると、ネウロイが近寄ってきた

 

「疾風!」

 

「待て、撃つんじゃない!」

 

銃を下ろし、人型と向き合い、静止する。殺気がない・・・まさか、こいつは自身の身が危ないとき以外は攻撃してこないのか? 人型がさらに近づいてくる。顔と顔の間が50cmもない人型はしばらく俺を眺め、不意に手を俺の額に向ける 。そして頭の中から声が聞こえた。

 

(すみません・・・・少しだけあなたの体を調べさせていただきます)

 

その手の先が青く光ったかと思ったら、俺の脳に電流が走った

 

「グガァァァァッ!!」

 

「疾風!?」

 

「何だ、何が起きてる!?」

 

体が電気ショックを与えられたかのように痙攣し、ライフルが手から離れ、ユニットが抜け落ちた

 

「まさか、洗脳…?」

 

視界が赤くなったり青くなったりと思ったら頭の中で、象形文字のようなものが浮かんでくる。これはネウロイの言語?

 

「うぐぁっ!がぁぅっ!」

 

視界が真っ黒になり、それと同時に、俺の意識は吹っ飛んだ

 

「…がぁ…あぐ…」

 

疾風の体から力が抜け、手足がダランと垂れ下がる。目にはハイライトが入っていない

 

「あぁ…」

 

ネウロイに捕まった仲間を前にして、私は何もできなかった

 

「おのれ…よくも疾風を!!」

 

「トゥルーデ待って!疾風に当たっちゃう!」

 

「しかし…!」

 

『私の…を…で 』

 

「「「「!?」」」」

 

『私の…』

 

私は耳を疑った。疾風の口が動いている。しかし、疾風の声ではなかった。機械的な無機質さを持った女性的な声

 

「洗脳、されたのか…?」

 

『お願い・・・・私の、邪魔を、しないで…』

 

それを最後にネウロイは瞬間移動し、ネウロイのパワーか何かで支えられていた疾風の体が宙に放り出される

 

「疾風!」

 

私は、疾風の腕をつかんで体を引き寄せる

 

「疾風?しっかりしろ!疾風!」

 

疾風の体にはいまだ力がなく、まぶたは閉じられている

 

「疾風…」

 

何の反応もなくて、このまま目を覚まさないんじゃないかって思えてきて…涙を抑えられなかった

 

「エイラ…」

 

ハルトマン中尉が背中をさすってくれた。大粒の涙が、疾風のコートの上に落ちる

 

「…こちらバルクホルン。ネウロイを取り逃がした。少佐と、疾風大尉が負傷。これより帰還する…」

 

 

 

 基地 医務室前廊下

 

 

「坂本さん!しっかりしてください!坂本さん!」

 

「少佐!返事をしてください!」

 

宮藤が治癒魔法を掛け、必死に治療を施す。しかし、目を覚ます気配はない

 

「…疾風」

 

その隣のストレッチャーには、同じく意識のない疾風が寝かされていた

 

男性医師と看護師が駆けつけ、二人を医務室の中に連れて行く

 

「あ…」

 

「宮藤!?」

 

魔法力の使いすぎで、宮藤がふらつく

 

「芳佳ちゃん?大丈夫?芳佳ちゃん!」

 

「…」

 

私は、目に涙を浮かべ、立っていることしかできなかった

 

 

 

 夕方

 

 

坂本少佐は何とか一命を取り留めた。しかし、まだ予断を許さない

 

少佐の寝るベッドの脇のいすには、ペリーヌが座っていた

 

ペリーヌの後ろには、疾風が寝ているベッド。こちらのそばにはエイラが座っていた

 

「(疾風…)」

 

失いかけて始めて気づいた。私にとって疾風は、とっても大切な存在になっていた まるで恋人みたいな

 

『エイラは、疾風さんのことが好きなの?』

 

以前サーニャに言われたことを思い出す

 

「(そうだ・・・・私は…)」

 

私は今までは自分の性格とサーニャのことがあって素直になれなかったけど、今ならちゃんと分かる。

私は疾風のことが好きだ。もちろんサーニャのことも好きだ。けど、サーニャに対して思っている【好き】と疾風に対して思っている【好き】は同じ言葉でもまったく意味が違う。私は一人の女として……異性と意識した上で疾風のことが好きなのだ。

心電図の機械音だけが鳴り響く医務室。入り口のドアを開け、二人の少女が入ってきた。宮藤とリーネだ

 

「っ!」

 

宮藤の姿を確認したペリーヌはイスから走るように立ち上がり、宮藤の顔にビンタを浴びせる

パン!と音がし、私は視線を宮藤たちに向ける

 

「あなたのせいよ…何か言いなさいよ!今までのうのうと寝ていたんでしょう!」

 

ペリーヌはそう、宮藤を責めるが・・・・

 

「芳佳ちゃんは、魔法力を使い果たして、」

 

「あなたは黙ってなさい!」

 

「黙りません!」

 

「…」

 

「芳佳ちゃん!?」

 

宮藤は少佐に駆け寄り、再び治癒魔法をかける。集中しているのか、運ばれたときとは違って無言だ

 

「…」

 

ポーチからタロットカードを一枚取り出す。出たカードは、死神の正位置

 

「…縁起でもないなエイラ…‥」

 

今まで寝ていた疾風が体を起こし、小声で言う

 

「疾風!?起きて大丈夫なのか?」

 

さっきまで全然起きる気配がなかったのに…でも、よかった ・・・・・

 

「俺の精神力なめんなよ。」

 

笑って言っているが、彼の黒目は虚ろだ

疾風は宮藤たちのほうへ視線を向ける

 

「…私たちにできることは?」

 

「ないな。ただ黙って見守るだけだ…」

 

ダイヤのエースも、世界最強の戦闘機乗りも、こんなときには非力である

 

 翌朝 医務室

 

それから、一晩に及ぶ宮藤の治療の甲斐あり、少佐は無事目を覚ました。疾風もかなり回復し、いざとなれば出撃できる。しかし、一日は安静にしてるようにとの事

 

「ん?あ…ああ!さk」

 

「シー」

 

少佐はそばで寝ているリーネとペリーヌ、疾風と疾風のベッドに突っ伏すように寝ているエイラたちを指差した。静かにしろってことだ

 

「よかった…」

 

「宮藤…ありがとう」

 

ありがとうといわれ、宮藤が少し顔を赤らめる。少佐は窓の向こう、空に眼をやる

 

「宮藤、なぜ撃たなかった。あのとき、お前はなぜネウロイを撃たなかった」

 

「…撃てなかったんです」

 

少佐は宮藤の手をつかみ、引き寄せる

 

「人の形をしているからか?あれはお前を誘い込む罠だ」

 

「でも、私あの時、何か感じたんです」

 

「ネウロイは、敵だ」

 

「…もし私が撃っていたら、坂本さんも疾風さんも、こんなことにならずに済んだんですか…?」

 

「宮藤・・・そういう話じゃないだろう?」

 

いつの間にか起き上がっていた疾風が、横で寝ているエイラの頭を撫でながら言った

 

「過程や規則はどうあれ、俺と少佐は生きて帰ってきた。ただそれで十分だ」

 

「でも…」

 

「宮藤はミスをしたかもしれない。でも少佐を助けた。それでいいんだよ。もし、自信が持てないなら、自分の行いが、その感じた何かが正しかったかどうか、その目で確かめればいい」

 

「…」

 

「少なくとも、俺はそうする」

 

宮藤はどこか納得していないようだったが、中佐に呼ばれて医務室を出て行った

 

 

 基地浴場

 

 

「宮藤~自室禁固だって?それで済んでよかったなぁ!」ガシッ

 

「はわっ!はわわ」

 

シャーリーに抱き着かれ宮藤は顔を赤くする。

 

「シャーリーなんて、五回も禁固刑喰らってるもんねぇ♪」

 

「馬鹿言え!四回だ四回!」

 

「私、六回!にゃはは~!」

 

皆の笑い声が浴場に響く。でも、私の気分は少し晴れなかった

 

「エイラ?」

 

「あ、ゴメン。痛かったカ?」

 

「ううん。でもエイラ、元気ない」

 

「…疾風がさ、話しかけても、どこか上の空で。ちょっと心配ナンダ」

 

窓の外の空を見つめ、何かを考えているようなあいつの顔。今まで見せたことのない顔をしていた

 

「きっと疲れてるだけよ」

 

「そうだと良いんだけど…サーニャは、私と疾風のこと、どう思ってるんダ?」

 

「…エイラのことを応援してるわ。親友として」

 

「ソッカ…後であいつのところに行ってみるよ」

 

「それがいいわ」

 

・・・・・リンゴでも持っていこうかな

 

 基地宿舎

 

 

「いいな、宮藤軍曹。必要なとき以外は外出禁止だ」

 

 

自室の扉には鍵をかけられ、私はベッドにうずくまっていた

 

 

「(どうして、誰も信じてくれないの?あれは間違い?…ううん、きっと違う…私、どうしたら良いんだろう)」

 

ベッドに倒れるように横になり、目を瞑る

 

『もし、自信が持てないなら、自分の行いが、その感じた何かが正しかったかどうか、その目で確かめればいい』

 

医務室で疾風さんに言われた言葉を思い出し、今度ははねるように起き上がる

 

「(やっぱり、確かめたい)」

 

 

 

 再び医務室

 

 

「…少佐は、ずいぶん飛ぶことに執着しているんですね」

 

ここ数日感じたことを、二人きりという状況を利用して聞いてみる

 

「知っていたのか…」

 

「中佐と話しているのが聞こえてしまって。すいません」

 

「謝らなくて良い…私は、まだ飛ばねばならないんだ」

 

「宮藤のことですか…でも、もうあなたは――」

 

もうすぐ二十歳だ。聞けばウィッチは二十歳で魔力を失うらしい。

 

「疾風・・・・お前は、何のために飛んでいる?」

 

俺の言葉をさえぎり少佐が質問を投げてくる。答えようかどうか迷った。でも、いい加減認めるべきだと思い、思っていることを口にする

 

「…好きな人のそばに、居るためですかね」

 

言った後、ものすごく恥ずかしくなった

 

「・・・・・エイラか。お前らお似合いだと思うぞ」

 

「///」

 

しばしの沈黙のあと、少佐が自分の質問に自分で答える

 

「…私にとって、戦うことは生き甲斐だった」

 

「侍ってやつですか・・・・・今までの俺は、ただひたすら国の為だと何か言い訳をつけて戦っていた。…でもこっちに来てから、本当に戦うことに意味を見出せた。ただ戦うためでなく、誰かのために戦う」

 

「その誰かが…」

 

「エイラです。彼女は、俺がこの世界にいる理由そのものです」

 

「向こうに未練はないのか?」

 

「俺の役目はもう終わったと思っています。俺がいなくても、もう大丈夫でしょう。仮に戻っても、またこっちに来ますよ」

 

エイラに会えなくなるのはいやだから

 

「そうか…おっと、噂をすればだ」

 

「疾風ー!」

 

少佐の言葉通り、ドアをぶち破ってエイラが入ってきた

 

「エイラ…医務室だぞ、静かにしろ」

 

「あぅ、ご、ごめん…そ、それより、お腹空いてないカ?リンゴ持ってきたんダ」

 

「ありがとう、いただくよ」

 

「私にもひとつ頼む」

 

「リョーカーイ」

 

エイラはイスに座り、ナイフでリンゴの皮をむき始めるエイラって結構器用だな・・・剥いたリンゴを何等分かに切り分け、楊枝を刺す。切り分けたひとつを手に取り、満面の笑みで俺の顔に向けてから一言

 

「ホレ、アーン」

 

「エイラサン…ナンノジョウダンカナ?」

 

俺はカナ言葉で訊く

 

「一回やってみたかったんダ」ニコッ

 

いや、そんな笑顔で言われても…男のプライドが…第一少佐もいるし

 

「お、うまいなこのリンゴ」

 

何事もなかったかのように丸かじりしてる…

 

「ホーラ」

 

「ん…///」

 

観念して差し出されたリンゴを口にする。やっぱ恥かしい・・・

 

「美味いか?」

 

「…うん///」

 

やばい・・・・何か話題を…

 

「そ、そういえばエイラ、俺のユニットや武器はどうなったんだ?」

 

二つとも海に落っことした覚えがある

 

「回収して、全部格納庫にあるゾ。ホレもう一個」

 

「アム…」

 

「見てきたらどうだ?無事がどうか気になるだろ」

 

「そうですね、見てきますか」

 

二個目のリンゴを飲み込み、ベッドから立ち上がる

 

「立って平気なのカ?」

 

「ん?リハビリだよリハビリ。少しは体動かさないと。行こうエイラ」

 

「うん!」

 

最高の笑顔で手を握ってきた。驚いたけど、何かあったかい

 

「青春だな~」

 

二人を見送る少佐はそう呟いた。

 

 

 

 格納庫ー前廊下

 

「宮藤は自室禁固か。それで済んでよかったな」

 

「ホントだよ。でもまぁ、あれで命令違反とか減ればいいけど」

 

「おいおいひどいなぁ…」

 

格納庫の入り口の扉を開け、中に入る。発進装置の一つに愛機である紫電改がセットされ、ラックには3式機銃と薩摩太刀が収まっていた

 

手にとって一通り動作を確認する。特に問題はない

 

「よかったナ」

 

「ああ…ん?」

 

「どうしタ?」

 

「…なぁ、宮藤は自室禁固中だって言ったよな?」

 

「そうだけど?」

 

「…宮藤のユニットがない!」

 

11と書かれた発進装置には、本来あるはずの宮藤の零式艦上戦闘脚がなかった

 

「え!…まさか、脱走!?」

 

アワアワとエイラがうろたえる「少佐に連絡…いや中佐にカ?」などといってる

 

俺はベルトの右腰にワルサーP38、背中に薩摩太刀を差し、ポーチに予備の弾薬が入っていることを確認し、自分の紫電改を装着する

 

「お、おい?何してるんダ?」

 

「宮藤を追う。あいつはきっと人型ネウロイに会うつもりだ。俺も行く」

 

「行ってどうするんダヨ!?あのネウロイは疾風を洗脳して――」

 

「いや、人型ネウロイは俺を使って何かを伝えようとした!それを確かめに行くんだ!」

 

「ダメだ!そんなことしたら、今度こそ疾風は…」

 

声が震えている。目にも涙が浮かんでいる。また俺が倒れると思っているようだ

 

「エイラ、大丈夫だ俺を信用しろ」

 

「でも…疾風が…死んじゃ…」

 

「俺を誰だと思ってるんだ?「レッドファイター」だぞ?簡単に死んだりしない」

 

エイラが俯いたまま黙ってしまう。広い格納庫の中で二人きり、紫電改のエンジン音だけが鳴り響く

 

「…皆にはなんて伝えればいい」

 

エンジン音にかき消されそうな、か細い声だった。

俺は1度だけ言ってみたいセリフ第1位であるあの言葉を言った。

 

「そうだな・・・・・I'll be back」

 

俺が見た好きな映画の名台詞。

俺の言葉に顔を上げたエイラの目をしっかりと見る。その目には涙が浮かんでいた 。それでもエイラは笑顔を作る。俺も微笑み返す。今の俺たちに、言葉は要らなかった

 

 

滑走を始めた俺は、やがて雨の降る暗闇に消えていった

 

 

 

                         次回「STRIKE WITCHES」




はい、どうも疾風海軍陸戦隊です。今回は何かとても長く書いていしまいました。
感想とかお待ちしております。
さて次回は第1章501ストライクウィッチーズ編最終話です。
次回もお楽しみ

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