ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「TAKE ME HIGHER」

挿入歌「赤トンボ」

ED「Angel Fly」


第139話「姉の愛情(中編)」

「・・・・・義姉さん」

 

俺が振り向くとそこには義姉さんがいた。そして義姉さんは

 

 

「隣いいか疾風?」

 

とそう言い俺は無言で頷き義姉さんは俺の隣に座る。そして義姉さんは

 

「話はグリュンネ隊長から聞いた・・・・・・お前も大変だったな」

 

「っ!?」

 

俺は姉さんの言葉に思わずぎょっとしてし、思わず手に持っていた写真を落とす。すると義姉さんがその写真に気付き

 

「ん?何だこの写真は?」

 

と、義姉さんはその写真を見る。そしてその写真に写っている女性を見ると

 

「疾風、このオラーシャ人は誰だ?まさか浮気相手か?」

 

と、怪しむように見ると俺は首を横に振り

 

「いいやちがうよ。この人はなんというかその・・・・・姉弟子かな?」

 

「姉弟子?」

 

「ああ、この人の名はアナスタシアさん。俺に空戦を教えてくれた逸見先生の弟子で。ロシア・・・・こっちで言うオラーシャのパイロットだよ。俺も小さい頃よく可愛がってもらったよ」

 

俺は懐かしむようにそう話す。その写真に写っている女性の名はアナスタシアさん。ロシアから来た留学生であり俺に空を教えてくれた師匠、逸見かおり先生の一番弟子で俺にとって姉弟子に当たる人だ。性格は見た目のクールさと違いとにかく優しく。たまにロシア語を交じりで喋る人で、俺がロシア語を喋れるのもこの人から習ったのが始まりだ。

そして俺もこの人にはいろいろとお世話になって休みの日にはよく遊んでくれた優しいお姉さんだった

 

「そうか・・・・・・それでその人は元気なのか?」

 

義姉さんはそう言うが

 

「・・・・・・・・」

 

俺の表情は曇り無言になる

 

「疾風?」

 

義姉さんが不思議そうに俺に訊くと

 

「・・・・・・死んじゃったよ・・・・・いや俺が殺したんだ・・・・・」

 

「っ!?」

 

その言葉に義姉さんは目を見開く。まさか疾風が自分の姉弟子を殺したなんて言葉が出るとは思わなかったのだろう

 

「殺したって・・・・・どういうことだ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「いや、やっぱり話さなくていい。言いたくないのなら・・・・それが辛い話なら無理して言わなくていい。お前が過去のことを話すのが嫌いなのは知っている」

 

と、優しい声でそう言うが俺は首を振り

 

「いや、義姉さんには知る権利があるよ・・・・・」

 

と、そう言い。俺はふ~と一息つき

 

「あれは・・・・もう数年前・・・・俺が予科練…訓練兵の時のことだよ・・・・・」

 

と俺は静かに昔のことを思い出しながら義姉さんに話すのだった

 

 

 

 

 

 

 

数年前、当時、疾風10歳の時、霞ケ浦飛行学校

 

「疾風。卒業おめでとう」

 

「ありがとうございます逸見先生」

 

俺は飛行乗りの訓練を終え卒業式を迎えた。そしてその中俺に空戦技術を教えてくれた恩師の逸見かおり先生が嬉しそうに笑う

 

「で、疾風。お前はどこの所属になるんだ?」

 

「は、はい。母艦に乗るとのことです」

 

「へ~母艦乗りね・・・・あなたも姉と同じ道を行くのね・・・・・」

 

と逸見先生は喜びよりもどこか悲しそうな顔をしていた

 

「・・・・・先生?」

 

「いや、なんでもないわ・・・・・まったく卒業式のせいか、年を取ったのかしら?この頃涙もろくなったのかしらね・・・・・さて、疾風。あなたこれから空いているわよね?」

 

[え?はい空いていますけど・・・・・・」

 

「そう、ならついてきなさい」

 

「えっと・・・何処へですか?」

 

「来ればわかるから・・・・・」

 

と、俺は逸見先生に連れられ、先生の車に乗りついた場所は横須賀であった。

 

「ついたわよ疾風。降りなさい」

 

「えっと・・・・・ここは」

 

俺が車を降りた先に見えたのは一転の料亭であり名は『鳳翔』と書かれていた

 

「見ての通り料亭よ。大丈夫この店は未成年でも入れるから」

 

「えっと・・・・何で俺をここに?」

 

「あなたの卒業祝いよ。。さ、とにかく入りなさい」

 

「う、うん・・・・・」

 

と、そう言い俺と先生は店に入ると・・・・・・

 

「いらっしゃい・・・・あら?かおりちゃん久しぶりね」

 

「お久しぶりです鳳翔先輩」

 

と店に入って俺たちを出迎えたのはわっ服姿の似合うポニーテイルの奇麗な女性であった。

 

「本当に久しぶりね。最後に会ったのはあなたと華琳ちゃんと圭子ちゃんの三人がまだ新兵だった時だったわね。今日は華琳ちゃんは?」

 

「華琳は今日は用事でこれないそうです」

 

「あらあら、それは残念・・・・・・」

 

するとその人は俺を見て

 

「あら?その子は・・・・・・・もしかして、かおりちゃんの子供?」

 

「私の弟子で・・・・まあ似たような物です。まあ強いて言えば圭子の弟です。ほら挨拶しなさい」

 

「は、初めまして。日本国海軍士官候補生の疾風村正です!」

 

俺は海軍式敬礼であいさつすると、その人はにこっと笑い

 

「あら、圭子ちゃんの・・・・言われてみれば似ているわね。始めまして私はこの料亭の女将の暁鳳翔って言います。よろしくね」

 

「疾風。この鳳翔さんはね私と華琳そしてあなたの姉である圭子が乗っていた空母の艦長で、その前は有名なエースパイロットだった人よ」

 

「もう。花桜梨ちゃんたら、もうそれは昔の話よ。それよりも席はとってあるから、座ってね」

 

「ありがとうございます」

 

そう言い、俺と逸見先生は鳳翔さんに案内された席に向かう。それはカウンターの席ではなく居間みたいな和式の部屋であった。そして俺と先生が座ってしばらくした後に

 

「はい。お待たせね。かおりちゃんはいつものね」

 

「ええ。ありがとうございます」

 

「豪勢ですね」

 

と鳳翔さんは料理を持ってくる。その料理は卵焼きだったり、唐揚げだったりと豪勢なもので先生の前には先生の好物であるハンバーグが置いてあった

 

「それじゃあ、食べましょう先生」

 

「まあ、待ちなさい。まだもう一人来ていないわよ」

 

「誰ですか?」

 

「私の一番弟子よ」

 

「え?・・・・・誰だろう?」

 

と俺が首をひねって考えていると鳳翔さんが入ってきて

 

「かおりちゃん。来たわよ」

 

と鳳翔さんがそう言うとその後ろから、ロシア士官服を着た短い銀髪の女性が入ってきて

 

「Прости・・・・遅くなりました」

 

と一礼すると俺は笑顔で

 

「アナスタシアさん!」

 

と、そう呼ぶ。彼女の名はアナスタシアさんロシア軍の留学生で俺にロシア語を教えてくれた姉貴分的な人でとっても優しい人だ

 

「Это было давно。お久しぶりですムラーシャ・・・・前に比べて大きくなりましたね」

 

と、アナスタシアさんも嬉しそうに笑顔でそう言うと先生が

 

「アーニャ。待っていたわよ。ささ、あなたも一緒に食べなさい」

 

「да。お邪魔します」

 

と、そう言いアナスタシアさんは席にあがり俺の隣に座る。そして鳳翔さんが料理を持ってきて

 

「かおりちゃん。この子、ロシア連邦の将校の子?」

 

「ええ、飛行機乗りとしてここに留学に来ているアナスタシア中尉よ」

 

「そうなの。日本料理の味が気に入るといいけど」

 

「大丈夫ですよ鳳翔さんアナスタシアさんは日本人よりも日本人みたいな人で味噌汁はもちろん大の好物は肉じゃがなんだ。そうでしょ?」

 

「да。ムラーシャの言う通りです。私、日本の料理、大好きです」

 

「まあ、それはよかった」

 

「さ、今日は無礼講で食べましょ」

 

「「はい(да)」」

 

と、そう言い俺たち三人は仲良く食事をとりながらいろんな話をした

 

「そうか~アナスタシアさん。明後日、ロシアに帰っちゃうんですか」

 

「да。本国の命令で、対テロリストの防衛のため帰国しなければいけないんです」

 

「そう・・・・で、防衛場所はどこに?」

 

「それは軍規なので教えてくれませんでした」

 

「そうか・・・・・また一緒に空を飛べると思ったのにな・・・・」

 

「ふふ、ムラーシャもついに戦場に飛び立つのね。そうなったらまたどこかで会えるわ。空に国境なんてありませんし、また出会ったら、一緒に飛びましょ」

 

「はい!」

 

俺は笑って言うアナスタシアさんに元気な声で返事をすると

 

「あ、すみません先生。ちょっとトイレに行ってもいいですか?」

 

「ええ、かまわないわよ」

 

と、そう言い俺はトイレに向かう。そしてそれを見たアナスタシアはふふと笑い

 

「将来が楽しみですね。先生」

 

「そうね・・・・・・でも、いくらあの子自身が決めた道とはいえ、あの若さで戦場に飛ばせるのはね・・・・・」

 

「да・・・・そうですね。私もあの子のことは実の弟のように思っています。軍人として戦いの道は避けられませんが、いくらなんでも・・・・・悲しい宿命です・・・・」

 

と、そう言うとアナスタシアは

 

「преподаватель・・・・・教官。なぜ戦争が起こるのでしょう・・・個人として、ロシア人…ドイツ人…日本人…中国人いや、世界中のどこの誰でもこれほど理解と友情に結ばれています・・・・しかし、国・・・民族。そして宗教や思想ではそうはいきません。私、テロリスト軍と戦った時いっそうそれを強く感じました・・・・」

 

「私も同じ気持ちよ・・・・・人間が誕生してから二千年以上・・・・・いまだに完全な平和が訪れていないわ。いや、それどころがどんどん殺戮兵器が進化している。私たちの代は無理でも願わくばあの子の代で終わってほしいわね・・・・・」

 

「да・・・・そうですね。ムラーシャみたいに戦争で親や兄弟失って悲しい思いをする子を増やさないためにも、早く終わらせないといけませんね」

 

と、話し合うと、疾風が戻ってくる

 

「戻りました・・・・ン?何を話していたんですか?」

 

「いや、なに大したことはないわ疾風。そうだ。今日はいい日だし、歌でも歌いましょ?」

 

「да・・・・あ、そうだ。それなら私が歌います。ムラーシャが教えてくれた日本の歌です」

 

「俺が教えた?」

 

「はい。私がムラーシャにロシア語を教えたお礼にと教えてくれたあの歌よ。覚えていますか?」

 

「?・・・・・・・ああ、あの歌か」

 

「へ~どんな歌かしら。ここはひとつアーニャの美声でも聞こうかしら?」

 

「Я понимаю・・・それでは早速・・・・・」

 

と、そう言いうとアナスタシアさんはふっと息を入れると

 

「♪~♪~♪」

 

奇麗な歌声で歌い始める。そして彼女の歌っている歌とは日本の代表的な童謡である『赤とんぼ』であった。それは疾風がアナスタシアからロシア語の読み書きや言葉を習っている時にそのお礼として歌ってあげたのが始まりであった。

 

「「・・・・・・・・」」

 

その歌声に二人は嬉しそうに微笑み、彼女が歌った後、宴会は続いたのであった。

 

 

 

だがこの時疾風は知らなかった。アナスタシアとは別の形で再開しあうことに・・・・それは疾風の心に深く刺さる出来事の始まりの一つであったことを・・・・・

 


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