ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「STRIKE WITCHES~私にできること~」

ED「ユメセカイ」


第12話「STRIKE WITCHES」

数十分後

 

 

「は?撃墜命令?」

 

『そうなんだ。今、中佐たちが出撃した』

 

宮藤を追って基地を飛び立ち数十分。無線にに管制から通信が入った 通信相手のエイラが言うには、宮藤の脱走がばれて、上から撃墜命令が下ったらしい 。厄介なことになった。

 

『私も出撃しようとしたんだけど…』

 

「夜間哨戒だけでも大変なのに、昼間の戦闘もこなしたんだ。今は休め」

 

これ以上エイラに無理をさせたくない

 

『…ごめん』

 

「そんな声出すなエイラ。心配するな、ちゃんと生きて帰るから」

 

『約束だぞ!!絶対だかんな!///』

 

なぜだが知らんが恥ずかしいなこの会話。今まで女性隊員と話してもこんな感情わかなかったのに・・・・

 

『…あ、あのな疾風!その、この任務が終わったら―ザー―に…を――ザー―』

 

すると急にノイズが走り、会話ができなくなってきた

 

「ん?おい!エイラ!管制!応答せよ!」

 

インカムの故障でもないし…ジャミング?

 

「くそ。と、言うことは近いな… 見つけた!」

 

雲が開けた先に、宮藤と人型ネウロイが見えた。一気にスピードを上げ、追いかける 無線なしでも声が届きそうな距離まで近づき、でかい声で叫ぶ

 

「宮藤ィィッ!!」

 

「!? 疾風さん!」

 

「キュィィン!」

 

「ぬわっ!まて!!俺は敵じゃない!!」

 

人型ネウロイがこちらに向けビームを発射する。急制動でなんとか回避し、宮藤の元まで向かう 再び人型ネウロイが片手を突き出しビームを発射しようとする。その間に宮藤が割り込み、制止する。

「待って!疾風さんは悪い人じゃないの!」

 

「…キュィン」

 

人型は突き出した手を下ろす。宮藤のことがお気に入りのようだ 俺は宮藤の横に並び、人型と向かい合う

 

「すまんが俺のことは覚えてるか?」

 

「・・・・」

 

ネウロイが頷いた。よかった・・・覚えてくれたみたいだ。

 

「前のときみたいに頼む。ただ、今度はお手柔らかに頼むよ」

 

「・・・」

 

俺の言っている意味を理解したのか、人型は右手を俺の額にかざし、その手を青白く発光させる

 

「―っ!…ぐぁっ…あがっ…」

 

「疾風さん!」

 

一回目ほどではないがやっぱり痛い。宮藤が止めに入ろうとするが、俺は片手で制す

 

視界がゆっくりと暗くなっていき、俺は。眠るようにして意識がとんだ

 

「キュゥィン」

 

「・・・・・・」

 

ネウロイの手から光が消え、疾風さんの体から力が抜ける。まるで麻酔を撃たれたようにピクリともしない

 

「疾風…さん?」

 

 

『すみませんが彼には、『代弁者』に、なってもらいました』

 

「!?」

 

『私は、人の言葉を、話すことができません。だから彼の体を借りました』

 

「か、借りた?」

 

『はい。洗脳ではありませんので安心してください』

 

このネウロイが、疾風さんを使って会話をしようとしていることはわかった。でも、どっちを見て話せばいいんだろう?

 

『宮藤さんといいましたか?あなたに伝えたいことがあります』

 

「私に?」

 

『はい。こちらです』

 

ネウロイは疾風さんを従えて、黒い雲――ネウロイの巣――の方へ向かった。私も慌ててついていく 因みにに疾風さんのストライカーは動いてない。でも足についたままだ

 

「いた!皆一緒にいるよ!」

 

少し遅れてバルクホルンたちのチームが到着した

 

「あいつが少佐を!!」

 

「待って!よく見て!」

 

激情に駆られて銃口を向ける大尉を中佐が止める そしてその先には宮藤と疾風がいた。

 

「疾風の奴、どうしたんだ?」

 

「前にあったときと同じだ…また洗脳されたんだ!」

 

疾風は全身から力が抜け、四肢がダランとしている

 

「二人が巣に入ってくよ!」

 

「何だと!?」

 

疾風はネウロイの力か何かで引っ張られ、宮藤はそれについていく。やがて暗雲の中に二人は入っていった

 

「入っちゃった…」

 

「奴らの罠か!待ってろ疾風、宮藤!お姉ちゃんが今助けに行くぞ!!」

 

「待ちなさい!少し、様子を見ましょう」

 

雲の回廊を抜け、巣の中心部分らしき大部屋に出た

 

『こちらです宮藤さん』

 

ネウロイはドームの中央付近にある大きなコアのそばへと向かう。部屋の地面に当たる部分が、世界地図を表示する。ちょうどガリアの位置にコアが来ている

 

「あの――」

 

『見せたいものはこれです』

 

向かい合った宮藤とネウロイの周りに無数のモニターが現れる

 

地球が表示されたかと思ったら、大戦初期の映像が流れる。欧州の町を、ネウロイが焼き払っていく

 

『これは、私たちが行ってきた許されるべきではない行為『侵略』です』

 

また別のネウロイが映し出され、一人のウィッチも映し出された

 

「坂本さん!」

 

『あなたたちウィッチは私たちにとって脅威であり興味深くもありました』

 

突然場面が変わり、戦場跡の大穴の中に、ネウロイのコアが残っていた 研究所のようなものが映され、そこには、見たこともない何かと、先ほどのコアがあった

 

『私たちがウィッチを知ろうとしているように、あなたたちが言うネウロイを知ろうとしていた・・・』

 

今度のは見覚えがある、ついこの間の映像だ

 

『ねぇ、私のことからからかってるの!?』

 

「私だ…」

 

『私は科学者。ウィッチを調べているうちに私たちの興味は人類そのものへと移りました』

 

「人類…」

 

『そう、あなたたちが私たちを知ろうとするように、私たちもあなたたちを知りたい。願わくば分かり合いそして共存したい』

 

「…わたしたち、きっと分かり合えるよ!」

 

『ありがとう宮藤さん…』

 

人型は、自分の腕の先に五本指の手を生成し、その手を前へ差し出す

 

『握手していただけませんか?』

 

「うん…」

 

ネウロイの手が、宮藤の手を握ろうとしたとき、その手が止まる

 

「どうしたの?」

 

『誰か…いや『何か』来ます・・・』

 

「え?」

 

『ここにいてください。すぐに戻ります』

 

そういって、彼女は疾風さんごとワープした。

 

「・・・・・」

 

「さっきの奴だ!疾風も一緒!」

 

「洗脳が解けてない!?」

 

「芳佳は!?」

 

「いない、やっぱり罠か!」

 

『逃げてください!』

 

「!?」

 

『ここから逃げてください、早く…!』

 

「こいつ、なにを…?」

 

「キィィン!」

 

人型と俺が、編隊の後ろに周る。驚いてエーリカが銃を向けるが、疾風がいるため撃てない .

ネウロイは、疾風の体を使ってシールドを張る。刹那、ビームが着弾する

 

「!?」

 

「なに!?」

 

「ネウロイが、私たちを庇った…?」

 

『早く逃げてください。逃げて!』

 

それを最後に、疾風の体の呪縛が解かれる。ストライカーが再起動し、意識が戻る

 

「あがっ…」

 

「だ、大丈夫か!?」

 

「あ、ああ。おいあんた!」

 

「キュゥイィン?」

 

「…ありがとな」

 

「…キュィン」

 

ネウロイに表情はないが、疾風にはなぜか、彼女が笑ったように見えた

人型は急上昇、編隊から離れ、ビームを発射した機体をおびき寄せる。まるで、囮になるかのように

ロケットのような機体が編隊のすぐ脇を通り過ぎ、人型を捉える。機体が変形し、腕からビームが発射される

 

「あれは…ロボット?」

 

疾風の頭には、わずかだがネウロイの記憶が残っていた。その記憶の中で、あの機体を見つけた

機体から発射されたビームは、人型を焼き尽くし、巣を貫いた

 

「なんだあいつは?」

 

「ネウロイを一撃で…」

 

「…まずい、巣の中には宮藤が…」

 

「うじゃぁぁ!?芳佳ぁっ!?」

 

「宮藤ィィ!」

 

二人が巣から落ちていく宮藤を追う。あの機体が再び変形し、元来た方角へと飛んでいく

 

「(あれは、ネウロイのコアと一緒にいた…)」

 

「疾風さん?大丈夫ですか?それと、あのネウロイは…?」

 

二人に連れられて宮藤が編隊に戻ってきた

 

「大丈夫だ、体に異常はない。あの人型は…俺たちを庇って死んだ」

 

「!?」

 

「疾風、なぜ二度も洗脳されるようなことに?」

 

「洗脳?義姉さんそれは違う。俺はただ、通訳のために体を貸して…」

 

「その話は後よ。ゴホン、宮藤軍曹、あなたを無許可離隊の罪で拘束します」

 

基地に戻る途中、俺はネウロイが残してくれた記憶を整理していた

 

「(ネウロイの中にもナチス親衛隊のエミリアのような穏健派がいることがわかった。でも、もっと重要なのは、人類のネウロイ研究とその軍事利用・・・ あのネウロイはその存在を知っていた。あの機体がビーム兵器を持っていることも。つまりあれには、ネウロイの技術が使われてる可能性がある。だが、それをどうやって立証する?)」

 

「あれ?誰かいるよ?」

 

滑走路には戦闘服の男が八人ほど、士官服を着た初老の男が一人立っていた なんか胡散臭そうなやつだ。

とりあえず、彼らの手前で着陸する

 

「ご苦労だった、ミーナ中佐」

 

なかなか渋い声で男は言った。階級章からして、大将か?

 

彼の後ろに、先ほどの機体が着陸する。直後、周りの戦闘員たちが俺たちに向け小銃を向けた。

 

「まるでクーデターですね、マロニー大将」

 

「正規の命令に基づく配置変換だよ。この基地は、我々ウォーロックが引き継ぐことになる」

 

基地から出撃していないウィッチたちが出てきた。エイラもいる

 

「!」

 

あっちも俺に気づいたみたいだ。再会を喜びあいたいけど、そんな状況じゃないようだ

 

「ウィッチーズ、全員集合かね?」

 

「ウィザードが一人いるがな」

 

「君か、噂の男性ウィッチは」

 

「戦闘要員の出撃中に配置変換をいきなり実行するとは、上はずいぶん焦っているんですな大将殿」

 

「口に気をつけたまえ」

 

「生憎こういう性分なんでね」

 

俺は奴を睨みつけた。だが俺と話すのは時間の無駄と判断したのか、彼は矛先を宮藤に向ける

 

「…君が宮藤軍曹か。ミーナ中佐、彼女には撃墜命令が出ているはずだ」

 

「…宮藤、後ろのあれって」

 

「…はい、やっぱり…」

 

「何をこそこそ話している!」

 

「いえ、後ろのロボットが気になってな」

 

「後ろ?ああ、ウォーロックのことか」

 

自慢話を始めそうな顔をしたが、宮藤が・・・・・

 

「そのウォーロックとか言うの、ネウロイが見せてくれた!ネウロイのコアと一緒に、研究室みたいなところにいた!」

 

「俺も見た。俺と宮藤が接触したネウロイは、人類のネウロイ研究とその軍事利用のことを知っていた。彼女はそれを教えてくれた!」

 

「な、何を言っているんだ!まったく、隊員は脱走を企てる、それを止める上官も上の命令を守らない」

 

「自分とこじゃそれが普通だったけど」ボソッ

 

家の部隊はよく軍規というマニュアルにとらわれず臨機応変にやってたからな。

 

「黙れ!ゴホン、ただいまをもって、501JFWは解散、ウィッチ諸君は原隊に復帰せよ。以上だ」

 

はっきり言おう、俺はこういうやつが一番嫌いだ。

 

「ロボット一機でウィッチ12人の代わりをさせようってか。馬鹿げてるな」

 

「黙れといっているだろうが!この傭兵風情が!」

 

「あんたの命令を聞くつもりはない。あと、俺はちゃんとした正規兵だ」

 

「小生意気な…」

 

「何とでも言え。そこを通せ。部屋の荷物を纏めたい」

 

「異世界人の君に行くあてなどないだろうに」

 

「これから見つけるさ」

 

ほんの一瞬だけ、エイラのほうを見てから、俺は基地の中へ入っていった

 

 

 基地宿舎

 

 

「疾の字!」

 

自分の部に向かう途中、俺の機体をよく整備してくれた野武士整備士が駆け寄った

 

「どうした?」

 

「中佐が、これをあんたに渡すようにって」

 

と何かの紙を渡した。

 

「これは・・・書類か?…」

 

俺はその書類を読む

 

「どうだ?」

 

「…スオムス空軍に行くことになった」

 

渡された書類は、エイラの指揮の元、スオムス空軍で義勇兵として戦えという辞令だった

 

「よかったな」

 

「ああ、本当に。お前も元気でな。」

 

「ああ、またいつか、会おうぜ」

 

お互い手を振り、その場を離れる。中佐には後でお礼を言っておかないと。最後まであの人には敵わないな

 

 

 

そして、別れのときが来る

 

俺とエイラ、サーニャは貨物列車に便乗してハーウィックの港に向かい、そこから船でスオムスへ渡る 。車両に積まれた木材の上に座り、海を見ながら風に吹かれる

 

「スオムスでよかったのか?お前の実力ならカールスラント辺りにスカウトされても…」

 

実際に俺は義姉さんに誘われたが、

 

「義姉さんには悪いけど仮にスカウトされても、断ってこっちに来たと思うよ。カールスラントのお堅い空気は俺には合わないからな」

 

「ハハッ」

 

「フフッ」

 

楽しく笑い合っているが、お互いの顔はどこか晴れない。あんな形で解散となったのだから、無理もない

 

「あ、あのな、疾風…その、向こうについたら・・・サーニャ?」

 

「ん…っ」

 

するとサーニャの固有魔法に反応があった。

 

「どうした?」

 

「船が…燃えてる…」

 

「船?」

 

「…おい、あれ」

 

俺は海の一点を指し示す。ここからでも分かるほどの大きな船・・・・あれは空母か?空母が黒煙をあげ、時折爆発を起こす

 

「あれ、赤城じゃないカ!?」

 

「赤城が、ウォーロックの攻撃を受けて…芳佳ちゃんが戦ってる」

 

「ウォーロック…今すぐ基地に引き返そう!」

 

「どうやって!?」

 

俺はひとつ後ろの車両に積まれた貨物の一つにかけられたカバーを外す。そこにあったのは

 

「バイク?」

 

「九七式側車付バイクだ。あそこを出る前に整備士にもらった。」

 

「運転できるんダナ!?」

 

「当たり前だ。サーニャはサイドカーに、エイラは後ろに乗れ。飛ばすぞ!」

 

そう言い俺たちは全速へ基地の方へ向かった

 

 

 基地前

 

 

「疾風…次からは安全運転で頼む」

 

「…すまん」

 

「う~」

 

基地のハンガーの前まで来た。でも、その間に二人は疲れ切ってしまったご様子 俺の雑な運転と悪路が相まって、かなりハードなドライブになってしまった。俺は俺で、エイラの双丘が背中に押し付けられて…云々

それと、戦闘機のゴーグルが役に立ったのは別の話

 

「これからどうする?」

 

疾風「ウォーロックはおそらく、管制塔から遠隔操作されているはずだ。俺は管制塔を制圧しに行く」

 

「一人でカ!?」

 

「相手は殴り合いもできない連中だ。負けたりしない」

 

「私たちはどうすれば?」

 

「ここに残って、格納庫に入る方法を探るか、他のみんなが来るのを待っててくれ」

 

「疾風…」

 

「…行って来る」

 

 

 管制塔

 

 

「ウォーロック強制停止システム、作動!」

 

しかしウォーロックは止まらず暴れ出す

 

「っ!なぜだ!なぜ停止しない!?」

 

次の瞬間、管制室のドアを蹴破って刀を持った男が入ってきた

即座に反応した警備兵二人がMP40を構えるが、一瞬にして斬られる

 

「がっ!…あ゛くっそいてぇ…」

 

「峰打ちだけどいってぇ~…」

 

「全員動くな!武器を捨てろ!」

 

「「ひっ…」」

 

「貴様ぁ…!」

 

「こうなるだろうと思ってた。ウォーロックを止めろ!」

 

「できるものならとっくにやってるさ!」

 

「撃墜するしかないか…」

 

「…!」

 

「無駄なことはやめろ!」

 

研究員の一人が、倒れた男のMP40を手に取り、俺に向ける。俺はすぐに反応し、太刀を向ける

 

「待て!武器を捨てろ!」

 

「どっちに言ってる!?」

 

「研究員にだ。疾風大尉、一つ頼みがある。私のことはどうしてもいい。だから、閣下や部下には手を出さないでくれ」

 

「副官!」

 

「…いい部下を持ちだな、大将殿」

 

俺はマロニーを睨む

 

「…」

 

「副官、一つ聞いてもいいか?なぜこの研究に関わった?」

 

「…戦争は男の仕事だ。女には任せられない」

 

「本当にそれだけか?」

 

「…ウィッチを、少女たちを、戦わせたくなかった。傷つけたくなかった」

 

「だから、ネウロイの技術を利用しようとしたのか」

 

「それ以外方法がなかった…」

 

「そうか‥‥だがな」

 

「!?」

 

俺は副官の襟首をつかみ、壁に押し付ける。腹部に膝蹴りを食らわせる

 

「彼女らは自分の意思で戦っている!祖国のため、家族のためという意思でな!お前はその思いを踏みにじった!俺の言ってる意味が分かるか!」ドガッ

 

「ぐはっ!」

 

「実際にウィッチと肩を並べて戦ってみろ!さっきまでみたいな綺麗事なんぞ言ってられんぞ!」

 

俺はそいつの顔を殴る

 

「ひでぶっ!」

 

解放された副官はヘナヘナと地面に座り込む。俺は彼の首筋に刀を向ける

 

「一度死んでみるか?…」

 

「待って!」

 

「中佐!?」

 

管制室の入り口には、ミーナ中佐たちカールスラント三人組が立っていた

 

「殺すのは、ダメよ」

 

俺はしばらく考え、刀を鞘に戻すが

 

「ふんっ!」

 

代わりに副官のすぐ横の壁を思いっきり殴る。少し穴が開いた

 

「疾風一体何があった?」

 

「…ウォーロックが暴走した挙句、赤城を攻撃。宮藤が戦ってる」

 

「宮藤が!?」

 

「格納庫に急ごう!」

 

赤城上空では宮藤とウォーロックが激しい空中戦をしていた

 

「キュィィィン!!」ゴォォォ

 

「っ!」ダダダダダ

 

「キュィン」

 

するとウォーロックが突然空中で静止する。V字型の赤い光が消え、機体内部からカプセルに入ったネウロイのコアが露出する

 

「(! 人型ネウロイも、同じ事をした。あのネウロイは、私たちと分かり合おうとした。もし、このネウロイもそうなら…)」

 

銃口を下げ、コアに近づいていく。左手を銃から離し、コアへと伸ばす

 

「キュゥィン!」バシュン!

 

「きゃっ!」

 

突然ビームが発射されるが、とっさに張ったシールドで事なきを得る

 

「(違う…このネウロイは、敵なんだ!)」

 

格納庫前

 

「つまりだ、宮藤がネウロイと接触しようとしたから、奴等は慌てて、尻尾を出したって訳だ。わかるだろう?ミーナ」

 

「はいはい」

 

「だろう?エーリカ?」

 

「あー、もう私の知ってるトゥルーデじゃない…」

 

「俺も接触したんだけどなぁ~ネウロイと人間の通訳になったんだけどナァ…」

 

義姉さんはこういう時になると周りが見えなくなる

 

「あら?」

 

「どうした?」

 

「格納庫が開いてるわ。行きは鉄骨で閉まってたのに…」

 

「あ、オーイ!こっちダ、こっち!」

 

「エイラ!」

 

「お!おいでなすったか」

 

「整備士!お前がやったのか?」

 

「中から開けてくれたんです」

 

「すごかったんダゾ!こう、ドグァーン!ってなってナ」

 

「(鉄骨折れ曲がってる…)」

 

「(地面もかなりえぐれてる。かなり強引に開けたな)」

 

「(何をやったらこうなる・・・・)」

 

「中佐。ストライカーの用意はできてます。こっちです!」

 

「急ぎましょう!」

 

皆、自分のストライカーを履き、武器を手に取る 自分も紫電改に足を通し動作確認をする

 

「飛べそうか?」

 

「問題ない。ところでエイラ」

 

「なんダ?」

 

「俺が宮藤を追ってたとき、無線で何か言いかけたじゃないか。あれってなんだったんだ?」

 

「ウェ!?えー、いや、あのその…///」

 

突然赤くなって下を向く。狐の耳がパタパタ動いている

 

「(二人っきりでロンドン観光に行こう、て言うつもりだったなんて言えない…)」

 

因みにロンドン巡りの最中に「今度はスオムスに来てくれ」と誘うつもりだった。

 

「? まぁ、言いたくないなら良いけど…」

 

「と、とにかく行くゾ!///」

 

「あ、おい!待てって!」

 

他の皆の準備完了、到着を待たずに先行する

 

「青春ねぇ…ちょっとうらやましい」

 

「疾風にもついに春が来たか・・・お姉ちゃん少し寂しいな」

 

「おーい!」

 

「ハァ…ハァ待ってください」

 

「お?きたきた!」

 

ちょうどリーネやシャーリーたちが到着し、ストライクウィッチーズが再集結した 。

一方。沈没寸前の赤城上空では、今だ激しい空中戦が繰り広げられていた

 

「キュィィン!」バシュンバシュン!!

 

「くっ!はぁはぁ…」

 

さすがに疲れが出てきた宮藤に追い討ちをかけるように、ウォーロックが多重ビーム攻撃を仕掛ける。シールドを張り必死に耐える宮藤。刹那、ウォーロックの脚部に対戦車ライフル弾が着弾する

 

「キュィン!?」

 

「あ!」

 

バランスを崩したウォーロックは、赤城を巻き込み、海に墜落した

 

「お待たせ!」

 

「一人でよく耐えたな、宮藤」

 

「坂本さん!皆!」

 

「こいつは必要なくなったな」

 

脇に抱えたストライカーを指しながら言う

 

「…そうでもないかも」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「…確かにまずいな」

 

エイラの引いたカードは塔の正位置。意味は『破壊、破滅』

 

「…皆!あそこ!」

 

「キュゥゥィィィィンッ!!」ドドドドドドド

 

「…ウォーロックが、赤城と…」

 

「融合した…?」

 

ネウロイ化したウォーロックが赤城を取り込み襲い掛かる。

 

「キュィィン!」バシュンバシュン!!

 

「来るゾ!」

 

「退避!」

 

アカギからビーム攻撃が開始され、12人は敵の上下左右に展開する。 坂本少佐とミーナ中佐の合体魔法で、敵のコアの位置が判明する

 

「っ! 来ます!」

 

再びビーム攻撃が始まり、各々攻撃を開始する

 

「シュトルム!」

 

「どりゃぁぁっっ!」ダダダダダ

 

「エイラ!サーニャ!背中は任せた!」ブゥゥン!

 

「OK!」

 

対空砲を潰すため、かなり接近して攻撃する

 

「まずは一つ!」

 

俺は剣技バーチカルを放ちドンドンつぶしていく。

 

『宮藤さん、リーネさん、ペリーヌさんが内部に潜入、コアを叩きます。他は三人を援護して!』

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「疾風!右ダ!」

 

「っ!?くぅ…」

 

とっさに刀で右から来たビームを斬る。今のはかなり危なかった

 

「助かった!ありがとうエイラ!」

 

「なんてことないって///」

 

エイラが顔を赤くしそういう。

 

「いっけぇぇっ!ルッキーニっ!」

 

「あいよー!」

 

しまパフコンビがかなり強引に攻撃を加え、厄介だった艦首のウォーロックが吹き飛んだ

 

「行きますわよ!」

 

「「はい!」」

 

突撃部隊の三人が開かれた突破口から内部に侵入しようとするが

 

「!…まずい」

 

ウォーロックがあった場所の奥に生きている対空砲が見えた。突撃部隊は気づいていないようだ。

対空砲の砲口にビームが収束し始める。俺は全速力で対空砲と三人の間に向かう

 

三人「!?」

 

(間に合え!)

 

ふっといビームが対空砲から発射され、三人を射抜こうとする。刀では間に合わない俺は割り込んでシールドを張るが

 

「ぐっ…あぁぁ!」

 

「疾風さん!」

 

「疾風!」

 

少ない魔法力で形成されたシールドは小さくひ弱で、太いビームを防ぎきれず、腹を射抜いた。完全にコントロールを失い、血を流しながら海に向かって落下していく

 

「エイラ、行って!」

 

「うん!」

 

「う…あが…」

 

視界は真っ赤に染まりどんどん降下していく

 

「疾風!手を伸ばせ!――」

 

次第に目の前が暗くなっていき、俺の意識は飛んだ・・・・

 

 

 

 

「ここは・・・・」

 

目が覚めるとそこは何もない真っ暗な空間だった。そして俺は撃墜されたことを思い出した。

 

「そうか・・・・・俺は死んだのか・・・・」

 

「いいえ、まだ死んでいないわ。村正・・・」

 

誰かが俺の名を言う。俺は後ろを振り返るとそこには・・・・・

 

「・・・・・・・姉さん」

 

そこには11年前に死んだ姉さんがいた。

 

「姉さん・・・・本当に姉さんなのか!?」

 

「ええ・・・久しぶりね正ちゃん」

 

姉さんは微笑んで言った。

 

「姉さん。そう言えば『まだ死んでいない』ってどういうことだ?」

 

「そうだね~なんていえばいいのかな?簡単に言うと幽体離脱みたいな状態だね」

 

「幽体離脱?」

 

「そう、今のあなたは精神みたいなのが抜けた感じだね。」

 

「・・・・・姉さん俺…」

 

「正ちゃん・・・・もう何も言わなくていいわ。あなたは十分に頑張った。・・・・正ちゃんこれからどうするの?今なら私の力で元の世界に返せるけど・・・・」

 

「・・・・・」

 

「悩んでるのね。正ちゃん」

 

「ああ・・・・少佐にはああ言ったけど。俺はただ戦うことしか知らない軍人だ。本当にどうすればいいか・・・・」

 

「じゃあ、ただの正ちゃんはどうしたいの?」

 

「・・・・ただの俺?」

 

俺は姉さんの言うことに首を傾げた。

 

「そう、日本国海軍大尉の疾風村正でも、501統合戦闘団ストライクウィッチーズの臨時隊員の疾風村正大尉でもない。ただの一人の男の子である疾風村正はどうしたいの?」

 

そう言われて俺は考えたが‥‥すぐに答えが出た。俺は‥‥

 

「俺は‥‥大切な人を守るため、そして彼女と一緒に居たい。だから俺はこの世界にいるよ」

 

そう聞き姉さんは満足げな顔をした。

 

「そう、なら早くその子の所に戻ってあげなさい。きっと心配しているから・・・」

 

「・・・・・姉さん・・・・また会えるか?」

 

俺がそういうと姉さんは優しく抱きしめた。

 

「ええ・・・・いつも一緒にいるよ。例え見えなくても、聞こえなくても私はあなたの心の中で生き続けているからね」

 

「・・・・姉さん・・・ありがとう・・・・」

 

「あ、それとあの娘にこう伝えておいて・・・・・・・・・・」

 

姉さんは俺に伝言を託す。すると真っ暗だった。空間が突如光に包まれた。

 

 

 

 

「疾風?疾風!何で目を覚まさないんだよ!」

 

 

腕に収まっている疾風の体は冷たく、力がない。ついさっきまで空を飛び回り戦っていたのが嘘みたいだ

 

 

「治癒魔法はかけました…でも、もう…」

 

 

宮藤が言わんとしている事は分かった。“疾風の心臓は動いていない”あいつを抱えている私が気づかないはずがないアカギを撃破し、ガリアも解放されたのだが、隊の空気は重い

 

「…ウグッ…ヒグッ…」

 

「エイラ…」

 

私は耐え切れず、泣き出してしまった。大粒の涙が頬を伝う 。バルクホルン大尉も泣いている。大尉もあいつのこと本当の弟のように思っていたから・・・・

 

「エグッ…なんで…ヒグッ…今までだって…帰ってきたじゃないか…」

 

今まで何度も落ちそうになったけど、あいつは必ず帰ってきた 。いつしか私の中で、疾風は必ず生きて帰ってくる、そういう固定概念が生まれ始めていた

 

「ヒグッ…なんで、なんで告白する前に死ぬんだよっ!!…」

 

疾風の胸に顔をうずめる。私は疾風が好きだ。でも、疾風はもうこの世にいない。

塔のカードは、アカギではなく、疾風の死もしくは失恋を暗示していたのかもしれない

 

「こんなんなら…好きにならなきゃ…」

 

・・・・ドクンッ

 

「…え?」

 

ドクンッ

 

(動いてる…?)

 

顔を上げ、疾風の顔を見る。瞼は閉じられたままだ

 

「(やっぱり、何かの勘違い・・・)」

 

そのとき、目尻に溜まった涙を誰かがふき取った

 

「…!…は…や……て?」

 

「そんな顔すんなよ…美人が台無しだぞ」ニコッ

 

活力のない声、ぎこちない笑顔だったけど、私にはすごく輝いて見えて、

 

「疾風ぇぇぇ!!」

 

周りの目なんて気にしないで、思いっきり抱きついてしまった。抱きついてきたエイラをしっかりと受け止める

 

「疾風ぇ…疾風ぇ…ヒグエグッ」

 

「エイラ・・・すまん心配かけた」

 

俺ががこの世界に戻ってこれたのは奇跡だ

 

「なぁ、いい加減泣き止んでくれよ」

 

「でも、どうして…心臓は止まって…エェ?」

 

「よかった・・・・よかった・・・・」

 

「トゥルーデ・・・鼻水・・・・」

 

「疾風の精神力なめんナヨ!」

 

でも俺は戻った。なぜなら、大切な人がいたから

 

「とにかく…本当に良かった…」

 

俺はこの世界で生きていく。もう、未練も義務感もない

 

「十二人揃ってこそのストライクウィッチーズですもの」

 

願わくば、エイラと一緒にいたい。仮に戦争が終わっても、ずっと…

 

「さぁ帰ろう。私たちの家へ」

 

いつかこの気持ちを伝えよう

 

「なぁ、エイラ」

 

いつになるかは分からないけど

 

「グスッ…ん?」

 

絶対に伝えよう…

 

「スオムスでもよろしくな!」ニコッ

 

お互いがまだ飛べるうちに…

 

 

ハーウィックの港へ向かう列車の中、疾風と私は向き合って座っていた。今回は貨物列車ではなく、ちゃんとした客車だ 。サーニャが私のひざに頭を乗せて寝息を立てている

日はとっくに沈み、空には満天の星が輝いていた 。初めて疾風と会った時と同じくらい奇麗な夜だった。

 

「「…」」

 

今ではこの沈黙もなぜだか心地いい

 

「なぁ、エイラ」

 

「?」

 

疾風が夜空から視線を動かさずに呟いた

 

「話したいことがあるんだ。」

 

疾風は私に話し始めた 。

撃墜されたあと、暗黒の空間で自分の姉にあったこと。 元の世界との未練を断ち切り、今居るこの世界に骨を埋める決心をしたこと 。

 

「こっちに戻ってこれたのはエイラのおかげでもあるんだ」

 

「わ、私は何も…」

 

「ありがとうエイラ」

 

お礼を言う疾風の顔が月明かりで魅力的に見え、私は思わずドキッとする すると疾風が

 

「ああ、それと、姉さんからエイラに言伝があるんだ」

 

「言伝?何言われたんだ?」

 

すると疾風は不敵の笑みで

 

「それはな・・・・・・・・・・」

 

私はその言伝を聞いてさらに赤くなった。

 

「わ、私はもう寝るからナ///」

 

その言葉に恥かしくなり私は寝たふりをした。

疾風にバレないように、こっそりポーチからタロットを引く。

暗闇のせいで何のカードが出たか分からなかったが、悪いカードではないことは確かだ

 

「(恋人のカードだったら良いナ///)」

 

そんなことを思いながら、カードを戻し、目を瞑る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それからあの娘に伝えておいて「あの子は抜き身の刀のように危なっかしいから、できればあの子の鞘になってあげてね。それにとても寂しがり屋だからよろしくね義妹さん♪』

 

その後、私は言伝の内容を思い出して顔を赤くし悶えたのはまた別の話・・・・・

 

 

 

 

こうして彼らの戦いは一時終わった。だがそれはまだ始まりの序曲に過ぎなかった。

 

 

                  第1章501ストライクウィッチーズ編 完      

 

 

                  次回「ペテルブルグへ」

 

 

 

 




はい、どうも疾風海軍陸戦隊です。長かった第1章を終わらせるまで・・・・というわけで第1章終了です。また501の日常編は番外編などでお書きします。
さて次回は第2章502ブレイブウィッチーズ編です。新キャラとかも出ますからお楽しみに!!

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