ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「色は匂えど散りぬるを」


ED「鋼鉄ノ鳥」


第154話「演劇作戦」

「今回、わざわざB部隊に来てもらったのは他でもない・・・・・・・」

 

ジャックザリッパー事件から数日後、セダン基地の談話室でグリュンネ少佐が皆に言う。その中にはディジョンにいるB部隊も出席していた。

 

「今506は危機に瀕しています。これを打開するため演劇をします!!」

 

突如グリュンネ少佐の言葉に皆は一瞬ポカーンとした表情になる。まあそれはそうだろう。いきなり劇をやると言われてすぐに言葉が出る人はいない。それ以前にもはや学級会みたいな感じになってしまっている。しかしその中で黒田は手を挙げて

 

「はい、はい、はい!!それなら演目は猿蟹合戦がいいとお思います!」

 

「なんじゃ?また扶桑のローカルネタか?」

 

「さるかにがっせん?」

 

黒田の言葉にハインリーケとジーナ中佐は首をかしげると疾風が

 

「ああ、確か蟹の子供たちが悪いサルに怪我をさせられた親の蟹の仇を討つため、臼とか蜂とか栗なんかと一緒にそのサルを懲らしめる話だったか?」

 

「はい!で、その話で私、すっごい得意な役があるんですよ!」

 

「どんなの?」

 

エミリアも興味津々で聞くと黒田は満面の笑みで

 

「馬の糞!!」

 

「「「ぶふっ!!」」」

 

「ん?糞じゃなくて昆布じゃなかったか黒田?」

 

いきなりの黒田の言葉に皆が吹き出し、疾風は首をかしげてそう言う。猿蟹合戦においての登場人物である昆布と糞に関しては地方によってさまざまなため、別にどっちでも不正解ではない。話を戻そう。黒田の突然の言葉を聞いたグリュンネ少佐とハインリーケは恥ずかしさのあまり顔を赤くして

 

「「却下です(じゃ)」」

 

と反対を出すのであった。

 

 

 

なぜこんなことになったかというとそれは三日前にさか戻る。突如キーラ少佐に呼ばれた俺たちは談話室に座っていた。

 

「B部隊にも声は届いているかな?」

 

『問題ない』

 

キーラは無線を使い話がBにも聞こえるようにしていた。そしてスピーカからジーナ中佐の声が聞こえるとキーラは話始める

 

「さて、良いニュースと悪いニュースがある、どちらから聞きたい?」

 

「では良いニュースから聞きましょう」

 

キーラの言葉にグリュンネ少佐がそう言うと

 

「まず一つのいいニュースは例の格納庫の爆発の原因が判明した。当日の午後に到着した物資の中に爆薬は仕掛けられていた。時限装置付きの可塑性爆薬、ノーベル808だ」

 

「ブリタニアの特殊作戦執行部(S・O・E)が使う?」

 

「もちろん彼らが使い始めた爆薬だが、リベリオンも使う」

 

『リベリオンがそんな破壊工作なんて汚い手を使うわけないだろ!』

 

マリアンが抗議するとアドリアーナがキーラにこういう

 

「それがいいニュースと?で、もう一つは?」

 

「礼の殺人鬼、レイナーレを影で動かした物の手掛かりだ」

 

そう言いキーラが取り出したのは一枚の書類だった

 

「これは彼女の部屋から見つかった殺人の依頼書、もとい命令書だ。あいにく依頼主はMというイニシャルしかなあったが書かれた単語はリベリオンの者、つまり依頼主はガリア政治家を語ったリベリオン人ということになる。そう、これが悪いニュースではあるのだが、その物資に外部の者が接触した可能性がない事と殺人鬼の依頼者。つまり整備班員とA、B両部隊のウィッチの中に犯人がいるという事だ」

 

と、そう言うキーラに疾風は

 

「その根拠はどこにあるキーラ少佐?もしかしたら、そのガリア政府のお偉いさんがリベリオン嫌いで、そのリベリオン人を貶めるためわざとアメリ・・・・・リベリオン風の英語を書いた可能性だって否定はできないだろ?ノーブルウィッチーズ設立の件でもリベリオンウィッチの参入に反対する者も多かったはずだ。そこで彼女らの名を落としリベリオンが506から手を引かざるをえない状況を作るためそうしたという考えはないのか?」

 

疾風がそう鋭い目でキーラを見るとキーラはふふと笑い

 

「なかなかの推理力だ。君はまるでシャーロックホームズのようだ。だが大尉。いずれにせよ実行犯と依頼主が判明するのは時間の問題。それまで皆さんが無事出ることを祈るよ」

 

キーラが意味深な言葉を残し部屋を出て行った。そしてその話を聞いた後、AとBは互いにギスギスした感じになっていた。そして例の爆破事件と表にはなってはいないがジャックザリッパーでの件でマスコミによる506のイメージダウンをこれ以上、下げないため上層部はグリュンネ少佐を呼び、何とかしろと 責し、グリュンネ少佐はこれを打開するべく、イメージアップのため児童養護施設で慰問活動として506で劇をするという話になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで、それでは今から演出脚本の私イザベルと怪奇映画チャンバラ大好き黒田さん。異世界から来た疾風さんにエミリアさん。そして、ザ・シンデレラことマリアンによる企画会議を執り行い…」

 

「シンデレラって呼ぶな!殴るぞ!」

 

とある個室でイザベルもといアイザックと黒田に疾風とエミリアそしてマリアンが演劇の企画会議をしていた

 

「だいたい、なんで私がこんなことしなきゃならないんだ!」

 

「演技経験者で上手だって言ってたし」

 

「だからそれは小学校の劇でやっただけだと・・・・それだって嫌々…」

 

「別に照れなくてもいいじゃないマリアン」

 

「照れてない!」

 

黒田の言葉にマリアンはそう返すがエミリアはそれを冷やかすように言うとマリアンは顔を赤く染めて大声を上げる

 

「まあ、それよりもなんで俺とエミリアも一緒なんだ?」

 

「え?疾風さんたちは異世界から来たんでしょ?何か参考になるかと思って」

 

「で、どんな劇にするの?」

 

「この前は散々だったから、リベンジを含めてシェイクスピアの作品がいいかなと思うんだけど?」

 

「子供が見るんだから子供でも楽しめるようなものにしないとな」

 

「確かにそうね。ド〇フな感じがいいかしら?上からタライが落ちてくるような?」

 

『『タライ?』』

 

エミリアの言葉に黒田とアイザックが首をかしげる中、マリアンが話に入り込めず

 

「むむ…勝手にやれ!私は知らないからな!」

 

「え~」

 

「うむ・・・仕方ない。俺たちでやるか・・・・」

 

そう言うと布団に入り込みそのまま寝てしまった

 

 

 

 

そのはずだったのだが・・・・・

 

「(気になって寝られない・・・)」

 

毛布をかぶり寝たふりをするマリアンだったが、皆のことが気になり眠れない状態であった。そんな中、4人の会話が彼女の耳に入る

 

「これだとストーリーに意外性がないよね」

 

「(子ども相手の劇に意外性とか必要か?)」

 

「犯人の動機はどうしよう?」

 

「(犯人って!?動機って!?)」

 

「この役はジャンプ力のある人じゃないと」

 

「(待て待て待て!!!ジャンプ力がど~してシェイクスピアの劇で必要になるんだ!?)」

 

「う~ん・・・・ここは爆発シーンが必要じゃないか?」

 

「いや、ここはキノコを食べたらパワーアップで・・・・」

 

「いやいや、じゃあここは敵を吸い込んでコピー技を・・・・」

 

「(爆発ってなんだ!?それに疾風とエミリアは一体何の話をしているんだ!あと疾風、お前もか!?)」

 

「この際だからほかの作品も混ぜてみない?」

 

「じゃあ、適当で」

 

「(歴史的名作になんてことを!?演劇っていうのはな・・・・・演劇というのは!!)」

 

皆の意味文な言葉にマリアンは怒りを感じ始める。すると

 

「リベリオンのテイストも入れたいよね?」

 

「いい考え!カール大尉に聞いてみよう!」

 

すると邦佳がマリアンを起こし始める

 

「ねえ、カール大尉、大尉ってば」

 

「んん…何だ?よく寝てたのに」

 

狸寝入りしていたマリアンは目が覚めたばかりのような演技をする。寝ぼけたふりをするマリアンに黒田が聞いた。

 

「リベリオンの事知りたいんだけど大尉の故郷ってどんなとこ?」

 

「故郷?・・・・・・・故郷は駄目だ」

 

「教えてよ」

 

「絶対に嫌だ」

 

「教えてくれたら扶桑の成田山の交通安全のお守りあげるから」

 

「いるか!」

 

「教えて教えて教えて!」

 

と、黒田はまるで子供みたいに地面に転がりバタバタと騒ぎ始める。そしてそんな彼女の駄々っ子ぶりにとうとうマリアンが折れ、彼女はため息をつくと

 

「あー五月蠅い分かった!教えるから黙れ!ただし、ひとっ言でもバカにしたら本気で殴るからな!!」

 

「「は~い!」」

 

そう言うとアイザックと黒田は正座し、疾風とエミリアも耳を傾ける。そしてマリアンは少し恥ずかしそうな顔をし

 

「本当にわかっているのか?・・・・・まあいい。私が生まれたのはオレゴンの北西にあるハバードって町だ。家はホップを栽培している。」

 

「ホップって確かビールを作るときにいれる奴だよね?」

 

黒田がそう言うと疾風は

 

「ハーバード・・・・・」

 

「なんだ疾風?もしかしてハーバード大学なら別の州よ」

 

「いや違うよエミリア。確かハバードて、第二次大戦のエースパイロット。マリオン・カール少将の出身だったはずだな」

 

「ああ、そう言えばそうだったわね」

 

「マリオン・カール?誰だそいつは?」

 

疾風の言葉にまりあっは首をかしげる無論、黒田とアイザックも同じだ

 

「マリオン・カール。アメリカ・・・・こっちの世界のリベリオンのハバード出身で、1915年11月1日生まれのアメリカ合衆国海兵隊のパイロットで第二次世界大戦の太平洋戦線で18.5機の撃墜数を記録し、戦後はアメリカ海軍の超音速実験機のテストパイロットを務め、多くの速度記録を樹立して1973年に退役。最終階級は、少将。中でも彼の有名な戦いは1942年8月26日の日本のエースパイロット笹井醇一少佐の一騎打ちが有名」

 

「へ~そんなすごい人なんですね」

 

「どこで知ったの疾風さん?」

 

「士官学生のころは図書室の主だったからな。それとは別にアメリカ海兵隊に友人がいてな。そいつもハバード出身でな詳しい話はそいつから聞いた。確かに黒田の言う通りすごい人だそんなすごいエースパイロットの生まれた街が悪い所なわけないよ」

 

疾風がそう言うとマリアンが意外そうな顔をし

 

「そうか・・・・・そうかもしれないな。私は嫌いだったけど」

 

「嫌い?自分の故郷が?」

 

エミリアが首をかしげるとマリアンはどことなく暗い顔をし

 

「ハバードの暮らしには何もなかった、夢も希望も将来も。あの町に生まれたら大抵は親と同じように働き死んでいくだけだ。学芸会でほんのわずかな間シンデレラになっても幕が閉じて喝采が終わった瞬間に思い知るんだよ。自分がただの農家の娘で待っているのは家の手伝いで汚れた手に色褪せて擦り切れた服、塩辛くて油っぽいダイナーでの食事。夢を抱けば抱くほど現実が押し寄せてくるんだ・・・・・・・・・黒田、お前たちは貴族と私たちの間に何も違いがないって笑うけどなそう言われるたびに私みたいな人間は傷つくんだよ・・・・・・」

 

と、そう言いマリアンは皆の方を見ると黒田とアイザック、そしてエミリアが涙を流していた

 

「ごめんなんか気持ちをわかってなかったよ」

 

「うん、反省・・・・・・」

 

「なんて、悲しい話なんだ・・・・・」

 

「お前も苦労したんだなマリアン」

 

「いや別に責めた訳じゃ…放せ!というより疾風お前はなぜ私の頭を撫でているんだ!」

 

「あ、ごめん嫌だったか?」

 

「い、いや、別に嫌だったわけじゃ・・・むしろもっとしてほしい////て、そうじゃなくて!!」

 

そう言うとマリアンは振りほどいてテーブルの上のタイプライターを取り

 

「あーもう!これ以上余計な事を喋るくらいなら5人でさっさと脚本を完成させるぞ!」

 

そう言うと5人は脚本作りの作業を始めるのであった。そしてその様子に聞き耳を立てている者がいた

 

「どう?ジーナさん?」

 

「まあ、殴り合いにはなってないようです」

 

「よかった」

 

「どうも私たちは過保護なようですね」

 

「全く。その通りですわね」

 

5人のことを心配してジーナ中佐とグリュンネ少佐は様子を見に来たがその心配はなかったみたいだ。

そして部屋の中では

 

「大体は完成したけど、もう一捻り欲しいな・・・・・ねえ、疾風さん何かいいお話とかない?」

 

黒田がそう訊くと疾風は

 

「お話ね・・・・・・ああ、そう言えば一つだけあったな。昔、義母さんが寝物語に良く聞かせてくれた話なんだけどな」

 

「どういう話?」

 

「確か覇道を目指した一人の少女と彼女の運命を大きく変えた一人の少年の話だったけな?」

 

「なんか面白そう。ねえ聞かせて!」

 

「僕も気になる」

 

「私も聞きたいわ」

 

「私も少し興味あるな・・・・・で、その話の題名は?」

 

4人がそう言うと疾風は

 

「題名ね・・・・・・・・・題名は『彼方の面影』だな」

 

そう言うと疾風は義母に聞かされた話をするのであった 

 


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