ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

162 / 244
特別挿入歌『彼方の面影』


第155話「彼方の面影」

とある世界に一人の少女がいた。彼女のいた国・・・・いや世界は戦が続き荒れ果てていた。彼女はその国や世界を見てこう思った

 

『この荒んだ世界を変えたい』

 

武も知も優れていたその少女は、この世界を変えたいがため平和な世を目指すため、志を共にした仲間を率い、まずは自分の暮らす国から変え始めそしてその国の領主になることができたが彼女の野望は止まらず、自分の国ではなく他の国も統一し戦のない世界を目指した。そして彼女はある道を目指す。その道とは

 

『覇道』

 

武力をもって国を統治する。元来心優しい彼女の本当の理想とは離れた思想ではあったが、彼女はいち早く平和な世界を作り出すため。そしてその方法こそが平和へと続く道と信じて、彼女はその道を貫いた。

だがそんなある日、彼女のいた世界である噂が立つ。その噂とは

 

『この大陸に降り立つ一つの流星。その流星は天の使者が乗りし物。その使者は一人の少女の心の闇を晴ら平和への道へと導く』

 

その予言に彼女は最初は信じなかったが、ある日彼女は昼間にも関わず、一筋の流星を見た。そして少女はその流星が落ちた地へと行くと、そこには白い服を着た少年がいた。少女はその少年に何者かと聞いた。話を聞くからに少年は自分のいた世界とは違う世界から来たという。そこで彼女は悟った彼こそが例の予言の天の御使いだと。そして彼女は彼を他の物に天の御使いとして担がれないため、自分の傍に起き家臣として扱うことにした。最初はただそれだけであったが、やがて彼の才能を認め、そしてともに過ごすうちに彼女はその少年に対し恋心を抱くようになる。

だが、彼女には目指すべき道や野望があり、その理想を叶えるため覇道の道を行く覇王として素直に彼に甘えることも気持ちを伝えることができなかったが、そんな彼も彼女のことをわかっていたためつらく当たれることがあっても何も言わなかった。

ある日、少女は天の御使いである少年とともに街を歩いていると占い師の人に声をかけられた。そして占い師は少女に向かって

 

『そなたはいずれ偉大な王となり平和な世を築くであろう』

 

その言葉を聞いた少女は少し嬉しがっていたが、その占い師は今度はその少年の方へ顔を向け

 

「大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬようにしなされ。さもなくば、待ち受けるのは身の破滅・・・くれぐれも用心なされよ」

 

と何やら忠告みたいな言葉を掛けられる。この時、少女と少年は占い師の占いの内容を深く考えるようなことはしなかった。それが悲しき結末だと知らずに・・・・・

 

彼女が彼と出会ってからも大陸の戦争は続いた。そして彼女はその戦いを終わらせるため戦の戦火に身を投じた。ある日、ある山の方に不審な人々を見たという情報が入り、少女は最も信頼する部下にと行くように命じた。そしてしばらくすると、御使いの少年がやってきて

 

『その山には敵の伏兵がいる!早く助けに行かないと仲間が死ぬぞ!!』

 

と慌てた様子で少女に言う。彼女はその言葉を聞くや否やすぐに援軍を引き連れ、その山へと向かい何とかしてその伏兵たちを追っ払い、仲間を救うことに成功した。救出に成功し少女は自身の国へと戻ると少女は部屋で休んでいた。聞いた話によると少女が援軍が出立した後、疲労で倒れたというのだ。彼は笑って少女に大丈夫だと言ったが、彼女には少しばかりか不安が残るのであった。

 

それから、しばらくして彼女は隣国の大国へと攻めることを決めた。そして出兵準備が整うとその少年も共に行くと言い出す。戦経験のない少年を彼女は最初は拒んだが、彼の熱意に負け渋々連れて行くことにした。少女は少年に『なぜ、そこまでついて行きたいのか?』と訊くと彼は

 

『何か嫌な予感がするから』

 

と少し苦笑いをしながら答えた。

その後、敵国の将の一人が少女の陣へとやって来た。なんでもその国の王の側近と大喧嘩をしたらしく、その屈辱を晴らすべくこちらに寝返り、その国を滅ぼした後自身も自害すると言い出し、少女はその願いを聞き入れ、その将を歓迎した。しばらくすると少女が休んでいる天幕に少年が入ってくる。少年は顔色は誰が見てもわかるほど血の気がなく、また足取りも少しふらついていた。少女は心配し声をかけるが

 

『大丈夫』

 

と、少し無理して笑うと少年は少女にこういう、『あの将の降伏は敵の罠であってその策に嵌ってしまっては、大きな損害を受けることになる。そこで、策に乗ったふりをして、逆に敵を欺こう』

 

そう言ったのだ。少女もうすうすはその将の動きに違和感を感じてはいた。そして少女の対応は速かった。少年の言う通り策にはまった振りをし、その後の戦いでは少年の言う通りその将が裏切り子Tらへ攻撃を仕掛けたが少女の側近らがのがんばりのおかげで、見事に敵の裏をかくことができ敵に勝つことができた。そしてその後その国の首都まで進撃しこれを占領し攻め落とすことができた。

だがしかし、その戦いの後から少年の調子があまりよくなかった。そんな彼を見た彼女は気を利かせ、気分転換として、彼と共にお忍びで街を歩くことにした。いわゆるデートと言うやつだ。街を歩いたおかげか少年の体調がよくなり、またいつもの笑顔を見せたそんな笑顔を見て彼女も嬉しそうに微笑むその時の少女の微笑は覇王としての少女ではなく本来の心優しい少女の顔であった。

その後、彼女は平和な世を目指すべく最後の大国へと進軍し始める。そして少女の傍には本来は戦場に立たない少年も、先の戦いでの働きが評価され、今回も従軍することになった。そしてその後、激しい戦いが続き何とか勝つことができた。そして勝利した少女は二国の王に三国の協調による平和体制を提案しその王はそれを受諾。そして少女は三国同盟を発表し、ついに彼女が長い間待ち望んだ平和の時代が訪れたのであった。

戦争終結後の夜、奇麗な満月が夜空を照らす日のこと。平和な時代を祝い宴を開いていた時のことだ。少女は宴の中、少年がいないことに気付く。少女は少年を探した。最愛のあの人のことを探していた。そして人気のない河原の方へ行くと、少年は苦しそうにうずくまっていた。少女はすかさず彼のもとに行くと少年は彼女に気付く

 

 

挿入歌『彼方の面影』

 

「・・・・・か。変なとこ見られちゃったな。」

 

少年は背中を岩にもたれさせたまま言った。

 

「大丈夫なの?」

 

「あぁ。心配ないよ。ただ少し疲れただけさ」

 

彼女を心配させまいとにっこり笑う少年だが・・・・

 

「…わたしにそんな嘘が通じると思っているの?」

 

少女の言葉の真意を探そうと、少年は少女の顔を見つめた。そして少女は

 

「・・・・・帰るの?」

 

「みたいだな・・・・だけど良くはわからないよ。だけど・・・・この間から考えていたよこの世界の歴史のことを」

 

「あなたのいた国や世界は未来の世界?だったわね・・・・なるほど。それであなたの知っている歴史だと、どうやら私は国を統一することができなかったみたいね」

 

「ああ、あの最初の大国との戦いで・・・は大敗を期して国を統一することができなかった。それが本来の歴史さ。だがそれを俺は回避した。君の願いをかなえたいゆえに・・・・・」

 

「そう・・・じゃあ、あなたの体調が悪くなったのって・・・」

 

「ああ、どれもこれも歴史の大きな分かれ道になった時だな」

 

「でしょうね」

 

「あれ?君は気づいてたの?」

 

「前に二人で街を歩いてた時に占い師に忠告されたでしょ?『大局には逆らうな。逆らえば身の破滅』ってね・・・・大局。それが歴史のことだとしてあなたの知っている歴史から外れたらあなたは・・・・・」

 

「なるほど・・・・やっぱりそうか」

 

「でも・・・。私は後悔していないわ。私は私の信じる道を貫き、平和な世界を作った。これからはあなたの悔しがるような平和な世の中を作るつもりよ」

 

「そっか・・・・それを聞くと帰りたくなくなっちゃうな」

 

「なら、帰らなきゃいいでしょ?ずっと私の傍にいて」

 

「そうしたいけど・・・・無理かな?」

 

「待ちなさい。こんな別れ方。私は認めないわ。もし消えたら恨んでやるから・・・・・」

 

「アハハ・・・・それはちょっと怖いけど少し嬉しいと思うかな?」

 

「逝かないで・・・・・」

 

そう彼女は言うが少年はだんだんと消えていく

 

「ごめん・・・・・ありがとう。さようなら・・・・誇り高き王・・・・・さようなら・・・・寂しがり屋で心優しい女の子・・・・・・心の底から愛してたよ・・・・・・」

 

そう言うと少年はひかりの粒となり彼女の前から消えてしまう。そして残された少女は・・・・・

 

「何で・・・・何で消えちゃったの・・・・何で私を置いて消えちゃうのよ・・・・・ずっといるって言ったじゃない・・・・・ばかぁ・・・・・」

 

そう言うと少女は泣き出した。なぜ、もっと素直に彼に愛していると言えなかったのか・・・・なぜもっと強く自分の傍にいてほしいと言えなかったのか・・・・何よりも最愛の人が消えてしまう悲しさが彼女を襲う。

少女はただひたすら泣き続けたのであった。その河原で泣く少女は世界を平和にした覇王の姿でなく、心優しい少女の姿だけであった・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥というお話さ」

 

疾風が語り終えると、三人は涙を流していた

 

「ウッウッ・・・・なんて悲しい話なんだ!」

 

「今まで聞いたお話の中では一番の話だよ・・・・」

 

マリアンとアイザックがハンカチで涙を拭いてそう言うと黒田は

 

「うわぁ~ん!!その人、可哀そう。愛した人と別れちゃうなんて・・・・」

 

と、ガチ泣きをしていた。するとアイザックは

 

「ねえ、疾風君。その後はどうなったの?その少女はその人に再び会えたのかな?」

 

そう言うと皆は疾風の方を見る

 

「ああ、それは俺も義母さんに訊いたよ。義母さんが言うには『彼と再び会えたのかはその少女しか知らない』と言われたっきり、なんも答えてくれなかったよ」

 

「え~気になるな~」

 

「まあ、それは俺も同じ気持ちだよ。さて話が長くなっちゃったし、そろそろ脚本づくりに戻ろうか。時間ないし」

 

「ああ、そうだったな」

 

そう言い4人は演劇の台本作業に戻るのであった。そして疾風は先ほどの話を思い出す

 

「(それにしてもあの話をするときの義母さん・・・・・何と言うか妙に複雑な表情をしながら話してたっけ。まるで自分がそのことを実際に体験したような・・・・・・・)」

 

そう疑問に思いつつも疾風は脚本づくりを始めるのであった。

 




疾風の語った物語はあの伝説の物語です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。