ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~   作:疾風海軍陸戦隊

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OP「色は匂えど散りぬるを」


ED「鋼鉄ノ鳥」


第156話「演劇作戦開始」

明朝、まだ日が昇らない頃。脚本担当のアイザックは皆が寝ている頃に製作した脚本の整理をしていた。施設訪問の演劇をする脚本は昨日の夜、疾風や黒田たちのおかげでたった1日で完成したのだ。

 

「あら?アイザック。資料の整理?」

 

「ああ、おはようエミリアさん」

 

するとソファーで寝ていたエミリアが目を覚ましボサボサになった髪を掻きながらそう言う

 

「おはよう・・・・・で、どう?まとまりそう?」

 

「うん。後は・・・・・配役かな?」

 

「配役ね~あ、そうだ。ねえアイザック」

 

とそう言うとエミリアはアイザックに何か耳打ちすると

 

「なるほど・・・確かにその配役は面白そうだね」

 

「でしょ?あ、それとスペシャルゲストも呼ぼうかと思っているんだけど?」

 

「スペシャルゲスト?誰?」

 

「この作品に必要不可欠な人さ。その人の連絡なら私がやっておくわ」

 

「わかった。じゃあ頼むよ。くれぐれも秘密に。それにしてもエミリアさん。あなたも悪だね~」

 

「ふふふ・・・アイザクさんこそ~」

 

と、何やら悪だくみをする代官と商人のごとくいたずらな笑みを浮かべるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?もう台本で来たの?」

 

日が出た時、カーラは台本ができたと聞き驚くとアイザックは

 

「我ながら隠れた文才にびっくり。きっと亡き父も称賛にむせび泣きを見せてくれることかと」

 

「いやいや、アイザック君のお父さんまだ生きてるでしょ?」

 

アイザックの言葉に黒田が呆れている中、疾風やマリアンはみんなに台本を渡す

 

「ふむ、配役も決定しているのか」

 

「あの、カール大尉。私も舞台に立つの?」

 

「え、この役って?」

 

「今回は無難なタイトルだな?」

 

「分厚いなこの台本・・・・覚えられるか?」

 

「ほう、妾が主役か。まあ当然じゃな。何よりもヒロインの役をするものが気に入った!」

 

「どうしてこの配役の欄に私の名前がある!」

 

その配役に全員が驚いたり感想を漏らしていた。しかし疾風は

 

「おい、ちょっと待て。なんで俺がこの役なんだ?」

 

「え?だって疾風ならお似合いじゃん」

 

「いや、おかしいだろ。普通逆だろ?」

 

「まあ、良いじゃないの。あんたも男なら腹をくくりなさい」

 

「し、しかし・・・・この役は」

 

「ええい!往生際が悪いぞ大尉!いいではないかこの役でも」

 

と、そう言う中アイザックは

 

「さて、それではさっそく読み合わせを・・・・・みんながっつりやるからね」

 

と少し怖いくらいの笑みを浮かべるのであった

 

 

 

 

 

そして一週間後、A部隊とB部隊を乗せたジープは訪問先である孤児院を目指していた

 

「やっとか…長かった…」

 

「今日で終わるんですね…」

 

「しごきすぎだヴァーガンデール少尉。これじゃあネウロイとの戦いの方がまだ楽だったな」

 

「大丈夫ですか疾風さん?」

 

「おい、しっかりしろ。おぬしの演技なかなかじゃったぞ?」

 

「大丈夫疾風。あしたのジョーみたいになっているけど?」

 

「あ、アハハ・・・なんかいろいろと終わった感じがする。あ、エイラとアイが川の向こうに見える・・あははは・・・そのまま渡っちゃおうかな?」

 

「大尉!?それ三途の川ですよ!?」

 

「おい疾風!しっかりしろ!!!??と、言うよりお前の妻と娘まだ生きているだろうが!?」

 

「そんなに嫌だったのかその役?」

 

と、少し心配そうに言う中ジープは目的地である孤児院へと到着する。すると孤児院の子供たちが笑顔で出迎えてくれた

 

「いらっしゃい。ウィッチの皆さん!!」

 

と、そう言うと子供たちが疾風たちのもとに集まってくる

 

「こんにちはウィッチのお姉ちゃん」

 

「はい。これ!」

 

「可愛いねぇ~ありがと!」

 

「こっちのお姉ちゃんにもお花あげる!」

 

「ありがとな」

 

花束や似顔絵を渡す少女に黒田とエミリアは笑顔で少女たちの頭を撫でる。

 

「あ、兄ちゃん。新聞で見たことがある!ねえ、なんかかっこいい技見せてよ!」

 

「おう、いいぞ」

 

一部の男子が疾風にそう頼み。疾風は剣技『バーチカルスクエア』や曲芸に近い刀技を見せ少年たちを喜ばす。だが、

 

「きゃああー!!?」

 

「だ、大丈夫かジェニファー!?可愛くないぞお前!?」

 

「へ、蛇…蛇が・・・・」

 

ジェニファーが悲鳴を上げ腰を抜かしマリアンが少年たちに怒る。どうやら蛇で悪戯をされたみたいだ。それを見たグリュンネは

 

「ふふ、子供って気を引きたくてああいうことをするのね」

 

と、微笑ましくその姿を見ていたのだが背後に忍び寄る少年にポケットにネズミを入れられ、それに気づき悲鳴を上げる。そして別では別の少年がアイザックの後ろに忍び寄りポケットにカエルを入れようとするが・・・・・

 

「ありがと」

 

と、アイザックは気づいていたのか少年からカエルを取り上げると

 

「丁度いい肉付き。ちょうどお腹がすいていたからフライにするよ」

 

「っ!?」

 

アイザックの言葉に悪戯を仕掛けた少年は驚き顔を青ざめ

 

「あ、ちょっっ…返せ!そのカエルは僕の友達なんだ!!」

 

「友達?ふ~ん・・・・・」

 

そう言うとアイザックは正面の目線までしゃがみ

 

「友達なら、なおさらこんな悪戯の道具にしたらダメだ。友達はかけがえのないものだよ」

 

と、そう言うと少年は顔を背け

 

「・・・・・・ごめん。姉ちゃん」

 

「よろしい」

 

そう言いアイザックは少年にカエルを返し頭を撫でると少年は

 

「姉ちゃん。劇、頑張れよ!」

 

そう言い去る。それを見た疾風は

 

「子供の扱い、上手いんだな」

 

「あんなの僕の子供時代に比べれば素人だからね」

 

「そうか・・・・・・」

 

そう言い疾風は子供たちの姿を見て、ひとりの少女、愛娘であるアイのことを思い浮かべる。今現在彼女はエイラのもとにいる。だがやはり会えないのは寂しいものだ。そう思っているとアイザックは疾風の考えていることがわかったのか

 

「疾風さん・・・・・会いたいのアイちゃんに?」

 

「正直に言えば会いたいな・・・・・だが、今はやらなければならないことがまだあるからな・・・・」

 

「そっか・・・・・」

 

そう言うとアイザックは何も言わなくなり、そしてその後疾風たちは演劇の準備のために衣装室に入る。因みに試着室はちゃんと男女に分かれている

 

「ねえ、私の衣装ってこれかな?」

 

「そうだと思います」

 

「なんで私がこんな衣装を・・・・・」

 

「キーラ少佐。何なら俺と役、交換しますか?」

 

「いいや。遠慮するよ疾風大尉」

 

と、話している中

 

「グリュンネ少佐はおられますかしら?」

 

とドアが開き誰かがグリュンネ少佐に声を掛けるとグリュンネ少佐はその声の方へ振り向くと

 

「クロステルマン中尉!」

 

そこには元501のペリーヌの姿があった。そしてペリーヌはくすっと笑い

 

「今は一線を退いているのでペリーヌと。お招きに預かり光栄ですわ」

 

と挨拶をする中、ペリーヌは少し気まずそうな顔をし

 

「あ、あのグリュンネ少佐。ごめんなさい。この隊をあなたに押し付ける形になってしまって。私が復興事業に専念したいがため隊長の打診を辞退したから・・・・・」

 

「ずっとそんなことを考えていたのですか?・・・・・ペリーヌさん。私はむしろ感謝しています」

 

「感謝・・・・ですか?」

 

「ええ。私はこの506のメンバーが好きです。こんな素敵な出会いをありがとうって」

 

グリュンネ少佐が笑顔でそう言うとペリーヌも笑顔になり

 

「あなたのような隊長に出会えた多淫の皆さんはきっと幸福でしょうね」

 

「ええ、…劇、楽しんでくださいね」

 

「ええ・・・・是非・・・・・あら?」

 

ペリーヌはふっとグリュンネ少佐の後ろに見覚えのある顔がいるのに気づき

 

「疾風さん。それにエミリアさん。なんでここにいらっしゃるんですか?」

 

「え・ああ、ペリーヌ。久しぶり」

 

「久しぶりはいいことですが、旅をしていたエミリアさんはともかく。なぜエイラさんと一緒にいるはずのあなたがここに!?それにアイさんはどうしたんですか!?」

 

「え?ああ。一時的にここに配属になったんだよ。アイは今回はエイラと一緒にペテルブルグの502基地いる」

 

前にも同じ質問をされたような気がしたような・・・・・・

 

「一時的って・・・・」

 

「まあ。いろいろさ。任務が終われば戻るつもりだよ」

 

「そうですの・・・・・それで今回の劇で何を演じられるのですか?」

 

そう訊くと疾風はびくっと体を震わせ

 

「ま・・・・・まあそれは演劇が始まってからのお楽しみかな・・・・」

 

「疾風さん顔青ざめていらっしゃるけど大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だ」

 

と苦笑いをする疾風であった

 

 

 

 

 

 

「開始三分前だよ」

 

アイザックがそう言うと皆の緊張感が高まる

 

「子供たちだけじゃなくて報道や来賓の方も沢山いるね」

 

「うぅ・・・・緊張する~っ!」

 

「そなたは普段から緊張が足りぬのだから丁度良いわ」

 

「みんあいい。506の団結を見せるのよ」

 

グリュンネ少佐の言葉に皆は頷き、会場では子供たちがどんな劇が始まるのかワクワクしていた。そして、会場の舞台から、白い衣装を着たアイザックが登場し、

 

「それではみなさん長らくお待たせしました。これより我が部隊の演劇をご覧ください」

 

と、そう言い幕が開く。そしてアイザックは

 

「今回の劇の題名は・・・・・・・」

 

 

 

 

「真†ロミオとジュリエットです!!」

 

こうして演劇が始まるのであった 

 

 




遂に始まった演劇。疾風は一体何の役をやるのかは次回のお楽しみです

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