ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
場面は外から部屋へと変わり、椅子にはジュリエットこと疾風が座って、後ろにはジェニファーが彼の髪(鬘)を髪を梳いた。そして・・・・・
「彼に会いたいのですかお嬢様?」
と、侍女役であるジェニファーがそう訊く
「ええ、コゼット・・・・・私は会いたい…どうしても彼に」
疾風は地声に戻らないよう必死の演技でそういう。その真剣さはジェニファーにも伝わっていた。
「ジュリエットさま…‥それほどまでに彼を愛しておられるのですね?」
「ええ、たとえお父様に勘当されてもこの愛が止まることはあり得ません・・・・・・あ、すみませんコゼット。こんな話をしてしまって…」
「いいえ、よろしいのですよジュリエットさま・・・・・」
と、微笑むジェニファー。すると
「ジュリエット」
「お母さま・・・・・・」
と、そこへジュリエットの母親役であるグリュンネ少佐が登場する
「あなたは本当にあのモンタギュー家の息子に恋をしたのですか?」
「ええ、そうですお母さま。わたくしはあの人に恋をしたのです!!たとえお父様やお母さまが否定してもです!」
迫真の演技でそういう疾風にグリュンネ少佐は
「ぶふっ・・・・!」
思わず吹き出してしまう
「(ちょっ!?何吹きだしているんですかグリュンネ少佐!?)」
「(す、すみません。疾風さん。あまりにも女の子姿が板についていたのでつい・・・・・)」
「(俺だって、好きで女装しているんじゃないんですよ?)」
どうやら疾風の演技が壺に入ったようなのか笑いを必死にこらえる。そして疾風はその様子に苦笑していたが
「(グ、グリュンネ少佐。お気持ちはわかりますが、早く演技を)」
「(え、ええ…そうでしたわね)コホン。しかしジュリエット。我が一族とモンターギュー家は不倶戴天の敵同士。その敵であるモンターギューの息子のことを信用しろとあなたはおっしゃるのですか?」
「ええ、そうですお母さま。例え敵であろうと、なんだろうと大切なのは相手を信じることです。そうでなければ人は永遠に平和を掴むことなんてできないんですよお母さま」
「ジュリエットさま・・・・・」
疾風の迫真の演技、そして心を込めた台詞に観客どころか役者の皆も感動し驚いていた。このセリフはもちろん疾風のアドリブである。そもそも劇の後半はエミリアとアイザックの策略でほとんどアドリブで演技する羽目になっているのであった。そんな状態にもかかわらず、皆必死に演技をしている。そしてグリュンネ少佐も
「ジュリエット・・・・・・わかりました。あなたの気持ちは。ですがそれでも我が一家はそう簡単には彼を受け入れる気はありません。それに彼のあなたに対する思いが本当かどうかもここで確かめさせてもらいますよジュリエット」
「それはどういう意味なのですか奥様?」
「ロミオにはジュリエットのいる部屋までいろんな試練を乗り越えなければいけないということですわ・・・・」
そう言いグリュンネ少佐は退場する。そしてジェニファーは疾風の手を取り
「大丈夫ですお嬢様・・・・・・」
「コゼット?」
「あの方はきっとジュリエットさまのもとに来てください
「・・・・・」
ジェニファーが肝心なセリフの時に噛んでしまう。そして噛んだ本人は恥ずかしさのあまり顔を赤くしてしまう。するとそこへ
「失礼しますお嬢様」
と、そこへメイド長の姿をしたアドリアーナが入って来た
「どうかしたの?マリー?」
「はい。どうやら誰かがこの屋敷へと向かっているとのことです」
「ロミオ様だわ・・・・・」
「恐らく。そして先ほど、旦那様がその侵入者に刺客を放ちました」
「刺客?誰ですの?」
「この一族きっての剣士です・・・・・・」
そう、アドリアーナがそう言うとライトはいったん消える。そして舞台のセットを係の人が準備しなおしてる最中、舞台裏では
「はあぁ‥…肝心な時に噛んでしまいました」
「そう、気にするなよジェニファー。アドリブなのにいい演技だったよ」
「疾風大尉・・・・・ありがとうございます」
顔を赤く染めて言うジェニファー。するとアドリアーナが
「おい、疾風。もうすぐ次のシーンが始まるぞ。早くバルコニーに戻れ」
「ああ、わかった。」
「疾風さん。頑張ってくださいね」
「ああ、任せておけ」
そう言うと疾風は舞台に戻る。そして場面はまた外の風景で城壁ら式セットの上にはバルコニーがありそこに疾風子とジュリエットがたっており、その下にはロミオ役であるハインリーケがいた
「後、もう少し。あともう少しで君に会えるジュリエット・・・・」
『思わぬ刺客を振り切ったロミオは今、愛する恋人ジュリエットの元へと向かう!』
とアイザックがナレーションをする中ロミオ役であるハインリーケはあたりをきょろきょろと見渡し
「(・・・・・もうこれ以上はおかしなのは出てこんだろうな・・・・・いや、そう言えばまだカール大尉やヴィスコンティ大尉は登場してはいたが二役という可能性もある。果たして誰じゃ?・・・・・)」
そう、辺りを警戒していると・・・・・・・
「待ちたまえ!ロミオ!!」
と、誰かがハインリーケを制止する
「(来た!だれじゃ?カール大尉かヴィスコンティ大尉かそれともエミリア大尉か?)」
そう思っていると天井からロープが垂れ下がり、そこからどっかの剣士のような恰好をし仮面を付けた後ろおさげの少女が乱入してきた
「お前をジュリエットの元へ行かせるわけにはいかない・・・・・私はジュリエットの姉のフリーデリーケ!!」
『『『っ!!!????』』』
とそう言うと、彼女の正体がわかっているのかその場にいた506や観客席にいるペリーヌは目を丸くさせ驚く
「あ・・・・あれって・・・・バルクホルン大尉?」
ペリーヌが呟き。そして舞台では
「「何でバルクホルン大尉(義姉さん)がここにいるんだあぁ!!?」」
ハインリーケと疾風は突然のバルクホルンの登場に驚き、そう叫ぶ。そして舞台裏では
「なぜバルクホルン大尉が・・・・・・まさかエミリア。お前の差し金か?」
「ええ、ヴィスコンティ。今回スペシャルゲストとして呼んだのよ。本当は疾風の嫁であるエイラや娘のアイを呼ぶつもりだったんだけど、まだ連れてくるのは危ないと思ったからね代わりに彼女を呼ぶことにしたのよ。まあ本人もノリノリで了承したんだけどね」
「そ、そうなのか・・・・・。でも大丈夫なのか?」
「大丈夫。バルクホルンにはロミオを止める刺客という風に言ってあるから。何とかなるでしょ?まさか姉という役で出るとは思わなかったけど」
「おい、エミリア。本当に大丈夫なんだろうな?」
「・・・・ま、そこは二人の演技に任せよう」
そうアドリアーナとエミリアが話している中、芝居は続きバルクホルンは小道具であるサーベルをハインリーケに向け
「ロミオ。聞けばお前は二股、三股を平気でし女を泣かせる卑劣漢だそうじゃないか?そんな男に私の可愛いおと・・・・・いや、妹はやれん!!」
「誤解の上に尾ひれがついておるぞ!?バルクホルン大尉!?」
「バルクホルン?誰だそれは?私はジュリエットの姉であるフリーデリーケだ!どうしても妹のもとに行きたく場私を倒してから行くがいいロミオ!!」
そう言うバルクホルンにバルコニーにいる疾風ことジュリエットは
「えと・・・その。ね・・・・・お姉さま!?いったい何を?」
と、そう言うとバルクホルンはちらっと疾風を見るとすぐに顔を背ける。そしてその表情は顔が赤く、にやけそうになるのを必死で抑えていた
「(は、疾風の奴・・・・・滅茶苦茶可愛い///!!)…コホンっ!ジュリエットは黙っていなさい。これは私とこの男の問題だ。この男がジュリエットにふさわしい男かどうか見極めてやる。そして、こいつを始末すればジュリエットは永遠に我がもとに!!」
『おおッと!どうやらお姉さんは重度のシスコンでいらっしゃるもよう!!』
「誰がシスコンだ!ただ妹と弟が大好きなお姉ちゃんなだけだ!!とにかくだ!!」
そう言うとバルクホルンはもう一本のサーベルをハインリーケに投げ、ハインリーケがサーベルとキャッチするとバルクホルンは
「さあ!私と決闘だ。ロミオ!!」
そう言うとハインリーケはサーベルを抜き
「受けて立ちましょう」
と、そう言い構え。会場から戦いの音楽が流れ始める。そして戦う二人の姿を見て観客席で見ている子供たちが興奮してみている
『かっこいい!!』
『ロミオ頑張れ!!』
『ジュリエットのお姉さんも頑張れ!!』
と、応援の声が響く。そして激しい白熱戦が続く中
「どうだ!ロミオ。そろそろ降伏してはどうだ!」
「まだまだ!愛するジュリエットに会うまでは私は負けるわけにはいかんのだ!そのためにはそなたを倒さねばいけない!!」
そう言うとハインリーケはバルクホルンのサーベルを弾き飛ばし
「勝負ありだ・・・・・お姉さん?(最後の方は本気みたいじゃったが…何とか勝てた)」
「・・・・・悔しいが・・・・私の負けだロミオ」
バルクホルンが負けを認めると観客は拍手と歓声の声を上げる。そしてバルクホルンは
「さあ、ジュリエットのもとに行けロミオ。しかし。私はただの門番に過ぎない。本当の強敵は他にいる。せいぜい気を付けるがいい・・・・」
そう言いバルクホルンは退場する。そしてハインリーケは
「ジュリエット。今行くぞ!」
そう言うと言ったん照明が消され。裏ではエミリアとバルクホルンが話していた
「バルクホルン大尉。お疲れさん。急にごめんね呼び出して」
「ああ、いきなり呼び出されたときは驚いたぞ。まあ内容を聞けば納得できるし、ミーナからは休暇という形で了承を得たが・・・次からはもっと早くに伝えてくれ」
「了解・・・・・で、バルクホルン。疾風の格好どう思う?」
そう訊くとバルクホルンはちらっと表舞台にいる疾風を見る
「ま・・・まあぁ…悪くない。いやむしろ素晴らしいものが見れた」
「あとでジュリエット姿の疾風の写真を送ろうか?モノクロ写真のお方がいい?それともカラー写真の方がいいかしら?」
「なんだと!?カラー写真もできるのかエミリア!?」
「私に不可能はないわ」
「そうか・・・それはさすがだ。ではカラー写真を頼む」
と、何やら二人でこそこそと怪しい商談をする中エミリアは
「(さてと‥‥そろそろフィナーレかしらね・・・・)」
と、何やら意味深めの笑みを見せるのであった。そして舞台では照明がつき、そこにはバルコニーで待つジュリエットの下に彼に父親役であるキーラとロミオ役であるハインリーケが対峙していた。
「とうとうここまで来たなロミオよ・・・・だが。貴様が行けるのもここまでだ。ロミオよ。ジュリエットにどうしても会いたければ私を倒してから行くがよい。最も私を倒すことなど到底無理ではあるがな」
「どういう意味だ?」
「ふふふ・・・・今だからこそ教えてやろう。人間というのは仮の姿。しかし我が家は世界一邪悪な一族の末裔なのだ!見せてやろう私の本性を!!」
キーラがそう言った瞬間、その身体がスモークに包まれる。少しして、スモークが晴れるとそこには………
『何と! ジュリエットの父はその先祖から受け継がれている魔力によって、自らを竜へと変身させたのです!!』
と、アイザックがそう言った瞬間、キーラは変身したと言う設定で、竜の着ぐるみを着ていた。しかし、その着ぐるみは。3つの頭部と、それを支える長くしなやかな3本の首、2本の長い尾、全身を覆う黄金色の鱗、腕の代わりに巨大な一対の翼を持つ姿。如何見ても『キングギドラ』(昭和版)だった。しかし構造上の都合なのか、変身していると言う事を分かり易く表現する為か、3つ在る首の内、中央の首の根元部分には、キーラの顔があった。そしてキーラは
「(なんで私がこんな恰好をしなくてはいけないのだ・・・・・)」
と、不満そうな表情を見せていたが、観客で見ている大人たちも動揺した表情をしていたのだが、子供たちには
「スゲぇー!龍だ!!」
「かっこいい!!」
と、大好評だった。そして疾風は
「(キングギドラって・・・・大丈夫か東宝さんに怒られないか?)」
と不安そうな表情をしていた。そんな中、キーラは気を取り直し
「さあ、ロミオよ!ここで最後の勝負と行こうではないか!!」
とキングギドラことキーラギドラは、エレクトーンの様な独特な咆哮を挙げのとともにそう叫ぶと、ロミオ子とハインリーケはサーベルを構え
「・・・・いざ参る!!」
と、そう力を込めて言うのであった
さて、次回で演劇編が終わります。果たして無事に終わることができるのでしょうか・・・・