ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
ed「帰還」
ヤプールと別れた後キーラは個室の中、一人考え事をしていた
「ヤプール・・・・・過激派ネウロイの一派。ふふ、まさか私の組織が過激派のネウロイと手を組むなど考えもしないだろうな。教授もおかしなことを考える」
そう呟くキーラ。
「だが、あのヤプール。どこか信用できない。あの目は私以上に闇を纏っていた。それに疾風を殺すと言ってもどこか信頼に掛ける・・・・・何だってあいつらはネウロイだ。いくら同盟者とはいえやはり信用なんてできはしないな」
そう言いキーラは立ち上がり
「やはり、こういう仕事は自分の手でしっかりやるに限る」
そう言いニヤッと笑うと部屋から出るのであった
一方、ガリアの病院では、銭形幸子刑事がいた
「やれやれ、あと一週間で退院か。樋口閣下の期限ギリギリだな・・・・・」
松葉杖で歩く銭形刑事。先ほど医者に診断してもらったところあと一週間ほどで退院できると告げられたのである。
「予定より二週間遅れたが、これで本来に任務を遂行できるな・・・・・」
そう言う銭形。そして部屋につきベットに座ると不意に窓の外を見る。そこにはまるで宝石をばらまいたかのように輝く星空であった・・・・
「奇麗な星空ね・・・・・幸一も扶桑で同じ星空を眺めているのかしら?」
銭形刑事は扶桑にいる自分の子のことを思う。幼げな顔の彼女だがちゃんと成人した女性で一児の母であるのだ。そんな彼女は仕事で国を離れているとはいえ、はるか遠くにある祖国に置いた自分の息子のことが心配であったのだ。
「そう言えば疾風大尉にも幼い娘がいたわね・・・・・・」
銭形はペテルブルグに赴いた時、疾風の傍にいた自分の子よりも幼い小さな女の子のことを思い出す
「仕事とはいえ、悪いことをしてしまったわね・・・・・もし、また会うことができたらちゃんとなにかお詫びをしないと・・・・それにしても。この流れ星の数。普段ならあんなにたくさん見れてラッキーて思うけど・・・・何か不吉な予感がするわね」
銭形は空に見える無数の流れ星を見てそう呟くのであった。
同時刻ディジョン基地の医務室ではキングジョーダークの戦いで負傷した疾風がベットで寝ていた。一向に目を覚ます気配もなくただじっと目をつぶっていた。そしてその隣にはリベリオン刑事のサムが座っていた。彼女は無言のまま彼を見ていた。すると部屋のドアを誰かがノックした。
「誰だ?こんな時間に」
警戒しながらドアを少しだけ開けると意外な人物が立っていた。
「驚いたな、あんたが訪ねてくるとは・・・・あんたも疾風大尉の見舞いか?」
「まあ、そんなところだ。だがそれだけじゃない。少し君と話がしたくてな基地の人に君が疾風大尉の見舞いに行っていると聞いてね」
ウィスキーの瓶と氷の入ったグラスを三つ持ったキーラが立っていた。サムは警戒しながらドアを開け彼女を迎え入れ、キーラは椅子に座りテーブルに三つのグラスにウィスキーを注ぐ
「おい、その三つ目のグラスは誰のだ?」
「ああ、疾風大尉のだ。まだ目が覚めてはいないのが残念だがな・・・・・」
「そうか・・・・で、話って何だ?」
サマンサはキーラが注いだウィスキーを飲む。するとキーラはふっと笑い
「君は民間人だ、つまり部外者と言ってもいい。つまり、内通者の疑いのかからない唯一人の人間だ。」
「俺を味方につけようと?」
「ご名答。さっきのレポートは?」
病人が寝ている中、薄暗い部屋の中で二人の会話が始まった。そしてサマンサは懐をトントンと叩き
「ここだ、常に身から離さないようにしている。」
「いい心がけだ。それが唯一のオリジナルなのか?」
「ああ、後は俺のここにあるだけだ」
自分の頭をトントンと叩くサマンサ。するとキーラはニヤリと笑い
「なるほど・・・・つまり」
「うっ!?」
キーラがそう言いかけた瞬間。サマンサは顔を青くしうめき声をあげて倒れる。そしてキーラは立ち上がり
「そのレポートと君が消えればもうこの件を手繰る糸はないわけだ。そろそろ効いてきたようだな」
「てめえ…何か盛りやがったのか…?」
「君のグラスの氷に致死量のジキタリスを混ぜておいた。」
「な・・・・・なんだと」
苦しそうに言うサマンサ。キーラはウィスキーに毒薬であるジキタリスを入れサマンサに飲ませたのだ。そしてキーラはサマンサの帽子を取り
「本来ならもうしばらく内部から揺さぶりをかけるつもりだったんだが、そのレポートの始末を優先しろと上層部からお達しがあってね。ニューヨークの君の職場でもそういう事はあるだろ?悪く思わないでくれよ。これも仕事だ」
そう言うとキーラは懐からナイフを取り出し
「さて、邪魔な刑事は毒で死ぬとして、そこで眠っている奴を始末しないとな。やつを生かしておけば、いろいろと都合が悪いからな。奴にはここで永遠に眠ってもらうことにしよう」
そう言いキーラは疾風に近づこうとすると、毒で苦しんでいるはずのサマンサは二っと笑い
「とうとう尻尾を出したな」
そう言い立ち上がる
「なっ!?馬鹿な毒入りの酒を飲んだ・・・・・・」
「飲んじゃいないさ。酒は床にこぼした。それがばれないように部屋を暗くしたんだよ」
「では、お前がこの部屋にいたのは」
「お前をおびき寄せるため。もう一つはお前が単独で疾風大尉を抹殺するのを防ぐためさ」
と、サマンサがそう言った瞬間ドアが開き、そこからジーナ中佐らB部隊と、ハインリーケらA部隊が入り込んだ
「そこまでだ。キーラ少佐・・・・・・・いや内通者!」
ジーナ中佐がそう言う。そしてキーラは
「・・・・・まさか、気付かれていたとはね。いつからだ?」
「そもそもセダンの爆破事件のすぐあと、少佐たち諜報部の到着が早過ぎた。爆発の前から準備しているのでなければな。それと同時に今まで誰も例の殺人鬼ジャックザリッパー・・・・レイナーレの情報をあそこまで鮮明に知っているのもおかしい、それはレイナーレ本人から聞かなければ不可能だ」
「それだけでは証拠にならんよジーナ中佐」
「いや、証拠はそれだけではない。私たちはあなたの身分を確かめるt目に写真付きの資料を確認した」
「・・・・情報部のファイル写真は私の写真だよ」
「あ、だが、大学時代まではさすがに無理だったようだな。全くの別人だったよ」
「それだけではないのだろ?私が内通者である証拠は?」
キーラがそう訊くとジーナが
「ああ、決定的なのは君はマーフィーのことをアルコール中毒者と言ったそうじゃないか。私もスペード刑事も一切彼の飲酒癖については話していないんだがな」
ジーナがそう言いエミリアも
「それだけじゃない。私もあんたが怪しいと思ったのは黒田がレイナーレに攫われたあの夜の時。お前はレイナーレのことをアドルフ・ヒトラーの崇拝者と言っていたが、私も疾風もかつてのナチスドイツ初代総統アドルフヒトラーのことは一つも話したことがない。つまりお前はレイナーレと接触し、暗殺などをレイナーレに依頼していた張本人になるというわけだ」
「キーラ少佐。セダンでは上層部の指令であなたには手を出せない。だがディジョンでは別だ。グリュンネ少佐の作戦勝ちだ」
「なるほど。すべては私をここに誘き出すためだったのか・・・・どうやら私は君たちを甘く見ていたようだ」
キーラはふふっと鼻で笑う。その姿の焦りはなく余裕を持った表情であった
「こちらからも聞こうキーラ少佐・・・・・・なぜ506を狙うのじゃ?それに先ほど疾風を殺そうとした。殺す理由はなんじゃ?」
ハインリーケが鋭い目つきで質問するとキーラは
「すべてはバランスの上に成り立っている。私はそのすべての均衡を保とうとしているに過ぎない。疾風大尉の暗殺もその一つだ。彼は異世界人。つまりこの世界にいるべきでない人間だ」
「だからレイナーレに殺人を依頼したのか?」
「ああ、異世界人を殺せるのは異世界人だけだからね。彼女には申し訳ないことをしたがこれも運命というやつだ。そうそう私の部下の諜報員たちのことは責めないでやってくれ。奴らはただの駒。事情も何も知らない」
「あんたらは一体何者だ?」
あ万差が拳銃を突き付けキーラに訊くとエミリアは
「あんたの正体は大体見当がつく。あんたガリア王党派の過激派と言われるテロリスト組織の一員だろ?」
「ほぉ?エミリア・ハルトマン貴様の疾風同様、異世界人のはずなのによく知っているな?」
「ヴェネチア戦の後、私はまず最初、ガリア内を旅をしていた。その旅の最中いろんな組織特にテロリストに関する情報とかを調べていた。その中で一番過激な組織。ガリアを過去の王政制度に戻し、そのためなら何でもする。あんたら王党過激派だということを知ったというわけだ」
「なるほど・・・・流石は元の世界でテロリストをしていただけはあるなエミリア大尉。確かに私は王党過激派の人間だ。私たちはこのガリアを本来の姿を守るためにはどんな手段も使う。例え人類の敵と手を組んでもな」
「っ!?じゃあ、この前のネウロイの襲撃は!?」
「そうだ。私が手引きした。まあ、連れてきたのは同盟相手の過激派ネウロイの一人なんだがな。まあ、やつのおかげで一つ目の疾風に深手を負わせることができたからそれで良しとしよう」
「「っ!?」」
その言葉に皆は驚くまさか、王党派組織がネウロイと内通していたなど考えられなかったのだ。そしてその言葉を聞いた瞬間、ハインリーケとマリアンは目を吊り上げ
「貴様が・・・・・貴様が疾風大尉を!!」
「貴様。覚悟しろ!!」
そう言い二人はキーラを拘束しようと向かうがキーラはふっと笑い
「さて・・・・そろそろ時間だな」
そう呟いた瞬間、大爆発が起き基地内が大きく揺れた
「また爆発!?」
「セダンだけに打撃しかも格納庫だけ与えたら不公平だろ?さっきも言ったがバランスだよ」
「なっ!?逃がすか!!」
「待てっ!逃がさぬぞ!!」
キーラが窓から逃げようとするのを見たマリアンとハインリーケは追いかけ。キーラは窓から飛び降りる。そして窓辺についた二人は外を見ると
「さてさて、ウィッチの諸君。私を捕まえられるかな?」
窓の外にはまるでネウロイの色のように漆黒のユニットを履いたキーラがにやりと笑い飛んでいたのであった