ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
セダンの基地内の娯楽室では、アイザックがピアノを弾き、ソファーではアドリアーナが寝て別のソファーではハインリーケはサーベルの手入れをしていた。そしてピアノを弾いていたアイザックは
「黒田さんたちそろそろパリに到着したかな?」
「恐らくな」
アイザックのの独り言にサーベルの手入れをしながらハインリーケがそう言う
「しかし、こう暇では腕が鈍るわい。いっそ景気よく大型ネウロイでも現れて…」
「ふぁぁ、不謹慎だぞ姫様」
すると彼女の向かいのソファーで寝ていたアドリアーナが起きあくびをしながら言う。
「いざネウロイが出たとなれば嬉々として飛び出してゆく者のセリフとは思えぬな。」
「久々にやるか姫さん?」
アドリアーナがハインリーケを挑発するとその奥で書類作業中だったグリュンネ少佐は
「えっ!?うそでしょ!予定より一日早くに始める!?ということはあと三日しかないじゃない!?それに以前から発注したのに今更キャンセル!? 設営部品のレンタル料が7%アップ!?これじゃ式典に間に合わないわ!」
突然のキャンセルや予定日が早まるなどのアクシデントにグリュンネ少佐は大泣きしながらそう言う
「黒田さんたちがブランク大尉を連れ戻す以前にお披露目の場が無いかもね」
「不吉なことをいう出ない・・・・まあ、そもそもあやつらが順調に捜査を進めている姿が想像できんが…な」
グリュンネ少佐を見ながら不吉な事が頭をよぎった。捜査隊にはエミリアもいるから大丈夫だと思っているハインリーケだが、どうも胸騒ぎがしてならなかったのだ
「そういえば最後に連絡来たのってパリに着いたって連絡だけだったよね?大丈夫かな?」
「エミリア大尉がいるから大丈夫だと思うが、あいつもちょっと黒田達に似た雰囲気だからな・・・・・」
と心配する3人。するとハインリーケはすっと立ち上がり部屋を出ようとするとアドリアーナが
「また、疾風大尉の見舞いか姫さん?」
「そうじゃ・・・・・もうそろそろ目が覚めてもいいころ合いのはずじゃ・・・・・」
と、そう言い出ようとすると
「そうだ大尉。見舞いに行っても大尉がまだ目が覚めていないのなら、キスしたらどう?」
「っ///!?」
不意にアイザックの言った言葉でハインリーケは思いっきりずっこける。そして
「ナナナナナナナナ!!!何を言うておるのじゃバーガンデール少尉!!!???」
顔を真っ赤にしてそういうハインリーケにアイザックは
「知らないの眠れる王子様の眠りを覚まさせるにはお姫様のキスがいいんだよ?」
「いや、アイザックそれは逆だろ?まあ確かに目覚めのキスはいい案かもしれないが・・・・・姫さんやる?」
「やるわけないじゃろ///!!」
顔を真っ赤にして部屋を出るのであった。そして廊下を歩くハインリーケは
「まったく何が目覚めのキスじゃ!からかいおって!!」
とそう言いながら疾風の部屋へと向かうハインリーケ。そして
「疾風大尉。入るぞ?」
ノックをし部屋に入るハインリーケ。そして部屋に入ると疾風はまだベッドで眠っていた
「なんじゃ・・・・・まだ目が覚めぬのか・・・・」
軽くため息をつき、そばにあった椅子に座ル。そして部屋のあたりをキョロキョロと見渡す。部屋にあるのは少数の本と、壁に掛けられている旭日旗それ以外には何もなかった
「(一時的に配属になっただけあって部屋には何もないの・・・・・)」
そう思うとハインリーケはじっと彼の寝顔を見る
「(こ奴・・・・よく見ると寝顔がかわいいのじゃな。いつもは勇猛果敢な男なのに・・・・・まるで子供のようじゃ)」
ハインリーケは寝ている彼の顔をじっと見つめる。そして口元に目が行き、先ほどアイザックの言葉を思い出す
「キスか……いや、何を考えておるのじゃ妾は!?あ奴には恋人や娘がおるのじゃぞ!その恋人を差し置いて・・・・・」
頭をぶんぶんと不利そう言うハインリーケだが
「じゃが・・・・・」
そういい視線を疾風の口元に戻す。そして
「そ、そうじゃ…これはバーガンデール少尉の言う通りにキスして目を覚まさせるというのも手じゃな。そうじゃ欧州では親しい相手には頬や手の甲にキスをするんじゃ。キスする場所が違うだけで同じことじゃ!!」
顔を真っ赤にして支離滅裂な事を言うハインリーケ。もはや自分が何を口走っているのか自分自身にもわからない状態なのだろう
「そうじゃ!これはあやつを目覚めさせるためにキスするのじゃ。別に下心でやるわけじゃない!よし!!」
そういうとハインリーケはゆっくりと疾風の顔に自分の顔を近づける。そしてハインリーケの唇が疾風の唇まで1ミリに達したとき、何かが倒れる音がした
「ん?なんじゃ?」
その音にハインリーケは疾風の顔から離れあたりを見ると疾風のベッドのそばにあった机に言置いてあった写真立てが床に落ちていた。ハインリーケは写真立てをとると、そこにはエイラとアイそして疾風の三人が写った写真であった。その写真を見てハインリーケは複雑な顔になりそして写真立てを机に置くと
「やっぱりやめよう・・・・・・あ奴の婚約者に悪いからの・・・・・・・・じゃから・・・」
軽い溜息を吐くハインリーケ。すると・・・・・・
「うぅ・・・・・・・」
「っ!?」
急に疾風の顔がぴくっと動きハインリーケは驚く。そして、疾風はうっすらと目を開ける
「うっ・・・・・こ、ここは・・・・・」
疾風はそうつぶやき起き上がるのであった。
不意に俺は目を覚ました。空気が肌に触れる感触。体に伝わる自分自身の重み。そして見た事のあるような天井が目に入った
「う・・・・・ここは」
確か俺は霊界で姉さんたちに助けてもらって・・・・・・少し体を起こそうとすると全身に走る鈍い痛み。体が鉛のように重い。だが、その感触こそが、自分がまだ生きてあの世界に戻った事の証明となった。どうやら自分はベッドに寝かされているようだ
「ここは・・・・・」
ここはどこだ?と言いかけたとき、急に視界が真っ暗になる。目に、もとい顔全体に何かが押し付けられ、息が苦しい。後頭部にまでも腕が回されており、頭の上にも手が置かれていて力強く抱きしめられている。自分が誰かに頭を抱きしめられ、顔が胸に埋もれていると把握するのには、少し時間がかかった
「(や、柔らか・・・・・・っじゃなくて! く、苦し・・・息が……)」
軋む体を何とか動かして、抱きしめている相手に意志を伝える。すぐに相手は理解し、放してくれた
「プハッ! ハァ……ハァ……」
呼吸を整えて、相手が誰かを見る。そこにいたのは
「ヴィ、ヴィトゲンシュタイン大尉?」
「よかった・・・・・」
「え?」
俺はハインリーケの顔を見ると彼女の眼は涙を流していた
「よかった・・・・おぬしが目を覚ましてくれて・・・・死んでしまわないで本当によかった」
と、嬉しそうな笑みを出す。俺はその笑みに一瞬見惚れてしまったが、
「ハインリーケ。ここは・・・・」
「セダンじゃ。セダンのおぬしの部屋じゃ・・・・・・」
「セダン・・・・確か俺はディジョンで・・・・・」
すると俺はディジョンでのことを思い出し眼を見開くと
「ハインリーケ!あれからどのくらいたったんだ!何日が立ったんだ!?」
「え?・・・・おぬしが倒れて3日ぐらいじゃ・・・・・ちょっと待っておれ、みんなを呼んでくる」
そう言いハインリーケは急いで部屋を出るのであった。そしてしばらくすると、A部隊の皆がやってきた
「疾風さん・・・・・」
「グリュンネ少佐・・・・・」
「よかった・・・・意識が戻って」
「苦しいところはないか疾風!」
疾風が意識を取り戻したことに皆は安心し、ハインリーケが心配そうに言う。すると疾風が
「グリュンネ少佐・・・・・俺が寝ている三日間。何があったんだ?それに黒田やエミリア。そしてジェニファーたちの姿も見えないけど?」
「そ、それは・・・・・・・」
疾風の問いにグリュンネは今までのことを説明する。キーラ少佐が内通者で過激派ネウロイと組んでいたこと、そしてキーラを逮捕し護送中一緒に護送していたジェニファーと一緒に失踪したこと。そしてエミリアや黒田たちがジェニファーたちを保護しに行ったことなど全部話した。疾風は
「(やはりキーラが内通者で過激派・・・・恐らくあのヤプールだな。ヤプールと手を組んでいたとは・・・・前から少し怪しいと思っていたが、俺が眠っている三日間そんなことが・・・・・いやな予感が的中した。ヤプールのことだ。きっと同盟を組んでいるキーラを追っている黒田たちに刺客を送るはずだ・・・・・こうしちゃいられん!)」
そう推測した疾風は体が痛いのを我慢しベッドから降りようとする。それを見たグリュンネたちは驚き
「なっ!?どこへ行くつもりじゃ疾風!!?」
「だめですよ疾風さん!今動いては!?」
「く、黒田たちを追います・・・・!!」
「バカ!何を言っているんだその体で!!」
無理に行こうとする疾風にアドリアーナたちが止める。だが疾風はバランスが取れず倒れてしまう。
「ほら!その体じゃ歩くのは無理だ!疾風大尉。あまり無理はするな」
「そうだよケガが悪化するよ」
そう言いアドリアーナとアイザックは疾風の肩を持ちベッドに座らせる。すると
「おお、目を覚ましたようだね?その様子を見る限り元気みたいだな」
そこへドーセ先生が入ってくる。そしてグリュンネ少佐は
「先生。疾風大尉の峠は越えたんですね?」
「ああ、無理にでも歩こうとするその様子を見ればな・・・・・・だが」
そう言いドーセ先生は無理に歩き出そうとしてアイザックやアドリアーナに止められている疾風を見て
「足、頭、そして腹部の怪我の完治を考えて全治一月以上、しばらくは絶対に安静。特に足の怪我が酷いため、動きたいのであれば車椅子か杖を使うことが絶対条件だ。無論、ストライカーユニットでの出撃はもちろん絶対に禁止だ。無理に動こうとすれば傷が悪化し二度と歩けないどころか、次は命の保証はできないよ」
「そ、そうですか・・・」
ドクターストップで出撃は禁止といわれ疾風はショックを受け、大人しく座る。
「仲間を助けたい気持ちはわからんでもないが今は少しでも早く傷を治すことに専念したまえ少年」
ドーセは疾風の肩をポンっとたたくと部屋を出て行った。そして残った者たちは
「大丈夫よ疾風さん。黒田さんたちにはエミリアさんもいるから心配しないで・・・・」
「…確かにエミリアなら諜報員相手になら何とかなると思うが・・・・・だが・・・・」
「過激派ネウロイのことか?」
アドリアーナがそう聞くと疾風は頷き
「ああ、やつらのことだきっと黒田たちに刺客のネウロイを送る可能性がある」
「わかったわ。一応、その過激派ネウロイに気をつけるように黒田さんたちに連絡してみるわ。だあから疾風さん。あまり無茶するのはやめてここでけがを治すことに専念するのよ・・・・・」
「隊長の言う通りじゃ。気持ちはわからんでもないが、ここは怪我を治すまで戦士の休息ということじゃな」
「・・・・わかったよ。悔しいが、動くことのできない俺が今出ても足手まといになるだけだな。ジェニファーの捜査はエミリアに任せて俺はしばらくはここで大人しくしているよ」
満足に歩けずそして戦えない今の自分が行っても迷惑をかけるだけ。そう感じた疾風はハインリーケやグリュンネの言う通りに大人しくここで怪我が治るのを待つことにした。そしてそれを聞いた皆は安心した笑みをし、そして皆はそれぞれ疾風と話をした後、部屋を出て。部屋に残された疾風は
「戦士の休息か・・・・・・」
と、少し寂しそうにつぶやくと
「黒田達・・・・大丈夫かな?特にエミリアのほうが心配だな・・・・・・」
軽い溜息をつく疾風であった